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FXの取引コストである「スプレッド」は、狭いほど良いのか?

 

FX取引を行うと、当然コストがかかります。一銭も出費なく取引を行うことはできません。

これはリスク(つまり負けや証拠金なども含む)とは違い、トレーダーが目に見えないコストを負担しています。

ここでは、FX取引のコストであるスプレッドについて解説します。

 

目次

スプレッドは投資家にはコスト、FX会社には利益

冒頭でもお伝えしたようにFXの取引には、「リスク」のほかに、様々なコストが必要になります。

目に見えるコストとしては、主にスプレッドが該当します。この投資家のコストは、FX業者にとっては収入になります。

FX業者は「取引市場」を作り、その場を個人に開放してくれています。その対価が、スプレッドなのです。

例えば、個人が日本円を米ドルに交換する場合、外国人と直接交換することになります。

その場合は手順が複雑になり、手間と時間がかかります。

まず交換してくれる相手を探し、交換レートの交渉を行い、実際に通貨同士を交換します。

さらに、相手の信用調査、そしてそれが信用取引となれば、公的認証を受けるなどして、お互いの信用を確認しなければなりません。

つまりFX業者は、その労力を肩代わりしてくれているわけです。外貨を交換するために必要なシステムの整備も、FX業者がしてくれています。

なので、投資家がFX業者にコストという利益を与えることで、FX業者もビジネス事業として成り立つわけです。

小さく見えるが結果的に大きな料金になるスプレッド

昔はFX取引で、口座維持管理費や売買手数料がかかっていた時代もありました。

しかし現在では、投資家が支払うべきコストといえば、ほぼスプレッドだけになりました。

では、FX取引では投資家にとって単純にスプレッドが狭ければ狭いほど有利なのでしょうか?

スプレッドは、通常では1通貨あたり0.4銭とか0.5銭といった、日常使わないようなとても小さな単位の金額です。

あまりの金額の小ささに、「利益が出るのが大事なのであって、スプレッドの大きさは気にする必要はない」といった感覚になります。

例えば、

  • FX会社Aでは、1通貨あたり0.4銭
  • FX会社Bでは、1通貨あたり0.5銭

というスプレッドが提供されていたとします。

これは、1通貨あたりではわずか0.1銭の差しかありませんが、取引量が最低1万通貨単位、スキャルピング取引であればそれが1日に何回もの取引を行う毎にかかるコストです。

さらに、このコストは、

  • ポジションを建てるとき
  • 決済するとき

の往復「2回」かかることになります。

少しFX取引に慣れてきた投資家であれば、数10万通貨単位などは普通に取引する通貨量でしょうし、

取引量の多い投資家であれば、数100万通貨単位での取引も当たり前のように行います。

もし、10万通貨単位なら、100,000×0.1=10,000銭=100円の差となります。

それが売りと買いにコストがかかりますから、100円×2=200円となります。

もし取引量が10倍の100万通貨なら、2千円となり無視できない数字になるのです。

スキャルピング取引なら1日に往復で10回取引を行うことなど、投資家によっては当たり前のことです。

つまり10往復であれば、手数料だけで1日に1万円も違ってくるのです。

スプレッドの単位自体は、無視できるようなごく小さい「銭単位」なのでピンときませんが、計算してみるとこのように大きな差が生じているわけです。

スプレッド「0銭」のカラクリ

FX業者各社は、0.1銭の違いを巡って「スプレッド競争」を繰り広げているわけですが、そんな中でも「スプレッド0銭」を謳っているFX業者も現れました。

0銭ということになったら、FX業者は一体どこで、どうやって利益を出すのか、こちらが心配になります。

「スプレッド0銭」と言っても、その適用は、特定の通貨ペアだけなのです。

そして該当する通貨は、取引高の少ない、いわゆる「マイナーな通貨ペア」に適用されます。

取引高が少ない通貨は、流動性が低く相場が急変しやすかったり、特定の機関投資家に相場を操られやすかったり、FX会社自身にとっても重要度が少ない通貨ペアなのです

このような取引数の少ない通貨ペアのスプレッドを0銭に設定しても、他の通貨ペアで利益が上がりますから、問題はありません。

スプレッド0銭の宣伝効果で投資家が集まってくれば、取引全体が増えて結果的に増益となるでしょう。

また、恒久的にスプレッド0銭なのではなく、キャンペーン期間中のみといったことも良く見かけます。

キャンペーン終了後は元のスプレッドに戻るため、一時的に0銭であっても問題はありません。百貨店業界に例えれば「バーゲン」のようなものです。

上記の例に該当せず、恒久的にスプレッド0銭という場合もありえます。

その場合にはスワップポイントを低めに抑えていると考えられます。

インターバンク市場での金利と個人投資家へ提供するスワップポイントに差を設けることで、その差額をFX業者は利益としています。

もし、「スプレッド0銭」が一時的なキャンペーンでないのなら、投資家はコストをスワップポイントの差額などで負担しているはずです。

デイトレードやスキャルピングであればスワップポイントは関係ありません。

しかし、投資家はある程度の期間はポジションを持ったままにしていますので、FX会社はスワップポイントから利益を得ることが出来ます。

FX業者自身にとってもスプレッドを0銭にすることが負担となっているなら、かけるべきコストがかけられていない可能性もあります。

たとえば、目に見えないシステムメンテナンスにかかるコストを、極端に切り詰めている可能性があるわけです。

メンテナンスコストを切り詰められてしまった場合、システム障害発生確率が高くなり、障害発生時の速やかな復旧が行われない可能性も出てきます。

相場が急変しているのにシステム障害が発生していたために注文が受け付けられず、莫大な損失を被ったという例は枚挙にいとまがありません。

システム障害が原因で損失が発生した場合には、証券会社やFX業者などから損失を補填してもらうことが出来ますが、通常の手続きではなく、証拠なども揃えておき、訴訟に発展する可能性なども見越さなければならないなど、多大な労力を費やす可能性もあります。

スプレッド「0銭」のFX業者を選ぶ際は、慎重になったほうがいいと言えるでしょう。

スプレッドの狭さだけを業者選びの基準にするのは危険

投資家にとって取引のコストであるスプレッドは、狭ければ狭いほど良いのは分かりきっています。

しかし、FX業者を選定する上での判断材料は、スプレッドの狭い広いだけを比較するという事だけではなく、他の要素にも目を向ける必要があります。

それは、

  • スワップポイント
  • スリッページ
  • 信託保全
  • サポート体制

なども総合的に考慮した上で、自分に合ったFX業者を選ばなければなりません。

FX業者の評判は、ネット上のランキングサイトで見られます。

ランキング上位の「DMM FX」「GMOクリック証券」といったランキング常連のFX業者は、ドル円スプレッドを「0.3銭原則固定」で提供しています。

GMOクリック証券は恒久的に0.3銭ではなく「0.3銭原則固定」なので、スプレッドだけ比較すればDMM FXの方がわずかに有利と言えるかもしれません。

スプレッドの僅かな差は、積もり積もって大きな取引コストとなりますが、FX業者の優劣は、スプレッドの差ばかりではありません。

総合力でFX業者を選ぶことが重要であり、利用業者を乗り換えたり、複数の会社を使い分けたりすることも視野に入れましょう。