FX初心者にとっては逆に初期投資を増やす要因に?「レバレッジ規制」
レバレッジは、FXの世界ではなくてはならない「道具」です。道具は便利でシーンによっては欠かせないものです。
しかし、使い方を間違えると怪我をしてしまう可能性もあります。まさに、レバレッジもそうした存在なのです。
レバレッジは、便利なあまり、弊害も出てきてしまいました。
特に初心者による過剰投資を促してしまい、破産してしまう人も増えてきたため、ついに政府からの規制が入ったのです。
ここではこのレバレッジ規制の内容と、それがFX初心者に与える影響について説明していきます。
目次
レバレッジは「てこ」のようなもの
改めて、レバレッジについて説明しておきましょう。
レバレッジとは、いわば大きなものを少ない力で動かせる「てこ」のようなものです。
「てこの原理」を使った道具には、ハサミや缶切りなどがありますが、うっかり力を入れすぎたり、誤った使い方をしたりすれば、指や手を切ってしまいます。
「レバー」を語源としているレバレッジも、同じようなものです。実際持っている資金の何倍もの力でFX取引をすることができます。
FXにおけるレバレッジとは?
具体的にはこういうことです。
FXは、ある通貨(例えば日本円)を別の通貨(例えば米ドル)に変えて、そしてまた元の通貨(日本円)に戻す取引です。
ドルを買って、そしてまた売る。あるいはドルを売って、そしてまた買い戻します。
要は「売りと買い」又は「買いと売り」がセットになって初めて取引が成立します。
話が分かりやすいように1ドルが100円であったとします。この時に1万ドルを買うとしましょう。
1万ドルは円に換算すると、10,000×100=100万円です。
これは通常の取引であり、手元に100万円が無いと取引が出来ません。この状態が「レバレッジ=1」です。
レバレッジが1(通常の売買と同じ)ならば、100万円の手元資金が無ければFXの取引が行えません。
けれども便利な道具である「レバレッジ」により、100万円よりも少ない資金で取引が可能になるのです。
例えば、レバレッジが「10」ならば必要な手元資金は、100万円÷10(レバレッジ)=10万円で済みます。
レバレッジが25ならば、100万円÷25=4万円で取引が出来ます。
つまりレバレッジは、FXトレーダーにとっては魔法の杖とも呼べるものなのです。
レバレッジ1とレバレッジ10の比較
具体的に、レバレッジ1の取引とレバレッジ10の取引で数字を入れて計算してみましょう。
レバレッジ1の取引
まずは、レバレッジ1の場合です。
1ドル100円の時に1万ドルを買ったとします。
しばらく時間が経過して、運よく1ドルが110円になった(円が安く、ドルが高くなる)としましょう。
ドルを買い戻すと1万ドル×110円=110万円になっています。
つまり10万円が儲かりました。
レバレッジ10の取引
同じ取引をレバレッジ10で行ったとします。
最終的に利益は、やはり1万ドル×110円=110万円となり、同じように10万円の利益になります。
レバレッジがいくらであっても利益の絶対額は同じなのです。
投資金額に対する利益率
しかし投資金額に対する利益率を見ると、
- レバレッジ1の時は利益率=10万円(利益)÷100万円(資金)=0.1(10%)
- レバレッジ10の時は利益率=10万円(利益)÷10万円(資金)=1.0(100%)
となるのです。
レバレッジは大きくても小さくても損得計算は「同じ」
このように手元資金が100万円であっても10万円でも、同じ額の10万円が儲かることになります。
しかし、トレンドが逆で運悪く1ドルが90円になった場合は、レバレッジ1ならば10万円の損失、レバレッジ10の時でも絶対損失額は10万円で同じです。
つまり、レバレッジは大きくても小さくても損得計算は「同じ額」になるのです。
強制ロスカットで資金を保護
レバレッジ1の場合は、損失が10万円だとしても手元資金は100万円-10万円(損失額)=90万円残っています。
そして、残った資金90万円を元手に頑張れば挽回できて、また資金を100万円に戻すことが出来ます。
一方レバレッジが10の場合は、手元資金10万円-10万円(損失)=0円となり手元資金が全て失われます。
実際の取引では「強制ロスカット」の仕組みが働きますので、たとえば50%カットならば、証拠金が50%になるとロスカットが働き、投資家の意思とは関係なく強制的に決済されますから、10万円の証拠金では5万円の損失が出た時点で強制終了されます。
ですから5万円は手元に残ることになり「証拠金が全て失われる」ことはありません。この「強制ロスカット」も取引のリスクを下げる要因といえるでしょう。
大きいレバレッジでもリスクは低減できる
FXは先ほど述べた「てこ」を利用した道具を使うことと同じです。上手く使えば便利なのですが、間違って使ってしまうと怪我をします。
では、大きなレバレッジはそこまで危険なのでしょうか。
実は、使い方を選べばリスクを下げることも可能です。
FXでは通貨を買ってポジションをキープする時間は、投資家により千差万別です。
取引が数秒の超短期取引もあれば、1年~年間長期で保持する取引もあります。
大きいレバレッジではチャンスも大きいですが、リスクが大きいので、取引時間を短縮することでリスクを管理します(もちろん、時間を短縮することでチャンスも小さくなります)。
また、取引通貨量を減らす事でもリスクは低減できます。
1万通貨ではなく、1,000通貨や100通貨で取引するのもいいでしょう。
レバレッジが大きくても取扱量を下げれば、その分リスクは下がります。
レバレッジ規制で初期投資はより必要に
2011年8月に、FXのレバレッジは25倍までと制限されました。
それまでは400倍の取引も可能だったので、確かにリスクは軽減しています。
ただ、「強制ロスカット」の存在には気を付けなければなりません。
「強制ロスカット」は資金を守ってくれますが、それは最低証拠金を収めるからです。
25倍まで下がったことで、最低保証金の額が逆に上がってしまいました。
たとえば、資金10万円で米ドルが100円のときに1万通貨分の買いをした場合、400倍と25倍では以下のように証拠金の額が違ってきます。
- レバレッジ400倍の場合(資金10万円、米ドル100円)
- 最低証拠金:1,982円
- 強制ロスカット値(証拠金維持率100%):90.199円
- レバレッジ25倍の場合(資金10万円、米ドル100円)
- 最低証拠金:31,712円
- 強制ロスカット値(証拠金維持率100%):93.172円