本来、「株安」が進めば、その国の通貨も「売り」が進むのが、マーケットの世界での常識です。
「株安」は、その国に対する不安の表れであり、不安が強まれば当然その国の通貨に対する信頼度も下がります。
しかし、「日本株と円」の関係に限っては、この常識をそのまま当てはめることはできません。
むしろ、世界の常識とは真逆の動きをしています。
ここでは、「日本株と円の特殊な関係」と、それを理解することのメリットについて、解説していきましょう。
本来、「株安」が進めば、その国の通貨も「売り」が進むのが、マーケットの世界での常識です。
「株安」は、その国に対する不安の表れであり、不安が強まれば当然その国の通貨に対する信頼度も下がります。
しかし、「日本株と円」の関係に限っては、この常識をそのまま当てはめることはできません。
むしろ、世界の常識とは真逆の動きをしています。
ここでは、「日本株と円の特殊な関係」と、それを理解することのメリットについて、解説していきましょう。
その前に日本以外の諸外国の株と通貨の関係を見ますと、これは先ほど述べた常識の通りであり、当該国の株が売られると、その国の通貨も売られるという関係になっています。
欧州各国やオーストラリア等の過去の実績を見ますと、「常識通り」の動きをします。
日本だけ、株と為替レートの関係が特殊なのです。
この理由については、よく
「日本株が上昇するときにはトレーダーが円を売って日本株を買い、日本株が下降するときには日本株を売って円にするため」
といった解説を見ますが、これだけだとわかりづらいと思います。
補足すると、こういうことです。
現在の日本の株式マーケットでは、外国人投資家からの資金の流入が大きい状況です。
日本株の約30%は海外投資家が保有し、日々の株取引の60%以上が海外投資家で占められています。
ところが、外国人投資家はほとんどが日本国外で生活をし、ふだんは自国の通貨を持っています。
日本株を購入するには日本円が必要ですので、自国通貨を売って日本円を買うわけです。
そして、為替変動で著しくマーケットが動いた場合のリスクまで考慮する必要があるため、日本円購入と同時に円売りを仕掛け、日本円を購入した分へのリスクヘッジを行います。
逆に、日本株を売却する時には、ヘッジした通貨の円売りポジションが不要となるため、円売りポジションを解消し円買いへと移行させることになります。
そうなると、マーケット全体では「株価が上昇時には円売り(円安)が進み、下降時には円買い(円高)が進む」ということになるわけです。
こうした株の動きと円の関係については、先述したように、いろいろなメディアでよく見かけます。
しかし、もう少し深く考えないと本質を外して理解してしまう可能性もあります。
なぜならば、株式投資を行うとき「為替差額を防ぐための両建て」をする動きが増えると、市場全体で考えれば「株を買うための円買い」と「リスクヘッジのための円売り」でプラマイゼロになってしまうと考えるのが普通だからです。
つまり、株の動きが円相場に影響するとは考えにくいわけです。
しかし、実際には「株価が上昇時には円売り(円安)が進み、下降時には円買い(円高)が進む」という現象が起きています。どういうことなのでしょうか?
この矛盾を理解するためのカギを握っているのが「レバレッジ」です。
株のマーケットでも、FXと同じように、少額で大量の株が購入できる「レバレッジをかけた取引」が行われています。
レバレッジをかけるには、必ず“見せ金”としての役割を果たす「証拠金」が必要ですが、この証拠金の存在が、株と円相場の関係に大きな影響をおよぼしています。
たとえば、日本株が下降していく局面では、急速な動きがよく見られます。
株が下がれば下がるほど円の買いも進み、急に円高が進むわけですが、なぜなのかはもうおわかりだと思います。
そうです。
レバレッジをかけた取引を行っている海外投資家たちが、日本株が下がっていく様子を見て証拠金の上限に不安を感じているのです。
強制ロスカットにならないよう、証拠金の積み増しを行うため、円買いを起こすわけです。
反対に、株式投資中に株価が上昇してくれば、大きな証拠金は必要ないため、崩して円を売ってしまいます。
なぜならば、円は低金利通貨の代表的な存在だからです。保有していても“うまみ”はまったくありませんので、どんどん売っていきます。
すると「日本株が上昇すると円安に、日本株が下降すると円高に」といった特殊な推移が生まれるわけです。
なぜ、「日本株と円の関係が特殊」なのか、理解できたでしょうか。
もう一度まとめると、現在は以下のような法則のもと、マーケットが動いています。
この株の世界では非常識ともいえる法則ですが、これが、現在の日本市場においては、もはやセオリーとなっています。
ということは、どのようなことが言えるのでしょうか。
そうです。セオリーがあるということは、「勝ち」を掴むことのできるポイントがあるということにほかなりません。
つまり、このセオリーを把握しておくと、FXで勝つチャンスが大きく広がるわけです。
外貨を取り扱うFX取引において、株の流れを知るのは非常に重要なことです。
言い換えれば、株の流れを読み切ることで、FX取引を有利に運ぶことができます。
少なくとも、「日本株と円の特殊な関係」を知っていることは、「日本株が変動するときの勝率の高い戦略」を手に入れたことにつながります。
FX取引においては、「堅実な手」をひとつでも多く持つことが勝ち負けを左右しますので、ぜひ覚えておいてください。
なお、このセオリーは未来永劫通用するものではありません。
マーケットの情勢が変わって円のステータスが変わったり、海外の投資家が著しく減少したりした場合には、また異なったセオリーが生まれてきます。
少なくとも、海外投資家がどのくらいを占めているのかといった情報は、チェックしておいたほうがいいでしょう。
そうした情報は、随時発表される経済指標で得ることができます。
そうしてトレンドの移り変わりに敏感になれば、折々の適切な立ち回り方がわかるようになり、その時点のマーケットの動きに取り残されることもなくなるでしょう。