高速取引という取引方法が最近話題になっています。
高速取引は、高頻度取引とも呼ばれて、実際に市場の7割を占めるというデータもあります。
この取引は、実際2010年に東証アローヘッドと呼ばれる売買システムが導入されるようになってからです。
一般投資家にFXが解禁されて参入しやすくなりましたが、この高速取引の存在によってプロの投資家と開きがあるのでしょうか?
ここでは、「マーケットの高速化」という部分に注目してみたいと思います。
高速取引という取引方法が最近話題になっています。
高速取引は、高頻度取引とも呼ばれて、実際に市場の7割を占めるというデータもあります。
この取引は、実際2010年に東証アローヘッドと呼ばれる売買システムが導入されるようになってからです。
一般投資家にFXが解禁されて参入しやすくなりましたが、この高速取引の存在によってプロの投資家と開きがあるのでしょうか?
ここでは、「マーケットの高速化」という部分に注目してみたいと思います。
世の中にパソコンが普及してから、まだ何十年と経っているわけではありません。
しかし、振り返るとその進化の速度は驚くべきレベルです。
たった30年強で、インターネット回線もダイヤルアップからADSLを経て光回線となり、以前とは比べ物にならないほど情報伝達速度が高速化しました。
パソコン自体の性能も格段にアップし、個人でも高性能な製品を持っているのが当たり前の時代になっています。
そうした状況に伴って、FXの取引も超高速化しています。
実際、個人投資家が自分のパソコンを使っての通貨の取引をできるような時代である事が、すでにネットワークの大きな進歩によるものなのですが、今現在においても世界中のトレーダーはシステムをさらに高速化させる事を考えています。
海外では、コロケーションと呼ばれる取引所サーバーの隣接施設に、機関投資家のサーバーを設置し、情報伝達時間をさらに短縮させるサービスを行っているところもあるほどです。
なぜ、トレーダーはそこまで高速化にこだわるのでしょうか。
それはシステムを高速化させることで、以下のメリットがあるからです。
いずれも、経験豊富なトレーダーならではの悩みにつながっています。
一見すると、高速化はメリットとしか思えないのではないでしょうか。
実際、どんどん取引は高速化され、現在はコンピュータを使ったアルゴリズム取引が主流となっています。
東証は2010年に、1000分の1秒単位で処理ができる「東証アローヘッド」と呼ばれる売買システムを導入しました。
2015年9月にはさらにリニューアルし、2000分の1秒単位の処理能力を有しています。
しかし、アルゴリズム取引は、誤作動が生じる可能性もあります。アメリカでは、45分間で340億円もの損失が出た事例もあります。
このように投資家自身がまったく想定していないエラーで大きな損失が出てしまうリスクが顕在化したのです。
そのため、現在海外では、規制の動きも強まっています。日本では、東証アローヘッドが安定していることもあって規制を求める声は上がっていませんが、一方でリスクヘッジのための環境も整っていません。
つまり、想定以上のトラブルに見舞われるリスクを抱えながら、高速化路線を突き進んでいる状況です。
また、取引の高速化は、思いもよらない犯罪も生み出しています。
被害がとてつもない規模になってしまうため、個人投資家にも大きな影響を及ぼすのが厄介なところです。
一例として、2010年5月6日に起こったフラッシュ・クラッシュ(瞬間暴落)を紹介しましょう。
わずか数分の間にダウの平均株価が一気に1000ドル近く下落し、ドル円は一晩で8円下落。1ドル88円になったことが大きな話題になりました。
そのときの衝撃的なチャートがこちらです。
[図1:フラッシュ・クラッシュ時のドル円1時間足チャート]
このフラッシュ・クラッシュは、自殺者も出すほどの大パニックを引き起こしました。
当時は原因不明とされていたものの、5年後の2015年に急展開。イギリス人トレーダーが逮捕されました。
価格を押し下げ、大きな売り注文を成立させる自動プログラムを使って巨額の利益を得ていたそうです。
それはともかく、この事件でもっとも恐ろしいのは、考えられない速度で値がついていたことです。
フラッシュ・クラッシュが起こった数分間に、1ドルから60ドルまで値がつきましたが、そこに要した時間はなんと1秒の10分の1!
普通の人間ならば到底反応できない速度です。
また、1ドルから60ドルへ1秒の10分の1で値動きするということは、買いから売りまで0.1秒で行えば、10万ドルが60万ドルになることを意味しています。
つまり、1ドル100円だとしたら、100万円が0.1秒で6000万円になるわけです。
「そんなに儲かるの!」と思う人もいるでしょう。
でも、もし売りを入れていたら、6000万円が100万円になってしまうわけです。自殺者が出るのも無理はありません。
フラッシュ・クラッシュは、あるトレーダーによる犯罪でしたが、それによって巻き起こされた事態は恐ろしいという言葉では片付けられないレベルです。
先ほど、取引所サーバーの近くに機関投資家のサーバーを設置するサービスがある、と述べましたが、そこまでしてコンマ数秒のアドバンテージを得ようとする理由がわかるのではないでしょうか。
もはや、初心者はもちろん、専業でない個人投資家が互角に戦えるレベルではないのです。
では、FX初心者は、超高速化するマーケットでどのように立ち回るべきでしょうか。
答えはひとつしかありません。何をおいてもリスク管理をしておくことです。
予期できない暴騰・暴落に対応するためには、損切りポイント(ストップ)をしっかり作ることから始めましょう。
実際は、損切り直後に相場が反転することもよくありますので、ストレスの溜まる展開を覚悟しておく必要があります。
「FXは楽しみだから、そこまでしたくない」
「ストレスが溜まるくらいなら負けたほうがまし」
そう思う人も当然いるでしょう。しかし、資金がなくなってしまえば取引自体ができなくなってしまうのです。
それどころか、生活が立ち行かなくなる可能性だってあります。
「自己資産の損失を可能な限り抑える」は、高速化するFXマーケットで生き抜くうえで、絶対のセオリーといっても過言ではありません。
フラッシュ・クラッシュ事件は日本時間の深夜に発生しました。
FXマーケットは世界中で動いているため、同じように寝ていて気づかない間に、大損失を被ってしまう可能性も十分あります。
テクノロジーが進化し続け、高速化が進んでいるから今は、そうした事態に遭うのを防ぐためにも、FXは「まず防御を固めてから」取引を行うべきではないでしょうか。