金融商品には、一攫千金という言葉が先行する傾向があります。
「初心者でも簡単に儲かる」という、実体を伴わないキャッチコピーに惑わされ、取引を開始したけれども、あっという間に自己資金が半減してしまった、という話は昔から後を絶ちません。
投資家の心理を加熱させるような取引をどんどん開発する業者や、悪質な業者による被害が出るのも金融取引の特徴です。
バイナリーオプションも例外ではありません。
二者択一で予想するという、ともすればギャンブルにも似た仕組みからさまざまな問題が起こり、2013年に金融庁が「バイナリーオプション規制」を施行しました。
ここでは、その規制の内容と、「取引の安全性向上とリスクの縮小」について紹介します。
法規制に至った背景には、海外悪徳業者の存在が
バイナリーオプションは、まだ歴史の浅い金融商品です。イギリスで2003年に始まり、日本には2009年に持ち込まれました。
為替レートが「上がる」か「下がる」かを予想するだけのシンプルな仕組みで、すぐに人気を得ましたが、当初からトラブルも多発していました。
それは、金融庁が行った注意喚起からもわかります。
日本にバイナリーオプションが上陸した直後の2009年7月31日付けで、ホームページ上に「無登録の海外所在業者による勧誘にご注意ください」とした文書を掲載しています。
この文書では、「登録を受けていない海外所在業者」によるFX取引や、バイナリーオプションのトラブルを挙げています。
このトラブルは、「証拠金の保全に応じない」「バイナリーオプション配当をしない」といった被害を受けた人からの相談件数が増えたことによるものです。
ちなみに、日本で登録を受けた業者に預けた証拠金は保全されています。連絡が取れない海外業者への注意が特に必要です。
金融庁のホームページには、登録を受けた業者とともに海外の悪質業者の名簿を公開しており、これからFXやバイナリーオプション取引を行う人が確認できるようになっています。
「バイナリーオプション規制」による変更点
投資家を保護するため、金融庁は随時金融商品を監視し、業界に自主規制を促しています。
バイナリーオプションも、2013年8月に法改正が行われ、取引内容に規制がかけられました。
過度な取引の抑制のために取引回数や時間を設定したこと、途中のレンジ解消もできるようにしたのが大きな変更点です。
以下に、その内容をまとめました。
(1)
それまでは、取引開始から清算まで1分や5分といった短時間のトレードがありましたが、取引開始から清算までの時間が2時間以上に規制されました。
同じ銘柄でも、1日に何十回も取引することが可能でしたが、12回までに規制されたことになります。
(2)
取引は、判定時刻の2分前など直前まで可能となりました。
(3)
原則として、価格は変動制になり、取引開始時点で決定されることとなりました。それまであった固定制がなくなりました。
(4)
価格は変動制になりましたが、払い戻し額は一定に固定されました。
(5)
ポジションを解消しての転売が可能となりました。
つまり、予定時間前に取引のキャンセルができるようになり、リスクを回避する自己判断の機会が増えたことになります。
(6)
価格表示は、通常のFXと同じように2WAY方式による価格提示となりました。
取引をキャンセルする際は、ポジションを解消するための価格を提示する必要があります。ただし、スリッページもあります。
(7)
業者による総取り(レンジ外)が禁止されました。
これによって、「HIGH(ハイ)」を選んでも「LOW(ロー)」を選んでもどちらも「負け」となり、FX業者が総取りするということがなくなりました。
(※「レンジ」「HIGH(ハイ)」「LOW(ロー)」の詳細については、次の項目で説明します)
(8)
口座開設時に、FXトレーダーに必要な知識が備わっているかを測定するテストが行われるようになりました。
正解率が8割に満たない場合は口座開設ができません。再テストは翌日受けることができます。
覚えておきたいバイナリーオプションの取引ルール
ここで、改めてバイナリーオプションの取引ルールを説明しておきましょう。
業者によって取引ルールは異なりますが、以下の内容を理解しておけば対応できます。
最も一般的な「ハイ&ロー」
多くのバイナリーオプション業者が採用している、もっとも一般的な取引ルールが「ハイ&ロー」です。
[図1:ハイ&ロー]
上の図を見てください。
中央の青い線が判定ラインです。判定時間のレートが、注文受付時間よりも
- 「ハイ(上がる)」か「ロー(下がる)」
かのどちらかを予想します。
予想が当たれば、払い戻しがありますが、予想が外れた場合は、払い戻しがありません。
いわば宝くじのような感覚です。
より精度の高い予想が必要な「ラダー」
ハイ&ローがシンプルな二者択一方式であるのに対し、もう少し細かい予想が必要となるのが「ラダー」です。
どのくらい「上がる」「下がる」のかを予想する取引ルールです。
[図2:ラダー]
「ラダー」では、判定ラインが複数設けられています。判定ラインを選択したあとに、そのラインより上か下かを予想しなければなりません。
- 「Aラインより上がる」
- 「AラインとBラインの間」
- 「BラインとCラインの間」
- 「Cラインより下がる」
といった具合です。
また、判定ラインが現状のレートよりも遠いほど、払い戻し率が高くなるのも特徴です。
上の図の場合、「Aラインより上がる」と予想すれば払い戻し率が高くなりますが、「Aラインより下がる」とだけ予想するとBラインから下がすべて含まれるため、払い戻し率が低くなります。
予想の範囲が広いため、的中率が高まるからです。
判定ラインへ到達すれば良い「ワンタッチ」
「上がる」「下がる」を予想するのではないバイナリーオプションもあります。
「ワンタッチ」は、判定ラインの価格に「到達する」「到達しない」のみを予想します。
[図3:ワンタッチ]
判定時間までに1回でも判定ラインに到達すれば、払い戻しがあります。
1回も到達しなければ、払い戻しはありません。
判定時間のときに到達しているかどうかではありませんので、注意してください。
値動きが大きい場合は難しい取引ルールですが、逆に穏やかな値動きが予想される場合、「到達しない」にしておくことで、取引を有利に運ぶことができます。
範囲内で「収まるか」を予想する「レンジ」
判定ラインの範囲内で、値動きが「収まる」「収まらない」を予想するのが「レンジ」です。
[図4:レンジ]
「ワンタッチ」と似ていますが、時間内の値動きの展開を予想しなければなりません。
そのため、値動きが激しいとき、逆に落ち着いているときに選びたい取引ルールです。
高度な先読みが要求されますので、初心者のうちは難しいかもしれません。
まとめ
「バイナリーオプション規制」によって、一度に大きな利益が得られる可能性は低くなりましたが、リスクも減少しました。
レートの先を読むスキルが鍛えられるので、勉強のつもりで低額の取引に臨むのが、賢い選択と言えるでしょう。
慣れてくれば、通常のFX取引をしながら、「このくらい上がりそう(下がりそう)」と確信したときに、バイナリーオプションを併用することもできるようになるのではないでしょうか。