FX取引における「ナンピン」と「塩漬け」は危険?
入門書や関連ウェブサイトで必ず指摘されているように、FX取引においては、「損切り」が何よりも大切です。
もちろん、資金管理という意味合いの中に収めるなら、損切りだけが大切ではありませんが、大切なのはトレンドを見誤ったら損切りをして、仕切り直しをして再びトレードできるタイミングを探ることです。
相場の検証をする以前に、この繰り返しがトレードの常であることを覚えておきましょう。
そして、「損切り」以外に、FX取引で頻出するキーワードが、「ナンピン」と「塩漬け」です。
ここでは、この2つについて説明しましょう。
目次
リスクヘッジを狙って損失を増やす可能性がある「ナンピン」
ナンピンとは、漢字で「難平」と書きます。
ポジションが損失している時、同じ方向へもう一つポジションを持つ方法です。いわゆる「ナンピン買い」とも言われます。
このナンピンは、買いの平均コストを下げることができます。意味が解らない方もいるでしょうが、具体的な例を考えてみましょう。
例えば、ドル高円安へ動くと予想し、1ドル110円で買ったとしましょう。
しかし、どんどん下がってしまいました。そこで、104円になったときに再び買います。そうすると買いの平均コストは107円になるわけです。
[図1:「ナンピン」の仕組みとリスク]
つまり、相場が107円まで戻ったら、やっと含み損を取り返せるということです。
初心者はナンピンはしてはいけない
相場が安くなっているとどうしても欲が出てしまいます。
実際に、投資経験が豊富な方でもナンピンをする方はいます。
確かに平均単価を下げることができるので、利益が出やすくなりますが、それは相場が戻るという前提のもとの考えです。
経験者であれば、ある程度相場の流れを読むこともできるかもしれませんが、初心者には無理です。
さらに、相場が下がったときには、買い増しした分も損失になってしまうことを考えておきましょう。
図でもわかりますが、ドツボにハマると、かなりの損失を負うことになります。
「下手なナンピン大けがのもと」という投資の格言にあるように、ナンピンにはとてもリスクがあります。
少なくとも、初心者のうちは控えておいたほうが無難でしょう。
神頼みでしかない「塩漬け」
「塩漬け」とは、簡単に言えば損切りをしないことです。チャートを見つめて、ただ上がることを祈り続けるわけです。
「損切り」がうまくできない初心者のうちは、ついやりがちな手法ですが、神頼みに近く、実際は損失が膨らんでいくのを黙って見守っている状態になることがほとんどです。
相場のトレンドを読むのは難しい
そもそも、相場のトレンドは、一度動き出したらなかなか戻りません。確率がゼロなわけではありませんが、相場が急に戻ったりしない限り、負けを取り戻すのは非常に難しいと言えるでしょう。
例えば、民主党政権時代、1ドル80円台から90円台が長く続き、一時は70円台にまで突入しました。
しかし、政権交代をした現在は100円や104円ほどに収まり、たまに100円を割るだけで70円台になることは、ほとんどなくなりました。
もし、70円台で売りポジションを持っていたとして、含み損を解消するまで持つことができるでしょうか。
極端な例ですが、損切りをしないで「塩漬け」にし、持ち続けるということは意味が薄いことなのです。
トレンドの終わりや、転換点が読めるならば効果的でしょうが、それができる人はほとんどいません。
むしろ、「トレンドの動きは読めないものだ」と考えるべきです。
スワップポイントを狙う場合のみ「塩漬け」は効果的
「塩漬け」が効果を発揮するのは、長期保有することでスワップポイントを狙う場合だけです。
スワップポイントを狙うとは、ポジションを持ち続けることで、金利が発生し、プラスになることを期待することを言います。
スイスショック(2015年1月)が起こる前のスイスフランは、スワップポイントを狙うのに最適でした。
動きが少ない安全な通貨として定評があったからです。
このように、十分に金利差益を得られる状況ならば、「塩漬け」も有効となりますが、スワップポイントがマイナスで金利差を支払っている状況では、持っている意味はほとんどありません。
また、安全に見えたスイスフランも、結局はスイスショックに見舞われました。
たとえどんなに安全そうに見える通貨でも、常に損切りは選択しに入れておく必要があるのです。
結局のところ、「ナンピン」「塩漬け」は、非常にリスクが高い方法です。
相当の自信がない限り、控えた方がいいのではないでしょうか。