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株価だけでなくFXの値動きにも十分通用する「ダウ理論」

金融ジャーナリストとして知られたチャールズ・ダウ(1851~1902)は、米国が西部開拓に沸いた時代に活躍した人物です。

彼の名前は、「ダウ平均」という言葉でも知られていますが、のちにチャールズ・ダウ、エドワード・ジョーンズ、チャールズ・バーグストレッサーの3人が出資して、ニューヨーク証券取引所の近接地に設立したのがダウ・ジョーンズ社です。

ここでは、株だけでなくFXの値動きにも通用すると言われているダウ理論について紹介します。

目次

チャート分析は今でも有効とされているダウ理論が使える理由

チャールズ・ダウは、体系的なチャート分析論を構築して、冒頭の3名で金融専門紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』を創刊しました。

また、1893年に、現在も使われているダウ・ジョーンズ工業株平均株価を開発しました。

1.為替レートはすべての情報を織り込んだものである

為替レートは、ファンダメンタル分析でもわかるように、その国の経済状態や金利、政府要人がどのように発言したか、中央銀行の金融政策などによっても日々変動します。

それだけでなく、投資家がその日に利益を確定したり、損切りするといった投資家の事情によっても左右されるものです。

このように、色々な情報が市場に影響を与え、すべての情報は為替レートの値動きに反映されるようになります。

つまり、為替レートの未来を予測するには、値動きを見たら良いということになります。

そして、その為替の動きを描いたものがチャートという訳です。

チャールズ・ダウは、市場は全ての情報を織り込んでいるという考え方をしていますが、この考え方が元になり、チャート分析が金融投資の重要ツールである、という理論的根拠になりました。

そして、その考え方がテクニカル分析の源になりました。

例えば、為替レートは必ずしもファンダメンタルズの通りに動かないことも多いはずです。

取引を少なからず体験している方ならわかる話でしょう。

2.為替レートのトレンドには3つの波動がある

このようにダウの基本的理論は、為替レートの値動きは、全てトレンドによって支配されているとしています。

これは、トレンドに乗って取引を行うという現在の考え方と同様ですが、ダウはその現代の基本的な取引の基礎となりました。

そして、以下の3つがあると考えました。

  • 1年から数年程度の長期メイントレンドがある
  • 数週間から数か月の中期トレンドがある
  • 1時間から1か月程度の短期トレンドがある

このようにトレンドを3つに分けて考えていました。

特に中期トレンドに関しては、長期のメイントレンドと比較すると、逆の方向に対して調整局面を示して、修正幅としては33~66%になると考えています。

これは、いわゆる三分の一押し、三分の二戻しと同じことです。

現代ならこの意味がわかるでしょうが、長期下降トレンドが発生していると、数か月程度には上昇が起こり、中期修正のトレンドが何度も発生する局面があります。

このような場合に、ドル/円の長期の下降トレンドに対して、中期トレンドの戻り幅を計算してみると、代替が50~60%程度の戻しになっていることがあります。

ただし、この中期修正のトレンドが起こる期間はわかりませんが(確定的なことが言えない、まちまちであるという意味)、長期的下降トレンドが発生していたとしても、その期間には何度か修正しようとして、上昇するという動きがあるということがわかります。

トレンドには3つの局面があり、継続や転換は近接する高値と安値に注目する

為替レートにはすべての情報を織り込んでおり、トレンドには3つの波動があると考えました。

また、そのトレンドに関して言うと3つの局面があると考えました。

3.トレンドには3つの局面があると考えた理由

トレンドに3つの波動があると考えたチャールズ・ダウは、そのトレンドに3つの局面がある、ということも指摘しました。

それは、投資家の事情から起こると考え、以下のような状態を想定していました。

①市場全体の考え方に反して、先鋭的な投資家が買い集めを行う時期があるということ。

これは、第一段階で起こり、それに応じて市場は追随して急激な値動きが起こります。

②値動きが生じた時にチャート分析を行った投資家が大勢売り買いするのが第二段階です。

③その次に投機的売買が起こるのが第三段階です。

ある種のバブル状態が起こり、①で買いをした投資家はここで売り抜け、トレンドが終焉に向かうようになります。

このような動きは現在でも多く起こり、現在では当たり前のように起こっていることでも、ダウはその当時トレンドが3つの局面を迎え、上昇と下降の両方で値動きするということを予想していたのです。

4.トレンドは明らかな終わりのシグナルが発生するまで継続する理由

このように3つの局面について指摘していましたが、実はダウ理論では、トレンドの存在は、市場のノイズ的な一時的な価格変動の影響を超えて存在すると見なしていました。

現在でも、この為替レートの変動は、明らかなトレンドの転換によるものなのか、ノイズなのかはわかりにくいところです。

しかし、ダウ理論はそれを近くの高値・安値を重視しました。

市場のノイズかどうかわからないのに、近接の高値や安値を見るのは、一見間違っているように思えますが、実はそうではありません。

海の波や水面を見た時、それが満ち潮か引き潮なのかわからない場合を想定してみてください。

よく観察していると、波が次々とあるポイントを超えてくると満ち潮、逆に以前到達したポイントに届かないのであれば引き潮、と判断できるでしょう。

これと同じように、上昇トレンド、下降トレンドなのかを考える場合、一時的なものではなく、次々に上回る、下回ることを見ていくとわかります。

あたかも満ち潮、引き潮と同じように考えるとわかります。

そして、トレンドの継続と転換の条件に関して、以下のように定義付けしました。

  • 上昇トレンド:高値更新、安値が更新されないのが上昇トレンド。為替レートが近い安値を下回らずに、近い高値を上回って上昇続ける状態
  • 下降トレンド:高値更新がされずに、安値更新されるのが下降トレンド。為替レートが近い安値を下回り、近い高値を上回らずに下降を続ける状態
  • トレンドが転換するとき:近い高値・安値の更新が逆転した時

ダウ理論では、このように3つのトレンドについて考えました。

しかし、横ばい(持合い)相場をラインと呼んで、このようなトレンドの3つの局面において、「3.トレンドには3つの局面があると考えた理由」でご紹介したように、①投資家が買い集める、③投資家が売り抜ける、といったトレンドが初期段階か、末期段階かが起こると想定しました。

これは、現在でも高値持合いの下放れ(トレンド終焉または転換)、底値持合いの上放れ(トレンドの転換)、といったレンジ相場でも使われています。

このようにダウ理論は、現在でも、トレンドとの関連性を判断するのに使える理論なのです。

世界的な投資家の傾向でいうと、日本の投資家は、逆張りが好きだと思われています。

それは、トレンドフォローから考えても、直近の値動きに関して逆張りや戻り売りが推奨されているからです。

一方で欧米諸国の投資家の傾向は、いわゆる強気の順張りが一般的です。

高いから買い、安いから売るという考え方ですが、その理由の根底はこのダウ理論があるからだと言われています。

それは、ダウ理論が直近の高値を上回ると上昇トレンド継続の条件としているので、高値を更新した場合は明らかな買いのシグナルになると判断するからです。

この4.のコラム内でも紹介した通り、高いものをさらに高く買うという強気順張りという発想につながるのです。

ダウ理論では、直近高値を上回ることが上昇トレンド継続の条件ですから、高値更新は明確な買いシグナルになります。

だからこそ、「高いものをさらに高く買う」という強気順張りの発想が生まれるわけです。

また、ダウ理論は以下のような部分にも注目していました。

5.トレンドは複数の指標で確認する必要がある

これは今ならわかりますが、単体指標だけでなく、指標の組み合わせを使ってより精度を上げる方法です。

また、以下の事も指摘しています。

6.トレンドは出来高によって確認できる

この意味は、出来高がトレンドの方向に沿って増減すると考えます。

上昇トレンドは、出来高が増加すれば価格も上昇して、強い上昇トレンドになります。

減少すれば価格も下落し、弱い上昇トレンドになります。

下落トレンドでは、出来高が増加すれば価格も下落、強い下落トレンドになり、出来高が減少すれば価格も上昇し、弱い下落トレンドとなります。

ただし、出来高に関しては、FXには関係ないという意見もあります。

NYダウと呼ばれる株価指数は、工業株平均を指し、それとは別に「鉄道株平均」も考案されました。

株式投資であれば出来高という考え方もありでしょうが、FXでは使いにくいでしょう。

このようにFXは株投資以上に、全世界の投資家が参加している取引です。

そして、欧米の投資家がどのように投資をしているかを知るには非常に良い理論だと思います。

また、複数の時間足や複数の通貨(ドル/円なら、関係のあるユーロ/ドル、ユーロ/円など)を確認したり方向性をチェックすることに使えるでしょう。

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