「相場の値動きには一定のサイクルがある」というエリオット波動論
エリオット波動論は欧米をはじめ世界中で使われている分析法です。
フィボナッチと組み合わせて値動きの予想を行い、先回りしてエントリーすることができる考え方です。
この理論は、法則に従い同じパターンを何度も繰り返すという考え方で、相場は大衆心理が渦巻く場所で、その結果値動きに法則が生まれると言われています。
19世紀にラフル・ネルソン・エリオットによって発表された理論は相場の上げ下げを「波動」と呼びました。
コンピューターが無い時代に発見されたこの理論はいまだに世界中のトレーダーに信奉者がいます。
目次
相場の「上昇5波・下降3派」という周期性について
チャールズ・ダウより少し遅れて米国で活躍した株式アナリストが「エリオット」です。
この理論は戦後60年代になって再評価されました。相場の動きだけでなく1000年単位の周期まで想定しています。
このエリオット波動論は相場にはサイクルがあり、値動きはリズムがあるということです。
エリオットは過去のダウ平均を分析して、値動きに上昇と下降の波という規則性があることを発見しました。これを「上昇5波・下降3派」と呼んでいます。
この「上昇5波・下降3派」は、上昇相場において上げ・下げ・上げ・下げ・上げという連続5波で成り立ち、その後下げ・上げ・下げという連続3派で下降するという考え方です。
そしてそれぞれの波の中にもさらに小さい5波と3波があると考えています。別名で5波はインパルス波動、3波をコレクティブ波動と呼んでいます。
値動きの周期には様々なものがあり、サイクルという大きな波動の波一つにもプライマリーと呼ばれる小さい波があり、その細部にもインターミディエートという小波動があるという入れ子細工のような構造だと考えられています。
中でもミレニアムサイクル(1000年周期)は、ローマ帝国の滅亡から産業革命の勃興までを入れた壮大なものです。
どうしてこのような昔の話をしているかというと、この理論がただの予想でないことが後に判明するからです。
というのも1929年の世界大恐慌、1987年のブラックマンデー大暴落を的中させ、マーケットの注目を浴びるようになりました。
また、ITバブル、サブプライム機器の株価や為替、債券の全てでも言えることです。FXは株と違うので一方の通貨が上昇すればもう一方の通貨は下降しています。
そのため下降トレンドに「下降5波・上昇3波」が見られます。
エクステンション
上昇する5波には、それぞれ特徴があります。
- 第1波-じわじわと動き、徐々に方向性が明らかになります
- 第2波-第1波を打ち消す反対方向に強く動き、売買高低下で収束。(折れる)
- 第3波-もっと強く長い動きで上昇。5波のなあでは最大値幅に動くことが多い。
- 第4波-乱高下が続いて複雑な動きで高値持ち合いになることも。
- 第5波-スピードと勢いがある急騰傾向が多い
<エリオット波動のエクステンション-第1・3・5波の1つが長くなったケースを指す>
上記のように上昇5波・下降3波でも形が多少崩れている、波の数が違うということもあります。
そして、これらをエクステンション(延長)と呼んでいます。上昇5波中に第3波・第5波が複数の波になることや延長しやすいと見られています。
また、特徴的なのはこの5波の中でエクステンションが起きるのは一つの波だけです。
そして上昇5波の原則としては、以下のことが言えます。
- 第1・3・5波の上昇中で、第3波が最も短くなることはない
- 第1波の上昇を打ち消すような完全な下落をする第2波はない
- 第4波の下落が第1波の高値を下回ることはない
<エリオット波動の3原則>
またエリオット波動論の上昇5波・下降3波とフィボナッチ数列とは関連性が度々指摘されてきました。
3と5の和の8はフィボナッチ数列に登場します。エリオット波動論を分析に使う場合、フィボナッチも併用するのが一般的です。
エリオット波動論とフィボナッチ数列の関係性
フィボナッチ数列はイタリアの数学者が発見した数列です。黄金比などもこの数列から算出されます。
この数列は、直前の数値を割り算すると最終的に限りなく1.618に近づく性質があります。黄金比の数値は1:1.61に一致します。
これをFXの世界でも使い、目標となる値幅や日柄をフィボナッチ比率に当てはめていくようにします。
具体的には23.6%、38.2%、50%、61.8%、76.4%、123.6%、138.2%、161.8%が相場の分析に使われます(上昇・下降率にこの数値を当てはめる)。
フィボナッチについては、別記事で詳しく解説していますのでそちらをご覧頂き、ここではエリオット波動論との関係性について解説します。
フィボナッチ比率を使うには相場の周期を理解します。
ここでエリオット波動論が出てくるのですが、先ほど説明した「上昇5波・下降3派」の8つの波で1つの周期を形成しています。
これらが反復を繰り返します。エリオット波動論との親和性が良い理由の1つがフィボナッチ比率は数学的基礎にされていると言われているからです。
実は上昇5波と下降3波の動きは0.618の黄金比率の関係であり、上昇5波が完成して下降3波になる時(上昇しすぎてもとに戻る動きになる時)は上昇5波の0.618倍になると考えられているからです。
FXは株と違うのが、この一方の上昇はもう一方の下降を意味するので逆の「下降5波・上昇3波」もありうるのです。
<5つの波動とフィボナッチ比率を見てみる>
上記の図は、5つの波動の特徴にフィボナッチ比率を照らし合わせたものです。
きっちりとフィボナッチ比率の中に当てはめることができます。
- 第1波-動きは鈍いのですが、押し目買いを探るポイントになる
- 第2波-第1波を打ち消す強い抵抗はあるが、50%、8%付近で止まる場合が多い
- 第3波-5波の中で最も大きく値動きが変動する。第1波の168%の上昇率が多い、それを超える場合は200%、268%もある
- 第4波-複雑だが横ばいになることが多い。第3波の2%付近で止まることが多い
- 第5波-急騰することが多く、第1波から第3波の8%の上昇率が多い。
このようにフィボナッチ比率は波動論と一緒に使われることが多いのです。
そして同時にこの波動はトレーダーの心理も表すことがあります。
第1波
ファンダメンタル要因で上昇・下降した場合は、その要因がはっきりしているのでポジションを持つことが可能。
ただし、多くのトレーダーがポジションを持ち、いきなり上昇・下降となった場合は難しい場合があります。
この時点でポジションを持てるトレーダーはラッキーだと考えています。
第2波
第1波でポジションを持つと、上昇の基準がないので早めに利益確定します。したがって、急激に値が戻る動きをします。
そのために、第1波を打ち消すような動きになります。しばらく持ち合いが続くこともあります。
第3波
エリオット波動の第2波が形成されると、確実性が増したということでポジションを持つトレーダーが多くなります。
伸び率の良い波形ができます。
第4波
第3波でポジションを持ったトレーダーがそのままの場合、持ち合いが続きます。
耐えきれずに手放すこともあります。
第5波
第4波のまま移動平均線に近づくことで押し目買いポイントになり、一気にトレーダーがポジションを持ち始めます。
勢いのある上昇・下降トレンドとなり、乗っていこうとするトレーダーも増えます。そのためさらに高値を更新する、逆に反転することもあります。
まとめ
最期は、エリオット波動論に人の心理を当てはめてご紹介しましたが、逆にエリオット波動によって群集心理が動こともあります。
ただし、必ずこのように動くというものではありません。この理論や比率はあくまで判断材料の1つでしかありません。
そして、FX相場ではどれ一つとっても同じ相場は存在しません。そのためエリオット波動論やフィボナッチ比率がピッタリくる時と全く通用しない時があります。
テクニカル分析を使う場合は、その時のFX相場がどの分析が当てはまるのかを考えることが大切です。
一つだけの分析に頼らず、沢山の分析が使えるようにしておくことが大切です。
そのうち慣れてくると、相場を見ただけでどの分析方法が合っているのかわかるようになるでしょう。
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