いつから消費税が10%に増税される?消費税増税延期の影響は?
消費税が10%に上がるはずでしたが、増税は延期され、消費税が10%になるのは平成31年10月からと発表されました。
消費税は、1989年4月に税率3%として初めて導入されて以来、国の大切な税収源となっています。
日本では高齢化が進み、また医療のレベルも上がってきたことで、医療費がどんどんと高額になり、それに伴って社会保障費も右肩上がりで増加しています。
それによって、ただでさえ膨大な額の国の赤字がますます増えてしまっていることから、たびたび消費税の税率が上げられてきました。
生活と密着している税金なので、人々の関心が一番高い税金であるといえるでしょう。
ここでは、その消費税について詳しく説明していきます。
目次
消費税とはどのような税金?
消費税とは、商品や製品の販売、サービスの提供などの取引に対して、広く公平に課税される税金であり、商品やサービスの提供を受けるときに商品などの代金に8%を追加して消費者が支払うものです。
8%の内訳は、国税が6.3%、地方税が1.7%となっています。まず消費者が税を負担し、それを預かった事業者が代わりに税務署に納付するという手順をとっています。
生産や流通などの過程において、各取引段階で二重三重に消費税がかかることがないように、税が累積しない仕組みがとられています。
日本国内においての商品の販売や運送、広告など、対価を得て行うほとんどの取引において、消費税の課税の対象となります。
外国から商品を輸入する場合も、輸入のときに課税されることとなっています。
消費税がかからないものはある?非課税の取引とは?
ほとんどの商品やサービスに消費税が課せられていますが、以下のような取引は非課税となっています。
- 土地の譲渡、貸付け(一時的なものを除く。)など
- 有価証券、支払手段の譲渡など
- 利子、保証料、保険料など
- 特定の場所で行う郵便切手、印紙などの譲渡
- 商品券、プリペイドカードなどの譲渡
- 住民票、戸籍抄本等の行政手数料など
- 外国為替など
- 社会保険医療など
- 介護保険サービス・社会福祉事業など
- お産費用など
- 埋葬料・火葬料
- 一定の身体障害者用物品の譲渡・貸付けなど
- 一定の学校の授業料、入学金、入学検定料、施設設備費など
- 教科用図書の譲渡
- 住宅の貸付け(一時的なものを除く。)
消費税とは何に使われるの?
消費税の増税では、社会保障費のために使われると言われていますが、実際に消費税が5%から8%になったとき、その税収がどう使われたのかということを見てみましょう。
この3%の増税で、合計5兆円の増収になったようです。
- 待機児童解消など子育て支援・・・・・・3000億円
- 低所得者の国民健康保険料を軽減・・・・620億円
- 高額療養費制度の拡充・・・・・・・・・500億円
- 難病対策・・・・・・・・・・・・・・・300億円
- 医療、介護のサービス提供体制整備・・・1000億円
- 遺族年金の支給を父子家庭に拡大・・・・10億円
これらすべてを合計しても、およそ5000億円にしかなりません。
実は、残りの4億5000億円は、ほぼ国の赤字の穴埋めに使われているのです。
- 基礎年金の安定財源・・・・・・・・・・2兆9500億円
- 社会保障費の自然増や赤字国債の解消・・1兆4500億円
- 2物価上昇への対応・・・・・・・・・・2000億円
このように、社会保障費のために消費税を増税すると言われていても、実際は8割以上が国の借金の対策のために使われているということになります。
消費税増税が先送りされ、10%になるのは平成31年10月から。
日本の国としての赤字は毎年増加しており、2015年度末で1049兆円と発表されています。
消費税が赤字国債の穴埋めをしているという実態から見ると、消費税の増税を延期したことは、国の財政にとっては悪影響を及ぼすと言えます。
しかし、消費者心理が冷え込んで消費が鈍ると景気回復に影響が出るという点を重視して延期が決定されました。
消費税が10%に増税されるのは平成31年10月からと発表されましたが、何度も延期されていることを考えると、また延期される可能性がゼロであるとは言えません。
日々の生活に直結してくる消費税ですから、低い方が良いのが消費者の本音ではありますが、日本という国を考えた場合は、消費税を早く上げて税収を増やしていく必要があると言えます。
消費税が8%に増税されたのはいつからだった?消費税率の推移は?
消費税は、昔から日本にある税金ではなく、1989年に消費税が初めて導入されました。
そのときの消費税率は3%で、それに伴う国民の税負担は3.3兆円であったと言われています。
その後、1997年4月に消費税率が5%に引き上げられ、その時の国民負担は9兆円でした。
その国民負担の内訳は、消費増税2%分とそれに伴う特別減税の打ち切りによる負担増が7兆円。さらに医療費における本人負担引き上げによる負担増が2兆円とされています。
特別減税の打ち切りや医療費の本人負担の引き上げなど、この頃から税収を確保して国の財政赤字を改革していこうという意図が読み取れますね。しかし、国の赤字は減ることなく増え続けています。
そして、直近の2014年4月に消費税が8%に引き上げられ、それに伴う国民の負担増は8兆円とされました。
このように、消費税の増税によって国民負担が増え、その分国の税収が増えているわけですが、1000兆円以上もある国の借金のことを考えると、数兆円の増収ではまだまだ足りないように思えますね。
世界の消費税はどうなっている?一番消費税が高い国はどこ?
世界に目を向けてみましょう。
消費税は1954年にフランスで初めて導入されました。
現在の8%の税率は、世界では最も低い消費税率となっており、となりの韓国では10%(名前は消費税ではなく付加価値税)です。
最も消費税率が高い国は
- ハンガリーで27%
- アイスランドが25.5%
- クロアチアやスウェーデン、デンマーク、ノルウェーが25%
です。
- イギリスでは20%
- フランスは19.6%
- ドイツは19%
となっています。
アメリカは消費税という名前の税金はありませんが、似たような税金として売上税と使用税があります。
福祉で有名なスウェーデンでは、19歳までは医療費が無料です。
その後大人になっても医療費の負担の上限が決められており、入院した場合でも1日当たりの最高負担額は1300円程度、薬などの薬剤費も年間負担の上限が約30000円となっています。
また、教育費も大学までは無料となっており、皆自分たちが支払っている消費税が社会に還元されていることを肌で感じることができているので、不満もなく、皆しっかりと消費税を納めています。
日本の場合は、説明したように、消費税増税における税の増収のほとんどが国の赤字の穴埋めに使われています。
国の借金の総額を考えると、消費税が上がるたび、その赤字対策に費やされてしまうことは明確です。そうでなければ、国が崩壊してしまいます。
社会保障の充実をうたっていても、実際はその恩恵を受けられることはほとんどないといっても良いでしょう。
しかし、赤字で傾きかけている国を支えるという意味では、消費税が必要な税金であることにかわりはありません。
消費税増税の先送りによる経済への影響は?
消費税の増税前には駆け込み需要が起き、実際に増税されたあとはその反動から消費が冷え込みます。
増税が延期されたことにより、駆け込み需要が起こらないことになるので、一時的な消費のアップは見込めないでしょう。
しかし、その反動も起きないと言えます。
アンケートなどによると、消費税の増税がなくなったからといって、消費を積極的に行おうという雰囲気にはなっていないようです。
いずれ消費税が上がることは皆わかっていますし、それでなくても最近物価が上がってきたな、と感じている人が多いことから、どちらかというと節約志向にあるようです。
消費が活発にならないと、企業としての業績もそれほど上がらず、横ばいといったところでしょう。
しかし、増税されたあとの反動による消費の落ち込みは回避することができているので、企業の大きな業績悪化は避けられたといえます。
消費税増税の先送りによる株価への影響は?
消費税増税の先送りによる株価の影響はどのようなものがあるでしょうか。
消費税が増税されるときは、駆け込み需要のあとに急激な消費の冷え込みが起こり、それが企業の業績を悪化させてきました。
消費の冷え込みが顕著な業種は、自動車や不動産など耐久消費財を扱う企業です。
これらの企業の業績が悪化すると、それに伴って日本の株式市場の株価も下がる傾向にありましたが、今回の増税延期により、このような事態は避けられたといえるでしょう。
国の財政にとって、増税延期は厳しい材料ではありますが、家計にとってみると、消費税増税は一利なし、何も良いことがありません。
家計にダメージがなかったため、消費の異常な低迷を防いだことを考えると、消費税増税の延期は、消費者心理にとってはプラス材料といえます。
しかし、日本の株を買っているのは日本の投資家だけではありません。
海外投資家がかなりの割合を占めており、日本の株式市場は海外の投資家に左右されると言われているほどです。
日本の経済を見ると、増税の延期はプラス材料ですが、国の財政を考えた場合はマイナス材料となります。
海外の投資家の市点が経済に向いているのか、国の赤字の状態に向いているのかによって彼らの行動は変わってきます。
今はプラス材料の方に注目していても、いつその視点が国の財政状態の方に向くかわかりません。
日本の株価について考えるときには、常に海外投資家の行動を注視する必要があると言えるでしょう。
消費税の増税延期、国の財政は大丈夫?
消費税の増税によって国の財政状態が少しでも改善されるとの期待がありましたが、それは裏切られたことになります。
通常、こういった場合は国債が売られるため、その価値(価格)が下がり、逆に利回りが大幅に上昇するという現象がおきても不思議ではありません。
しかし、増税が延期になった今でも国債市場に大きな動きはありません。それは一体なぜでしょうか?
この金利の上昇が起きていない一番の原因は、日銀が国債を買い入れているからです。
日銀の日本国債の購入額は、年間で80兆円を超えていて、年間の新規国債発行残高を大幅に上回っている状態が続いています。
2013年の4月に異次元緩和がはじまって以降、日銀の国債保有額は大きく膨らんでおり、2015年12月末の時点では、国債発行残高に対する日銀の保有比率は3割を超えました。
このように、日銀がどんどん国債を買うことで、利回りの上昇を防いでいるわけです。
国債が暴落(利回りの急激な上昇)してしまうと、「日本は大丈夫かな」と、投資家が皆不安に思いだします。
そして、その不安心理が連鎖してどんどん国債が売られてしまう、という悪循環になる恐れもあるので、日本の政府として、必死で国債を買い支えているのです。
しかし、いつまでもこのやり方を続けられるわけではありません。
消費税の増税など、国としての税収を確保し、少しずつでも財政赤字を改善していくことが求められています。
消費税増税の先送りによる為替への影響は?
消費税が導入された時、3%、5%に増税されたとき、為替はどのように動いていたのでしょうか?
まず、消費税の導入は1989年で、まだバブルの時代でした。
この時は1ドル130円程度でしたが、その後1年で1ドル=160円まで円安が進みました。
次に、5%に増税されたのは1997年でした。
ここでは、1ドル=120円前後だったのが、1年半後に1ドル=150円まで円安になっています。
そして、最後に8%に増税されたのが2014年でしたが、当初1ドル=102円ほどだったものが、2015年には1ドル=120円の円安となっています。
消費税の導入時と、過去2回あった増税のときの状況を見てみると、3回ともすべて円安となっています。
この原因については様々な意見がありますが、主に日本の経済状況に対する不安により、円安になったのではないかと思われます。
基本的に、消費税が増税されると消費者の購買意欲が落ち込み、消費が低迷します。
すると、企業の売上が下がり、業績が落ちるため、株価が下がります。
日本の株式市場の株価が下がると、日本全体の経済の活力が弱くなっていると判断され、円が売られるという流れです。
また、このように日本の株式が低迷すると、海外の投資家が保有している日本株を売り、その円をドルに変えます。
このステップでも、円を売ってドルを買う動きになるので、円安になる要因の一つとなります。
今後消費税が増税されると、過去の事例を見ると円安になる可能性が高いと言えるでしょう。
経済というのは複雑なもので、様々な見方が存在します。
消費税の増税についても、経済という面から見ると消費者の購買意欲が下がらないということでプラスに働きますが、国の財政という面から見るとマイナスになります。
海外の投資家から見ても、日本の企業の業績が落ち込まないであろうという点はプラスですが、日本という国が抱える財政赤字を考えた時にはマイナス材料となります。
それらの思惑が複雑に絡み合って、今日の株価であったり、為替相場というものが形成されています。
(もちろん、これら以外の要素もたくさん関係しています)
最後に
消費税の増税は、平成31年10月には必ず行なうと発表されています。
それまでには日本の活力を取り戻し、企業の給料をアップし、増税に負けない消費者意識を作り出すと政府は考えているようです。
好景気を作り出し、増税による影響を最小限に抑えられればそれに越したことはありませんが、実際の今までのアベノミクスの推移を見ていると、うまくいくかどうかは未知数です。
消費税が上がることは生活に大きな影響を及ぼしますので、喜ぶ人はいないでしょう。
しかし、日本の国としては必要な税金であるということを皆が理解し、しっかりと皆に税金を納めてもらうことがこれからの日本にとっては重要だと言えるでしょう。
- ホーム
- 法律
- いつから消費税が10%に増税される?消費税増税延期の影響は?