マンションの相続税評価額の計算方法や、相続の手続きを解説!
マンションを相続するとき、どのように評価額を計算すればいいのか、その相続の手続きはどのようにしたらよいのか、わかりにくいことが多いですね。
土地と建物がある一戸建てと違い、「建物だけ」が相続財産であると思いがちですが、マンションを保有している場合でも土地の所有権を持っていることになります。
マンションの住民全員でマンションの敷地を保有していると考え、自分の保有している一室分の敷地と、共有部分の敷地を合計したものが「自分が持っている土地の所有権」となるのです。
ここでは、わかりにくい「マンションの相続税評価額の計算方法」や、「相続の手続き」について詳しく見ていきます。
目次
マンションの相続税評価額の計算は、土地と建物に分けて行う
マンションの相続税評価額を計算する場合、まず「土地部分」と「建物部分」に分けて計算し、最後にそれらを合算して求めます。
一戸建ての場合の土地と建物の割合は7対3程度と言われており、土地の部分の割合が多いのが特徴です。
それに反して、マンションは、所有する土地部分の割合がとても小さいのが特徴で、土地と建物の割合は、2対8程度、中には1対9という数字になるところもあります。
このようなこともあり、マンションの相続税評価額を計算するときには、ついつい「建物の評価額」にばかり目がいってしまいがちですが、少ないなりにもしっかりと「土地の所有権」がありますので、土地部分の相続税評価も忘れずに行なうことが必要です。
マンションの土地の相続税評価額は、国税庁発表の相続税路線価で計算する
自分が保有する「マンションの土地部分」の相続税評価をするには、まず、マンション全体の敷地の相続税評価額を計算する必要があります。
土地の相続税評価額を計算するときには、国税庁が毎年発表している「路線価」を使います。
「路線価」は、相続税や贈与税を計算する際に使われる指標で、相続や贈与を計算する場合におけるその土地の価値を表しています。
同じような指標に市町村が発表する「固定資産税路線価」がありますが、この指標は固定資産税や不動産取得税、登録免許税などの計算の際に使われるものです。
相続税の計算に間違って使ってしまうと、実際の相続税評価額よりも安く見積もられてしまうので注意しましょう。
相続税路線価は、1㎡あたりの価格になり、計算式は、路線価(/㎡)×マンション全体の敷地面積=マンション全体の敷地の相続税評価額 となります。
マンションの敷地面積は、登記簿謄本や固定資産税納税通知書に記載されていますのでそれを参考にします。
ここでは、かなり高額な金額が算出されると思いますが、マンション一棟分の土地に相当する相続税評価額となりますので問題ありません。
そして、この金額に「自分の敷地権割合」を掛けます。
この「敷地権割合」は、マンションの登記簿謄本に記載されていますので確認しましょう。5700分の215、といったような書き方で記載されています。
マンション一棟分の土地の相続税評価額にこの「敷地権割合」を掛けると、自分の持分の土地の固定資産税が算出できます。
マンションの相続税評価額、建物の評価方法は?
次に、マンションの建物部分の相続税評価額を計算しなければなりませんが、これは毎年4~5月頃に送られてくる「固定資産税納税通知書」に記載されている建物の固定資産税評価額を見て確認すれば大丈夫です。
自分自身で計算する必要はありません。
毎年送られてくる通知書に書かれてある固定資産税評価額が、そのまま相続税計算時の評価額となります。
相続税路線価図の見方は?
ここで、あまり見慣れないであろう路線価図の見方について少し説明しておきます。
路線価図では、1000円単位で価格を表しているので、500という表記は500千円となり、50万円ということになります。
借地権割合のことはアルファベットで表されています。
借地権割合は地域や場所によって異なり、A=90%、B=80%、C=70%、D=60%、E=50%、F=40%、G=30%となっていて、数字で示された路線価の横に借地権割合を表すアルファベットが付いています。
路線価図は1000円単位で表されていますので、「400B」と書いてあったならば、路線価は1㎡あたり400千円=40万円となり、借地権割合はBなので80%ということになります。
マンションの相続の手続きは相続登記と呼ばれる登記変更をする
相続が発生して、亡くなった人(被相続人といいます)が所有していた家や土地、マンションなどの不動産を相続した場合、その名義を相続人に変更する必要があります。
これを「相続登記」といいます。
この相続登記には、「被相続人が亡くなってから○ヶ月以内に」などと、期限が決まっているわけではありません。
相続登記の時期はいつでもよいということになっています。
しかし、相続登記をしない場合、様々なデメリットが発生します。
まず、その相続した不動産を売却したり、貸したり、担保に入れてお金を借りたりするようなことができません。
また、相続したとなっても登記がされていないと、法的な保護を受けることができないので、相続人の権利が保証されないこととなります。
例えば、Aさんが相続すると決まっていても、登記がなされていないと法律上はAさんの所有物ではないことになります。
登記をしないで放置しておくと、他の相続人が勝手に自分名義に登記をしてしまうこともありえるのです。
そうなると、自分が全部相続するはずだったといくら主張しても、どうにもなりません。
どうしてこのようなことが起こるのかといいますと、基本的に、遺産分割をするにはすべての相続人の合意が必要ですが、法定相続分の分の登記であるならば、他の相続人の合意がいらないのです。
よって、自分の法定相続分だけ勝手に自分名義にして、その後売却してしまう、というパターンもありえます。
特に、遺産分割でもめた場合などはこのようなケースも考えられますので、迅速に相続登記を行なうことが必要となります。
マンションなど不動産の相続登記、その登記費用はどれくらい?
不動産の登記をする場合、その費用は「実費」と「司法書士報酬(手数料)」に分けられます。
必ずかかる費用は「実費」です。司法書士報酬に関しては、登記の手続きを依頼せずに自分で手続きをした場合、かからない費用となります。
実際は、不動産の登記は司法書士に依頼する場合が多くなってはいますが、手続き自体は自分自身でもできるため、頼まない人もいます。
その場合は実費のみとなり、登録免許税、登記簿謄本代、登記に必要な書類の取得費用、交通費、郵送費等がかかります。
しかし、その土地に色々な権利が付いている場合や、相続関係が複雑な場合、書類を集めること自体が困難な場合などは、専門家に依頼した方が確実ですので、よく考えて決めるようにしましょう。
司法書士に依頼する場合の料金ですが、5万円から、多くても10万円までというところが多いようです。
初回の相談は無料、というところが増えてきていますので、まずは相談に行ってみるのがよいでしょう。
そこで見積もりを提示されますので、そこで納得すれば依頼するという形になります。
実費について見ていきましょう。
登録免許税
登録免許税とは、登記の申請の時にかかる免許代のことをいいます。登記申請をするときに、法務局へ納めるものです。
登録免許税は、対象となる不動産の「固定資産税評価額×0.4%」と決められています。
例えば、3000万円の評価額の相続登記を行なう場合は、3000万円×0.4%=12万円となります。
固定資産税評価額は、市町村から送られてくる「固定資産税納税通知書」に記載されています。
また、「固定資産税評価証明書」を取得すれば、そこにも記載されているので評価額を把握することができます。
登記簿謄本代
登記簿謄本とは、土地・建物・会社などの原本の内容を全て写して作った文書のことをいい、全部事項証明書のことです。
法務局で取得することができます。
登記が完了すると、間違いなく登記されているか、内容に間違いがないか確認をするために登記簿謄本を取得します。
取得費用は1通につき600円となっています。
登記をするために必要な書類の取得費用
- 被相続人の、出生から死亡までの連続した戸籍謄本等 1通450円前後
- 被相続人の住民票の除票 1通200円~400円ほど
- 相続人全員の戸籍謄本 1通450円前後
- 不動産を相続する人の住民票 1通200円~400円ほど
- 相続人全員の印鑑証明書 1通200円~400円ほど
- 対象不動産の登記簿謄本(全部事項証明書) 1通600円前後
- 対象不動産の固定資産評価証明書 1通350円~400円ほど
必要書類の取得費用は、自治体によって差がありますが、おおまかの費用は上記のようになっています。
不動産や家屋、マンションの相続登記に提出する登記申請書とは?
登記申請書とは、相続登記の際に作成する申請書類のことです。
自分で作成することもできますが、複雑なケースの場合は専門家に依頼する方が無難です。
簡単な場合であるのか、専門家に頼んだ方が良いのかという判断は、登記事項証明書を見て判断しましょう。
まず、登記事項証明書に「抵当権」「根抵当権」「差押え」「仮登記」「地上権」などの記載があった場合は、作成方法を悩むのではなく、迷わず専門家に相談した方が良いといえます。
相続登記と同時に別の登記手続きが必要になったり、登記手続き自体が複雑になって手に負えない場合があるからです。
また、根抵当権の表記があった場合は、手続きに期限がある場合もありますので、より迅速に司法書士などの専門家に相談しましょう。
また、不動産の名義人の住所が違っている場合もあります。わからない点が出てきて作成に悩みだしたら、一度司法書士に無料相談に行きましょう。
マンションを兄弟で相続した場合、売却した方がよい?
マンションに限らず、不動産や一戸建てなど、親の相続財産で一つしかないものを兄弟で相続する場合、難しい問題となります。
こういった場合の考えかたとして、
- 誰か一人がすべてを相続する
- 誰か一人が相続して、他の一人に代償金を支払う
- 一旦兄弟すべてで共有相続し、売却後に売却代金を分ける
といったことが考えられます。
相続で兄弟がもめるのを避けるために共同名義にしておく、ということは避けた方が賢明です。
相続時は仲が良くても、将来どうなるかはわかりません。
また、兄弟のうち一人が病気になり、不動産を売却したいと思っても、他の兄弟の合意がないと売却することもできません。
このような意見の相違から、逆に兄弟間に波風がたってしまうこともあるのです。意見がまとまらないでもめているうちに、売却の時期を逃してしまうこともあります。
まだ、兄弟の世代は良いとしても、子供の世代、孫の世代に相続権がうつるに従い、相続人の数もどんどん増えていきます。
普段交流がない者同士が不動産を共有することになるので、ますます収集がつかなくなってしまいます。
よって、共同名義にすることはやめるべきといえます。
それでは、どのような相続の仕方が一番良いのでしょうか。
もしも親の自宅を残したいと考えるのであれば、兄弟のうち誰か一人が単独で相続し、他の兄弟にはそれ相応のお金を支払うという方法があります。
これを代償分割といい、その金額は兄弟で話し合って決めることとなっています。
この場合、普通に兄弟間で金銭のやり取りをすると「贈与」となっていまいますので、遺産分割協議書に、代償金を支払う旨を明記することが重要です。
親の自宅を残しても、誰も住む人がいないし、他人に貸すのも色々あって難しく、毎年かかる固定資産税などの経費ものしかかってくるので長期保有が難しい、となれば、売却することも視野にいれて良いでしょう。
このような場合、一旦兄弟で共有して相続し、売却後にその代金を兄弟で話し合って分けるという方法になります。これを換価分割といいます。
主にこれら二つの方法が考えられますが、いずれにしても兄弟間でよく話合うことが必要です。
親は、いつまでも兄弟仲良くしてほしいと望んでいるものです。遺産相続で兄弟の仲が悪くなってしまうことは避けたいですね。
なかなか話がまとまらないときは、専門家の意見を取り入れてみるのもよい方法です。この場合、だれか一人だけが相談して決めてしまうのはやめましょう。
専門家に相談する場合は、兄弟全員で意見を聞くことが大切です。
全員が納得して相続を進めることできるよう、意識して情報の共有化を図りましょう。
マンションを相続のため売却した場合、税金はどうなる?確定申告が必要?
不動産を売却して利益が出た場合、税金を支払わなければなりません。
それが相続に伴う不動産の売却であっても、通常と同じように所得税と住民税がかかってきます。
相続税とは別に納めなければならない税金ですので注意が必要です。
まず、不動産を売却する場合、その不動産の所有期間が長いほど、税金が低く設定されています。
所有期間が、譲渡した年の1月1日時点で5年より短い場合は短期譲渡所得、5年を超えている場合は長期譲渡所得となります。
建物と土地は別々に計算することになっているので、土地は長期譲渡所得で建物は短期譲渡所得、ということもあります。
税率は、短期譲渡所得では所得税が30%、住民税が9%となっており、長期譲渡所得では、所得税が15%、住民税が5%となっています。
さらに、平成49年まではこれらに加え、復興特別所得税が2.1%がかかります。
保有期間をどうやって数えるかということですが、所有期間の起算点は「相続時」ではなく、亡くなった被相続人がその不動産の所有を開始した日となります。
まず、課税譲渡所得を計算します。この計算式は、「譲渡価格―(取得費+譲渡費用)=課税譲渡所得金額」となります。
取得費とは、買い取った時の価格のことをいい、譲渡費用とは、売却時にかかった費用のことをいいます。
次に、譲渡所得税の納付額を計算します。
計算式は、
- 「課税譲渡所得金×(15%+5%(又は30%+9%))=納付額
となります。
また、確定申告の際には、所得税と併せて基準所得税額(所得税額から、所得税額から差し引かれる金額を差し引いた後の金額)に2.1%を掛けて計算した復興特別所得税を申告・納付することになります。
課税譲渡所得の計算で、不動産の取得費がわからない場合、どうすればよい?
不動産が代々受け継がれてきたものであったり、取得年月があまりにも昔だったりして、その不動産の取得費がよくわからない場合があります。
その場合、その不動産の売却価格の5%を「みなし取得費」として計算を行います。
一般的な感覚では、5%はかなり低めの額です。
例えば、50年前に2000万円で買った土地を、4000万円で売却したと仮定してみましょう。
書類がそろわず取得費が証明できなかった場合、みなし取得費で計算します。
4000万円の5%、つまり200万円がみなし取得費とされてしまうわけです。
ほぼ全額の4000万円に相続税率が掛けられてしまうこととなります。
税金を支払う側にとってみると不利な価格となりますが、このように、取得費がはっきりとわからない場合は「みなし取得費」で計算されてしまいますので注意しましょう。
とはいっても、書類がない場合はどうにもなりません。
実際、取得費を証明できずに「みなし取得費」で計算する場合も多くあるようです。
譲渡費用とは、どのようなものをいう?
不動産を売却するための譲渡費用とは、以下のようなものをいいます。
- 不動産を売却するために支払った不動産会社への仲介手数料
- 土地を売却するためにその土地の上に立つ建物を取り壊した場合の取り壊し費用、及び、その建物の損失額
- 賃貸している建物を売却するために賃借人に支払う立退料
- 支払った印紙税の中で、売り主が負担したもの
- 既に締結済みの売買契約を解約し、更に有利な契約をした場合の、契約の解約によって発生した違約金
- 借地権を売るために地主の承諾をもらった場合の名義書換料等
これらはすべて「譲渡費用」として、売却額から差し引くことができます。
なお、建物の修繕費や固定資産税など、その不動産の「維持」や「管理」にかかった費用は譲渡費用になりませんので注意しましょう。
マンションを相続放棄する場合国庫に入るの?管理費はどうなる?
親が相続財産としてマンションを残してくれたが、多額のローンが残っていたという場合、もし返済する資金力がなかったり、または返済する意思がないときは、相続放棄をすることで債務の相続を免れることができます。
このように法定相続人がすべて相続放棄をすると、マンションの残額ローンはどうなってしまうのでしょうか?
また、毎月かかってくるマンションの管理費はどうなるのでしょうか?
まず、すべての法定相続人が相続放棄したからといって、マンションが国庫にはいることはありません。
最終的には売却されることになるからです。
まず、法定相続人が一人もいないマンションは「法人」となります。
しかし、その法人の代表者や代理人がいないため、相続財産の管理精算手続きを行なうことができません。
こうなった場合、お金を貸していた銀行であったり、管理費を滞納されているマンションの管理組合などの「利害関係人」が相続財産管理人の選任を申し立てます。
そして、それを受けて家庭裁判所が相続財産管理人を選定します。
このように、相続財産管理人が選定された時点より、相続財産の精算手続きが進められていくことになります。
一般的には、抵当権が存在しない場合は、財産管理人により、裁判所の許可を得た上でマンションが売却されます。
そして、銀行や管理組合の取り分の割合を計算し、それぞれに返済されることとなります。
まとめ
近年は地価も上がってきており、特に都心では一戸建てを持つことは簡単ではありません。
多くの人が一戸建てではなく、マンションに住んでいます。マンションは立地が良く、駅に近いところも多いので、利便性が高いのが特徴です。
これからもマンションに住む人は増え続けることが予想されますので、マンションを相続するパターンも増えてくるでしょう。
相続はまだまだ先の話ではあっても、基本的な知識は身につけておきましょう。
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