慰謝料には様々な種類がありますが、よく耳にする慰謝料といえば、不倫や離婚の慰謝料ではないでしょうか。
慰謝料は、多いときでは百万単位になります。
金額も大きくなりますし、税金がかかるのかどうか、もらった場合や渡した場合、確定申告をしなければならないのか、気になりますね。
ここでは、不倫や離婚の慰謝料に関しての税金について見ていきましょう。
慰謝料には様々な種類がありますが、よく耳にする慰謝料といえば、不倫や離婚の慰謝料ではないでしょうか。
慰謝料は、多いときでは百万単位になります。
金額も大きくなりますし、税金がかかるのかどうか、もらった場合や渡した場合、確定申告をしなければならないのか、気になりますね。
ここでは、不倫や離婚の慰謝料に関しての税金について見ていきましょう。
慰謝料には税金がかかるかどうか、ということですが、一般的には、慰謝料には税金がかかりません。
慰謝料とは、相手の不法行為により、精神的・肉体的に苦痛を受けたことに対する損害賠償といえます。
つまり、物質的・精神的な損害を「埋める」ためのものですから、利益が出るわけではありません。
よって、慰謝料をもらった場合は、税金はかからないと覚えておきましょう。
金銭以外でなく、不動産や自宅などを慰謝料としてもらう場合がありますが、それも損害賠償ですので税金はかかりません。
例えば夫が、離婚の慰謝料として、不動産や自宅を妻に渡したとします。
妻から見れば、一切税金がかかりません。
慰謝料ですので、利益には当たらず、また贈与にもならないため税金はかからないことになっています。
なぜ贈与にならないのかといえば、夫婦が共に築いてきた財産の分与とみなされ、「自分の分を受け取った」という考えになるのです。
そのため、金銭での慰謝料に加え、自宅や不動産の慰謝料も財産分与とみなされ贈与税の課税はありません。
ただし、財産分与として受けた金銭や不動産の額が不自然に多すぎると、贈与税がかかってくる場合があります。
また、贈与税や相続税を脱税しようとして、離婚を装った「偽装離婚」の場合は、贈与税がかかります。
法律上離婚はしていても、一緒に住んでいる場合などは偽装離婚とみなされる場合があります。
では、夫の側から見てみるとどうなるでしょうか。
妻とは事情が変わってきます。
夫が妻に慰謝料として自宅を譲渡した場合、慰謝料という「妻に対する債務」に対し、代物弁済したとみなされてしまい、実際に不動産売却はしていないのに、税務上は妻に売却したことになってしまいます。
自宅を売却したとみなされるため、時価が取得費と譲渡費用の合計を上まわっている場合、それに対して譲渡所得税がかかってしまうことになるのです。
なぜそうなるのかと言いますと、離婚時に実際に自宅を売却して慰謝料の支払いにあてる人もいます。その場合は当然、実際に売却しているのですから譲渡所得税がかかる場合があるわけです。
実際に自宅を売却した人、売却せずに自宅をそのまま渡した人、この二つの場合に差が出てはいけないということで、売らずに自宅を慰謝料の支払いにあてる場合も税金がかかってくることになっています。
ところで、この居住用財産の譲渡については、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」と「10年超所有軽減税率の特例」の二つがあります。
まず、居住している家屋の売却は、3000万円まで控除されるという特例があります。
現在居住しているか、居住しなくなって3年を経過した年の年末まではこの特例措置が適用されます。
しかし、配偶者や血縁者などの親族には、この措置が適用できなくなっています。ですから、この特別措置を利用したい場合は、正式に離婚をしてから慰謝料を支払うと良いでしょう。
離婚した後であれば、配偶者ではなくなりますので、この税制優遇を利用することができます。
また、所有期間が10年超ですと、「10年超所有軽減税率の特例」が受けられます。
6000万円以下では、所得税10.21%、住民税4%、合わせて14.21%の分離課税となります。
また、6千万円以上の所得には、15.315%、住民税が5%、合計20.315%の税金がかかります。
この優遇措置を使うのは3年に1度という制限が有ります。
また、上記の「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」との併用が可能です。
所有期間が10年を超えない場合は、短期譲渡所得と長期譲渡所得に分けられます。
所有期間5年以下の土地や建物等は、課税短期譲渡所得金額となり、「譲渡収入金額―(取得費 + 譲渡費用)―特別控除」に対し、39.63%(所得税30.63% 住民税 9%)の税金がかかります。
所有期間が5年超10年未満の場合は、課税長期譲渡所得金額となり、 「譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除」に対して20.315%(所得税15.315%、住民税5%)の税金がかかります。
それでは、実際の税金の計算例をみていきましょう。
15年所有して住んでいた自宅を6000万円で売却した。土地の取得費が4000万、譲渡費用(仲介手数料など)が200万の場合。
6000万円―3000万―(4000万+200万)=0以下
となり、税金はかかりません。
15年所有して住んでいた自宅を1億5000万円で売却した。
土地の取得費が5000万円、譲渡費用(仲介手数料など)が600万円の場合
1億5000万―3000万―(5000万+600万)=6400万円(課税長期譲渡所得金額)
所得税・・・6000万×14.21%=852万6000円
400万×20.315%=81万2600円
合計 852万6000円+81万2600円=933万8600円
このように、6000万円を超える場合は、金額を二つに分け、それぞれに税率をかけて税金を求めます。
購入して4年、居住して4年の自宅を8000万円で売却した。
購入価格は4000万、費用は300万だった場合。
8000万―3000万―(4000万+300万)=5000万―4300万=700万(課税短期譲渡所得金額)
700万×39.63%=277万4100円
このように、3000万円控除や、10年超保有の場合の特例が使えると、税金がかなり安くなります(もしくはかからない)。特に、3000万円の控除は大きいですね。これを使うには、配偶者や親族では適用できないので、正式に離婚が成立してからにしましょう。
また、自宅を売却せずに慰謝料として渡した場合は、実際にお金は入ってこないのに、譲渡所得税を夫の貯金の中から支払わなければならないということになるので、夫側から見れば厳しい条件となっています。
今まで説明してきたように、慰謝料をもらう側は、基本的には一切の税金がかかりませんので、確定申告する必要がありません。
しかし、慰謝料を払う側は、税金を払わなければならない場合があります。
自宅や不動産を慰謝料として売却したり、譲渡したりした場合は、取得価格と比べて利益がでた場合は確定申告しなければなりません。
取得価格よりも安く売ったので損失が出た、というときでも、場合によっては他の所得との損益通算ができる場合がありますので、確定申告した方が有利になる可能性もあります。
どちらにしても、確定申告しておいた方がよいということですね。
慰謝料が税金から控除されるのでは?という甘い期待を抱く人も多いようです。
しかし、慰謝料を支払った側にメリットは何もありません。
不倫の末、離婚となり、例えば夫が妻に慰謝料を払うとします。
精神的な苦痛を与えた側が慰謝料を払うわけです。そのような、ある意味「加害者」に対して優遇する税制などない、ということです。
不倫や離婚に関する慰謝料に控除があれば、ある意味国が離婚を推奨しているとも取られます。
もちろんそんなことはないので、慰謝料に対する税制優遇はありません。
慰謝料は、一般的な額の場合は、受け取る側は税金が一切かからないですが、慰謝料を払う側は、気を付けないと大きな税負担を強いられることになります。
慰謝料を払うタイミングも含め、しっかりと様々な要素を検討してから合意するようにしましょう。