日本でFXトレードを行う場合、「くりっく365(取引所FX)」と「店頭FX」の2種類から選ぶことができます。
多くの人が「店頭FX」で取引をしていますが、「くりっく365」も根強い人気を誇っています。
では、「くりっく365」とは何なのでしょうか。その内容および、「店頭FX」との違いについて解説していきましょう。
日本でFXトレードを行う場合、「くりっく365(取引所FX)」と「店頭FX」の2種類から選ぶことができます。
多くの人が「店頭FX」で取引をしていますが、「くりっく365」も根強い人気を誇っています。
では、「くりっく365」とは何なのでしょうか。その内容および、「店頭FX」との違いについて解説していきましょう。
「くりっく365(取引所FX)」とは、東京金融取引所を介して行う為替取引のことを指します。FX取引が日本で解禁されたのは1998年ですが、その後FX会社が乱立し、一時400社超ものFX会社が存在していました。しかしながら、零細FX会社の中には、顧客資産の分別管理ができない、意図的なレート操作等が行われる会社もあり、問題視されていました。
そのような時代背景の中で、取引の透明性及び投資家保護を目的として2005年にスタートした外国為替証拠金取引が、「くりっく365」です。
「くりっく365」は、2011年までは税制優遇がありました。課税対象が利益額の20%までと、店頭FXの総合課税(投資家の所得に応じた税率)と比べて優遇されていたのです。
そのため、高額所得者である大口トレーダーは、「くりっく365」を好んで利用する傾向がありました。
しかし、2012年1月から「くりっく365」と店頭FXの税率が一律20%となったため、「くりっく365」に税制上のメリットはなくなってしまいました。従って現在、「くりっく365」の利用者は減少傾向にあります。
下のグラフは、「くりっく365」の取引数量と建玉数量の推移を表したものですが、2012年から取引数量が急激に減っているのがわかります。
現在は、最盛期の4分の1程度まで落ち込んでいます。
[図1:くりっく365 全通貨ペアの取引数量と月末建玉数量の推移]
とはいえ、今でも個人FX投資家の取引量の約3割は「くりっく365」を経由していると言われており、「くりっく365」は日本のFX市場において一定の存在感を保っています。
以前は、税制上の優遇という大きな差があった「くりっく365」ですが、現在は店頭FXと比べ、トレード環境にそれほど違いはありません。
しかしながら、多少の差がありますので、違いを表にまとめてみました。
[表1:「くりっく365」と店頭FXの違い]
くりっく365(取引所FX) | 店頭FX | |
取扱会社数 | 17社 | 約60社 |
為替レート | マーケットメイク制度による (6社が参加) |
FX会社による |
スプレッド | 変動 | 原則固定 |
スワップ金利 | 同一通貨は受取と支払いが同一 | FX会社による (受取が不利になるケースが多い) |
手数料 | 無料が多い (以前はほとんどが有料) |
ほとんどの会社が無料 |
取扱通貨数 | 26種類 | FX会社による |
レバレッジ | 最大25倍 | 最大25倍 |
資産管理 | 東京金融取引所へ全額預託 | 信託銀行へ全額預託 |
「くりっく365」と「店頭FX」の大きな違いは、為替レートの提示方法です。「くりっく365」は、マーケットメイク制度を採用しています。
これは、東京三菱UFJ銀行、野村証券、コメルツ銀行、バークレイズ銀行、ゴールドマン・サックス証券、ドイツ銀行の6社が提示した価格のうち、最良価格を顧客に提示するものです。
一方、店頭FXは、各FX会社が顧客に為替レートを提示しています。要は、マーケットメイクという形で直接投資家にレートが表示されるか、FX会社経由でレートが表示されるかの違いですが、「くりっく365」にはレートを操作する余地が入らないため、公正な取引が期待できます。
店頭FXの場合、個人投資家と直接レートを提示する銀行・証券会社との間にFX会社が存在するため、個人投資家に提示されるレートにFX会社の裁量を挟む余地が生じます。
たとえば、個人投資家にとって不利となるスプレッドを提示するといった形です。
スプレッドは、「くりっく365」は変動制ですが、店頭FXでは多くの会社で原則固定となっています。ただし“原則”であり、雇用統計等の大型の指標発表時はスプレッドが広がる会社がほとんどなので、注意が必要です。
スワップ金利は、「くりっく365」の場合、同一通貨であれば受取と支払いが同一金額となります。
一方、店頭FXの場合は受取より支払いが多くなることがほとんどです。
そのため、スワップ金利狙いの投資家は、「くりっく365」での取引を好む傾向にあります。
取引通貨数は、「くりっく365」の場合26種類あります。店頭FXはFX会社によってさまざまです。「くりっく365」以上の通貨ペアを揃えているFX会社も存在していますし、流通量の多い通貨に絞ってサービスを提供しているFX会社もあります。
とはいえ、相対的に見れば、「くりっく365」の取引通貨数は多いほうだと言えます。
資産管理というのは、顧客資産と会社資産の分別管理のことです。
以前、FX会社は信託銀行に預託する義務がありませんでしたので、悪徳業者も多く存在し、トラブルが相次ぎました。
現在は、顧客の資産を信託銀行に預託することで、万一FX会社が倒産しても預託金を回収できる仕組みとなっています。
そのため、「くりっく365」も店頭FXもリスク管理という意味では同レベルと考えてよいでしょう。
現在、FX会社のサービス内容は非常に充実しています。
以前のように、「くりっく365」に税制上のメリットがなくなったこともあり、投資家の多くは店頭FXを利用しているのが現状です。
しかしながら、「くりっく365」にメリットがないわけではありません。
どんなメリットがあるのか、以下にまとめてみました。
この中で、④の出来高は、「くりっく365」独特の制度です。
店頭FXは顧客との相対取引であるため、出来高、つまり取引量は原則開示されていません。しかし、「くりっく365」では取引量が開示されていますので、株式投資で利用されている出来高を利用した各種分析手法を利用することができます。
そのため、「くりっく365」を取り扱っている会社の中には、出来高の存在をアピールしている会社も存在します。
ただし、出来高を見るにも、「くりっく365」の取扱い会社のツール次第の面があるので、利用の際はツールで出来高が表示できるかどうかを、確認の必要があります。
税制上のメリットがなくなり、徐々にサービスの利用者が減少しつつある「くりっく365」ですが、今も根強い人気を誇るサービスとなっています。
やはり、東京金融先物取引所に上場され、公正なレートが提示されるという安心感は、他のFX会社にはないものだからでしょう。
スプレッドでは、原則固定の店頭FXに軍配が上がりますが、それほどスプレッドを気にする必要のないスイングトレーダーは、「くりっく365」を利用しているケースも多いようです。
つまり、スプレッドが変動制なので短期トレードには向かないものの、中長期のトレードであれば今も十分利用に値するのが「くりっく365」だと言えるでしょう。