為替市場はその国の経済状態を反映する、と言われています。
短期の為替の値動きは、経済状態に関係なく上下しますが、特に長期の視点で見ると、その国の経済状態(ファンダメンタル)を知ることは、そのままストレートにFXトレードの勝率アップにつながります。
一国の経済状態を知るためには、世界全体の経済状態を把握する必要があることは言うまでもありません。そこで、ここでは世界経済を把握するための方法を紹介していきましょう。
為替市場はその国の経済状態を反映する、と言われています。
短期の為替の値動きは、経済状態に関係なく上下しますが、特に長期の視点で見ると、その国の経済状態(ファンダメンタル)を知ることは、そのままストレートにFXトレードの勝率アップにつながります。
一国の経済状態を知るためには、世界全体の経済状態を把握する必要があることは言うまでもありません。そこで、ここでは世界経済を把握するための方法を紹介していきましょう。
一国のファンダメンタル分析を行ううえで、まず着目しなければならないのは「中央銀行」です。日本でいえば日本銀行が該当しますが、国の経済を金利でコントロールしている存在です。
中央銀行は、ユーロ圏を除けば各国にあります。つまり、世界中の通貨が交換される為替市場では、中央銀行の動きが非常に大きく影響するわけです。
では、そもそも中央銀行の役割とは何でしょうか。
中央銀行の役割は景気の行き過ぎをコントロールすることです。景気が行き過ぎれば、日本のバブル期のように、一度破裂すると事態を収拾するのに非常な時間がかかり、負うダメージも多大なものがあります。そのため、景気が行き過ぎてしまう手前の段階で、金利を引き上げて景気を冷やそうとします。
景気の行き過ぎの抑制手段として使われるのが、金利です。日本ではゼロ金利政策が導入されて久しいので、金利について意識することが少ないのですが、金利は中央銀行が利用できる対景気の最大の武器なのです。
金利を上げれば、企業は借金してまで新規の投資をしようとは思いません。自ずと景気は悪くなります。逆に金利を下げれば、企業は積極的に借金をして新規投資を行います。当然、景気は良くなります。この2つの図式を、中央銀行がコントロールしているわけです。
中央銀行がコントロールする金利は、大きなお金の流れを形成し、為替市場に対して影響を与えます。なぜなら、投資家は、資金を運用しようとする際に、なるべく高い利回りとなるような運用を行うからです。たとえば、利回り2%の金融商品Aと利回り5%の金融商品Bがあれば、誰でもBを購入します。
国の通貨も同じです。
中央銀行が金利を上げ・下げすることで、お金の動きがガラッと変わるのです。たとえば米ドルの金利が他国の金利より高くなれば、「日本円売り→米ドル買い」となりますので、円安ドル高となるわけです。
FXトレードの場合、通貨ではなく通貨ペアを買うため、金利が高く買われる通貨は高く、金利が安く買われない(売られる)通貨は安くなりますので、結果として通貨ペアが動きます。世界経済のFXトレードに対する影響を考える際、この通貨ペアという意識は常に持つようにしてください。ファンダメンタル情報とFXトレードをリンクして考えるとき、非常に大きなキーポイントとなります。
前項で、通貨ペアという意識を持つ大切さを指摘しましたが、極論すると、為替市場は各国の中央銀行同士の綱引きとも考えられます。
中央銀行といえども、一国の経済状況を完全にコントロールすることはできません。
しかし、加熱した景気を冷やす手段は有しています。ですから、A国が金利を引き上げている中、B国は輸出促進のために景気は過熱気味だが金利はそのまま、という手段も取れます。
止むにやまれず金利を上げたり・下げたり、という事態もありますが、好むと好まざるとにかかわらず、為替市場は世界の中央銀行が金利を使って綱引きを行っている結果を表している、と考えられます。
リーマン・ショックのような世界的経済危機が発生すれば、各国の中央銀行は足並みをそろえて同じ政策を取ります。そうしないと、自国の経済状況も危なくなるからです。
しかし、そうでない平常時は常に自国の経済状態を見てコントロールしているのです。
結果的に、各国の中央銀行は、他国の中央銀行と金利を軸に通貨で綱引きを演じることになるのです。
為替市場に大きな影響を与えている中央銀行ですが、その中でも世界経済に大きな影響力を持っているのは以下の4行です。
[表1:世界経済に大きな影響力を持つ4つの中央銀行]
特に注目したい中央銀行 | |
FRB(連邦準備制度理事会)/アメリカ | 議長:ジャネット・イエレン |
ECB(欧州中央銀行)/ユーロ圏 | 総裁:マリオ・ドラギ |
BOE(イングランド銀行)/イギリス | 総裁:マーク・カーニー |
BOJ(日本銀行)/日本 | 総裁:黒田東彦 |
世界経済および為替市場は、この4つの中央銀行が主に金利を操って綱引きを行っている状態だと思えば、イメージが沸きやすくなるのではないでしょうか。
この中でもっとも影響力があるのは、米ドルを司るFRBでしょう。
米ドルは世界経済、そして世界の為替市場に大きな影響を与えていますので、その動きからは目が離せません。ちなみに現在の議長は、史上初の女性議長であるジャネット・イエレン氏です。金利を安易に引き上げないタイプの人材だといわれていますが、2016年12月に金利を引き上げるのでは、とも噂されています。
世界の基軸通貨のドルの金利が上がれば、低リスク資産の金利が上がるのと同じ意味となるので、世界の資金がドルに集まりドルが高くなることが予想されます。
EU離脱後、どのような進路をたどるのか注目されているイギリスのBOEも、今後の動向を握っている存在と言えますので、総裁のマーク・カーニー氏の発言は要チェックです。
ECBのマリオ・ドラギ氏も、その会見の内容で一時は為替市場が非常に大きく動いたことがあり、日銀の黒田氏が「黒田バズーカ」と言われるほど為替市場に影響力があることは周知の事実です。
このように、ファンダメンタル情報を集めるには、まず各国の中央銀行の金利などに対する考え方を把握するのが、最初の第一歩となります。
世界経済の動向は、突き詰めれば一国の経済状況が影響を与えています。なかでも、影響力がある国の中央銀行の動きは、FXトレードをするうえでも見逃せません。どのように中央銀行が動くかを予測し、把握するためには、それぞれのスタンスを知ることが大切です。
実際のところ、そこまで考えてトレードしている個人のFX投資家は少数派です。しかし、機関投資家は、中央銀行を専門にフォローしているアナリストまで採用して、中央銀行の動向を探っています。つまり、中央銀行の政策スタンスを把握できれば、FXトレードの勝率を高めるための有益な情報が得られるということです。
各国の歴史や、中央銀行トップの性格まで関連してきますので、非常に奥が深く、容易に理解できる分野ではありませんが、FXのスキルアップに役立つことは間違いありません。
ぜひ、折に触れて掘り下げてみることをおすすめします。