FXトレードで生計を立てる場合、ビジネスを意識してトレードを行うことになります。そしてビジネスなら、行き当たりばったりでは成功しません。成功しているビジネスには、必ず利益が得られる仕組み、いわゆるビジネスモデルがあります。
では、常にリスクを相手にしているFXトレードは、どのようなビジネスモデルなのでしょうか。類似するビジネスを検証することで、その本質に迫っていきましょう。
FXトレードで生計を立てる場合、ビジネスを意識してトレードを行うことになります。そしてビジネスなら、行き当たりばったりでは成功しません。成功しているビジネスには、必ず利益が得られる仕組み、いわゆるビジネスモデルがあります。
では、常にリスクを相手にしているFXトレードは、どのようなビジネスモデルなのでしょうか。類似するビジネスを検証することで、その本質に迫っていきましょう。
リスクを相手にしているビジネスの代表格は、保険会社ではないでしょうか。生命保険ならば、加入者が死亡すると保険料よりもかなり高額な保険金を支払わなければなりません。
月々20,000円の掛け金で、死亡時の保険金が1,000万円といった具合です。
一見すると、リスクばかりが大きく、なぜ利益が得られるのかわかりにくい仕組みですが、そのビジネスモデルを見ていくと、実にしっかりとしたリスク管理が行われていることがわかります。
まず、保険金の上限を明確にしている点に注目してください。先に例に挙げたように、「月々20,000円の掛け金で死亡時保険金1,000万円」といった具合です。生命保険は身近な存在なので、当たり前のように思えるかもしれませんが、実は非常に重要なことです。
FXトレードに置き換えるとよくわかります。損切りラインを設けておけば、それ以上負けることはありませんから、トレーダーはエントリーと同時に損切り注文を入れます。エントリー額を掛け金、死亡時保険金と損切りラインと考えれば、実は保険会社もFXトレードも同じ考え方なのです。
保険会社は、しっかりと収益を得ています。それは、FXトレードにおける「損切り」を確実に行っているからです。逆に言えば、FXトレードで勝つためには、エントリーごとにリスクの金額(損切りライン)を明確化するべきだと言えるでしょう。
生命保険に加入する際は、健康状態の質問事項に答えなければなりません。例えば過去の病歴、現在の生活状態、喫煙歴の有無、摂取するアルコールの量など、その項目は多岐にわたります。これも、非常に巧みなリスク管理だと言えるでしょう。
これらの質問が用意されている意味は、加入直後に死なれてしまったら保険会社としては大損するというリスクを回避するためです。つまり、保険金1,000万円の“支払い発生確率”をできるだけ減らそうとしているのです。そのために、健康診断書の提出を求めたり、リサーチセンターを設けて職員を加入者の自宅へ訪問させたりするわけです。
FXトレードも、このくらいの慎重さで取り組む必要があるでしょう。リスクの高いエントリーを避けるため、可能な限りのリサーチをして、勝てる確率の高いエントリーができるタイミングまでじっくり待つこと。常にそうした意識を持つことが大切なのです。
ベンチャーキャピタル(投資ファンド)も、リスクを相手にしているビジネスです。保険会社が「慎重派」ならば、ベンチャーキャピタルはとことん積極的です。これはいわば、保険会社は草食系、ベンチャーキャピタルは肉食系といった感じになるでしょう。
成長見込みがある企業をターゲットにどんどん投資を行い、しかも、その企業の中に入り込んで、経営コンサルティングを行うことで企業の価値を向上させていきます。
しかし、成長が見込めると判断したところで、必ずそのとおりになるとは限りません。投資に見合わないリターンしか得られないことや、単なる失敗に終わってしまうケースもたくさんあります。それほどリスクが高いのに投資をするのは、成功したときに得られるリターンが非常に大きいからにほかなりません。
たとえば、MicrosoftやiPhoneを生み出したApple、FacebookやTwitterもベンチャーキャピタルから資金を受けることで、成長を遂げることができました。これらの企業の成功している姿を見れば、ベンチャーキャピタルというビジネスの“うまみ”がわかるのではないでしょうか。
保険会社と違って、ベンチャーキャピタルのビジネスモデルは、そのままFXトレードに当てはめることはできません。それはどれほど確信があっても、よほど資金に余裕がなければ、そこまで大胆に投資することはできませんし、「経営コンサルティング」のように自ら強引に値を動かせるほど為替市場の規模は小さくないからです。
しかし、ベンチャーキャピタルも、投資先企業を決めるまでには保険会社同様の、いや、もっと緻密なリサーチを行っているはずです。あらゆる角度からその企業を徹底的に調査するその姿勢は、FXトレーダーも参考にするべきではないでしょうか。
ビジネスモデルと規定するには無理がありますが、身近なところではパチスロもFXトレードと通じる部分があります。パチスロは、釘があるパチンコと違い、大当たり確率の高低を決める「設定」だけが勝負の相手です。
機種の特性によって立ち回り方も違いますが、これは通貨ペアの違いのようなものです。
そして、「設定」は世界経済の状況だと考えれば、FXトレードと似たような仕組みであることがわかります。
ただ、FXトレードはエントリー時に損切り注文ができるのに対して、パチスロは投資額の上限を決めるのは自らの意思だけ、というのが異なる点です。パチスロで生計を立てている人の中にはいろいろなタイプがいますが、堅実に稼いでいる人の多くは、1日の投資金額を決めています。確率との勝負なので、投資金額から割り出した期待値通りの「大当たり」が得られないこともあります。しかし、そこで熱くならず、撤退する勇気を持つことが重要なのです。
このメンタル面は、FXトレードでも応用できます。
「もう少しすれば上がるかも」という気持ちになることが、初心者のうちは必ずあると思いますが、それはパチスロならば「もう少し打てば当たるかも」というのと同じです。いつかは上がるときも来るでしょうが、最終的に勝たなければ意味がありません。
1カ月後、半年後、1年後に勝っている状態になるために、熱くならずに「損切りライン」を決め、撤退することが重要という意味では、パチスロも参考になる「ビジネスモデル」と言えるのではないでしょうか。
FXトレードは、他のビジネスと比べて特殊性はそれほどありません。それは目標とする利益を考えてビジネスを開始し(=エントリー)、うまく行かなければ撤退(=損切り)、うまく行けば資金を回収する(=利益確定)ことです。実はこの繰り返しは他のビジネスでも変わらないはずです。
ただし、リスクに立ち向かうのが前提となるので、常に「いかに撤退するか」を考えることが非常に重要です。だからこそ、撤退ライン(=損切りライン)を最初に決定しなければならないのです。
トレードをするときは、それだけは忘れずにいてください。もし、自分を見失いそうになったときは、ここで紹介したように、保険会社やベンチャーキャピタルなど他のビジネスモデルを思い出して、冷静になるように心がけてみてはいかがでしょうか。