金融立国として生き残りをはかる「英ポンド(GBP)」の特徴
かつては「日の沈まない帝国」とも呼ばれ、単独でインドやオーストラリアを始め世界の多くの地域を支配していたイギリス。
しかしながら2度の世界大戦を経て、その栄光は完全に過去のものとなっています。
イギリスは第二次世界大戦後、長い低迷はありましたが、現在は北海油田を始めとする石油産業が経済を下支えする一方、規制緩和が進んだ結果、首都・ロンドンはヨーロッパの一大金融都市としての地位を確立しています。
今回は、現在も外国為替市場において強い存在感を持つ「スターリング・ポンド(英ポンド:GBP)」を要するイギリス及びその通貨ポンドの特徴について解説します。
目次
イギリス経済の特徴
イギリスの経済は、約70%を占める第三次産業(サービス業)を筆頭に、約30%を維持する第二次産業、そして1%にも満たない第一次産業から構成されています。
また経済規模の観点では、名目GDPは約1兆6千億ポンド、1人当たりの名目GDPは26,000ポンドであり、ヨーロッパ圏内では、ドイツ・フランスに並ぶ経済規模を持つ国となっています。
イギリス経済は第三次産業の中でも、特にロンドンを中心とする金融業に支えられている部分が大きいという特徴を有しています。
首都ロンドンは、ヨーロッパにおける金融市場の中心地、という地位を確立しており、特に為替市場においては、アメリカを超える程の取引量を誇っています。
金融業に支えられている傾向のあるイギリス経済ですが、経済自体は好調に推移しています。
特にヨーロッパの中ではドイツとともに、経済が好調の国として知られています。
ただし好調な経済も、その恩恵は金融業等の特定の層にとどまっている、という不満及び、移民受け入れ問題への不満も重なり、イギリスは2016年7月に国民投票によりEUからの離脱を決定しています。
そしてEU離脱決定後も、経済的には大きな変化は生じていませんが、EU離脱後のイギリス経済がどうなっていくのかは、世界各国の注目の的となっています。
先進国通貨で世界第4位の取引量を誇る英ポンド
19世紀には「日の没することがない国」と言われ、第二次世界大戦前は世界の基軸通貨であった英ポンドは、現在でも外国為替市場において強い存在感を有しています。
そしてその取引量は、先進国の通貨では米ドル、ユーロ、日本円に次ぐ4番手につけています。
外国為替市場で存在感を発揮している英ポンドですが、米ドルや他の主要通貨と比べると、取引量が少ないため、投機目的の取引の対象となりやすいという特徴を有しています。
1日で数百pips程度の値動きを見せることも珍しくないため、ボラティリティが高く、FXトレードの上級者向けの通貨として知られており、ドル円が1円動くとポンド円は2円動く、とも言われています。
このようにポンドは、短期トレードを行うデイトレーダーの人気が高い通貨となっています。
変動リスクのコントロールが大切
FXトレード初心者は、一度ポジションを持つと、そのまま損切りが出来ず持ちっぱなしで損が膨らむと言うことがありますが、ポンドはまさにそれが現実化しやすい通貨となります。
ポンドが絡む通貨ペア(以下、クロスポンド)は値動きが激しいため、一気に価格が動くことがあり、総合的なトレード能力が必要不可欠です。
- トレンドの分析力
- 損切の決断力
- 証拠金に対するリスクコントロール
等がないままクロスポンドをトレードすると、一気に資金を減らしてしまう、という事態も生じます。
しかし逆に、総合力に優れたトレーダーにとっては、値動きの激しいクロスポンドは非常に利益を得やすい通貨となります。
値動きが激しく、テクニカル分析が通用しないケースも多いため、ポンドは悪魔の通貨と評されることもありますが、実際にクロスポンドのトレードは、上級者向きと言っても過言ではありません。
他通貨に比べスプレッドが広めの英ポンド
ドル円を始めとするクロス円では、FX会社が提供するスプレッドは若干の違いはあるものの、概ね0.3~2銭程度となっています。
しかしポンド円は、スプレッドが他のクロス円に比べ広めであり、尚且つFX会社毎の差も大きい通貨ペアとなっています。
例えば、多くの通貨ペアで1.2銭原則固定や1.8銭原則固定のFX会社も増えている一方で、未だにポンド円については3銭以上、更には5銭以上というスプレッドのFX会社も存在しています。
ドル円の場合は、FX会社のスプレッドに大差はありませんが、ポンド円の場合はFX会社によってスプレッドが大きく異なっているので、トレードを行う場合は注意が必要です。
場合によっては、ポンド円専用の口座開設を検討することも必要となります。
様々な要因で動く英ポンド
イギリスはアメリカと政治及び経済面で、非常に関係が深い国のため、英ポンド/米ドルは、イギリスの経済指標に関係なく、アメリカの経済指標発表等の要因で大きく動くことも多い通貨ペアです。
また歴史上イギリスと関係が深い国の通貨である、豪ドル、カナダドル、中近東諸国の通貨と英ポンドは、頻繁に取引されていることから、これらの相手先通貨の要因で、英ポンドが動くケースも発生します。
特に中近東諸国のオイルマネーは、時に英ポンドの値動きに大きな影響を与えます。
これは中近東諸国が外貨取引をする際に、一旦通貨を英ポンドに建て替える習慣があるから、と言われています。
それは大口の石油輸出先である米国から得られた米ドルも、英ポンドで両替するほど、とも言われています。
またイギリスはEU離脱が決定していますが、これまで通貨ユーロの利用はないものの、EU加盟国であり、これまでは英ポンドとユーロの値動きが連動することも多くありました。
しかしイギリスは2016年6月にEU離脱を決定しており、今後の英ポンドとユーロとの連動がどうなるかは、現段階では分かりません。
[図1:英ポンドのチャート]
まとめ
かつての栄光の歴史から、未だ主要通貨としての地位を保っている英ポンド。
しかしながら、その値動きは激しくクロスポンド通貨のFXトレードは、トレードの総合力を身につけている上級者向きと言っても過言ではありません。
またイギリスは国民投票を経てEU離脱を決定しており、今後の英ポンドの行方は、当の本人たちですら手探りの状況、とも言えます。
FXトレードでクロスポンドのトレードを行う場合は、上記を踏まえてしっかりとリスク管理を行いながら行うことが大切です。
ただし値動きが激しいため、うまくトレードできれば非常に収益機会の多い通貨です。
FXトレードの腕に自信がついた後に、腕試しとしてクロスポンドでのトレードを試してみてはいかがでしょうか?