インターネット回線を契約していると、ひんぱんに「新しい回線どうでしょう」という勧誘電話がかかってきます。
中には勧誘員の話術に乗せられて、うっかり契約してしまうというケースもあるのではないでしょうか。
この電話勧誘、ユーザーにとって有利なのか不利なのか、ずばり解説しましょう。
インターネット回線を契約していると、ひんぱんに「新しい回線どうでしょう」という勧誘電話がかかってきます。
中には勧誘員の話術に乗せられて、うっかり契約してしまうというケースもあるのではないでしょうか。
この電話勧誘、ユーザーにとって有利なのか不利なのか、ずばり解説しましょう。
インターネット回線の勧誘電話は、すでに何らかのインターネット回線を契約している人に対してかけてきて「いまどちらと契約されているでしょうが、◯◯ですね。では毎月◯◯円安くなる方法をご提案したいのですが」などという語り口で行なう営業活動です。
インターネット回線に加入しているかどうかについては事前準備がついているらしく、契約をしていない家庭にはほとんどかかってきません。
また、新規にインターネット回線を導入しないか、という内容の電話が、非加入家庭にかかってくることもほぼありません。
インターネット回線は、すでに加入してしまった人にとってはもう欠くことのできない生活の一部になってしまうのですが、そうでない人にとっては必ずしも必須ではありません。
非加入の人への勧誘電話がほとんどないのは、こうした事情が背景にあり、非加入の人に加入を勧めても効率が悪いためだと思われます。
先に述べたように、勧誘電話の大部分は新規加入を勧めるものではなく、何らかのインターネット接続手段を持っている人に対して乗り換えを勧めるものです。
断言はできませんが、何らかの方法で特定のインターネット回線に契約している人のリストを持っていて、これを使って電話をしているのでしょう。
このため、特定のインターネット回線と契約していると、高確率で勧誘電話がかかってきます。
中には、回線に契約した翌月にはもう「乗り換えませんか?」という電話がきた例があるそうです。
勧誘電話はあくまでも勧誘なので、利用者がそれに応じる必要はありません。
ただし、相手は時にこちらの理解があまり深くない技術的な用語まで駆使してしつこく誘ってくることもあります。
話を聞いているうちになんとなく応じた方がいいような気分になってしまうこともありますが、決して応じてはいけません。その理由については後述します。
インターネット回線の契約は、回線業者・プロバイダの2社と行なうのが基本です。
最近ではプロバイダが契約業務を一括するケースも増えています。
この回線業者・プロバイダの両者ともに、一般顧客に対して勧誘電話をかけることはありません。
電話をかけてくるのは、「代理店」と呼ばれる勧誘と契約仲介だけを業務とする第三の企業です。
街中にあるケータイショップのようなものだと考えればよいでしょう。
この代理店には、NTTやKDDIから業務委託を受けた正規のものと、非正規のものがあります。
正規の業者の方が当然勧誘トークの中身は信用できることが多いのですが、利用者の側からすれば、電話をかけてきた相手が正規代理店なのか非正規なのかはわかりません。
なお、各種のインターネット回線業者の中ではNTTの営業代理店が群を抜いて多く、勧誘電話をかけてくる業者の半分程度はこの系列の業者となっています。
インターネット回線の勧誘電話が多くなってしまう理由としては、まず「NTTの代理店は非常に数が多い」ということが挙げられます。
代理店を通して契約したからといって、利用者は代理店に対して仲介手数料を支払う必要はありません。不動産屋とは違うのです。
では、代理店はどのようにして利潤を得ているのでしょう。
代理店が契約を獲得すると、回線業者など営業を委託している企業から「報奨金」が支払われます。これが代理店の財源になるのです。
数人の人手と数本の電話回線があれば、「代理店」を立ち上げるのは簡単です。
このため、脱サラした人が新たな職業として始めたり、他人に使われるのをよしとしない若者が起業する場合の手段としてよく使われます。
他方回線業者の側ですが、相手が多少怪しくても契約さえ取ってきてくれるならそれでよし、となります。
それなりの報奨金を支払うことになりますが、それでも回線業者そのものが営業担当者を雇うよりもトータルコストは安くなります。
このためこれらの代理店は増殖を続け、せっせと一般利用者に勧誘電話をかけてくることになるのです。
電話勧誘を行なう代理店が扱う商材は、回線業者の側が「売りたい」と思っているものに重点が置かれます。
光ファイバーによるインターネット回線網が整備され、普及し始めた頃は、「とにかく光回線の契約数を稼げ」というのが至上命題になっていました。
光ファイバーのインフラ整備には、莫大な費用がかかります。
その費用を回収するためには、とりあえず多数の契約者を獲得して、一般的な情報インフラとして光回線を定着させなければなりません。
このため、回線業者としては一時的な赤字を覚悟しつつ、多額の報奨金を代理店に払って、ユーザーの獲得につとめてきたのです。
具体的には、このユーザー獲得の対象となったのは、NTTの「フレッツ光」です。
他の通信インフラよりも報奨金の額が高額になるので、それに釣られて多くの代理店が、フレッツ光の営業を行いました。
しかし、現在では光回線もある程度普及し、インターネット接続用の固定回線としてはほぼスタンダードとしての地位を確立しました。
昔ほど熱心に「新規加入」をかき集めなくてもよくなったのです。
他方、フレッツ光に対しては、回線業者とプロバイダの個別契約がユーザーにとってわずらわしい、という指摘がなされるようになります。
さらには、この欠点を突いて「うちだと回線・プロバイダ契約一括で面倒がありません」と主張する回線業者が増えてきたのです。
NTT側ではこれに対抗するため、「光コラボレーション」というサービスを展開するようになりました。
光コラボレーションは、フレッツ光と同じ回線を使用し、サポートと料金徴収をプロバイダに一括するサービスです。
NTTとしては、顧客が通常のフレッツ光ではなく光コラボレーションに移行してくれれば、料金徴収とサポートのコストが削減できるので、光コラボレーションへの移行に力を入れるようになります。
その結果、代理店への支払いの中心も、「フレッツ光の新規契約獲得」から「光コラボレーションへの移行」にシフトしていきます。
インターネット利用者の自宅にかかってくる勧誘電話のほとんどが「光コラボレーション」か、それと直接競合する「auひかり」系のサービスになっているのには、こうした理由があるのです。
いずれにしろ、回線業者の側に、代理店を使ってでもそれを普及させた方が好都合な理由があり、営業を代理店に委託する限り、勧誘電話はなくなりません。
ちょっと話を戻しましょう。
「回線業者は、営業を代理店に委託すれば人件費を減らせて有利になる」という意味のことを書きました。
でもこれ、よく考えるとちょっと変ですよね。
月に数本しか売れないような商品であれば、その営業担当者を自社内に置くより、営業そのものを外部委託してしまった方が得です。
ただ代理店の方は、回線業者の側が「非効率だから」と外に投げてしまった仕事を拾い、営業担当者に給料を支払い、なおかつ会社法人を維持しなければならないことになります。
この矛盾は、どう解決されているのでしょう。
端的に言えば、営業代理店のほとんどは、「自社の従業員の待遇を極端に悪化させることにより、利益をひねり出している」のです。
つまりブラック企業化ですね。
これは経営者が悪人であるか否かとは関係ありません。
営業代理店という業種の性格上、どうしてもそうなってしまうのです。
このため営業代理店の従業員には、非常に厳しいノルマが課せられます。
だから営業代理店に勤務してしまった人は、各種の資料を集め、せっせと勧誘電話をかけることになるのです。
営業代理店の従業員は、ノルマに追われているので、頭の中はとにかく「ノルマをこなさなくちゃ」という考えでいっぱいです。
今自分が取り扱っている商品が、果たしてユーザーにとって有益なのかどうかなどは、あまり考えません。
逆にその点を考えてしまうと、こんな商売は続けていけなくなります。
この「契約獲得至上主義」的な考えは、頻繁にユーザーとの間にトラブルを引き起こすことになります。
先に述べた通り、通信回線の営業代理店は根本的に「ブラック」でなければ経営が成り立たない構造となっています。
それでも、経営者が自社の従業員を酷使することによってのみ利益をあげよう、と考えていれば被害はさほど大きくはならないのですが、「従業員だけでなく顧客も絞り上げよう」と考える経営者が出てきても不思議でもなんでもありませんね。
こうした悪徳代理店の場合、ユーザーと書類を交わして契約をした後、実際の工事等は行わずにそのまま逃亡してしまうようなこともあります。
代理店にすれば、回線業者から報奨金を貰えればそれでいいので、報奨金を貰える段階まで手続きを進めてしまえば、あとはどうでもいいのです。
こうした被害を防ぐためには、勧誘電話の内容を注意深く聞いて…と言いたいところですが、電話による勧誘には一切対応しない、と決めてかかってしまうのがもっとも効率的です。
電話勧誘の代理店は、回線業者からの報奨金の大部分を従業員の人件費等に使ってしまうので、これを通してもキャッシュバック等のキャンペーンが受けられないことがほとんどです。
ユーザーにとっては電話勧誘を選ぶメリットがありません。
代理店の中には、勧誘用の従業員を雇わず、ホームページだけで営業活動を行なう「ネット代理店」が存在します。
ネット代理店は、電話勧誘を行なう代理店とは性格が全く異なります。
最大の違いは、従業員を雇わないので「ブラック」にはなりにくいという点でしょう。
また、顧客とユーザーとを契約させればそれでおしまい、とばかりに逃亡することが困難ですから、信頼性も電話勧誘業者とは比較にならないぐらい高くなります。
電話勧誘がお勧めできない最大の理由は、決断までの時間が限られていて、考えるための十分な時間が与えられない、というものです。
逆に言うと、勧誘員としては早い段階で利用者を自分のペースに巻き込み、思考力を奪って契約を勝ち取ってしまおうとしているわけですから、その手に嵌まると大損をすることになります。
こうした電話勧誘とは真逆の性格を持つのが、ネット勧誘です。
ネットの場合、どんなに時間をかけて説明内容をじっくりと読んでも、誰にも咎められません。
また、複数の勧誘ページを参照すれば、どこのサービスが一番よいか比較することもできるのです。
ネット上には、ネット代理店の情報だけでなく、その代理店が扱っているサービスの内容についての口コミ情報なども多数存在します。
これらを吟味していけば、代理店のページにはない情報、隠している情報なども見つけ出すことができ、より有利な業者を選べるようになります。
ただし、ネット上の口コミ情報は、あくまで「個人の意見」にとどまっているケースも多く、それらを鵜呑みにせず、内容を吟味していく姿勢が求められます。
ネット代理店は、従業員を雇っていないか、いても少数であることがほとんどなので、契約の報奨金は代理店とユーザーで分け取り、という形にすることができます。
この場合のユーザーの取り分は、キャッシュバックなどのキャンペーン特典として提供されます。
また、ネット代理店は営業範囲が全国規模で、宣伝の進め方によっては従業員を雇う場合よりもずっと効率的にビジネスを運営できるようになっています。
これも、キャッシュバック等が多くなる理由となっています。
回線業者やプロバイダが個別にキャンペーンを実施している場合、ネット代理店のキャンペーン特典をそれに上乗せできるので、「お得度」はあらゆる申し込み方法の中で最大となることも珍しくありません。
「電話勧誘」は従業員の酷使が前提となっているので、デフレ・不景気の時代には比較的有利なビジネスでした。
しかし、現在日本は長期にわたると考えられる大人手不足時代の入り口に差し掛かっていると見られており、余剰の労働力が豊富にあることが絶対条件であるこの手の企業は経営が難しくなります。
なので、今はやかましい勧誘電話も、徐々にではありますが減っていくことでしょう。
なくても別に困るというものではありませんから、かからなくなるまで電話勧誘は残らず「結構です」と一言言って電話を切ってしまう、という対応でよいと思われます。
実は、「即切り」の方がすぐ次の勧誘電話をかけられて時間が無駄にならないので、勧誘員にとってもメリットのある方法でもあるのです。