「NURO光」は他の光回線と比べると極めて高速な下り最大2Gbpsでのサービスを行っています。
他回線の倍の速度なのですが、それでいて月額料金は「フレッツ光」などよりも安めになっています。
この速さと安さの秘密を、すべて説明しましょう。
「NURO光」は他の光回線と比べると極めて高速な下り最大2Gbpsでのサービスを行っています。
他回線の倍の速度なのですが、それでいて月額料金は「フレッツ光」などよりも安めになっています。
この速さと安さの秘密を、すべて説明しましょう。
「NURO光」は、光ファイバーケーブルを使ったインターネット接続サービスです。
光ファイバーは、現在インターネット接続用として使われている媒体の中でもっとも高速です。
光ファイバーケーブルでのインターネット接続が提供されるようになった初期段階では、最大速度は100Mbpsでしたが、その後1Gbps程度まで増速されています。
これは光ファイバーケーブルの転送速度の上限が上がったためではありません。
確かに光ファイバーケーブルの転送速度向上の研究は続けられており、2015年には10Pbpsでの通信のめどがついた、と言われるようになりました。
Pbpsの「P」は「ペタ」と読み、G(ギガ)の1024倍であるT(テラ)のさらに1024倍です。
光ファイバーそのものの持つポテンシャルは、このようにずば抜けており、古いファイバーでも現在個人向けに提供されている通信速度は楽に出せるのです。
大抵の場合、一般ユーザー向けの光回線が遅くなるのは、光ファイバーではなく、光ファイバー同士を接続する回線業者側の設備インフラが追いついていないことが原因となっています。
NTT東西のように全国規模で光回線接続サービスを提供している場合、増速するためには大幅な機器の入れ替えが必要になります。
逆に、小回りの効く業者であれば、全体的な予算が小規模でも機器の入れ替えが可能になります。
「NURO光」では、NTT東日本が構築した光ファイバー網のうち、現在使用されていない回線(ダークファイバー)を使用してサービスを提供しています。
回線網を自前で持つのではなく、レンタル料を支払って利用させてもらっているのです。
このためすべてを自前で構築するよりもコストは安くなります。
ちなみに、かつてはUSENなども同じようにダークファイバーを使った光回線接続サービスを提供していました。
こちらも、同じ時期のNTTによる光回線サービスより安価に提供されていたのです。
「NURO光」は関東1都6県のみを提供エリアとしてサービスを開始しています。
その後数年経過しまし、1都6県内では利用できる地域を広げましたが、他県にエリアを拡張はしませんでした。
また、集合住宅については、マンション建築時に光ファイバーを建物に導入させるということをせず、利用希望者が複数(現在では4名以上)出てから工事を行なうというやり方を取っています。
この方法だと、利用するユーザーが少ないのに回線導入工事を行ったり機器を用意したりする必要がなくなり、結果的に提供価格を下げることができるようになるのです。
なお、提供エリアを一地方に限定しているサービスとしては、他に電力会社系の光回線があります。
こちらの場合、基本的に提供エリアは親会社になっている電力会社のサービス地域よりも広くなることはありません。
このため、ネットワーク接続用の機器の調達コストが安くなり、「NURO光」同様に安価でサービスを提供できるようになるのです。
電力会社系の光回線の場合、電力用の送電線を利用してファイバー網を構築できるため、この点でもコストを引き下げられます。
このアイディアも、自前で回線すべてを持たずにレンタルで安く済ませる「NURO光」のやり方に似ています。
というより、「NURO光」は電力会社系の光回線サービスを参考にして、独自のリーズナブルなサービス体型を組み立てていったと表現した方が、より正確なのではないかと思われます。
インターネット接続が一般化したばかりの時期は、みんな電話回線とアナログモデムを使用していました。
電話回線を使っての通信サービスを提供する業者はほぼNTT東西しかありませんでした。
その回線の方も本来は音声通話用で、誰もがインターネット接続をするわけではありませんでしたから、インターネットの利用者は、回線使用料(電話代)とインターネット接続料を別々に払っていたのです。
この「インターネット接続料」がいわゆる「プロバイダ代」になります。
その後ADSLが登場した時も、このやり方は踏襲されました。
しかし、携帯電話によるインターネット接続が普及すると、状況が変わってきます。
携帯電話によるインターネット接続の場合、回線業者(ドコモやau、ソフトバンクなどのキャリア)がそのままプロバイダになります。
つまり、回線利用料金とインターネット接続料金が一括徴収されるようになったのです。
この結果、インターネット利用者は回線料金とプロバイダ料金を一括して徴収するやり方に慣れてしまい、こちらがスタンダードだと考えるようになりました。
本来の正統派だったはずの回線・プロバイダ料金別徴収というやり方が少数の「ちょっと変わった方法」に変化してしまったのです。
回線料金とプロバイダ料金を個別に徴収するというやり方は、「その回線を利用する人すべてがインターネットに接続するとは限らない」という状況下ではそれなりに合理的でした。
しかし光回線のように、回線契約をした人のすべてがインターネット接続を利用する、という状態になると、わざわざ分ける必要が薄れてきます。
料金徴収の窓口が分かれている、ということは回線業者とプロバイダのそれぞれに徴収用の人員を配置しなければならない、ということになります。
当然、それぞれに人件費がかかります。
携帯電話のようにこれを一本化すると、人件費が節約できるようになり、その分利用者への提供価格を下げることができるのです。
「auひかり」は、回線契約とプロバイダ契約は別々ですが、料金徴収はプロバイダが一括して行なう方法を取り入れました。
その後、NTT側でも、サポートと料金徴収をプロバイダに一括して委託する「光コラボレーション」という新しいサービスを提供するようになりました。
このため、同じ光回線を使用するサービスであるにも関わらず、「光コラボレーション」はそれまでの「フレッツ光」よりも安価になっています。
「NURO光」の場合、そもそも回線業者とプロバイダとが分かれていません。
このため、料金徴収の窓口もサポートの窓口の一つしかありません。
当然、余計なコストがかからず安価にサービスを提供できるようになるのです。
日本の光ファイバー網においては、「GEPON(ジーポン)」という通信方式が用いられています。
これは、ローカルネットワーク接続に使われるイーサネットの信号を、そのまま光ファイバーケーブルに通すというものです。
家庭用の一般的なイーサネットによるネットワークの上限は約1Gbpsです。
これはルーターやハブ、ネットワークアダプタといった機器の性能限界が1Gpsだからです。
「GE-PON」準拠の通信機器は、このイーサネットの通信方式に準じているので、上限速度は1,25Gbps程度になります。
つまり提供エリア内の通信機器をすべて更新しない限り、これ以上の速度は出せないことになります。
ところが「NURO光」では、「GPON」という通信方式を採用しています。こちらの通信速度の上限は、2.48Gbpsです。
ちなみに、「NURO光」では、「GPON」とよく似た規格である「BPON」準拠の機器を使用しています。
「BPON」は海外で広く普及しているので(ただし最高速度はGE-PONよりもさらに低速です)、安価に導入できます。
この安価な機器で、「GPON」規格に基づいた高速通信を行っているので、トータルコストをNTTやKDDIよりも安価にすることができるのです。
「NURO光」と契約すると、「ホームゲートウェイ」と呼ばれる機器が送られてきます。
光回線を使ってパソコン等をインターネットに接続する場合、パソコン等の家庭内ネットワークで使われるイーサネットと光ファイバーを接続する「終端装置」「ONU」と呼ばれる機器が必要になります。
これに加え、複数の端末でインターネット接続を共有する場合には、ルーターが必要になります。
さらに、端末との接続が無線になる場合には、無線ターミナルアダプタ(無線親機)と呼ばれる機器が要ります。
「NURO光」の「ホームゲートウェイ」はこの3種類の機能が一体になったものです。
ルーターや無線ターミナルアダプタの性能は日々進化しています。
この性能が低ければ、高速通信は行なえません。
「NURO光」の場合、「ホームゲートウェイ」に内蔵されているルーター・無線ターミナルアダプタ機能は、実用に供されている最速レベルの規格に準拠しています。
ですから、光ファイバーの能力を損なわない高速接続ができるのです。
なお、「ホームゲートウェイ」に搭載されている無線ターミナルアダプタの最高速度は約450Mbpsです。
つまり、無線接続をした時点で最高速度はここまで落ちます(とはいえ現在ある他のどの無線接続よりも高速なのですが)。
また、「ホームゲートウェイ」とパソコンの間を高速通信に対応したケーブルで接続しないと速度が落ちます。
さらに、パソコン側のネットワークアダプタに関しては、標準搭載のものではなく、10GBASE-Tという規格に準拠したカードを購入して増設してやる必要があります。
「NURO光」の速度と安さは、技術の投げ売りやバーゲンの結果ではなく、きちんとした分析と計画に基づいて構築されたものです。
ですから、今後状況の変化によって、月額料金がいきなり高騰するということはまずありません。
ただし、現在家庭内ネットワークで最大2Gbpsという速度を実現するためには、それなりの投資をしてネットワーク機器を揃えなければなりません。
こちらの投資額を考えると、回線料金が1,000円安いとか500円安いとかはあまり問題にならなくなってしまう、というのは頭の隅に置いておいた方がいいかも知れません。