「光回線は途中でプロバイダだけ契約を切り替えるもの」という話が、自称「通」なユーザーの間で語られていました。
それにはそれなりの理由がきちんとあったのですが、現在では通用しにくくなっていることも確かです。
ここでは、光回線のプロバイダ乗り換えがなぜ有利だったのか、そして今ではどうしてそうではないのかについて解説します。
「光回線は途中でプロバイダだけ契約を切り替えるもの」という話が、自称「通」なユーザーの間で語られていました。
それにはそれなりの理由がきちんとあったのですが、現在では通用しにくくなっていることも確かです。
ここでは、光回線のプロバイダ乗り換えがなぜ有利だったのか、そして今ではどうしてそうではないのかについて解説します。
インターネットへの接続は、「電話回線+アナログモデム」から始まりました。
つまり、すでに存在する通信回線の上に、通話とは別のサービスを重ねる形で提供されたのです。
このため、インターネットに接続しようという人は、通信回線、つまり一般電話回線以外に、インターネットへの接続サービスを提供する企業と契約し、インターネットを利用することになりました。
この接続サービスを提供する企業が「プロバイダー」です。
一般電話回線を使う人すべてがインターネットへの接続を希望するわけではなかったので、インターネットユーザーは電話回線の料金とは別に、プロバイダーに接続料を支払っていました。
その後ADSLを経て光ファイバーによるインターネット接続が提供されるようになりました。
光ファイバーは電話とは独立したインターネット接続専用の回線です。
しかし、料金体系としては古い一般電話回線のものがそのまま踏襲されます。
つまり、回線を持っている業者に回線利用料を支払い、プロバイダーに接続料を支払うことになったのです。
日本でもっとも早い時期に光ファイバー回線を一般に提供し、もっとも大きなシェアを握ったNTTの「フレッツ」がこうでした。
回線の契約がプロバイダーと完全に独立しているので、「プロバイダーだけ解約して、回線契約はそのまま」ということが可能でした。
もちろん、あるプロバイダーと解約した後に、他のプロバイダーと契約すれば、同じ回線を使ってインターネット接続を継続できます。
これが「乗り換え」です。
携帯電話の例を見ればわかるように、通信会社はシェアを上げるために、他の業者と契約していた人がそのサービスを解約し、自分のところに乗り換えてくれると、各種の特典を重くするるという傾向がありました。
そのかわり、どれだけ長期に渡って一つのサービスを利用していても、これといった特典は与えられなかったのです。
これも携帯電話のケースと同じです。
このため、プロバイダーを乗り換えた方が契約時の各種特典を何度も受け取ることができてお得、ということになってしまったのです。
光回線を導入する場合、利用者にとって大きな負担となるのは、光ファイバーを自宅まで導入するための配線工事費です。
しかしフレッツの場合、回線とプロバイダーが別契約となっていますので、プロバイダーを解約しても回線の撤去工事は行われません。
プロバイダー解約後すぐに同じ回線を使って別のプロバイダー経由での接続が可能なので、工事費をまるまる浮かせることができるのです。
最大の負担である工事費を負担せず、プロバイダーの新規契約によるキャンペーンや特典だけを受けることができるため、「乗り換えれば乗り換えるほど有利」という状況ができたのです。
もっとも、プロバイダー側ではキャンペーンや特典で釣ったお客にすぐ逃げられてはたまりませんから、「一度契約したら◯ヶ月間は解約不可です。
解約したら違約金を申し受けます」というルールを作ってきます。
この点も、携帯電話と全く同じ流れですね。
上で説明したように、長い間「フレッツ」では回線とプロバイダーを別契約とするシステムを採用していたのですが、これがユーザーから批判を浴びるようになります。
料金の支払い窓口、サポートなどが二つに分かれてしまうのが「面倒だ」と言われるようになったのです。
特に昔を知らないユーザーからは、「インターネットに接続するというひとつのサービスなのに、どうして契約が二系統なの?」と不思議がられる始末です。
そこでNTTでは「光コラボレーション」という新しいサービスを開始します。
これは光インターネットの契約窓口をプロバイダーに一本化する、というものです。
NTTとの回線契約は当然行われるのですが、ユーザーが直接NTTと行なうのではなく、プロバイダーを経由することになります。
このシステムだと、サポートや営業窓口の一本化によって人件費が節約できるため、利用料金を安くすることができました。
また、すでにフレッツで光回線を導入している場合、改めて回線工事を行なう必要がなく、プロバイダー変更と同等の「転換キャンペーン」等の適用を受けることができるようになりました。
このため、多くのプロバイダーが「光コラボ」の導入を進め、「フレッツ」ユーザーに対して「光コラボ」への乗り換えを勧めるようになってきています。
「auひかり」は、元々はフレッツのライバル商品として登場してきました。
提供エリアがフレッツよりも狭かったため、フレッツからの乗り換え顧客の方が多めだったのです。
このような性格を持っていたため、「光コラボ」が登場すると、こちらが直接的な競合相手となりました。
auひかりは、回線とプロバイダ料金とをセットで徴収するシステムだったため、光コラボと非常によく似ていたのです。
光コラボは、回線とプロバイダ契約をセットにしているため、プロバイダだけの「乗り換え」ということをほとんど考慮していません。
これはauひかりでも同様です。
原則的には、光コラボもauひかりも、プロバイダーを変えようとした場合には回線契約そのものも解約しなければなりません。
WiMAXなどの無線系のインターネット接続の場合、技術の進歩が早く2年も経てば今使っている端末は間違いなく陳腐化するので、更新月が来たらすぐに別の業者に乗り換え、最新の端末を入手した方が有利になります。
しかし、光回線の状況はそうではありません。
現在、光回線の速度は1Gbpsが標準となりましたが、ほんの少し前まで100Mbpsでした。
一気に10倍になったわけですが、光ファイバーケーブルを引き直したわけではありません。
光ファイバーケーブルそのものの余力はまだまだあるので、ケーブルの引き直しを行わなくてもさらに増速することは可能なのです。
光回線が1Gbps化した結果、家庭内のネットワークの速度が追いつかず、こちらが低速化の原因となる現象が多発しました。
今でも、かなり注意深く家庭内ネットワークの構築を行わないと、1Gbpsの能力を十分に生かすことはできません。
このような事情があるため、「光回線は一度引いたらそうそう業者を変える必要のないもの」とみなされています。
純粋に利用者の立場になってみれば、新規に契約した場合各種のキャッシュバック等の恩恵を受けることができ、プロバイダを変えるたびに利益を重ねることができるように思われます。
しかし、技術的には上で述べた通りで乗り換えの必要があまりないため、乗り換えのための環境は整備されていません。
プロバイダーとの契約を解除するためには、回線そのものの契約解除がセットになってついてきます。
光回線、特に一戸建て向けのサービスに加入した場合、初期の重い負担となるのが工事費です。
逆に言うと、工事費さえなんとかできれば、光回線を新規に導入してもユーザー側にはさほどの負担にはなりません。
すでに述べたように、auひかりのプロバイダを乗り換えるためには一度auひかりの回線も解約し、もう一度別プロバイダとセットのauひかりと契約しなければなりません。
しかしこの際、工事費をうまく最小限に抑えることができれば、ユーザー側の出費は最小限で済み、プロバイダのキャンペーン特典などによって「元を取れる」可能性が出てきます。
実は、光回線は解約したら即ケーブルを全撤去するなどということは行われません。
宅内引き込みまではそのまま残していき、終端装置のみを回収するというのが通常です。
ですから解約後再工事をするとはいっても、ほとんどの場合工事の内容は終端装置の再接続とチェックだけになり、新規導入の場合ほど大規模にはならないのです。
どういう場合でも必ず回線が残されるというわけではないので、その辺は工事業者によく話を聞く必要がありますが、回線を取り払って再工事という場合でも、一度光ファイバーを引き込んだ住宅ならファイバーを通した穴が残っているので、やはり新規導入の場合よりは工事は簡単になり、安く上がる可能性が高くなります。
回線ごと全部一度解約し、別プロバイダーで新規契約すれば、実質的なプロバイダーの乗り換えが可能になります。
その際の手順は以下のようになります。
希望するプロバイダーでauひかりの新規契約をします。
先に新しい回線の契約が必要なのは、auひかりの場合契約から工事までの間隔が長く、契約を後回しにするとインターネットを利用できない期間が長くなる恐れがあるためです。
契約後、スケジュールに従って工事が行われます。
回線の工事はエリアごとに作業する業者がほぼ決まっていて、「旧回線」の撤去もほとんどの場合同じ業者になります。
このため、事情をきちんと話せば、手間が最小限になるように旧回線を使って工事費が最小限になるように計らってもらえるかも知れません。
このあたりは、直接担当する方次第という部分があります。
開通したら、元のauひかりの契約を解除します。
工事業者との話がまとまっていれば、先の工事が行われた際に終端装置の付け替えが済んでいるはずなので、基本的には外した終端装置を送り返せば「撤去工事」は終了です。
なお、プランによっては更新月以外に解約すると違約金が取られますし、プロバイダーのキャンペーン適用外になって、それまでの割引分の負担を求められることがあります。
契約更新月と違約金の金額の確認をしておきましょう。
「乗り換え」によって逆に負担が増えたというのでは、乗り換えの意味がなくなります。
工事業者ときちんと打ち合わせをしておきましょう。
段取りがうまくできていないと、余計な工事が行われ、出費が増えます。
解約時に回線を撤去されないようにしましょう。
ここも工事業者との打ち合わせ次第です。
auひかりも光コラボも、プロバイダのみの乗り換えというのはほとんど考慮されていません。
しかし、契約は解約されることも織り込んだ上で各種条件が作られるべきものであり、今後しっかりとしたルールが作られていくものと思われます。
それまでは、裏技のような方法を使って、プロバイダーの乗り換えをしていくことになるでしょう。