平成27年度に贈与税が改正され、贈与税率が実質アップとなりました。また、贈与する側が直系尊属であるか、そうでないかによって税率も二つに分類されました。
贈与税は、相続税逃れを防ぐために相続税よりも税率が高く設定されています。
ここでは、贈与税についてや、実際に贈与を受けた場合、どれくらいの贈与税を支払わなければならないのか、ということについて実際に計算しながら解説していきます。
贈与税とは?
贈与税とは、生きている間に個人から財産を譲り受けたときにかかる税金のことをいいます。法人から財産を受け取った場合は「所得税」となり、個人からもらうのか、法人からもらうのかによって税金の種類が異なります。
金銭の授受だけではなく、不動産などの財産を譲り受けたときにも税金がかかってきますので注意が必要です。
贈与税と相続税の違いとは?
贈与税と相続税の違いとは何でしょうか。
これは、財産を譲る人の状態によって分けられます。
生きている人の財産を譲り受ける場合は贈与税、死亡した人の財産を譲り受ける場合は相続税、と決められています。
相続税率は高いことで有名です。
しかし、相続税逃れを防ぐため、贈与税の税率は、相続税の税率よりもさらに高く設定されています。
これは、相続税がかかるのを避けるために、生前に財産を全部贈与してしまおう、といったようなことが起こらないようにと考えられたものです。
しかし、平成27年度の税制改正により、相続税が引き上げられ、2億円超3億円以下の税率は40%から45%に、6億円を超える資産への税率は50%から55%相続税率となりました。
相続税と贈与税の最高税率はどちらも同じ55%となったこととなります。
しかし、贈与税の場合は、「一般贈与財産」では3000万円以上、「特例贈与財産(直系尊属からの贈与)」でも4500万円以上の贈与で最高税率の55%がかかってきますので、贈与税の方がかなり高い税率構造になっているとわかってもらえるのではと思います。
贈与税率は一般税率、特例税率の2種類がある
平成27年度の贈与税改正により、贈与税率が変更されました。
今までは、誰からの贈与でも区別なく税率が設定されていましたが、この改正以降、税率は2つのパターンに分けられ、「一般の贈与」と「直系尊属からの贈与」で異なる税率が設定されました。
これにより、贈与税を計算するときには「誰からの贈与か」ということを考慮に入れなくてはならなくなりました。
一般の贈与には「一般税率」が、直系尊属からの贈与には「特例税率」が適用されます。
特例税率が適用される条件は「直系尊属からの贈与」であることの他に、かつ贈与される側が「財産の贈与を受けた年の1月1日において、20歳以上であること」と定められています。
直系尊属とは、自分よりも上の世代で、直接血がつながっている者のことをいいます。父母や祖父母が直系尊属にあたります。
兄弟姉妹は同じ世代ですので、血がつながっていても「直系尊属」とはなりません。また、配偶者の父母や叔父、叔母も直系尊属とはなりません。
養子縁組をした場合の養父母は直系尊属に含まれます。
贈与税率はどれくらい?
贈与税率は、一般税率と特例税率で少し違いがあります。それぞれの税率と、控除額は以下となっています。
特例税率
基礎控除後の課税価格 | 贈与税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | 0円 |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1000万円以下 | 30% | 90万円 |
1500万円以下 | 40% | 190万円 |
3000万円以下 | 45% | 265万円 |
4500万円以下 | 50% | 415万円 |
4500万円超 | 55% | 640万円 |
一般税率
基礎控除後の課税価格 | 贈与税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | 0円 |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1000万円以下 | 40% | 125万円 |
1500万円以下 | 45% | 175万円 |
3000万円以下 | 50% | 250万円 |
3000万円超 | 55% | 400万円 |
ふたつの税率を比べてみると、直系尊属以外からの贈与である「一般税率」の方が、税率が高く設定されており、かつ控除額も少なくなっています。
贈与税を実際に計算してみよう
特定税率が適用される財産のことを「特例贈与財産」と呼び、一般税率が適用される財産のことを「一般贈与財産」と呼んでいます。それでは、それぞれの贈与税を計算してみましょう。
計算式としては、「基礎控除後の課税価格」×「一般税率もしくは特例税率」―控除額=贈与税額 となっています。
(例)Aさん(25歳)は祖父のBさん(70歳)から贈与により、現金500万円と株式500万円の贈与を受けました。
この場合の計算式を見てみましょう。贈与された財産は合計1000万円です。この1000万円から基礎控除額の110万円を引いた額が「基礎控除後の課税価格」となりますので、
(1000万―110万)=890万円が課税価格です。課税価格は890万なので、1000万円以下の特例税率を見て、
890万円×30%―90万円=267万円―90万円=177万円
となります。
もし、Aさんが直系尊属ではない人から贈与された場合は、一般税率を適用しますので、
890万円×40%―125万円=356万円―125万円=231万円
となります。
それでは、特例贈与財産と、一般贈与財産を同じ年度に贈与された場合はどうなるでしょうか。
(例)Aさんは、母親から現金400万円、兄から不動産を100万円贈与されました。贈与税はどうなりますか?
まず、基礎控除を引かなくてはならないのですが、基礎控除は贈与の件数ごとではなく、一人につき110万の控除となっています。
よって、まず両方の金額を足し、そこから基礎控除分を引きます。
400万円+100万円―110万円=390万円
ここから、両者を計算します。
特例財産分
(390万円×15%―10万円)×(5分の4)=48万5000円×(5分の4)=38万8000円
一般財産分
390万×20%―25万円)×(5分の4)=10万6000円
と、このように計算します。
税金は合計して、38万8000円+10万6000円=49万4000円 となります。
贈与税の節税方法は?非課税制度を利用する
贈与税は税率が高く設定されていますが、高齢者の財産を早い時期に若い世代に渡して、お金を使ってもらおうと政府が考えているため、景気刺激策として、様々な非課税制度が設定されています。
例としては、住宅資金贈与の非課税枠、教育資金一括贈与の非課税枠、贈与税の配偶者控除、相続時精算課税制度、結婚や子育て資金の一括贈与の非課税制度などが挙げられます。
これらの非課税枠を賢く活用すると、節税対策、相続対策になる場合もあります。
しかし、どの制度にもメリットとデメリットがありますので、利用する際には慎重に考えることが大切です。
まとめ
日本ほど相続税が高い国はあまりなく、相続税と贈与税が高いことが日本の特色とも言えるかもしれません。
国が相続税を高く設定している理由としては、富の集中を防ぐため、また、一生懸命働いて得たお金と、何の苦労もなく親から引き継いだお金とを同じ税率にしないためでもあります。
両方が同じ扱いだと、一生懸命働くことの価値が損なわれるといった考えがあるからです。
贈与税、相続税ともに最高税率は55%ですから、富裕層にとって見れば理不尽にもうつるこの制度ですが、平成27年度の改正によって相続税、贈与税の税率が実質アップしたことからもわかるように、政府の姿勢としてはこれからも、資産を多く持つ人に対しては高い税率を掛けて税金を徴収する意向のようです。
贈与税や相続税の仕組みをよく理解し、できるだけ節税ができるように考えていかなければならない時代であるといえるでしょう。