新しく住宅を購入するときに、親からその資金を贈与される人が増えています。また、近年の低金利により、住宅ローンの借り換えをする人も多くなっています。
しかし、住宅ローンと贈与の仕組みをきちんと理解しておかないと、予想外に課税されてしまったり、住宅ローン控除の額が減ってしまい、実質損をすることもあるのです。
ここでは、住宅と贈与にはどのような関係があるのかということを解説します。
しっかりとこれらの知識を身に付けていきましょう。
新しく住宅を購入するときに、親からその資金を贈与される人が増えています。また、近年の低金利により、住宅ローンの借り換えをする人も多くなっています。
しかし、住宅ローンと贈与の仕組みをきちんと理解しておかないと、予想外に課税されてしまったり、住宅ローン控除の額が減ってしまい、実質損をすることもあるのです。
ここでは、住宅と贈与にはどのような関係があるのかということを解説します。
しっかりとこれらの知識を身に付けていきましょう。
新しく住宅を購入する場合に使える贈与の非課税制度は「住宅資金贈与の特例」です。
直系尊属からの贈与であること、また贈与を受ける側が、贈与を受けた年の1月1日に20歳以上である必要があります。
また、年収が2000万円以下の人とされており、所得制限が設けられています。
これらの条件を満たすと、非課税で贈与を受けることができます。最大どれくらいの金額を贈与してもらえるか、ということは購入する住宅の種類・品質によります。
エコ住宅と呼ばれるような、一定の省エネ基準や耐震基準を満たしている住宅は評価が高く、そのような住宅は一般の住宅よりも非課税額が多く設けられています。非課税で贈与をしてもらえる最大額はこのようになっています。
・平成28年1月1日~平成29年9月30日まで通常住宅 : 700万円 良質な住宅 : 1200万円
・平成29年10月1日~平成30年9月30日まで通常住宅 : 500万円 良質な住宅 : 1000万円
・平成30年10月1日~平成31年6月30日まで通常住宅 : 300万円 良質な住宅 : 800万円
父母や祖父母にもし余裕があるならば、非課税で贈与してもらえれば住宅ローンを組む額が少なくてすみますし、相続財産を減らすことができるので相続税対策にもなります。
住宅資金贈与の特例は多くの人に利用されていますが、住宅ローン控除との関係を理解して、贈与を受ける金額をしっかりと計算することが必要です。
なぜならば、贈与の額が多すぎると、住宅ローン控除の額が少なくなってしまうことがあるからです。
贈与によって、住宅ローン控除に影響が出るかどうかを考えてみましょう。
住宅ローン額3000万円+贈与額1000万円=4000万円となり、住宅購入価格を超えないので影響はありません。
住宅ローン額3000万円+贈与額1200万=4200万 となり、住宅購入価格を超えてしまいます。この場合は影響が出てきます。
住宅ローン控除は、居住用家屋を取得するためのローンに対して設けられた優遇税制です。
上記②の場合、通常であれば、3000万円の借り入れ額に対して控除がなされますが、住宅購入価格を超えた場合、その200万円分は住宅ローンとみなされなくなってしまうのです。
つまり、3000万円―200万円=2800万円と計算し、住宅ローン控除対象額は2800万円と判断されることとなります。
できるだけ多く控除を受けた方が得となるのですが、この場合は200万円にかかる控除が減らされることとなります。
住宅ローン控除が減るのは困るけれど、贈与もできるだけ多くもらいたい、というのが住宅を購入する人の本音ではないでしょうか。
こういった場合の対策としては、暦年贈与を使うとうまくいきます。
住宅資金贈与の特例分を1800万円に減らし、それとは別で暦年贈与を使って贈与してもらうのです。
暦年贈与分は、どのような用途に使っても問題ありませんので、住宅ローン控除に影響してくることはありません。
住宅資金贈与の特例と暦年贈与は併用できますので、初年度と次の年の2回に分けて、残りの200万円を贈与してもらえば、贈与税がかかることもありません。
住宅資金贈与の特例で贈与を行う場合、贈与できる最大額は、購入する住宅が「どのような住宅か」ということによって大きく変わってきます。
省エネ対策等級4級以上を満たしているかどうか、耐震等級2級以上や免震建築物かどうか、低炭素排出基準を満たしているかどうか、バリアフリー基準を満たしているかどうかなどの基準を満たしているかどうか、ということが重要です。
これらの条件を満たしているかどうかを客観的に証明してくれる書類が「住宅性能証明書」です。
この証明書は、「贈与税非課税措置の対象住宅である」ことを証明してくれます。贈与を非課税にするためには、新築住宅、中古住宅、増改築等にそれぞれ満たさなければならない基準があります。
この証明書を添付して申告して初めて、住宅資金贈与の特例を適用してもらうことができますので、とても重要な書類です。
これらは、一般社団法人 住宅性能評価・表示協会の会員機関が発行していますので、最寄りの会員を調べ、証明書を発行してもらうようにしましょう。
住宅ローンの借り換えをした場合、予想外に贈与税がかかってしまう場合があります。どのような場合にそのようになってしまうのでしょうか。
例えば、住宅の購入時は共働きであったため、それぞれの名義で半分ずつローンを組んでいた場合です。
10年後借り換えをしたときは、妻は子育てで忙しく、正社員ではなくなり、専業主婦であったり、パートだったりしたときは、新たに借主として住宅ローンを組むことができませんね。
パートでは、審査は通らないと思っておいた方がよいでしょう。
こういった場合は、夫のみでローンを組みなおすことになります。
借り換えですので、最初に組んだローンを全部返して、新たに低金利で夫の名前でローンを組み直すこととなります。
つまり、最初に妻が組んだローンを夫が一括返済した、という流れになってしまうため、「夫が妻へ贈与を行った」と見なされてしまうのです。
こういった状況になると、かなり困った話となります。
住宅ローンの審査は厳しいですから、何年も正社員で働いていないと、審査が通らない場合が多いのです。
つまり、新たに妻の名前でローンを組むことが難しいので、必然的に夫のみが借り主となることとなります。しかし、贈与とみなされると高い贈与税が課されるので大変です。
こういった場合は、借り換えはあきらめた方が良いかもしれません。
大きなお金が動くとき、その資金はどうやって調達したのかなど、税務署から「お尋ね」がくることがあります。
もし贈与とみなされてしまったら、贈与税率は高く設定されているため、かなり大きな金額を贈与税として収めなければならなくなってしまいます。
借り換えをした後にこういった事実に気づき、後悔することがないように、住宅ローンを夫婦それぞれで組んでいる場合は、借り換えは慎重に検討した方が良いでしょう。
離婚の際、住んでいた住宅などを譲渡されることはよくあることです。この譲渡には贈与税がかかってしまうのかということは、誰でも心配になることと思います。
贈与税の税率はとても高く設定されているので、贈与と見なされるかどうか、ということはとても重要な問題となってくるのです。
結論としては、離婚に伴う財産分与については、原則として贈与税を課されることはありません。
住宅の名義が夫であったとしても、今まで共有してきた財産を分ける、といった意味合いが財産分与にはあるので、「譲渡する」ということにはならないからです。
自宅などの財産を財産分与として譲渡される場合は、贈与税はかからないと考えて良いでしょう。
しかし、まれに贈与税を課せられる場合があります。それは、分与された財産の額が、婚姻中の夫婦の協力によって得た財産に比べ、多すぎる場合です。
また、離婚が贈与税や相続税を不当にまぬがれるために行われた、と判断された場合にも贈与税がかかってきます。
税務署から聞かれたときに、「正当な財産分与である」と証明できない場合も、税金が課されてしまう場合があります。
一番確実な方法としては、財産分与に関する「公正証書」を作っておくことです。税務署の指摘があったときに、いつでも見せられるようにしておきましょう。
住宅資金として贈与をしてもらうときは、住宅ローン控除を最大限に適用できるよう、よく計算してから贈与を受けるようにすることが大切です。
年間110万円まではいつでも非課税で贈与を受けることができますから、住宅購入の年に限定せず、数年にわたって贈与を受けることも考えながら住宅資金の一括贈与分の金額を算出するようにしましょう。