亡くなった人が負債をたくさん抱えていた場合、法定相続人が皆相続放棄をしてしまうことがあります。
そうすると、お金を貸していた人は、返済を請求する相手がいなくなってしまいます。
このような場合、債権者は相続財産管理人の選定を申し立てることができ、その相続財産管理人に対して借金の返済請求をすることができるのです。
ここでは、相続財産放棄人の役割や選任申し立ての仕方などについて紹介していきます。
亡くなった人が負債をたくさん抱えていた場合、法定相続人が皆相続放棄をしてしまうことがあります。
そうすると、お金を貸していた人は、返済を請求する相手がいなくなってしまいます。
このような場合、債権者は相続財産管理人の選定を申し立てることができ、その相続財産管理人に対して借金の返済請求をすることができるのです。
ここでは、相続財産放棄人の役割や選任申し立ての仕方などについて紹介していきます。
相続財産管理人とは、相続人が全員相続放棄をして、相続人が誰もいなくなってしまった相続財産を管理する人のことをいいます。
相続というものは、財産だけではなく負債も受け継がなくてはいけません。
残っている財産よりも負債の方が多かったり、財産がほとんどなく負債のみの場合は、誰も相続したいと思いません。
そのような場合、負債を相続する義務を負わないように、みずから「相続放棄」を行ないます。
相続というものは相続順位があり、配偶者から始まり、相続権第一位(死亡した人の子供)、第二位(死亡した人の直系尊属)、第三位(死亡した人の兄弟)と続いていきます。
相続権第一位の人が相続放棄した場合、第二位の人が相続人となりますが、自分が相続放棄した場合に、他の人が負債を相続することがないように、皆で相談して全員が相続放棄をすることが多いのです。
ですから、結果的に「相続人が誰もいない」という状態になるのです。
相続人がいない場合、困る人は誰でしょうか?
それは、被相続人(死亡した人)にお金を貸していた債権者です。
「お金を貸していたから、返してほしい」と言いたくても、相続人がいないため、請求することができません。
また、被相続人の遺言によって贈与を受けた場合なども、財産を実際に分けてくれる人がいないので困ってしまいます。
こういった場合、家庭裁判所に被相続人の財産を管理する人、つまり相続財産管理人を選任する申し立てをして、選任を要求することができます。
相続管理人の業務とは、相続人がいなくなった財産を「精算する」ことです。
財産放棄者以外に、財産を分け与えるべき人がいないかを調べたり、残された財産の中から借金を平等に返済することなどです。
被相続者にお金を貸している債権者が何人もいた場合、それらの人に、限られた財産の中から平等に返済を行なう必要があります。
そのようにして、もしも最終的に財産が残ったならば、そのお金は「国のもの」になります。このような一連の事務作業を相続財産管理人が行なうことになっています。
相続財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立てる人は、基本的には「債権者」など、亡くなった人にお金を貸していて利害関係がある人が申立てを行います。
債権者は、相続人がいないと、お金を返してほしいと請求する人がいないので困ってしまいます。
そのような理由から、相続管理人の選任を要求するわけです。
相続管理人の選任を申し立てる場合、管理人を「○○にしてほしい」と指名することもできます。
しかし、家庭裁判所が指名された人を相続財産管理人に選ぶとは限りません。あくまでも希望を伝えることができるということです。
相続財産管理人の選任を請求する場合は、「予納金」というお金を家庭裁判所に納める必要があります。
このお金は、管理業務の経費や相続財産管理人の報酬を支払うための原資とされます。
もし、亡くなった人の財産からこれらの費用が支払えるのであれば予納金を納める必要がありません。
しかし、法定相続人が相続放棄をする場合、財産はほとんどなくて負債だけ、という場合が多いので、実際は予納金を収めなければならない事例が多いようです。
予納金は20万円~100万円と幅があり、家庭裁判所が事案の難しさに応じて決定します。
案件が難しく、手続きの手間が多くかかる事案では、相続財産管理人に支払う報酬も多くなるので、予納金の額も多く収めなければなりません。
そのようなことを事前に勘案し、家庭裁判所が予納金の額を決定します。もしも予納金が余った場合は返還されます。
予納金の額は20万円~100万円となっていますが、多い場合では100万円近くの予納金を支払うわけですから、債権者からすると「予納金を払ってでも相続財産管理人を立てたい」という場合に申立てを行うこととなります。
予納金の支払い額よりも、相続財産管理人を通じて借金返済される額の方が多くなる、と見込んだ場合に申し立てを行なうわけです。
もしも亡くなった人に財産がほとんどなく、借金返済を請求してもお金がかえってくる見込みがない場合は、逆に損をすることになりますから、相続財産管理人の選任申し立てを行いません。
このような場合は、相続財産管理人がつかないことになります。
相続財産管理人にはきちんと報酬が支払われます。
その原資は亡くなった人の財産、もしくは予納金となっています。
想像財産管理人の役割や業務が終了すると、自分で家庭裁判所への報酬の請求を行います。
金額は家庭裁判所が決定し、相続財産管理人の業務の難易度によって額を決めていきます。
明確な基準はありませんが、案件が難しかったか、事務作業が複雑であったか、手間がかかったかということが考慮されます。
また、弁護士などの通常業務の時間を割いて相続財産管理人の仕事を行うわけですから、本人の収入も参考にして決められます。
相続財産管理人が弁護士、司法書士、行政書士などの場合、一ヶ月の報酬は1万円~5万円くらいだと言われています。
家庭裁判所に相続管理人の選任を要求するには、いくつかの要件を満たしておく必要があります。それは、
という条件です。
申し立ての順序としては、このようになっています。
1.の必要書類ですが、かなり多くの書類を揃えなければならないこととなっています。一覧は以下のようになっています。
審理の結果によって、申立人が相続財産管理人の選任を受ける必要があると認められれば、家庭裁判所は相続財産管理人を選任します。
しかし、もしも相続財産管理人を選任する必要がないと判断されれば、不必要であるという審判が下される場合もあります。
お金を貸している人が亡くなった場合、借金を返してもらえるのかどうか不安になりますね。
被相続人(亡くなった人)が残した財産の金額にもよりますが、お金を返してもらえる可能性はありますので、あきらめずに対処することが必要です。
相続人がいない場合でも、相続財産管理人の選任申し立てを検討し、少しでもお金を返してもらえるようにしましょう。