遺言書の書き方や、遺言書を見つけた場合の裁判所の検認手順を解説!
遺言書が残されていたら、どうすればよいのでしょうか。
遺言書というと、良いイメージばかりではありません。
遺言書が発見されると、そこには、兄弟の一人に財産をすべて相続させると書いてあり、そこから兄弟の仲が険悪になっていった・・・などというように、相続時にもめる原因になったりもします。
相続人が集まって相談し、遺産分割協議をするのではないので、一方的に遺言で決められてしまうと納得できないと感じる相続人も多いようです。
遺言によって不満が出た場合、そもそも遺言書が有効かどうか、という点にも疑問が及びます。
遺言書があるということは、良い場合もあるし、逆に争いの元になる場合もあるのです。
ここでは、遺言書の書き方についてや、被相続人が死亡した後に遺言書が見つかった場合、どのように扱えば良いのかについて、詳しく見て行きましょう。
目次
遺言書の書き方とは?注意点を守らないと無効になる
遺言書とは、被相続人が自分の死後の遺産相続についての指示を残すものです。
遺産分割の方法を指定することにより、相続をスムーズに進め、また相続人同士の話し合いの際のトラブルを防ぐ目的があります。
遺言書の書き方にはポイントがあります。書き方で気をつけなければならないことは以下のようになっています。
1.遺言書はすべて直筆で書く
遺言書のタイトル、本文、作成日付、署名など、遺言書は全て直筆で書かなければ無効になってしまいます。
遺言書を書く際は、必ず直筆で書くようにします。
色の指定などはありませんが、ビデオレターやボイスレコーダーなど、データで残す物は全て無効になりますので注意が必要です。
2.遺言書とわかりやすく明記する
これが遺言書であるとわかるようにすることが必要で、タイトル等に特に指定はありません。遺言書の用紙のサイズや紙質は何でも構いません。
しかし、一般的にはA4サイズやB5サイズが多いようです。
3.遺言書の末尾に作成年月日、署名・押印をする
遺言書の末尾には、作成年月日、署名、押印が必ず必要です。
日付を書くときは「○年○月○日」はっきりと分かるように書きます。○年○月吉日と書くと、いつ書かれた物かがわからないため、遺言書は無効となります。
印鑑は認印でもよいのですが、実印を押して印鑑証明も一緒に遺言書の封筒に入れておくと、「家庭裁判所での検認手続」がスムーズにいきますので、残された人も助かるでしょう。
4.消せない筆記用具で書く
シャープペンシルや鉛筆は、遺言書が改ざんされる恐れがあります。
ボールペンや万年筆など、消しゴムで消せないものを使用しましょう。
5.相続財産は特定できるように書く
遺言書を書いても、その相続財産が何かということが確実に特定出来ないと、逆に争いの元になる場合があります。
相続財産は、誰が見てもはっきりとわかるように書き、土地や建物などは、登記簿に書かれているものをそのまま記載するようにすると良いでしょう。
6.相続人は、きちんと特定できるように書く
相続財産と同じで、相続人がはっきりと特定出来ない場合も争いが起きるもととなります。
遺言者との続き柄、誕生日などを表記しておけば相続人も特定やすいでしょう。
7.遺言執行者を指定しておく
遺言執行者は、遺産の管理や処分を行う権利をもっており、その遺言書の内容を執行する人のことをいいます。
この遺言執行者は遺言書でしか指定する事ができません。
第三者である遺言執行者を指定する事で、相続開始時に手続などがスムーズに進みやすくなります。
8.遺言書を封筒に入れて印鑑を押す
遺言書は、封筒に入れて封印するのが良いでしょう。
偽造を防ぐことにもなります。
ここで押す印鑑は、遺言書に押した印鑑と同じものを使いましょう。偽造をしていないという一つの指標になります。
無効になる遺言書の例とは?
遺言書の書き方を説明しましたが、もう一度、無効となる遺言書の例をまとめましたので、遺言書を作成するときは注意しましょう。
無効となる遺言書の例
- 手書きでなく、タイプライターやパソコンで書いた遺言書
- 書面でなく、テープレコーダーなどデータで作られた遺言書
- 押印がない遺言書
- 明確な日付の記載がない遺言書
- 一応日付が書いてはあるが、何年何月吉日というように書かれており、日時が特定出来ない遺言書
- 遺言者以外が書いた遺言書
- 署名のない遺言書、あるいは他人が署名した遺言書
- 相続する財産の内容が不明確でわかりにくい遺言書
- 2人の共同で書いた遺言書
- 遺言作成の日ではない、別の日付けが書かれた遺言書
遺言書を見つけたら、家庭裁判所で検認を受ける必要がある
遺言者が死亡したら、その遺言者の遺言書を保管していたり、発見したりした人は、すみやかに家庭裁判所で「検認」を受けなければならないと民法で定められています。
自分にとって都合が悪い内容であったり、その遺言が無効であるから検認は必要ないと思ったとしても、どんな場合でも必ず検認を受けなければなりません。
もし、自筆証書遺言が封筒に入れられて封がされていたら、勝手に開けてはいけません。家庭裁判所の検認手続きにおいて、相続人が立会いの元で開封することとなっています。
検認手続きは速やかに行うことが必要ですが、もしも相続開始より何ヶ月もたってしまっていたり、間違って開封してしまったとしても、法律で定められていることなので、検認手続きは必ず受ける必要があります。
牽引手続きがされていない遺言書では、不動産の名義変更や、金融機関での相続手続きなどが受け付けてもらえませんので注意しましょう。
遺言書の検認は、どこの裁判所に申し立てればよい?
検認手続きは、被相続人が住んでいた住所を管轄する家庭裁判所となっています。
あくまでも、被相続人が住んでいた場所の家庭裁判所となり、相続人が住んでいる土地の家庭裁判所ではありませんので注意が必要です。
相続人が海外に住んでいたとしても、検認手続きは「被相続人が住んでいた住所を管轄する家庭裁判所」ですることとなっています。
遺言書の検認の申し立てで必要な書類は?
検認の申し立てで必要な書類は、「遺言者の出生から死亡までのすべての戸籍謄本(全部事項証明書)」と、「相続人全員の戸籍謄本(全部事項証明書)」です。
申し込みから検認まで、早い場合は2週間ほどですが、遅い場合だと1ヶ月以上先になることもあります。
この検認を待っている期間が長くても、相続税の納付期限である10ヶ月が延長されることはありませんので注意が必要です。
遺言書の検認の場に立ち会える人は?
法定相続人は、遺言書の検認の場に立ち会う権利があります。
検認の申し立てを受けて、家庭裁判所は法定相続人に対して遺言書検認の日を通知することとなっていますので、その日に家庭裁判所に行くと立ち会うことができます。
なお、立会いは義務ではありません。
検認に立会いたいと思う相続人だけが立ち会えば良いこととなっています。
もしも、検認当日に立ち会うことができなかった相続人や利害関係者がいる場合は、家庭裁判所での検認手続きが終了したことが通知されます。
なお、勝手に遺言書を開封したり、家庭裁判所で検認をせずに遺言に沿って手続きを進めてしまうと罰則があり、5万円以下の過料に処せられます。
もしも間違って相続人の一人が勝手に遺言書を開封してしまった時でも、遺言書の内容自体は有効となります。
遺言書の検認の日に行われることとは?
代理人もしくは相続人が、遺言書を検認期日に家庭裁判所へ持参します。
遺言書の検認では、遺言の方式に関してのすべてを調査し、その結果を記録した検認調書を作成します。
遺言の方式に関する調査とは、日付、署名、押印がどのようになっているか、何が書かれているのかの他、どのような用紙にどのような筆記用具で書かれているかなども含めて調べられます。
また、遺言書の検認は、遺言の有効・無効を判断する手続ではなく、遺言書の実体上の効果を判断するものではないとされています。
検認が済んだからといって、その遺言書が法的に有効であると認められたわけではないのです。
もしも遺言書の検認を受けなかったとしても、遺言の効力に影響はありません。
しかし、不動産の相続登記をする際には、家庭裁判所の検認済証明書が付いた遺言書が必要です。
また、遺言書の検認を受けることを怠った場合には過料に処せられることもありますから、どのような場合であっても早急に検認の申立てをするべきでしょう。
遺言書を家庭裁判所で検認する目的は?
検認とは、遺言内容についての形式が整っているかどうかだけを判断するものであり、遺言書に書かれた内容の効力を証明するわけではありません。
よって、検認後でも遺言書について争われることもあります。
遺言書の検認は、相続人に対し遺言の存在や、その内容を知らせるとともに、上記のような調査をおこない、その結果を記録することで、検認の日現在における遺言書の内容を明確にする目的があります。
そうすることで、遺言書の偽造や変造を防止することができます。
遺言書を検認しないことによるデメリットは?
家庭裁判所で遺言書を検認しなくても、遺言書自体は有効であり、無効となることはありません。
しかし、この検認を受けていない遺言書では、不動産の名義変更(相続登記)や預貯金の解約等の金融機関での手続きを行うことができません。
検認証明書付きの遺言書を持参して初めて、名義変更や預貯金の解約ができるので、検認は大切な手続きといえるでしょう。
検認待ちの期間は、相続はどうなるの?納付期日が伸びる?
検認待ちの期間が、長い場合は1ヶ月程度になることができます。
しかし、この検認待ちの期間が長くても、相続税の納付期限である「相続開始後から10ヶ月以内」の期間が延長されるわけではなく、納付期日が変更されるわけではありませんので注意が必要です。
まとめ
このように、遺言を作成する場合、残された遺言を発見した場合、どちらも気をつけなければならないことや、しなければならない手続きがたくさんあります。
特に、遺言を作成する場合は、きちんとポイントをおさえて作成しないと、無効となってしまうこともありますので気をつけなければなりません。
自分の死後、遺産相続についての自分の意思がしっかりと実行されるよう、遺言作成には細心の注意を払うことが必要です。
残された人が財産争いをすることがないように、不備がないように遺言書を作成するようにしましょう。