土地活用をするなら知っておきたいかかる税金と税金対策方法
土地はただ持っているだけで毎年、固定資産税・都市計画がかかりますし、将来的には、相続税の支払いを子供たちに強いるものになるかもしれません。
そのため、税金対策を目的に土地の活用方法を検討しているひとも少なくないでしょう。
しかし、土地活用をおこなえば何でも税金対策になるというわけではありません。
土地活用に関わる税金の種類を知り、どのような対策を講じることが自分たちにとってベストな方法か検討することが重要です。
ここでは、税種目別に見た節税効果の高い活用方法をご紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
土地活用に関わる税金の種類
相続税
「相続税」とは、死亡した人(被相続人)の財産を相続した配偶者や子供など(相続人)に対して、その相続した財産の価額を基に課される国税です。
ここでいう財産には、資産(プラスの財産)だけでなく負債(マイナスの財産)も含まれます。
マイナスの財産よりプラスの財産の方が上回った場合、上回った部分が価格の基になります。
基になる価格から「相続税の基礎控除額」を差し引いたものを「課税遺産総額」といい、この課税遺産総額に対して相続税が課されます。
(相続税の基礎控除額については、のちほど解説します。)
財産を親や配偶者から引き継いだだけなのに、なぜ税金を支払わなければならないのか?ちょっと腑に落ちないところもありますね。
それには、相続税のもつ以下の2つの機能に理由があります。
1.所得税の補完機能
被相続人が、生前に受けた税制上の特典や負担軽減によって蓄積した財産(非課税所得、免税所得、少額贈与など)を相続開始時点で清算、補完する。
2.富の集中抑制機能
相続人本人の労働によるものではなく、いわば偶然に引き継いだ財産によって富を増やすことは、相続しなかったひととの間に不均衡をもたらす。
その財産保有状況の不均衡を解消し、かつ富の過度の集中を抑制する。
所得税
「所得税」とは、個人の所得に課させる国税です。
1月1日~12月31日の1年間に得た収入から、経費(収入を得るために必要であった費用)を差し引いたものが所得です。
さらにこの所得から「所得控除額」を差し引いた課税所得金額に対して所得税が課せられます。
所得税の税率は、「超過累進税率」といって、課税所得金額が多くなるに従って段階的に高くなり、納税者がその支払能力に応じて公平に税を負担するしくみとなっています。
所得は、その性質によって10種類に分類され、それぞれについて、収入や必要経費の範囲あるいは所得の計算方法などが定められています。
- 給与所得:勤め先から受け取る給料・賞与
- 事業所得:営んでいる事業から生じる所得
- 不動産所得:不動産の貸付から得られる地代や家賃
- 利子所得:預貯金や公社債の利子
- 配当所得:法人から受ける株式や剰余金の配当
- 退職所得:退職により受け取る一時金、退職金や退職手当
- 山林所得:取得してから5年超の山林の伐採や譲渡による所得
- 譲渡所得:土地、建物、株式、ゴルフ会員権などの資産の譲渡により得た所得
- 一時所得:臨時的・偶発的な一時金、懸賞、クイズの賞金、競馬の払戻金など
- 雑所得:上記以外の所得、公的年金、生命保険年金、学校債・組合債の利子など
固定資産税
「固定資産税」とは、毎年1月1日現在、固定資産(土地・家屋・償却資産)を所有しているひとに対して、その固定資産の価額を基に課される市町村税です。
土地・・・田、畑、宅地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野その他の土地(雑種地)
家屋・・・住家、店舗、工場、倉庫その他の建物
償却資産・・・事業を営むために所有する構築物・機械・工具・器具・備品などの資産
固定資産の評価(課税標準)は、総務大臣が定めた固定資産評価基準に基づいて行われ、市町村長がその価格を決定します。
決定した価格等は固定資産課税台帳に登録され、この価格に対して固定資産税が課されます。
課税標準は3年毎に見直しが行われ、原則3年間据え置きです。
価格に不服がある場合は、固定資産評価審査委員会に、審査の申出をすることが可能です。
税率は原則として1.4%(標準税率)。
市町村で財務上必要とした場合は、自由に税率を設定することができます。
相続税の対策方法は?
相続税対策の基本は生前に
平成27年に税制が改定されてから、相続の話はいわゆる資産家といわれる人々ではない、一般のひとたちにも身近なものになりました。
「相続税対策」という言葉もよく見聞きするようになりましたね。
さて、その対策をしはじめる時期ですが、いつ頃がよいのでしょうか?
それにはまず、「相続」はいつ発生するのか?から考えてみましょう。
「相続」は被相続人が亡くなった時からはじまります。
相続が発生すれば、相続人は法律に従い相続税を支払う負担を負うことになります。
相続税対策とは、税負担をいかに軽くするかということですから、負担を負ってしまってからでは、遅いですね。
つまり、相続税対策は「相続が発生するまえ=生前」におこなわなければ意味がないのです。
さらに、相続税対策には時間が必要な場合があります。
たとえば、法人を利用した相続税対策では、法人を設立してから3年経過しなければ、その効果を得られないものもあります。
資産が多ければ多いほど、全体を把握するにも時間がかかります。
もちろん、関係者が納得した内容で相続がおこなわれることが好ましいわけですから、皆が健康で判断能力にも問題なく生活できているうちに、なるべく早い時期から相続税対策をしはじめることが大切です。
相続人を増やして節税をする
相続税の基礎控除とは、相続財産のうち一定の金額までは非課税にするというものです。
基礎控除額を超えた部分についてのみ、相続税が課せられます。
基礎控除額の算出式は以下のとおりです
基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の人数
この式より、相続人が多いほど、基礎控除額が多くなるということがわかりますね。
そこで、法定相続人を増やすことで節税対策をとることができます。
法定相続人を増やすには、生前に孫や甥、姪などと養子縁組をする方法があります。
ただし、養子縁組ができる人数は決まっていますので、注意が必要です。
- 被相続人に実子がいる場合は一人まで
- 被相続人に実子がいない場合二人まで
非課税額の範囲で贈与する
親(または配偶者)が生きているうちに子供(または配偶者)に財産を譲ることを、「生前贈与」といいます。
不動産の場合、評価額が固定資産税の評価によるため、時価より低いことや、要件を満たせば2,500万円まで非課税になる制度(相続時精算課税制度)などがあることから、今後値上がりが見込まれる土地であれば、生前贈与は税金対策として有効な方法です。
ただし、そのためには名義変更などちょっと面倒な手続きが必要になります。
その点「暦年贈与の基礎控除」を利用して贈与する場合は、申告する必要もなく手軽です。
「暦年贈与」では、1月1日から12月31日までの1年間に譲り受けた財産の合計から、贈与税を算出します。
110万円までの贈与は非課税ですので、申告の必要はありません。
まれに、毎年決まった時期に決まった金額を贈与していることがわかると、当初から多額の贈与予定があったと判断されて、課税されてしまうことがありますので、その点は注意が必要です。
所得税の対策方法は?
土地活用で関わる所得税は「不動産所得」
所得税の説明で所得は10種類に分類できると申し上げましたが、そのなかでも土地活用に関わるのは「不動産所得」に分類されるものです。
国税庁のHPでは「不動産所得」は以下のように定義されています。
不動産所得とは、次の①から③までの所得(事業所得又は譲渡所得に該当するものを除きます)をいいます。
- 土地や建物などの不動産の貸付け
- 地上権など不動産の上に存する権利の設定及び貸付け
- 船舶や航空機の貸付け
不動産所得の計算方法
不動産所得は賃貸収入から必要経費を差し引いて計算します。
不動産所得=賃貸収入-必要経費
賃貸収入と必要経費には以下のようなものが該当します。
賃貸収入に含まれるもの
- 家賃
- 地代
- 駐車料金
- 名義書換料
- 更新料
- 礼金
- 共益費(電気代・水道代・掃除代など)
など
必要経費に含まれるもの
- 固定資産税
- 管理費
- 賃貸管理代行手数料
- 修繕積立金
- 損害保険料
- 減価償却費
- 修繕費(建物や設備の修理、維持管理、原状回復を目的としたもの)
- 借入金利子
- ローン保証料
など
不動産所得の節税方法
不動産所得の節税ポイントは、必要経費に該当するものをなるべく多く盛り込み、税務上の所得を少なくして確定申告をすることです。
また、給与など他の所得があれば、不動産所得と損益通算することでも節税効果を発揮できます。
もし不動算所得が赤字になった場合は、確定申告で給与所得と損益通算することで、税金の還付を受けることができます。
固定資産税の対策方法は?
土地活用に賃貸アパートやマンションなどの賃貸住宅を建てて利用する方法を選択すると、「住宅用地の課税標準の特例措置」を適用できるため、その他の土地活用方法より減税効果が高くなります。
住宅用地の課税標準の特例措置
[建物]
1戸当たりの床面積が40m2以上280m2以下の場合、床面積120m2までの部分について、3階建以上の耐火構造・準耐火構造住宅で5年間、一般の住宅で3年間にわたって固定資産税を2分の1に軽減
[土地]
1戸当たりの敷地面積が200m2以下の場合、固定資産税の課税標準額を6分の1、都市計画税の課税標準額を3分の1に軽減
これは、例えば税金対策のために所有地に賃貸住宅を建てることは、当面の対策としては有効であったとしても、将来的にはそれが負の資産になりかねないということを意味しています。