居住用の賃貸経営といえば、マンション経営やアパート経営が根強く人気となっています。
このよく似たように見える2つに違いはあるのでしょうか。
建物としての違いを踏まえたうえで、経営をする際に生じる違いについて詳しくまとめてみました。
居住用の賃貸経営といえば、マンション経営やアパート経営が根強く人気となっています。
このよく似たように見える2つに違いはあるのでしょうか。
建物としての違いを踏まえたうえで、経営をする際に生じる違いについて詳しくまとめてみました。
実はアパートとマンションは、明確な定義があって分けられているものではありません。
オーナーや不動産業者が「アパート」と決めればアパートですし、「マンション」と決めればマンションになってしまうものなのです。
といいつつも、一般的に建物の構造で大まかに分けていることが多いです。
アパートは木造・鉄骨造が主流です。
「木造」とは、建物の主要部分(土台・柱・梁など)の部材に木材を使用した建築構造です。
工法は主に、軸組工法(在来工法)とツーバイフォー工法(2×4工法)に分けられます。
軸組工法は昔から用いられている日本建築の工法で、柱と梁で骨組みを造り、筋交いで補強し強度を高め建物を支えます。
ツーバイフォー工法は北米で開発された工法で、2インチ×4インチの大きさに揃えた角材で枠組みを造り、そこにパネルを壁や床、屋根として組み合わせ箱状に仕上げた建物です。
パネルで6面体を構成することで、優れた耐震性を実現します。
<メリット>
<デメリット>
「鉄骨造」とは、「S構造」とも呼ばれ、骨組みに鉄や鋼の建材を使用した建築構造です。
鉄骨造には、軽量鉄骨造と重量鉄骨造の2種類があります。
軽量鉄骨造は厚みが6mm未満の鋼材を使用するもので、ブレース工法やプレハブ工法があります。
ブレース工法は木造の軸組工法と同様に、柱、梁、筋交いを用いて強度を高める工法、プレハブ工法は、事前に工場で骨組みを組み立てる工法です。
重量鉄骨造は厚みが6mm以上の鋼材を使用するもので、柱と梁を剛接合し強度を高めたラーメン構造があります。
<メリット>
<デメリット>
マンションはRC構造とも呼ばれる、鉄筋コンクリート造が主流です。
「鉄筋コンクリート造」とは、骨組みに鉄筋で補強したコンクリートを使用した建築構造です。
ラーメン構造や壁式構造があります。
壁式構造とは、柱や梁の代わりに、板状の耐力壁で建物を支える構造です。
<メリット>
<デメリット>
ここから以降は、不動産投資のタイプとして代表的な2つのケースを比較していきたいと思います。
ひとつは、賃貸アパートを建てて一棟経営するケース、もうひとつはマンションの一室を区分所有して貸し出すケースです。
もともと所有している土地にアパートを建てる場合、土地の購入費用は必要ありません。
その分、コストは抑えられることになりますが、マンションの一室を購入する場合と比較すれば、はるかに費用負担は大きくなります。
建築するアパートの規模、設備、土地の状態などの条件によって、必要な金額は大きく異なってきますので、だいたいいくらぐらいということをここで申し上げることはできませんが、費用項目はおおよそ下記のとおりです。
【アパート経営初期費用項目】
など
次にマンションの一室を購入する場合の費用項目をあげます。
【マンション経営初期費用項目】
など
どちらも基本的に「アパートローン」を利用することになります。
「アパートローン」とは、賃貸を目的としたアパートやマンション、戸建住宅などを購入・建築するための費用を金融機関から借りるローン商品です。
アパートローン、賃貸ローン、不動産投資ローンなどさまざまな名称で呼ばれています
金利は高めですが、立地条件や事業計画に大きな収益性が見込めれば、自己資金が少なくても、高額融資を受けられるのが特徴です。
アパート経営の場合、土地と建物を担保にできることから、融資をうける条件は有利になります。
さらに、アパートの場合、オーナーの自宅との併用であれば、住宅ローンを利用できる可能性があります。
住宅ローンは金利が低く、節税効果も高いのでお勧めですが、「本人とその家族」または「本人の家族」が住むための住居が対象ですので、一般の賃貸住宅には利用できません。
ただし、自宅用スペースが全体の50%以上である賃貸併用住宅であれば利用可能です。
修繕費についても、アパート一棟経営の方が、負担は大きくなります。
修繕費は大きく3つに分けることができます。
アパートやマンションなどの集合住宅では、長期修繕計画に基づいて外壁や共用部分の大規模修繕にそなえ、管理費とは別に、毎月管理組合または委託された管理会社にお金を預けて積み立てをおこないます。
これを「修繕積立金」といいます。
修繕積立金を負担するのは、オーナーです。
マンション経営であれば、ほかの区分所有者と共同で積み立てることになりますが、アパート経営の場合は、オーナーが全てを負担しなければなりません。
「管理費」とは「共益費」とも呼ばれますが、日常的な管理業務に支払われる費用です。
共用部の掃除や蛍光灯の交換、日常のトラブルやクレーム対応などが該当します。
アパート経営であればオーナー自ら行う場合もありますが、管理会社に委託するケースも多いでしょう。
マンション経営の場合は、そのマンションの管理組合が委託した管理会社がおこなっていると思います。
管理費は入居者から家賃に含めて、または家賃と別立てで徴収します。
だだし、空室があれば、その間はオーナーが負担します。
部屋の設備が故障した場合の修繕費や退去後のハウスクリーニングやクロスの張替えなどの費用です。
これらもオーナーの負担になります。
複数の部屋を所有しているアパート経営の方が、当然負担は大きくなります。
どのタイプの賃貸住宅でも、時代とともに設備や間取りが古くなれば、人気がなくなり空室リスクが高まる危険があります。
その時は、大掛かりなリフォームをおこなう必要が、出てくるかもしれません。
そのための資金も準備しておかなければなりません。
集合住宅では、共用部の管理はとても重要です。
どんなに各部屋をきれいにしていても、共用部の掃除が行き届いていなかったり、劣化が激しい場合は、入居者を集めることはできません。
委託している管理会社の質が悪いときの対応は、マンション経営の方が厄介です。
アパート経営であれば、オーナーの判断で管理会社を迅速に切り替えることも可能ですが、マンション経営ではほかの区分所有者の合意がなければ、管理会社を変えることはできません。
理事会での意思決定が必要ですから、ひとりの意見だけでは改善できないこともでてきてしまいます。
一棟所有で複数の部屋を貸せるアパート経営のほうが、一室を貸すマンション経営より高い収入を得やすくなります。
立地条件や築年数などによって家賃設定は異なってくるものですが、ある程度健全な経営ができているのであれば、単純に部屋数の多いアパートに分がありますね。
アパート経営のほうが大きな収入になるものの、先にご説明したように初期費用や修繕費用も大きくなるため、一概にマンション経営に比べて利回りが高くなるとは言えません。
むしろマンション経営の方が、初期費用が少ない分、ローン返済の負担も少なくて済みますので、立地や建物の条件次第では、高い家賃で長期間借りてもらえる可能性がありますから、安定した高利回りを期待できるともいえます。
賃貸住宅を経営するためには、建物を維持管理する管理業務のほかに、賃貸管理業務をおこなわなければなりません。
賃貸管理業務には、入居者募集、賃貸借契約締結、家賃回収、滞納の督促、賃貸借契約更新、退出手続き、原状回復、トラブル対応などの業務があります。
投資用マンションでは投資用マンションを分譲した不動産会社やそのグループ会社が賃貸管理業務を請け負っているケースが多いです。
オーナーはその会社へ委託してしまえば委託料はかかりますが、ほとんど管理に労力を払う必要がありません。
アパート経営でも、賃貸管理業務を管理会社に委託するケースが多いのですが、一棟所有ともなれば規模が大きいだけに、すべてを管理会社任せにするのは避けたほうがよいでしょう。
管理会社と良好な関係を保ちながら、オーナー自身がコントロールする力量が必要です。
賃貸住宅経営は、さまざまな土地活用・不動産投資のなかでも節税効果の高いものです。
住宅用地については、複数の特例措置を適用できるためです。
当然、資産価値が高いほうが、より節税効果は高くなりますね。
アパート一棟の方が、マンション一室より資産価値が高いと考えられますので、その分、アパート経営の方が節税効果が高いといえます。
部屋数の多いアパートのほうが空室が生まれる確率は高いですが、一室しか持たないマンションの方が空室が生まれた際の無収入リスクは高くなります。
アパート経営は空室ができても、ほかの部屋が埋まっているのであれば、家賃収入が途絶えることはありません。
それに比べ、マンション経営では空室なってしまうと途端に家賃収入が途絶える0か100の世界です。
アパート経営とマンション経営のどちらをはじめるにも、まずは需要があるのか、資金計画に無理はないかをしっかりチェックすることが必要です。
そのためには自分で調べてみることのほかに、複数の専門家(不動産投資コンサルタント、土地活用コンサルタント、ファイナンシャルプランナー、税理士、不動産会社など)の話を聞いて、十分に比較検討するようにしてください。