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山林地経営をする時に気をつけたいポイント総まとめ

 

国土の3分の2が森林であるにも関わらず、活用が難しいとされるのが山林地です。

相続は一部だけを選んでというができないものなので、放棄するわけにもいかず、先祖代々の山林地を受け継いだひとも多いでしょう。

しかし、「山をもらっても、さてどうしたものか」というところが本音ではないでしょうか?

でも、有効活用の可能性が全くないわけではありません。

ここでは、山林地経営の選択肢とメリットやデメリット、行うべき手続きについて解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

 

目次

山林地経営のメリット

広大な敷地を活用できる場合が多い

「山林」とは地目(*)では「耕作の方法によらないで竹木の生育する土地」と定義されていますが、一般的には読んで字のごとく「山と林」あるいは「樹木の多く生えている山地」のことです。

(*)地目とは…

不動産登記法により土地の主たる用途を示すために土地につけられた名称

先祖代々の土地として広大な山林を相続し、有効な活用方法がわからないまま放置しているひとも多いかもしれませんが、土地にとって広さとはひとつのステータスになります。

山林地経営では、この広さを活かした方法を検討することができます。

再生可能エネルギー発電

再生可能エネルギー発電には、発電された電力を一定期間、国が定めた金額で電力会社が買取る「再生可能エネルギーの固定買取制度」を利用できるメリットがあります。

再生可能エネルギー発電で最もメジャーなのが、太陽光発電です。

遊休地では大量に太陽光発電パネルを敷き詰めて、発電された電力を売る「野立て太陽光発電」がおこなわれています。

皆さんも土地に架台を組んでその上にソーラーパネルが設置されている施設を、一度はご覧になったことがあるかと思います。

太陽光発電の立地で求められるのは、太陽の光をより効率良く受けられるということです。

山林では立木や斜面の影響を避けるため、平地に比べ伐採、造成、管理の費用がかかる場合がありますが、広い土地で太陽の恵みを利用するこの活用方法は、検討に値するものでしょう。

太陽光発電ほど認知度はありませんが、山林ではバイオマス発電も注目です。

「バイオマス発電」とは、木質廃材や食品廃棄物、家畜の糞尿などの有機ゴミを燃やしてタービンを回し発電する方法です。

特に間伐材などの未利用木材を利用した木質バイオマス発電は、より山林に近い立地のほうが運送コストが抑えられますので有利です。

太陽光発電より買取価格が高く設定されていることや、間伐材を利用することで山の整備、治山治水、CO2の削減が期待できることも魅力です。

レクリエーション用地

ハイキングやピクニック、アスレッチク、キャンプ、ログハウスなど豊かな自然を楽しむためのレジャー施設を経営します。

バフル期のリゾートホテルのような自然破壊が危惧される類のものではなく、ひとと自然が共存する、いわゆるアウトドアに人気が集まっています。

「オートキャンプ白書2016」によれば、2015年の「オートキャンプ参加人口」は、前年の3.8%を上回り、810万人と12年振りに800万人台となったそうです。

キャンプ用品の売れ行きも好調のようです。

また、本格的な登山者は減っているようですが、尾根歩きやハイキングを経験したい30代前後の登山客が5年前ごろから急速に増えたというデータもあります。

木材を資源として売買する

山といえばまず思いつくのは「木」ですよね。

資源である木そのものを、売買して収益を得ることができればベストなのですが、日本の林業は輸入木材の影響で、低迷を続けているのが実情です。

しかしそのような中、注目されているのが「自伐型林業」です。

「自伐型林業」とは、山林所有者や地域のグループなどで管理・経営・施業をおこなう小規模な林業です。

小型機械で木を伐採し、軽トラックで村まで運び出荷するといったように、これまでの規模が大きくコストがかかりすぎる「事業者委託型林業」とは異なり、身の丈にあった規模で継続的に林業をおこなうことを目指す新しいスタイルの林業です。

自伐型林業を副業にして、年間数百万円の収入をあげるひともいます。

自伐型林業向けの補助金制度を利用できるというメリットもあります。

木材以外の自然資源も活用できる

山林は木材以外にも、きのこ類、山菜類など自然資源の宝庫です。

これらを売買することも活用方法のひとつです。

また、都市部の企画会社と一緒に、きのこや山菜取りツアーを企画して、自然から離れた環境で生活している人々に、自然を楽しんでもらうという活用方法もあります。

山林地経営のデメリット

大きな収益を生む事業には不向き

土地活用で大きな収益を得る方法には、賃貸住宅や事業用賃貸の経営が挙げられます。

これらを成功させるのに最も重要な要素は、なんといっても立地のよさです。

駅に近く通勤・通学に便利であるとか、スーパーや病院が近くにあるといったことですね。

事業用賃貸であれば、幹線道路沿いにあるというのもよい条件に加えられるでしょう。

山林にこのような条件を求めるのは難しいことです。

都市部から離れていて利便性に欠けていたり、傾斜が多く建物を建てるにも、ひとが生活するにも適切でない場所が大半でしょう。

市街化調整区域に含まれていれば、建物を建てることすら出来ません。

このような理由から、山林は大きな収益を生み出せる事業には不向きなことが多いといえます。

売買できる木材にするまでに手間暇がかかる

植林し、木材に出来るような質のよい木に育て、伐採・加工し出荷するまでには大変な手間と時間がかかります。

さらに管理・施業を森林組合などに委託しておこなう「事業者委託型林業」では、これら一連の山の手入れから木材の加工までの過程で、コストがかかり過ぎ、市場に出た頃には輸入木材をはるかに上回る価格になってしまいます。

おかげで「国内産の木材は高い」というイメージがすっかり定着してしまい、シェアも取れなくなってしまいました。

売買できる木材にするまでに手間と時間がかかるわりには、収益性が低く割に合わない商売ということで、就業者も減り日本の林業は長らく低迷し続けています。

山林地経営に向いているタイプの人

山に土地を持っている

山林の購入は、一般的な宅地を購入する場合とは方法が異なります。

山林売買を専門に行っている仲介業者や地元の森林組合、行政機関に相談して物件を紹介してもらう、または競売物件から探すことになります。

需要が少ない分野なので、情報を得にくいというデメリットがあります。

自宅から離れた遠方の山林を求めるのであればなおさらですね。

気になる土地があり現地に赴いて状況を把握するにしても、立ち木の状態、土壌、傾斜、法規制の有無の確認、測量の実施など宅地の場合とは勝手が違ってきます。

このような事情を考えると、新たに山林を購入するところからスタートするより、すでに山林を所有しているというところからスタートできるひとの方が向いているといえそうです。

広大な土地を活かした運用をしたい

メリットのところで、山林の広い土地を活かした活用方法をいくつかご紹介しました。

メガソーラー、メガバイオマス、レクリエーション施設など規模が大きくなれば、個人で経営するのは難しいでしょう。

そのような場合は、企業に土地を貸すという方法をとることもできます。

自然が好き

自伐型林業、きのこや山菜取りツアーの開催、カブトムシやクワガタムシの採集販売など、自然豊かな土地の特徴を利用して、資源を取って有効活用する方法があります。

社会貢献がしたい

収益性を求めないのであれば、森林ボランティアといわれるNPO法人や市民団体に山林を使用してもらうという方法もあります。

森林ボランティアとは自主的に森の手入れをし環境保全をおこなうだけでなく、森林環境教育の一環として自然観察会などの野外活動や、都市と農山村の住民交流や地域づくりなどの活動もおこなっている団体です。

もちろん、山林の提供だけでなく、オーナー自身が社会貢献活動に参加することもできます。

山の中で所有している境界線を確認する

親から山林を相続したのはいいが、境界線が曖昧でどこからどこまでが自分の土地かわからないというケースも少なくありません。

山の土地は共同所有している場合も多く、活用する前に土地の所有境界線をしっかりと確認しておくことが大切です。

国土調査(地籍測量)がおこなわれていて、境界杭もあり境が明確な場合はよいのですが、そうでない場合はなかなか厄介です。

役所で公図や森林簿などを入手し、隣接地所有者立会いのもとで、現地を確認します。

昔から境界を示すために大きな石がおいてあるような場合もありますが、何も目印がない場合は、公図の形と実際の尾根や谷の比較、林相、現地のことに詳しいひとからの証言などから、境界を決めていきます。

土地家屋調査士や測量会社に測量してもらい、面積を調べて、境界を決める方法もあります。

いずれにしても、曖昧な部分については最終的には隣接地所有者との話し合いになります。

境界線が決まったら、境界杭を埋設し、土地境界確定図、境界協定書を作成しておきます。

山林の現状の把握をする

実際に山林に入って、現状がどのようになっているか確認します。

林道はあるのか、どのような樹木が生えているのか、斜面の傾斜はどの程度かなど、土地活用を検討するために必要な情報を仕入れます。

現地に詳しいひとに同行してもらうか、自治体の森林経営窓口や森林組合、NPO法人、土地活用コンサルティング会社などに相談してみるとよいでしょう。

活用したい方法が可能かどうか、確認する

森林伐採および開発行為をおこなおうとする場合は、市町村または都道府県から許可を得なければいけませんが、そのほかにも所有している土地に規制がないか、確認することも忘れないようにしましょう。

市街化調整区域内や宅地造成工事規制区域内に属している場合は、開発許可や造成工事の許可を受けなければなりません。

もちろん、活用したい方法がその土地にとって妥当なものかどうかも検討しなければいけませんね。

太陽光発電のための十分な日当たりはあるか、レクリエーション施設としての需要はあるか安全は確保できるか、木材の買取り先はあるかなど、活用方法によって課題がありますから、販売業者や専門家に相談しながら最終的な活用方法を決めていきます。

まとめ

最後に、山林をそのまま持ち続ける場合に気をつけたいこととして、人工林管理の必要性があります。

植林してつくった人工林は放置しつづけると、樹木が密集しすぎることで、山が持つ治水機能が失われてしまい、大雨による水害を誘発する危険性があります。

そのような山林の所有者になった場合は、地域の安全を守るために、少なくとも間伐は検討したほうがよいでしょう。

間伐のための補助金制度もありますので、自治体や森林組合に相談してみてください。