親や家族の持っていた土地や不動産を売却したり、相続したりする必要のある場面は必ず訪れます。
その際に、一体どのようなことに気を付けなければならないのでしょうか。
2015年に相続税の制度が改正されたことで、節税対策に関心を持たれた方も多いことでしょう。
ここでは親や家族からの財産の引継ぎ方を、存命中、亡くなった後に分けて解説したいと思います。
親や家族の持っていた土地や不動産を売却したり、相続したりする必要のある場面は必ず訪れます。
その際に、一体どのようなことに気を付けなければならないのでしょうか。
2015年に相続税の制度が改正されたことで、節税対策に関心を持たれた方も多いことでしょう。
ここでは親や家族からの財産の引継ぎ方を、存命中、亡くなった後に分けて解説したいと思います。
親(または配偶者)が生きているうちに子供(または配偶者)に財産を譲ることを、「生前贈与」といいます。
不動産の評価額が固定資産税の評価によるため時価より低いことや、要件を満たせば2,500万円まで非課税になる制度(相続時精算課税制度)などがあることから、今後値上がりが見込まれる土地であれば、生前贈与は税金対策として有効な方法です。
不動産の生前贈与は不動産名義を、贈与者から受贈与者へ変更することでおこなわれます。
名義変更をするためには、書類を揃えて法務局に登記申請をすることが必要です。
名義変更に必要な書類は以下のとおりです。
【名義変更に必要な書類】
2~5は役所で取得します。
6~7は作成します。
作成書類については、特に形式は決まっていません。
法務局のHPや司法書士事務所のサイトに、サンプルと雛形が用意されているので、参考にするとよいでしょう。
名義変更の手続きは、個人でおこなうことも可能ですし、司法書士に依頼してややこしい書類作成をお任せしてしまうこともできます。
贈与を受けた人は、申告をし、必要に応じて贈与税を納付する義務があります。
申告期限:贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日
納付期限:贈与を受けた年の翌年の3月15日
申告先は、受贈与者の住所地管轄の税務署です。
e-taxも利用できます。
申告時に必要な書類は、利用する制度によって若干異なります。
1月1日から12月31日までの1年間に譲り受けた財産の合計から、贈与税を算出します。
基礎控除があり110万円までの贈与は非課税なので、申告の必要はありません。
【必要書類】
60歳以上のひとが、20歳以上の子や孫に財産を贈与した場合、2,500万円までは非課税、残りの部分については20%の贈与税がかかる制度です。
相続時に相続財産と贈与財産から税額を算出し、既払いの贈与税が税額から差し引かれます。
暦年贈与の基礎控除との併用はできません。
【必要書類】
結婚20年以上の夫婦間で住宅または住宅取得金の贈与があった場合、2,000万円まで非課税になります。
暦年贈与の基礎控除との併用が可能です。
【必要書類】
贈与税の納付は、金融機関(日本銀行歳入代理店)、所轄税務署、e-tax、コンビニエンスストアにておこなえます。
原則一括払いですが、支払いが難しい場合は税務署に延納申請と担保提供をおこなうことで、延納が許可される場合があります。
延納が許可されたら、最長5年以内にその間の利息と合わせて、贈与税を納付する必要があります。
親が老人ホームに入所した場合や子供と同居したなどで、実家が空き家になって今後も使用する予定がないというケースでは、売却も有効な土地活用方法となり得ます。
売却益で介護費用を捻出することもできますし、相続時の分配も現金の方がし易いでしょう。
固定資産税、都市計画税から開放されるというメリットもあります。
不動産は名義人以外の人間が、勝手に売却をすることはできないものです。
親が自分で自由に活動できる場合はよいのですが、体の都合でそれが難しい場合はどうしたらよいでしょうか?
仲介不動産会社への依頼や必要書類の作成については、子供が代行することは可能です。
しかし、売買契約と決済時には名義人本人が必ず同席しなければなりません。
入院していたり、寝たきりで外出がままならない場合は、病院や自宅まで関係者に出向いてもらう必要があります。
親が委任状を作成し、子供に代理を依頼していた場合は、全ての手続きを子供がおこなうことができます。
ただし、委任状を子供が勝手に作成するということも可能なため、最終的にはたとえ委任状があっても、不動産登記手続きをおこなう司法書士によって、名義人本人の意思確認をおこなう必要があります。
親が痴呆症などの病気で、意思決定能力を失ってしまっている場合は、名義人本人の意思確認が困難です。
この場合は、成人後見人制度を利用して、成人後見人を立て、売却手続きをおこなうことになります。
成人後見人は家庭裁判所に申立てをおこない、家庭裁判所の判断によって選定されます。
申立て時に家族を候補者にあげることは可能ですが、必ずしも候補者の中から成人後見人が選ばれるとは限りません。
贈与された土地を売却すると、譲渡所得税が課税されます。
譲渡所得税には居住用財産を売却した場合は、特別控除(譲渡益から3,000円の控除)がありますが、名義人であってもそこを自宅として使用していない場合は、この特別控除を受けることはできません。
「相続」は被相続人が亡くなった時からはじまります。
では「相続手続き」はいつから始まるのでしょうか?
相続をすると、相続人には相続税を納める義務が生じます。
相続税の申告・納付期限は、相続の開始を知った翌日から10ヶ月です。
ですから、通常の場合、被相続人が亡くなられた日の翌日から相続手続きは始まることになります。
次の項で記載しますが、相続の手続きにはポイントになる期限があります。
10ヶ月の間に、それらひとつずつに間に合うよう、手続きを進めていくことになります。
たとえば、相続人がひとりの場合と複数いる場合では、かかる手間も異なりますね。
そのような点も考慮して手続きを進めていく必要があります。
以降に、相続手続きの大まかな流れを記載します。
4つのポイントとなる手続き(死亡届提出/相続放棄・限定相続申立て/所得税準確定申告・納付/相続税申告・納付)がありますので、それを基準に手続きを進めます。
不明な点は税理士や司法書士など法律の専門家に相談します。
【相続手続きの流れ】
相続開始(被相続人死亡)
↓
point1:死亡届提出(7日以内)
・相続人確認
・被相続人の資産と負債の状況確認
・遺言書の有無確認
(遺言書がある場合は、家庭裁判所の検認が必要です)
↓
point2:相続放棄・限定相続申立て(3ヶ月以内)
・被相続人所得税確定申告/納付準備
↓
point3:所得税準確定申告/納付(4ヶ月以内)
・遺産分割協議/協議書作成
・遺産名義変更
・相続税申告/納付準備
↓
point4:相続税申告/納付(10ヶ月以内)
親が存命中に親名義のまま売却するのと、相続後に売却するのではどちらが節税効果が高いでしょうか?
これはケースバイケースではありますが、親が住んでいた家を売却する場合に限れば、親が存命中に親名義のまま売却する方が、節税効果が高くなるケースが多いようです。
理由は、居住用財産を売却した場合、譲渡所得に「居住用財産の3,000万円特別控除」を適用することができるからです。
「居住用財産の3,000万円特別控除」とは、居住用財産を売却して利益(譲渡益)が出た場合、譲渡所得税の課税対象となる譲渡益から3,000万円を控除することができるというものです。
譲渡益は、売却金額から売却に掛かった費用(譲渡費用)と取得費(*)を差し引いた金額です。
(*)ここではわかり易いように、取得費は割愛してご説明します。
例えば、3,500万円で家を売却した際、譲渡費用が500万円かかったとすれば、譲渡益は3,000万円になります。
売却した家が居住用であれば、「居住用財産の3,000万円特別控除」を適用できますので、譲渡益は0円となり、譲渡所得税は発生しません。
よっぽどの好条件の売却でない限り、3,000万円の控除があれば、譲渡益が0円またはそれに近い金額になるケースが多いでしょう。
売却して得た3,000万円をそのまま相続したとしても、相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)が適用されて、相続税も0円になります。
一方、相続後に売却する場合は、相続人が居住用に使用していた家を売るわけではないので、「居住用財産の3,000万円特別控除」を適用できません。
同じ条件で売却して、譲渡益が3,000万円であれば、この3,000万円が譲渡所得税の課税対象となります。
財産をそのままの形で、相続する方法です。
不動産は長男へ、預金は長女へ、株式は次男へといったように分けます。
不動産など分けるのが難しいものもありますので、必ずしもきっちり分割できるとは限りません。
その場合は、価値の高いものを相続したひとが、ほかのひとに調整金を支払うなどの方法を用いてバランスをとります。
家や自動車など、分けることが難しい財産が含まれている場合、それらを売却して現金化したのちに分割する方法です。
売却費用が掛かったり、現金化することで贈与税が高くなってしまうこともありますが、きっちり分けられるので相続人の間で不公平が発生しません。
「現物分割」のところでも触れましたが、現物分割で相続に不均衡が生じる場合に、価値の高いものを相続したひとが、ほかのひとに調整金を支払う方法です。
家業を継ぐひとや、特定の財産を相続したいひとがいる場合などに採用されます。
相続人が複数名いる場合でかつ、遺言書がない、またはあっても詳細な記載がない、遺言書に書かれている以外の遺産があるというケースでは、
遺産を分けるために遺産分割協議をおこなう必要があります。
民法で法定相続分が規定されてはいますが、これはあくまでも目安ですから、実際に分割する場合は遺産分割協議で内容を決めることになります。
遺産分割協議は、相続人全員が参加しておこなわなければなりません。
ただし、相続人に未成年者がおり、かつその親も相続人に含まれている場合は、親と子が利害関係をもつことになりますので、子に代理人を立てて協議に参加します。
子の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てをおこない、親族などの中から代理人を選任してもらいます。
遺産分割協議は、相続人全員の合意をもって成立するものです。
納得できないひとが、ひとりでもいれば、成立し得ませんので、納得できるまで十分に話し合いをする必要があります。
話し合いで決まった内容は、遺産分割協議書にまとめます。
遺産分割協議書は以降のトラブル防止と、不動産相続時の必要書類になります。
もしも、遺産分割協議で話がまとまらなかった場合は、遺産分割調停または遺産分割審判の申立てをおこないます。
相続は残された資産が多く、相続人が多いほど問題が発生しやすいものです。
本文でご説明したとおり、期限が決まっている手続きもありますので、いつまでも身内だけで悩んだり、揉めたりしているわけにもいきません。
不明な点があれば、出来るだけ早い段階で、弁護士、税理士、司法書士、行政書士などの専門家や、相続の相談を一括で受け付ける窓口(相談センターや支援サービスなど)へ相談に行くようにしましょう。