親から相続したもしくは、相続する予定の家を空き家のままにしているという方は意外と多くいらっしゃいます。
将来自分たちが住むつもりで維持管理しながら残しているのであればよいのですが、どう処分したらよいか分からず、ずるずると手入れもせず持ち続けているのであれば、それは考えものです。
放置された空き家はさまざまな問題を引き起こし、せっかく受け継いだ資産が、悲しいかなただの厄介物になってしまいます。
親から相続したもしくは、相続する予定の家を空き家のままにしているという方は意外と多くいらっしゃいます。
将来自分たちが住むつもりで維持管理しながら残しているのであればよいのですが、どう処分したらよいか分からず、ずるずると手入れもせず持ち続けているのであれば、それは考えものです。
放置された空き家はさまざまな問題を引き起こし、せっかく受け継いだ資産が、悲しいかなただの厄介物になってしまいます。
「少子高齢化・人口減少」という言葉は、もうすっかり現代日本の代名詞のように定着してしまいました。
日本の総人口は2008年の1億2,808万人をピークに順調(?)に減っていっています。
2015年の総人口は1億2,520万人ですが、国立社会保障・人口問題研究所の将来推計(出生中位・死亡中位推計)によりますと、2030年には1億1,662万人、2060年には8,674万人(2010年人口の32.3%減)にまで減少するということです。
人口が減ればひとが住んでいない家、つまり空き家が増えるのは想像に難くありませんね。
特に社会問題になっているのは長期的に誰も使っていない家や、使っているかどうかわからない家です。
空き家は大きく4つの種類に分けられます。
平成25年の「住宅・土地統計調査」において、空き家が820万戸あり、そのなかでも「その他」に分類された空き家数が急増していることが報告され、空き家が社会問題としてクローズアップされるきっかけになりました。
確かに、土地や家が有効に利用されないことは、経済的な損失につながりますが、労働人口も減っているのですから致し方ないとも思われます。
しかし、空き家が増えることは、経済的な問題だけでなく、その他のリスクをも抱えているのです。
「空き家は問題だ!問題だ!」といわれる所以を具体的にみていきましょう。
建物は適度な換気や通気がされなければ、老朽化が早く進みます。
特に日本で主流の木造住宅は、その傾向が強いですし、そもそも空き家になっている建物は築年数が相当経過しているものが多いです。
誰も使わなくなった古い建物は、瓦のズレ、外壁のひび割れ、雨漏り、シロアリ被害などの不具合があったとしても、費用を出してまでメンテナンスするということもありませんから、ますます弱くなってしまいます。
このように老朽化してしまった建物は、さほど規模の大きくない地震や台風でも倒壊する危険があります。
倒壊すれば他人に危害を加えたり、道を塞いでクルマやひとの通行を妨げたりするかもしれません。
例えば、窓ガラスが割れたまま、樋がはずれてとれかかっている、庭には雑草が伸び放題といった家に良いイメージを抱くひとはあまりいないでしょう。
そんな家があると、その家だけでなく周辺の景観も損なわれてしまいますね。
荒れた空き家が与える影響は景観の悪化だけではありません。
不思議なもので荒れた家は、平気でゴミを投げ込んだり、落書きをしたりする人々を引き寄せ、治安の悪化を招きます。
治安の悪化は地域のイメージをダウンさせ、各々の家の資産価値を下げてしまいます。
先ほどあげた治安の悪化にも関連することですが、空き家は不審者に狙われ易いものです。
なんといってもひと気がなく雑草が生い茂るような家は、身を隠すにはもってこいです。
空き巣や不法侵入で家の中を荒らされる、そこに潜んで生活をされるといった被害を受ける可能性があります。
空き家は放火のターゲットにもなり易いです。
原因にはひとの目が少ないことや、枯れ草・ゴミなどが散乱していて、着火しやすいといったことがあげられるでしょう。
空き家からの出火はひとがいないだけに、気づくのが遅くなってしまいます。
発見が遅くなるほど、火の手が近隣に及び甚大な被害をもたらす可能性が高まります。
空き家がもたらす悪害の防止と土地の有効活用促進を目的に、空家対策特別措置法(平成26年11月成立、平成27年5月完全施行)が制定されたことをご存知の方も多いかと思います。
これまで空き家に関する法整備はあまり進められておらず、基本的に所有者任せになっていました。
条例を定めて独自に対応する地方自治体もありましたが、それだけでは根本的な解決は見込めません。
空き家問題が深刻化するなか、国により法律が定められたことで、各市町村は法的根拠をもって対策を講じることが可能になりました。
空家対策特別措置法によって、各市町村が実施できることはどのようなことでしょう。
実施順序に沿って、以降に記載します。
空家対策特別措置法では、市町村が空き家の所在地、所有者を調べ、実態を把握しデータベース化することを求めています。
従来は、空き家といえども誰かの所有物である限り、行政が勝手に調査することはできませんでした。
空家対策特別措置法は、空き家の実態把握に必要であるならば、調査、情報の提供、立入検査を求めることができると定めています。
調査結果から「特定空き家」を選別します。
「特定空き家」とは、特別に措置を講じる必要があると判断された空き家です。
国土交通省の「「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)」では下記のように記載されています。
特定空き家に対して段階的に対策を実施していきます。
所有者に対して除却、修繕、立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置をとることを「助言・指導」します。
助言・指導により改善がみられなかった場合は、「勧告」がおこなわれます。
勧告を受けた場合、該当の空き家は、「固定資産税等の住宅用地特例」の対象から除外されます。
要は、住宅用地であっても、固定資産税や都市計画税の減税が受けられなくということですね。
勧告に従わなかった場合は、「命令」がおこなわれます。
命令は市町村が所有者に対して期限を設けて、それまでに措置を講じることを命じるものです。
命令に従わなかった場合は「代執行」、つまり強制的に建物の撤去が行政によっておこなわれます。
たとえ強制であっても、撤去費用は所有者が負担しなければなりません。
その時に支払わない場合は、その後、市町村から請求されます。
空家対策特別措置法は基本方針を示したものであるため、具体的な施策は各市町村で決める必要があります。
また空家対策特別措置法以前に、独自の条例を制定していたところもありますので、それを空家対策特別措置法に合わせて改定したり、詳細を規定したりして実態に沿うよう対応しています。
例えば、勧告に従わなかった場合、空家対策特別措置法では公表の有無については触れていませんが、あえて不服従者を公表し対応を促すところもあります。
その他にも、建物の状態によっては倒壊の危険性が著しく、空家対策特別措置法の定める段階を経ていては、危険を回避できないケースを考慮して、即時強制撤去を可能としている市町村もあります。
このように、地域ごとに定められた条例がありますので、そちらの対象になり対応を求められる場合もあります。
空き家を今後どうしていくか決まっていないうちは、少なくとも特定空き家に指定されないように、維持・管理する必要があります。
具体的にどのようなことをしなければならいのでしょうか?
適度な換気が行わなければ、湿気が室内にこもりカビの繁殖や木材の腐食を招きます。
月に一度程度、天気の良い日に玄関、窓を開け放して外気を循環させます。
これだけでは湿気対策には不十分ですので、除湿剤を各部屋、押入れ、クローゼット、浴室洗面所、トイレなどあらゆるところに置いておきます。
景観を保つためや不審者の侵入を防ぐために、庭の手入れをします。
雑草の対策は抜く、除草剤を撒く、もしくは除草シートの上に砂利を撒くという方法があります。
植木や生垣は隣家や道路へ侵入したり、電線に触れないように刈り込みます。
刈り込みの作業は素人では危険を伴う可能性がありますので、費用が許すなら業者に依頼した方がよいでしょう。
庭とは若干異なりますが、樋やベランダの排水口に枯葉やゴミが溜まったままですと、雨漏りの原因になりかねません。
こちらも忘れずに掃除するようにしましょう。
拭き掃除をメインに行います。
ホコリの除去とカビの菌が付着するのを防ぐためです。
空き家になった直後は、高いところや隙間にそれまでのホコリが溜まっていますので、取り除くようにします。
空き家の場合、一度ホコリを取り除いておけば、ホコリが発生しやすい環境ではないので、その後が楽になります。
換気や庭の手入れは天気が良い日におこないたいですが、それとは別に雨の日に空き家の状態を確認する必要があります。
雨水の浸入口は屋根からだけではありません、窓のサッシ、外壁、樋、ベランダの排水口からも浸水してきます。
部屋や押入れ、クローゼットなどに雨染みができていないか、不自然に濡れているところはないか確認しましょう。
雨漏りは家の傷みを加速させますから、発見したらできるだけ早く業者に修理を依頼します。
空き家を維持管理していくには手間も費用もかかります。
維持しているだけでかかる費用は馬鹿にならない項目です。
ここでは実際にどんな費用が必要となってくるのか具体的に見ていきましょう。
毎年1月1日に固定資産税台帳に登録されている価格を課税標準として税額が算出されます。
課税標準は3年に1度見直しが行なわれます。
税率は市町村で自由に設定できますが、原則として1.4%です。
宅地については特例が適用され、以下のルールで課税標準が計算されます。
200㎡以下の部分は課税標準×1/6、200㎡超の部分は課税標準×1/3
固定資産税と同様、毎年1月1日に固定資産税台帳に基づき税額が算出されます。
税率は最高限度0.3%以内の範囲で市町村で設定します。
宅地については特例が適用され、以下のルールで課税標準が計算されます。
200㎡以下の部分は課税標準×1/3、200㎡超の部分は課税標準×2/3
水道光熱費は空き家であっても、維持・管理のために契約をしていれば基本料金と使用料金がかかります。
空き家であっても火災保険はつけるべきです。
放火のターゲットにされがちですし、万が一火事に見舞われた際には、最低でも撤去費用が必要になります。
もし、建物の再建を考えるなら、保険金は助けになるでしょう。
空き家の場合は、専用住宅、併用住宅とは別の一般物件の扱いになりますので、料率が高くなります。
窓ガラスの割れや雨漏りなどの破損箇所があれば業者に依頼して修理する必要があります。
庭の手入れは個人でやるには体力も気力も必要な上、危険を伴いますので、できれば業者に依頼した方がよいでしょう。
また建物を維持するために、屋根や外壁は、約10年周期で葺き替えや塗替えをおこなう必要があります。
このように空き家はただもっているだけでは、物理的にも経済的にも負担がかかってくるものでしかありません。
土地活用、不動産活用をおこない、マイナスの資産を利益を生み出すプラスの資産に変化させることが必要です。
将来的にはますます空き家が増えて、土地活用をするにも周辺地域との競争が激しくなることも考えられます。
「いずれは自分も土地活用を」、と考えているのであれば、今がチャンスです。
検討を始めるのは早いに越したことはありません!