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空き家が増える中で、今後の土地活用の動きはどうなるのか

 

核家族化が進み、子供たちが親世帯と離れて暮らすことが、ほぼ当たり前になって久しいですね。

その親が残した家をただ潰してしまうのは忍びない、かといってどう利用すればよいかもわからない。

かつて賑やかであった実家が何年もひっそり空き家のまま残されているのは、このような心の機微のせいかもしれません。

しかし、空き家が年々増加して、社会問題化しているのも事実です。

ここでは、空き家が問題視される理由とその現状に対する社会的な取り組みを解説するとともに、今後、空き家を価値あるものにしていくための、土地活用のヒントをいくつかご紹介したいと思います。

目次

空き家が増加し、眠っているだけの土地建物が増加している

社会問題として政府が法案を出す事態にまで発展

「空き家」の存在が社会問題として俄然注目を浴びるようになったのは、「平成25年住宅・土地統計調査」で空き家の増加が著しいと報告されたことがきっかけです。

「住宅・土地統計調査」とは、日本の住宅とそこに居住する世帯の居住状況、世帯の保有する土地などの実態を把握し、その現状と推移を明らかにする調査です。

この調査は、住生活基本法に基づいて作成される住生活基本計画、土地利用計画などの、国及び地方公共団体の各種行政施策の基礎資料を提供する役割を担っています。

総務省統計局により5年毎に実施され、平成25年は通算14回目の調査でした。

調査結果から、平成25年10月1日現在における日本の空き家数は820万戸で5年前に比べて63万戸(8.3%)増加、空き家率(総住宅数に占める割合)は、13.5%と前回より0.4ポイント上昇し、空き家数、空き家率共に過去最高となったことがわかりました。

人口減少は引き続き続いていますから、空き家が増えるのは自然の流れと思われるかもしれません。

しかし、総住宅数は6063万戸で、5年前と比較すると、304万戸の増加(増加率5.3%)という結果になっています。

つまり、住宅は建設され続けていてかつ、利用されていない家(=空き家)も増えているということですね。

国土の狭い日本におけるこの状況は、土地が有効利用されているとは言い難く、経済的な損失へと繋がる、危惧すべき事態と言えるでしょう。

さらに、空き家の増加は、経済的な問題以外の多くのリスクを抱えていることもわかっています。

例えば「老朽化による倒壊の危険」、「景観悪化」、「不審者侵入による治安悪化」、「放火による火災の危惧」などが挙げられます。

このような状況を受けて、平成27年、空き家がもたらす悪害の防止と土地の有効活用促進を目的に「空家対策特別措置法」が施行されました。

これにより、それまで独自に条例を設けて対応している自治体はありはしましたが、基本、所有者任せとなっていた空き家問題に、各市町村が国の方針に従って法的根拠をもって対策を講じることが可能になりました。

具体的には、各市町村が調査を行った結果、そのまま放置すると保安上、衛生上において、著しい弊害を周辺住民及び環境に与えかねないと判断された空き家について、所有者に対して除却、修繕などの対応を「助言・指導→勧告→命令」と段階的に促し、最終的に改善が行われない場合は、強制的に建物の撤去を行うことができるようになっています。

勧告を受けた時点でその家は、「固定資産税等の住宅用地特例」の対象から除外されます。

撤去は強制的に行われますが、費用は所有者が負担しなければなりません。

維持・管理のコストを考えると個人にも大きな負担

このように空き家を放置して、いわゆるボロ屋敷にしておくことは法律でも禁止されました。

しかし、そのような状態にいたるまで放置しておくことは、周辺住民・環境に多大な迷惑をかけかねません。

つまり、行政に指導された時点で、すでに事態はかなり深刻化しているということです。

老朽化した建物が倒壊すれば他人に危害を与えるかもしれませんし、庭木や雑草が生い茂った家は景観が悪いだけでなく、不審者の侵入を招き、ゴミの投下、家財の破壊などの被害は治安を悪化させます。

燃え易いゴミや枯れ草を溜め込んだ家は、放火のターゲットになり易いことも良く知られていますね。

これらを防ぐには、所有者が責任をもって、空き家の維持・管理をおこなうこと以外ありません。

定期的に訪問して、室内の空気の入れ替えや掃除、庭の手入れをおこない、約10年毎の節目には屋根の葺き替えや外壁の塗替えで、家の老朽化を防止しなければなりません。

所有者が遠方に住んでいたり、高齢者であれば自分たちで手入れをすることは難しいでしょうから、業者の手を借りることになるでしょう。

相続などでたとえ自ら望んで手に入れた家でないとしても、所有している限りはコストをかけて、空き家の維持管理はしなければならないのです。

このように空き家問題は、社会的にはもちろん、空き家を抱える個人にも、経済的負担という深刻な影響を与えているのです。

空き家問題に対する各団体の動き

空き家の維持管理は、所有者の責任であると申し上げましたが、闇雲に対応しても良い結果は導き出せませんね。

自治体やNPOなど支援団体に、知恵を借り、支援を仰ぎながら対応していく方法があります。

自治体の取り組み

(1)解体費用補助金・助成金制度

空き家を思い切って解体しようと思ったとしても、なにぶん費用のかかることですから、躊躇してしまうかもしれません。

解体費用の補助金や助成金の制度を設けている自治体があります。

【例】

茨城県笠間市

空家解体撤去補助金

○補助の対象となる建物

市内にある管理不全状態空家等で、主に居住の用に供していたものおよびその土地

○補助要件

  • 該当建物の所有者および土地の所有者
  • 「笠間市空家等対策の推進及び空家等の利活用の促進に関する条例」により助言または指導等を受けた
  • 市税を滞納していない
  • 所有権以外の物権または占有権限が設定されていない
  • 有資格者(建築士)同行の立入調査により補助対象と認定された建物

○補助金額

建物解体費用の1/3かつ補助金上限額30万円

愛知県豊橋市

豊橋市空家解体促進費補助金

○対象となるひと

  • 豊橋市税を滞納していない個人
  • 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員でない
  • 空家の所有者である

※ただし、空家が共有である場合は、当該空家の解体について共有者全員の同意がある

○対象となる空家

  • 市内に存する1年以上使用されていない空家で、2分の1以上が居住の用に供されていたもの
    ※ただし、空家が長屋又は共同住宅の場合は、全戸において1年以上使用されていないもの
  • 木造
  • 住宅地区改良法第2条第4項に規定する不良住宅と同等の空家(主に老朽化した空家)
  • 個人所有
  • 所有権以外の権利が設定されていない
    ※ただし、所有権以外の権利が設定されている場合であっても、当該権利の権利者が当該空家の解体について同意している場合は対象

○補助金額

解体費用の2/3(上限20万円)

(2)改修費用補助金・助成金制度

空き家を有効活用し、かつ定住や移住を促す目的で、空き家の改修費用の補助金や助成金の制度を設けている自治体があります。

【例】

福島県平田村

村内に存在する空き家の所有者が移住定住者に対し貸借をおこなう場合に助成金を交付

○交付要件

移住定住者に空き家を貸借するひとで村税等に滞納のないひと(賃貸を目的とする集合住宅は、交付対象から除く)

※移住定住者とは、助成対象者が助成金を申請した日において、村内に住所を有していないひと、または村外から村に転入して6ヶ月を経過していないひとで、助成対象者が助成金の交付を受けてから5年以上村に定住しようとするひと

(助成金の申請日前1年以内に村から転出したことがあるひとを除く)

○助成金

10万円(同一空き家に対して1回限り)

高知県安田町

UIターン希望者住居改修事業補助金

UIターン希望者又は移住希望者に住宅を提供しようとする者が行う個人が所有する空き家の改修・整理費用に対して補助金を交付

○補助金交付対象者

  • 本町に住所を有していない者で、町外に5年以上居住している者
  • 本町に住所を有して1年を経過しない者で、それ以前は町外に5年以上居住していた者
  • 上記の者に住宅の提供をする住宅所有者

○補助金交付要件

  • 補助事業終了後5年間は移住者等の居住用住宅とする
  • 事業終了後直ちに居住の用に供しない場合、若しくは、前号の期間内に事情により空き家状態になった場合は、本町の空き家情報に登録を行う
  • 住宅を借り受ける者が住宅の改修を行う場合は、住宅の所有者に改修工事の同意及び原状回復義務の免除について確認する
  • 改修工事及び荷物の処分等は本町内に本店または営業所を有する業者が請け負うものを対象とし、自己による改修工事等の場合は材料費等の実費のみとする

○補助率

10分の10以内(千円未満の端数は切り捨て)

○補助限度額

10万円

空き家バンクの取り組み

「空き家バンク」とは、主に市町村などの自治体や、自治体から委託を受けた不動産業界団体などがおこなっている、空き家を持っているひと(売りたい、貸したい)と、空き家を探しているひと(買いたい、借りたい)をマッチングさせるサービスのことです。

「自治体の取り組み]のところでも触れましたが、空き家バンクもまた、定住や移住を促す目的で生まれた制度です。

各自治体によっては補助金制度や優遇制度などプラスα的な制度を用意しているところもありますが、大筋は以下のような流れでおこなわれます。

  1. 空き家を所有しているひとが所属する自治体の空き家バンクに空き家情報を登録
  2. 自治体は公式HPにて空き家情報を公開
  3. 定住や移住のために家を探しているひと(移住希望者)が、希望の自治体の空き家バンクに登録
  4. 移住希望者が空き家情報を自由に閲覧
  5. 移住希望者は気になる物件があれば、自治体の空き家バンク担当者に連絡
  6. 空き家バンク担当者は所有者と連絡をとり、移住希望者に引き合わせる

多くの場合、空き家所有者と移住希望者の引き合わせまでが空き家バンクの仕事です。

それ以降の交渉は仲介業者が入るか、当事者同士の話し合いで行われます。

NPO法人 空家・空地管理センター取り組み

「NPO法人 空家・空地管理センター」は、管理されていない「放置空き家」を無くすことを目標に、低価格で空き家の維持管理サービスをおこなっている非営利団体です。

毎月の外部からの目視点検に特化した「100円管理サービス」や、建物の劣化を防ぐための通気・換気や雨漏り点検、通水、近隣の方への挨拶、庭の目視点検、ポスト掃除などをおこなう「しっかり管理サービス」の提供をおこなっています。

また、空き家の維持管理サービスだけでなく、空き家に関する様々な相談(空き家の管理方法、活用方法、相続の問題、税金についてなど)を無料でできる「空き家相談センター」を設けています。

弁護士・税理士といった専門家や全国の協力不動産会社、そして解体・草木剪定などの専門業者などと連携し、空き家問題にワンストップ対応できる体制が整えられています。

空き家となった家の活用方法は?

空き家を寝かしたままにせず、有効活用して利益を生み出す方法もあります。

賃貸としてそのまま貸し出す

比較的新しい家や管理状態が良い家であれば、最低限の修繕をして貸家としてひとに貸すことができます。

初期費用を抑えて、家賃収入を得ることができる可能性があります。

リフォーム・リノベーションを加えて貸し出す

老朽化が酷かったり、内装が古かったりする場合は、リフォーム・リノベーションをおこなって不動産価値を高めてから賃貸にします。

最低限の修繕で賃貸にできる場合に比べれば、初期費用はかかりますが、時代のニーズに合わせた改修をおこなうことで、家賃を少々高めにしても、入居希望者を集めることができる可能性があります。

住宅以外の活用法を考え、新しい活用方法を与える

立地条件によっては賃貸住宅の需要が少なく、リフォーム・リノベーションをおこなっても収益が見込めない場合もあります。

そういった場合は、賃貸住宅から別の転用方法を考えて運営することを検討してみると良いでしょう。

駐車場やトランクルームなど、建物を壊して更地にしてから活用する方法もあります。

ただし、更地にしてしまうと住宅用地の減税が受けられなくなりますので、固定資産税や都市計画税が高くなることはあらかじめ認識しておいてください。

まとめ

日本の住宅市場は新築至上主義から、良質な中古住宅の流通へとシフトチェンジしつつあります。

平成18年に住生活基本法が施工されて以来、住宅を次々に建てる「量の確保」から、リフォームやリノベーションを施した古くても良い家、つまり「質の確保」にも重きが置かれるようになりました。

国や自治体も安心・安全確保のためのリフォームやリノベーションに対して、補助金制度や優遇税制を積極的に行っています。

親世帯がまだ元気なうちに、それら制度を利用して家の質を確保しておくという考え方も、将来的な土地活用には有効でしょう。

相続の話はタブーとされる傾向が強いものですが、世帯間で話し合いを持つことも、時には必要かもしれません。