NISAの正式名称は「少額投資非課税制度」といい、2014年から開始され、2023年購入分まで続く制度です。
「毎年設定されている非課税枠内で運用している株や投資信託に対し、その運用益を非課税にする」と定められています。
税金を優遇することで、投資を行う人を増やし、株式市場を活発化させたいということで始まった制度ですが、実際、NISAの口座開設者数は年々増加傾向にあり、2016年3月末で1000万以上口座開設されています。
さらに、2016年4月から「ジュニアNISA」が始まり、20歳以下でもNISA口座を開設できることになりました。ジュニアNISAの非課税枠は80万円なので、両親に子供二人といった四人家族の場合、一家全体で年間400万円もの非課税枠があることになります。
これは大きなメリットですね。
このように、ジュニアNISAの開始などから、ますますNISAの制度の認知が広まり、多くの人に利用されていくと思われます。
それでは、NISAで投資を行う場合のメリットとデメリットについてみていきましょう。
株や投資信託をNISAで購入すると、5年間利益が非課税になります
NISAの一番のメリットは、「毎年120万円までの非課税枠での投資」に限り、5年間その運用益や分配金、配当金などに税金がかからない、というものです。
NISAでは毎年120万円までの非課税枠が設定されており、その枠内で購入した株式や投資信託について、値上がり益や配当、分配金などすべてに税金がかからないとされています。
ここでいう120万円とは、値上がり益や配当、分配金を含みません。例えば1年目に120万分投資信託を買い、5年間運用して売却したとします。
この投資信託が値上がりして180万で売却できた場合、180万―120万=60万の利益にかかる税金が全額非課税になるのです。
また、運用している5年間の間に、株式の配当や投資信託の分配金が出ていた場合、その分配金にかかる税金も全額非課税となります。
このように、税制面で非常に優遇されているのがNISAです。5年間のあいだは、どれだけ値上がりしても運用益は非課税になるため、運用していた金融商品が値上がりすればするほどメリットが高くなるということになります。
毎年非課税枠が設定されて、そのそれぞれの非課税期間が5年間となるため、例えば2016年購入分は2020年まで、2017年購入分は2021年まで、というふうに、それぞれ5年間にわたり非課税の期間が続きます。
NISAの制度は2023年までとされていますが、2023年の非課税枠で購入した分は、5年後の2028年まで非課税期間があるので問題ありません。
ここで、配当について注意点があります。配当の受け取り方は、証券口座での受取り(株式数比例配分方式)でもらうようにしましょう。
それ以外の方法だと、非課税枠で購入した株式の配当かどうかがわからないため、非課税となりません。
NISAの非課税枠は、一度使うとやり直しがきかないので注意
NISAの非課税枠は、一度使うとやりなおしがききません。
例えば、今年初めに80万円の投資信託Aを買って運用しようとしたが、数ヵ月で大幅に下がってしまったとします。
運用成績が悪いので、投資信託Aを売って投資信託Bを買いなおそうとしても、NISAで買える分は120万円―80万円=40万円分しか買えないのです。
一度買ったら、それを売却したとしても、非課税枠は戻りませんので注意が必要です。
やり直しがきかないということなので、NISAの非課税枠を使って株や投資信託を買う場合、よく検討することが重要です。
NISAの非課税枠は、使わなかった分は来年に持ち越せない
NISAの非課税枠は毎年120万円までですが、余ってしまったとします。
投資信託であればほぼ非課税枠に合わせて買い付けることができますが、株式を買う場合は金額を合わせることは難しいですね。
非課税枠が余ってしまうこともあるかと思います。
この残ってしまった非課税枠ですが、これは次の年まで持ち越せません。
余ってしまっても繰り越すことができず、次の年の非課税枠は120万円までとなります。
非課税期間の5年が過ぎると、次の年の新たな投資枠に移管できる
初年度に株や投資信託を買い付けて5年間運用すると、非課税期間が終わってしまいますが、その時に希望するならば、
非課税期間が終わった次の年の非課税枠にその商品を移管することができます。
ここで、二つのパターンが考えられるのですが、場合によっては損をしてしまうことがあるので注意が必要です。
ふたつの例を見ていきましょう。
例1:2016年にNISAの非課税枠で120万円投資信託を買い付け、5年間運用し、投資信託は200万円まで値上がりした。
この投資信託を次の年の非課税枠に移管したい場合、非課税枠の限度は120万円までのため、200万円の投資信託をそのまま移すことはできません。
この場合、この投資信託は二つに分割され、120万円分はNISAの非課税枠に、それ以外の80万円は特定口座に移管されます。
特定口座にうつされた80万円分は、購入額が80万円とみなされ、過去の含み益は無視されますので、例えば80万円から100万円に値上がりして売却した場合は、100万―80万=20万円に税金がかかってくることになります。
初年度の買い付け時からの含み益すべてに税金がかかってくるわけではないので、覚えておきましょう。
例2.2016年にNISAの非課税枠で120万円投資信託を買い付け、5年間運用した結果、投資信託は50万円まで値下がりしてしまった。
この場合、この50万円を売却するか、次年度の非課税枠に移管するか、特定口座に移管するかの3つの選択肢があります。
売却した場合はもちろん税金はかかりません。
次年度の非課税枠に移管した場合、最初の120万円ではなく「50万円の投資信託」と見なされますので、次年度はまだ70万円の非課税枠が残る計算になります。
問題なのは、特定口座に移管した場合です。
特定口座に移管した場合、その投資信託は「50万円で買い付けた」と見なされます。
その後、その投資信託が100万円まで値上がりして売却した場合、2016年の初年度に買い付けた額に戻っただけなので利益は出ていないことになります。
しかし、特定口座に移管した時点で「購入額は50万円」と見なされてしまっているので、100万―50万=50万の利益とみなされ、50万円に20.315%の税金がかかり、10万1575円が引かれてしまうのです。
実質は利益が出ていないのに、無駄に税金が引かれてしまうことになるのです。
このように、特定口座に移管する場合、購入時より値下がりしてしまっている場合は注意が必要です。次年度の非課税枠に移管するか、売却するかのどちらかが良いでしょう。
もしも、5年が過ぎた時点で、何も手続きをしないと、自動的に特定口座に移管されてしまいますので、値下がりしている場合は特に注意して、手続きを忘れないようにしましょう。
NISAでは損益通算が使えない、値下がりするとデメリットに
NISAでは、運用益や配当・分配金に対しての税金が非課税になりますので、もしも株や投資信託が値下がりしてしまった場合、そのメリットを享受することができません。
それどころか、デメリットもあるのです。
NISAの口座で取引している株や投資信託において損失が出た場合、特定口座や一般口座では可能な損益通算ができないことになっていて、それがNISAのデメリットとなっています。
例を見てみましょう。
例えば、特定口座で100万円の株式を買い、NISA口座で100万円の投資信託を買ったとします。
そしてその1年後、株式は150万円に値上がりしたので売却しました。NISAの投資信託は50万円に値下がりしてしまいましたが、こちらも売却したとします。
特定口座や一般口座での取引ならば、50万円の利益と50万円の損失を損益通算し、プラスマイナスゼロになりますね。
しかし、NISAで取引している場合は、損益通算の対象になりません。
NISAの投資信託で50万円の損が出ているのにもかかわらず、株式の値上がり益の50万円にかかる税金を払わなければならないのです。50万×20.315%=10万1575円の税金がかかってきます。
かたや損をしているのに、税金を払わなければいけないのは辛いところです。
このように、NISAの非課税枠で損失がでている場合は、NISAを使わない取引に比べ、デメリットがあることになります。
しかし、誰もが、株価や投資信託が上がって利益が出ることを期待して投資をしているわけです。
買い付ける時に、将来値下がりする予想などできませんね。将来、予想外に不利益をこうむることがある、ということは覚えておきましょう。
NISAでは損益の3年繰越も使えない
先ほど紹介したように、NISAでは損益通算ができませんが、一般口座や特定口座で可能な「損失の3年繰越」もできません。
一般口座や特定口座であれば、確定申告をすれば損益を次の年に持ち越せます。
今年1年の投資の結果が50万円の損失で終わった場合、確定申告をすれば次年度に繰り越すことができ、次年度は50万円までは利益が出ても税金がかかりません。
しかし、NISAではそれができません。
もし、100万円で買った投資信託が50万円に値下がりし、売却したとします。この50万円の損失を次年度に持ち越して、次年度の非課税枠に足すことなどはできないのです。
毎年、120万円まで、と決められている非課税枠は、変わることはありません。
NISA口座はひとつしか開けないので手数料の安い証券会社を選ぼう
NISAの口座は一人ひとつしか開設できないことになっています。一般口座や特定口座は、証券会社ごとに開くことができますが、NISAはひとつと決まっていますので、どの証券会社で開設するかということが重要です。
株式の売買手数料や、投資信託の販売手数料は証券会社によって違うため、できるだけ安い手数料のところで開設する方がよいでしょう。
NISAでは非課税の期間が5年ですから、中期運用に適していますので、株式よりも、投資信託で運用する人が多くいます。よって、投資信託の販売手数料に着目して証券会社を選ぶのも一つの方法といえるでしょう。
銀行や証券会社での投資信託の販売手数料は、高いものでは4%近くもとられてしまいます。
しかし、ネット証券では「ノーロード投資信託」といって、販売手数料が無料のものも増えてきています。
ネット証券の方が、株式売買手数料、投資信託販売手数料とも割安のところが多く、メリットがあります。一度開設すると、1年間は金融機関を変更することができないので、慎重に選びましょう。
このように、NISAには少々デメリットはあるものの、多くのメリットがあります。約20%の税金が引かれないということは大きな利点です。
株や投資信託での投資を始めるならば、まずNISAの口座を開設し、NISAの非課税枠で運用してみてはいかがでしょうか。