「ランクル」と呼ばれて多くの人に愛されているトヨタランドクルーザーは、1954年に登場して以来、じつに60年以上もの長い間販売されている、日本でもっとも息の長い車種です。
本格的なSUVの代名詞として世界中で活躍しているランドクルーザーについて、特徴や歴史などを解説していきます。
トヨタ ランドクルーザーの基本情報
そもそもは公的機関の要望に応えて開発が始められたランドクルーザーは、質実剛健なSUVとして今でもその過剰とも言える頑丈さやパワーの目立つ車種です。
まずは、その基本性能を確認していきましょう。
新車価格
日本の街中を走るには明らかにオーバースペックとも言えるランドクルーザーですが、価格についてはどうなっているのでしょうか?
新車/車両価格 …… 472.9万円から723.6万円程度
正直なところ、価格もオーバースペックと言える金額です。車体価格だけで700万円超というのは、サラリーマンが購入するには覚悟がいるでしょう。
型式
ランドクルーザーの型式は「CBA-URJ202」です。
排気量
本格SUVとして日本を代表する車種ですので、排気量も本格的です。
排気量 …… 4.6L
車体重量が2.5t前後あるとはいえ、国内の街中を走るにはあまりにもオーバースペックでしょう。
未舗装路や道なき道を走る本格的なSUVとして考えても、とても力強い排気量です。
グレード
ランドクルーザーには以下のようなグレード設定、特徴があります。
- ZX
サンルーフや自動ブレーキなどフル装備の最上級グレードです。
- AX
本革ステアリングやシフトノブなど内装が豪華になっています。
クリアランスソナーやバックソナーなどの安全装備も設定されています。
- GX
装備を必要最低限に抑えた標準モデルです。
シートは2列目までしかなく、荷室が広く取ってあります。
本格SUVを純粋に楽しみたいのであれば、GXグレードが良いでしょう。
そうではなく、安全性や足回りに余裕のある高級車に乗りたい方はZXを選ぶことで満足できると思われます。
駆動方式
本格SUV車のランドクルーザーの駆動方式は、当然ながらフルタイム4WDです。
燃費
他に類のない頑丈さを持ち、どんな悪路でも走破するパワーを持っているランドクルーザーは、SUVとしては優秀な機能を持っています。
しかし、昨今のエコカーブームとは真逆な存在ですので、時代の流れとしては厳しい洗礼を受けてしまうでしょう。
ランドクルーザーの燃費を、カタログ値から見てみましょう。
燃費 …… 6.7km/Lから6.9km/L
ハイブリッドカーなら20km/L以上が常識の現在、この燃費ではガソリン食いの大型車と言われても仕方のない結果です。
ハイブリッド仕様
ランドクルーザーには、ハイブリッドモデルはありません。
ハイブリッドモデルでは、ランドクルーザーに求められているパワーは、まだ実現できないのかもしれません。
エコカー減税
6.9km/Lの燃費で、エコカー減税対象車になれるはずがありません。
その上、排気量が大きく、車体重量が重くなっていますので、支払う自動車重量税と自動車税は大きな金額になってしまうでしょう。
その納税額は以下のようになっています。
もちろん、減税額はゼロです。(1年当たりの金額です)
- 経年:初年度〜13年目(自動車税:88,000円程度)
車体重量 | 重量税 | 納税額 |
2.5t以下 | 20,500円程度 | 108,500円程度 |
2.5t超 | 24,600円程度 | 112,600円程度 |
- 経年:14〜18年目(自動車税:96,800円程度)
車体重量 | 重量税 | 納税額 |
2.5t以下 | 25,000円程度 | 121,800円程度 |
2.5t超 | 30,000円程度 | 126,800円程度 |
- 経年:19年目~(自動車税:101,200円程度)
車体重量 | 重量税 | 納税額 |
2.5t以下 | 31,500円程度 | 132,700円程度 |
2.5t超 | 37,800円程度 | 139,000円程度 |
乗車定員
ランドクルーザーはグレードによって8名乗りと5名乗りの2種類があります。
AXおよびZXグレードは3列シートの8名乗りですが、GXグレードは2列シートの5名乗りです。
その代わり、GXグレードの荷室は大きく取られていますので、SUVとして純粋に楽しむのであれば、GXグレードが適切かもしれません。
ボディカラー
ランドクルーザーには、以下の9色のカラーバリエーションが存在しています。
- ホワイト系:ホワイトパールクリスタルシャイン
- ブラック系:ブラック、アティチュードブラックマイカ
- シルバー系:グレーメタリック、シルバーメタリック
- その他 :カッパーブラウンマイカ、ダークブルーマイカ、ダークレッドマイカメタリック、ベージュマイカメタリック
イメージ画像には「アティチュードブラックマイカ」や「ホワイトパールクリスタルシャイン」が使われていることが多いようです。
「高級車としての豪華さ」を引き立てている、ということかもしれません。
最高出力
ランドクルーザーの最高出力を他車と比較するのも失礼かもしれませんが、数値を見て改めてそのパワーを確認してみましょう。
最高出力 …… 234kW(318ps)/5,600rpm
2.5t前後の車体で未舗装路を確実に走り切るには、この程度のパワーがいるということでしょう。
しかし、街乗りではあまりにもオーバースペックですので、考え物かもしれません。
最大トルク
本格SUVとしては、大きな岩を乗り越えるなど瞬発力も重要です。こちらも数値で見ておきます。
最大トルク …… 46.9kgm(460Nm)/3,400rpm
舗装路を普通に走っているときに、アクセルを踏み込むことはほとんど不要と言えるトルクです。やはり、街中を走るにはあまりには大きすぎるほどのトルクかもしれません。
歴史
ランドクルーザーという名称は、1954年6月から使われました。(実際には1951年に完成し、公的機関に採用されたトヨタジープBJが初代)
そこから現在まで、「ランドクルーザー」という車名は本格SUVの代名詞として連綿と引き継がれています。
そんなランドクルーザーの歴史を簡単に振り返ってみましょう。
- トヨタジープBJから20系、40系、55/56型(1951年~)
警察予備隊(現在の陸上自衛隊)が国産の小型四輪駆動車を各社へ要求した際に開発されたのが、ランドクルーザーの初代となる「トヨタジープBJ」です。
残念ながら、警察予備隊への採用は見送られましたが、地方警察に採用されて量産が開始されました。
その後、民間へも販売開始され、海外展開も積極的に行った結果、受注が相次ぎ、世界的なヒットモデルとなりました。
その後何度かモデルチェンジを行い、1960年代前半に北米でもっとも売れたトヨタの車種は、ランドクルーザーでした。
- フルモデルチェンジ(70系)(1984年)
1984年のフルモデルチェンジで、ランドクルーザーは2つの系統に分かれます。1つは大型の「ヘビー系」で、もう1つは積載重量が1.8t以下の「ライトデューティー系」です。
ヘビー系については、国内の環境基準を満たすことが厳しく、2004年に販売を中止しました。
(海外では継続、また2014年に30周年記念として期間限定で販売されています)
そのため、現在のモデルはライトデューティー系の系譜になるわけです。
- SUVから高級SUV、プレミアムSUVへ 80系、100系、200系(1989年~)
1989年にモデルチェンジを果たした80系は、より高級感を増した「高級SUV」へと進化しています。もちろん、それでSUVとしての性能が落ちることはなく、その点もしっかりと進化を進めました。
その後も悪路走破性は維持しつつ高級路線が続き、その装備や性能もさることながら、価格も高級車レベルになっています。
現行の200系が登場したのは2007年で、トヨタの先進機能を搭載し、ラグジュアリーな内外装を持つ本格SUVとして、マイナーチェンジを繰り返しています。
特徴
ランドクルーザーの魅力は、その頑丈さとパワーでしょう。
しかし、超高級車の仲間入りをしている現在は、常に悪路を走破するための頑丈さではなく、「いざ事故に遭ったときのための頑丈さ」という意味で人気があると言えるかもしれません。
そんな特徴も含めて、ランドクルーザーのおすすめできる点とおすすめできない点を紹介しましょう。
おすすめできるポイント
①世界が認めた、どんな悪路(オフロード)でも走り抜ける走破性
世界中でランドクルーザーの人気が高い理由は、この走破性の高さに他なりません。
残念ながら、海外ではまだまだ未舗装路が多く、SUVでなければ移動が難しい場所も存在しています。そのため、ランドクルーザーのパワーと頑丈さは、重要な要素なのです。
- 4WDの性能を極限まで引き出すマルチテレインセレクト
5つの中から最適なモードを選択することで、4WD性能をもっとも効率的に活用できるように、トラクションやブレーキを自動制御してくれます。
- マルチテレインモニター
フロント・サイド左右・リヤに搭載された4つのカメラで、車両の周囲の状況を確認することができます。
また、停車しているときの車両下部の路面状況(走行中に記録した画像からの合成画像)を映し出せますし、車両の傾きに合わせて画面を回転してくれることで、車の傾斜を直感的に知ることができます。
- クロールコントロール
アクセルやブレーキ操作をすることなく、ステアリング操作のみで極低速走行を可能にしてくれる機能です。
この機能を使えば、凹凸の大きいオフロードや滑りやすい路面を走行する際に、ハンドル操作のみに集中することができるわけです。
②悪路でも快適な乗り心地
SUVは悪路を走行することが前提ですので、「乗り心地が悪いのは仕方ない」と諦めてはいけません。
ランドクルーザーは、どんな悪路でもできる限り乗り心地が良くなるようになっているのです。
- 4-Wheel AHC&AVS
路面状況などに合わせて車高を自動的に調整し、走行安定性を高めてくれます。また、通常走行時や旋回時など、走行状態に応じて減衰力を自動制御して、操縦安定性とともに快適な乗り心地を高めてくれるのです。
- 快適なシート
シートから送風が吹き出る「シートベンチレーション」やシートヒーターが設置され、暑い日も寒い日も快適に過ごすことができます。また、ステアリングにもヒーターが付いているので、寒い日の運転でも手がかじかんでしまうことはありません。
- 前後左右独立温度コントロールフルオートエアコン
空調システムは、運転席、助手席、後席の左右で独立した温度コントロールが可能になっており、エアコンの吹出し口は28箇所もあるため、すべての人が快適に過ごすことができます。
③期待以上の静粛性
SUVと言えば、大きな排気量にものを言わせて悪路を走り抜けるイメージがあり、静粛性とは真逆な印象が強いと思います。
しかし、ランドクルーザーは予想以上に静かな車内空間を実現しています。
- パワーがあるエンジン
排気量4.6Lのハイパワーなエンジンのおかげで、ほとんどの場合エンジンの回転数を上げる必要がありません。そのため、エンジンの騒音をほとんど感じることがなく、静かなのです。
- SUVの制振性の高さ
車高の高さもありますが、悪路前提のサスペンションや車高のおかげで、路面の凹凸によるロードノイズが車内にほとんど響きません。そのため、走行中の車内は高級車以上に静かなのです。
④買取相場が値落ちしづらい
ランドクルーザーは、中古車市場において値が落ちづらいことで有名です。
その理由は、国内で人気が高いのはもちろん、海外市場にもおいても高い人気があることに起因します。
中古車市場で人気が高いということは、相場も高く傾向にあるということ。
さらに言えば、海外輸出ルートを持つ車買取店だとタイミングによっては、さらに高額査定を狙えるかもしれません。
おすすめできないポイント
①圧倒的な燃費の悪さ
カタログ値の燃費が6.9km/Lですので、実際の燃費はうまく走っても6.0km/L程度でしょう。
ハイブリッドカー全盛の昨今にはない燃費の悪さです。
普段使いではなく、趣味で乗る車と割り切らなければいけません。
②価格の高さ
頑丈でハイパワーなので多少は仕方ないですが、それにしても車両価格が高くなっています。
最安でも450万円以上、フル装備であれば購入価格は1,000万円に迫る勢いですので、サラリーマンには高嶺の花でしょう。
トヨタ ランドクルーザーの中古車オークション相場
※オークション相場についての注意点とお願い
以下の相場価格は買取業者が実際のオークションで落札した過去の買取落札額です。
2017年1月にオークションサイトで調べて算出したものであり、現在の査定価格と完全一致するものではございません。
車を売ろうと考えている方、購入しようとしている方は、あくまで相場価格の目安としてご参照ください。
- 年式:約3年前(平成26年)走行距離:約3万kmの場合
367~686万円
- 年式:約5年前(平成24年)走行距離:約5万kmの場合
360~724万円
- 年式:約7年前(平成22年)走行距離:約7万kmの場合
322~473万円
- 年式:約10年前(平成19年)走行距離:約10万kmの場合
226~425万円
まとめ
世界中で愛されているランドクルーザーは、その頑丈さとハイパワー、悪路走破性が特徴の、本物のSUVです。
同じ名前で販売し続けられている車としては、日本でもっとも長生きのシリーズというのも十分に納得できる、性能です。
しかし、新車価格が450万円から700万円程度と高級車と同等になっており、燃費は悪く、エコカー減税なども期待できない「お金のかかる車」でもあります。
そのため、日本では趣味と割り切って購入する人がほとんどかもしれません。
もちろん、趣味で1,000万円を使える人は多くないでしょう。そうなると、中古車を探す人が多くなります。
つまり、タイミングを見計らう必要はありません。売りたいときに売れば、高値で売れるのです。