結婚・子育て資金の贈与についての非課税制度とは?その仕組みは?
贈与税の非課税制度はいくつかありますが、結婚・子育て資金の一括贈与が非課税になる制度は、2015年の税制改正により作られた制度であり、比較的新しい非課税制度といえます。
お金がかかる結婚や子育ての資金を非課税で贈与してもらえるということで利用者が増えていますが、一度贈与をすると、子育てや結婚以外の目的で出金することができません。
老後の生活が厳しくなってきたから、やはり少しお金を返してほしいな、と思っても、贈与された側が50歳になるまでは預け入れたお金を動かすことができないのです。
このようなデメリットもありますので、制度の仕組みをきちんと理解して、納得してから制度を利用することが重要となってきます。
それでは、この制度について詳しく見ていきましょう。
目次
結婚・子育て資金一括贈与の非課税枠の仕組みとは?
この制度は、平成27年4月1日から平成31年3月31日までの間に拠出されるものに限り、子育てや結婚のための資金を非課税で一括贈与できるというもので、1000万円まで贈与できることとなっています。
また、1000万円の中で結婚のために支出するものは最大300万円までと定められています。
結婚・子育て資金とは具体的に何か、という点ですが、国税庁は以下のようなものを挙げています。
1.結婚に際して支出される資金(300万円まで)
- 挙式費用、衣装代等の婚礼(結婚披露)費用(婚姻の日の1年前の日以後に支払われるもの)
- 家賃、敷金等の新居費用、転居費用(一定の期間内に支払われるもの)
2. 妊娠、出産及び育児に要する次のような金銭
- 不妊治療、妊婦健診に要する費用
- 分べん費等、産後ケアに要する費用
- 子の医療費、幼稚園・保育所等の保育料(ベビーシッター代を含む)など
結婚式費用の全国平均額は300万円以上とされており、かなりの費用負担があります。
これらの支出を贈与でまかなうことができれば、贈与される側から見れば相当の負担軽減になることは間違いありません。
また、不妊治療は保険適用外のため、費用は平均で100万円を超えるとされています。
これらの費用を贈与してもらえる意味も大きなものとなります。
結婚・子育て資金一括贈与の非課税制度、利用する場合は?
この制度では、教育資金一括贈与の非課税制度と同じように、まずは贈与を受ける側が銀行で専用の口座を開かなければなりません。
そして、一旦贈与されたら、そのお金は贈与された側が50歳になるまでは解約することができず、上記の目的以外の支出で口座から出金することは認められません。
そして、贈与された側が50歳になるとその口座は終了となり、もしもその時点で残額があったら、その時点で贈与を受けたものとして贈与税がかかってきます。
最初に1000万円の贈与を受けたときは非課税ですが、贈与される側が50歳を迎えたときに口座に300万円残っていた場合は、その300万円に対して贈与税がかかり、税金を支払わなければならないということになってしまうのです。
この制度にはこのような特徴があるので、最終的に贈与されたお金が余ることがないよう、最初に必要な資金をしっかりと計算してから贈与を受けることが重要となってきます。
結婚・子育て資金贈与の対象者は?
この結婚・子育て資金の一括贈与を受けることができる対象者は、この贈与契約を締結する日において、20歳以上50歳未満の人とされていて、贈与する側からみて子供や孫、と定められています。
贈与される側からみると、父母や祖父母などの直系尊属からの贈与に適用される、ということになります。
結婚・子育て資金贈与の非課税制度を使いたい場合の手続きは?
この結婚・子育て資金一括贈与の非課税制度を使いたい場合は、まず銀行や証券会社などの金融機関に、贈与を受ける側の名義で口座を作ります。
そして、贈与する側は贈与したい金額を一括で贈与し、その口座に預け入れをします。
その後、税務署に結婚・子育て資金非課税申告書を提出する必要があるのですが、これは口座を作った先の金融機関が代行してくれますので、個人で税務署に手続きする必要はありません。
結婚・子育て資金贈与のための口座から出金する方法は?
この口座から出金したい場合は、領収書を金融機関に提示する必要があります。
細かくチェックされますので、その手間がかかるのもデメリットと言えるでしょう。
きちんとした領収書が必要ですし、もし適用項目以外の目的でお金を使った場合は贈与とみなされ、贈与税がかかってきてしまいます。
この口座にあるお金を使うときは、非課税になる項目への支出かどうかということを慎重に確認しながら使う必要があります。
結婚・子育て資金贈与の非課税枠、対象外となる支出は?
この制度において、何が認められて何が認められないかということを自分で判断するのが難しい、というところがデメリットと言えます。
結婚の費用に関しては、認められないものとしては、婚活の費用、結納の費用、結婚指輪、新婚旅行、美容や着付けの支出などです。
衣装代は支出が認められますので、領収書をもらうときには、衣装代をしっかりと明記してもらう必要があります。
結婚に関しては、結婚した日(婚姻届を提出した日)の1年前からの支払いが対象となりますので、披露宴費用を前払いした場合でも大丈夫です。
また、期限が特に決まっているわけではありませんので、婚姻届を出してからしばらくして披露宴を行った、という場合でも問題ありません。
新居にかかる費用は適用されることとなっていますが、その内容としては、新居を契約した際にかかる契約金・礼金・敷金・家賃・仲介手数料・更新料などとなっています。
婚姻日の1年前より後に賃貸借契約をした物件に対して、契約日から3年以内に支払うものが対象です。結婚前に新居を契約して住み始める場合もありますが、婚姻届を提出した日より1年前くらいまでの時期であれば大丈夫です。
家賃については契約日から3年以内が対象になります。
その間に契約更新を迎える場合は、その時の更新料も対象となっています。
この新居ですが、結婚に際して新たに契約したものとされています。
結婚前に住んでいた物件や、親が所有している住宅に住む場合は対象外となっています。
また、適用とされるのは上記の項目のみで、賃貸借契約とは関係のない光熱費や家具、家電などの費用は対象外となっています。
まとめ
この制度は1000万円という大きな額を非課税で一括贈与できることが魅力ですが、適用される支出項目などルールが細かく決まっているので、利用する側からすると神経を使うこととなります。
一般的に、直系尊属は「扶養義務者」でもあることから、常識的な額であれば、結婚費用や子供の学費などはもともと非課税で贈与できることになっているのです。
ですから、この制度を使わなければ損をしてしまう、というわけではありません。
この制度を利用するメリットとしては、祖父母などが元気なうちに自分の意思で多額の贈与ができること、贈与が祖父母から孫という場合、一世代飛ばして贈与ができるので相続税の節税になること、の二点であると言えるでしょう。
しかし、このような制度を使った場合、例えば兄弟間でも贈与された人、されなかった人というふうに差が出てしまうと、不仲の元になってしまうこともあります。
贈与された時点で内緒にしていたとしても、将来相続が発生した時点で過去の贈与も明らかになることが多く、その時に問題になることもあります。
この制度のメリットとデメリットをよく理解し、慎重に考えて利用するかどうかを決めるようにしましょう。