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小規模宅地等の特例とは?相続税の節税に大きな効果があります

 

相続が発生したとき、相続税が支払えるだろうかと心配になる人がたくさんいることでしょう。

相続税の税率は高く、現金だけではなく不動産にも税金がかかるため、場合によっては自宅や土地を手放さなければならないこともあるからです。

しかし、それは残された人にとってかなりの負担となります。

残された人の生活を守るという意味で、小規模宅地等の特例が設けられています。

これは、被相続者と一緒に住んでいた自宅の評価を2割に抑えることで、残された配偶者などがそのまま自宅に住み続けられるようにと考えられた制度であるといえます。

細かな条件がありますが、その条件にあえば自宅以外でもこの特例を適用し、大幅な節税をすることができます。

それでは、この「小規模宅地等の特例」についてみていきましょう。

目次

自宅には、小規模宅地等の特例が適用されます

相続が発生したとき、相続税を支払うために自宅を売却しなければならないとなると、被相続人が亡くなった後の遺族の生活に支障が生じてしまうことになります。

小規模宅地等の特例は、そのようなことが起こらないように、一定の要件を満たした場合にはその宅地の評価額を80%減額してもらえるというものです。

1億円の価値がある宅地でも、評価額は2000万円として計算することができるので、相続税額を算出するうえで、とてもメリットがあり、活用したい特例制度となっています。

小規模住宅地等の特例を受けるための条件とは?

小規模宅地等の特例は、減税額が大きく利用したい制度ですが、細かく条件が決められていますので、適用できるかどうかをきちんと確認することが必要です。大まかな条件は以下となっています。

  1. 宅地の面積 (200㎡〜400㎡まで適用範囲)
  2. 宅地の用途 (宅地が居住用であったか、または事業用であったか)
  3. 相続人と被相続人との親族関係 (相続人が、被相続人の配偶者であるか、それとも子供などの親族であるか。)
  4. 相続人が宅地にどう関わっていたか (相続人が、その宅地で被相続人と同居していたかどうかなど)
  5. 申告期限までに話し合いが終わり、遺産分割が完了しているか (期限を過ぎても申告期限から3年以内であれば適用可能。)

これらの条件を満たしていると、この特例が適用され、大幅な節税をすることができます。それでは詳しくみていきましょう。

小規模宅地の特例が受けられる4種類の宅地とは?

この特例が適用される宅地は4種類あります。

①特定居住用宅地等(限度面積)330㎡(減額割合)80%

これは、相続開始直前において、被相続人(死亡した人)が住んでいた宅地のことをいいます。

ほとんとの事例が、この特定居住用宅地となっています。

②特定事業用宅地等(限度面積)400㎡(減額割合)80%

被相続人が自営業で、店舗を営んでいた場合など、相続開始の直前において被相続人もしくは同一生計親族の事業用に使用されていた土地のことをいいます。(事業とは、貸付事業を除きます。)

③特定同族会社事業用宅地等(限度面積)400㎡(減額割合)80%

相続開始の直前から申告期限まで、特定同族会社の事業用(貸付事業を除く)に使用されている土地のことをいいます。

「特定同族会社」とは、中小企業のオーナー企業など、親族関係者を含めて全体の50%以上の株式を所有している株主が存在する会社のことをいいます。

④貸付事業用宅地等(限度面積)200㎡(減額割合)50%

相続開始の直前から相続税の申告期限まで、被相続人等の貸付事業用(不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場超及び準事業など)に使用されている土地のことをいいます。

被相続人が自営業で不動産賃貸をしていた場合、こちらの宅地になります。

①と②もしくは③は併用でき、限度面積もそのまま合計して、合わせて730㎡まで適用可能となっています。

特定居住用宅地等の条件とは?

特定居住用宅地等を受けられる条件ですが、配偶者、生前から同居している親族(同居親族)、生計をともにしている親族(生計一親族)、単身赴任等でやむなく同居できない親族となります。

「生計を共にしている」ということの定義ですが、子供の家と頻繁に行き来していたり、生活費・学資・医療費等を互いに出し合っていたり、社会的・経済的に一体として暮らしていると評価できるような場合が「生計一親族」にあたることとされています。

同じ土地に親の家と子供の家を建てて生活していた場合、同一生計親族になるのではと思われがちですが、実際は、別棟に住んでいてお財布が別である場合、同一生計親族とは認められないことが多いので注意しましょう。

それぞれの場合の条件です。

・配偶者が取得する場合は、条件は特にありません。

・同居していた親族(例えば子供など)が取得する場合は、相続開始の時から相続税の申告期限まで、引き続きその家屋に居住していることが条件となります。

単身赴任で一時的に別の場所に住んでいた場合も、生活の拠点ということで、この条件にあてはまります。

同居していない親族が取得する場合は、以下の条件を満たすことが必要です。

  • 被相続人に配偶者がいないこと
  • 被相続人と同居していた相続人がいないこと
  • 相続開始前3年以内に、日本国内にある自分または配偶者の所有する家屋に居住したことがないこと、つまり、3年以内に住んでいた場所は賃貸物件であり、マイホームがない人

事業に使っていた宅地(特定事業用宅地・特定同族会社事業用宅地)の条件とは?

この特定事業用土地等には二つのパターンがあります。それぞれについて見ていきましょう。

特定事業用宅地(被相続人が事業に利用していた宅地・被相続人の事業の用に供されていた宅地等)

これは、被相続人が店舗などを経営していた宅地のことをいいます。特例の対象人となるのは、次の二つの場合です。

  • 事業の後継者となる親族
  • 生計をともにしていて、相続後にその宅地で事業を行う親族(生計一親族)

特定同族会社事業用宅地

事業が会社という形をとっていて、あなたがその会社に、宅地をお金をもらって貸していた場合。

この場合、特例の対象になる相続人は、会社の役員をつとめている親族となります。

貸付事業用宅地等の場合の条件とは?

これは、被相続人が賃貸を営んでいたり、駐車場として事業をしていた土地のことを言います。

評価額の割引率は、特定居住用宅地や特定事業用宅地・特定同族会社事業用宅地よりも低くなっています。

余った土地を賃貸にあてていると考えられており、生活に必ずしも必要でないものと見なされているので、割引率が低くなっているようです。

特例が受けられる相続人は、相続後もその宅地の貸付の事業を引き継ぎ、保有し続けている親族となっています。

小規模宅地等の特例を適用することができれば、相続税を大幅に減らすことができます。

しかし、この特例を満たす土地であるのに、生前に贈与してしまうことで、この特例をうけることができずに多額の相続税をとられてしまう例が増えています。

近年、生前贈与についての様々な非課税制度が設けられているので、非課税枠を使った生前贈与を行った方が得なのでは、と考える人も多いのです。

しかし、この小規模宅地等の特例を使った場合は相続税がかからないのに、生前贈与してしまったことで、支払わなくてもよかったはずの相続税を支払うケースが増加していますので、様々な条件を考え合わせ、生前贈与をするかどうかを慎重に検討する必要があります。

目安としては、「小規模宅地等の特例」が適用できる土地は相続することにして、適用できない土地の場合は生前贈与を考える、という風に分けて考えると良いでしょう。