交通事故で後遺症が残ったら慰謝料はどうなる?手続きや相場を解説!
交通事故にあい、怪我の治療を行ったとしても、体が元の状態に戻らない場合があります。
骨折後、手足の可動域が完全に回復しなかったり、手足のしびれや痛みがなくならないなどの後遺障害が残ってしまうときもあるのです。
重い後遺症の場合、今までのように仕事をすることができなくなったりして、大きな精神的苦痛と経済的損失が伴います。
もしも交通事故で後遺症が残ってしまったら悲しいことです。その後遺症という損害に対して、適正な慰謝料をもらう権利があります。
気持ちとしては、お金でその辛さは埋めることはできませんが、せめてできるだけたくさんのお金をもらいたいと誰もが思うはずです。
ここでは、後遺症が残った場合の慰謝料金額をどのように請求するのか、その相場はどれくらいなのか、といったことを解説していきます。
目次
交通事故における後遺症とは?後遺症と後遺障害の違いに注意
人身事故にあってしまって怪我をした場合、治療を行っても完全に治らず、事故の前の状態に回復しないことを後遺症といいます。
しかし、後遺症が残ったというだけでは、慰謝料が増額するわけではないのです。
後遺障害という言葉を耳にしたことはありますか?「後遺症」とよく似た言葉ですが、「後遺障害」とは後遺症と全く違った言葉であり、法律用語です。
後遺障害の定義は、「自動車事故による傷害の治療が終了したときに残存するその傷害と相当因果関係があり、かつ将来においても回復困難と見込まれる精神的又は身体的な毀損状態であって、その存在が医学的に認められ、労働能力の喪失を伴うもの」と定義されます。
後遺症はあくまでも大きなくくりであり、後遺症の中に「後遺障害」が存在します。そして、「後遺障害」が認められないと慰謝料の増額が見込めないという現実があります。
賠償の金額を増額させるためには、後遺障害が認められることが必須となっています。
後遺障害の申請をする場合、事前認定と被害者申請がある
もしも交通事故で後遺症が残ってしまった場合、それが「後遺障害である」と正式に認めてもらう必要があります。
まずは、自賠責調査事務所から後遺障害等級の認定を受ける必要がありますので、そのための申請を行います。
この申請の方法には、「事前認定」と「被害者請求」という、2つの方法があります。
後遺障害の申請における、事前認定とは、加害者が加入する保険会社を通じて、調査事務所に申請する方法です。
後遺障害等級申請に必要な資料の作成や収集、申請手続きなどすべてを保険会社が行います。
被害者としては手間がかからずに楽な面がありますが、被害者はどのような資料が加害者の任意保険会社から自賠責調査事務所に提出されているのか、全くわかりません。
任意保険会社というものは、営利を追求する民間の企業です。高い後遺障害等級が認定されてしまうと、保険会社が支払う慰謝料等が高くなってしまうので、保険会社としては歓迎すべきことではありません。
事前認定とは、こういった矛盾を抱えています。保険会社の担当者が、被害者に有利な書面を提出してくれるとは限りません。
そのことをよく覚えておく必要があります。
後遺障害の申請における被害者請求は、事前認定とは逆で、後遺障害等級申請に関する必要な資料の作成、収集、申請など、必要な手続きすべてを被害者側で行う必要があります。
手間がかかりますが、加害者側の保険会社を意見を一切挟まないため、自分が申請した書類は必ず自賠責調査事務所に届きますし、自分が納得する書類、自分が特に訴えたい点をしっかりと主張した書類を出すことが可能です。
この事前認定と被害者申請を比べてみると、被害者申請の方が、自分が納得できる、自分のための申請ができると思われます。
事前認定では、ある意味「加害者の任意保険会社」と「後遺症が残った被害者」の利益が相反しているわけです。被害者の味方でない任意保険会社が出した申請は、なんとなく信頼できないと考える人も多く、事前認定を行い、保険会社に申請を任せた結果が、自分の思っていた結果と違う場合は納得がいかないことが考えられます。
手間がかかりますが、被害者申請をした方が、のちのち後悔することもなく、また認定された等級に対する納得もいくでしょう。もちろん、弁護士を雇った場合は、手間がかかる申請手続き等はすべて弁護士が行ってくれますので、何の問題もありません。
不服がある場合は異議申し立てができますが、申し立てをしてから結論が出るまで3ヶ月~6ヶ月ほどかかり、その間解決できないこととなります。
金銭的な面もあり、早く解決することを望む人が多く、異議申し立てするのであれば、最初から被害者申請した方がよいかもしれません。
後遺障害の認定において、「加害者側の任意保険会社にまかせておけば認定されるだろう」と安易に考えるのは間違いだということを覚えておかねばなりません。
思っていた等級に認定されないという事例は多いですし、特に一番低い「14等級」に認定されるかどうかというところは、もともと微妙なラインで、14級は申請が通らないことも多いようです。
そういった点も考え合わせると、被害者申請をして、納得できる形で主張する方がよいと考えられています。
申請のタイミングについてですが、手足の切断や脊髄損傷など、治療しても状態が変わらず、事故前の状態に戻る可能性がない重篤な後遺障害に関してはすぐに申請できますが、それ以外の怪我については、まず6ヶ月の通院をしてから、後遺障害の申請をすることとなっています。
治療を6ヶ月続けても良くならない、となったとき、その状態での等級の認定がされることとなります。
後遺障害認定を受けるための被害者申請の一連の手続きの流れとは?
6ヶ月の治療の後、後遺症が残ってしまったとなった場合、後遺障害の認定を受けるための申請の手続きをしなければなりません。
被害者申請の手続きの手順は大まかに決まっていますので、順を追ってみていきましょう。
STEP1
加害者が加入する自賠責保険会社に問合せ、被害者請求をするのに必要な書類一式を送ってもらう
STEP2
交通事故証明書を取り寄せる。
自分で自動車安全運転センターから取り寄せることができますが、加害者が任意保険に入っていた場合は、その保険会社からコピーを送付してもらうことができます。
STEP3
後遺障害診断書の作成をしてもらいます。
症状固定の段階で、後遺症について整形外科医の先生から話をされ、その時点で後遺障害診断書の作成をしてもらえる場合が多いようです。
もし、先生からそのような話がない場合は、送付してもらった後遺障害診断書を持参し、「この書類の作成をお願いします」と依頼すればよいでしょう。
この診断書を書いてもらう必要があるので、整形外科医の先生とは、常日頃から良好な関係を築いておくことが重要です。
なかなか症状がよくならない場合、整骨院などに通う人もいるようですが、その場合も整形外科医の先生にお話して、了解を得ておく方が良いでしょう。
STEP4
後遺障害診断書の他にも必要となる書類があります。
それらを、任意保険会社や病院からもらい、書類を揃える必要があります。
STEP5
基本的に必要な書類は、自動車損害賠償責任保険、支払請求書兼支払指図書、交通事故証明書、事故発生状況報告書、月々の診断書及び診療報酬明細書、印鑑証明書、後遺障害診断書、MRI、レントゲン等の画像となっています。
被害者請求では事前認定と違って、自分の主張をすることができるので、上記の資料に加え、検査結果についての医師の意見等、強調したい点についての書面を添付することができます。
STEP6
自賠責保険会社に上記の資料を提出します。
提出された資料は、自賠責保険会社を通じて自賠責調査事務所へ送付されます。
STEP7
自賠責調査事務所において、後遺障害等級に該当するかどうかの調査が行われます。
複雑なケースについては、被害者側が提出した書類のほかに、自賠責調査事務所が独自に現場調査や医療調査などを行うこともあります。
STEP8
調査が完了すると、調査会社はその結論を自賠責保険会社に通知し、保険会社から被害者に連絡されることとなります。
後遺障害が認められれば、後遺障害の等級に従って自賠積分の慰謝料が支払われます。
自賠責分だけ先行して支払われるのは、被害者請求のみで、事実認定の場合は任意保険の慰謝料と合わせた額が後日任意保険会社から支払われます。先行支払があるのは被害者請求のみとなっています。
後遺障害が認められた場合、慰謝料の金額はどうなる?
後遺症が法律上の「後遺障害」と判断され、後遺障害の等級が認定されると、交通事故による怪我の慰謝料とは別に、後遺障害慰謝料の請求をすることができます。
そのため、保険会社から支払われる保険金の額が増えることとなります。
後遺障害慰謝料の金額は等級によって決められています。
最低限の慰謝料金額である「自賠責保険」、任意の保険会社独自の支払基準である「任意基準」、自動車事故の過去の判例を元に算定されている基準である「弁護士基準(裁判所基準)」により、同じ等級であっても慰謝料の金額が変わってきます。
留意しなければならないのは、任意基準は非公開のため、実際にその基準で支払われる金額がはっきりとわかっておらず(保険会社によっても違いがあります)、またその金額の決定の根拠についてもわからない、といったことがあります。
また、一番高額な慰謝料をもらえる弁護士基準ですが、この基準を被害者が主張しても、ほぼ通りません。
この基準での慰謝料を獲得したいと考えるならば、弁護士を雇い、弁護士から主張してもらう必要があります。
後遺障害の等級別の慰謝料の一覧
等級別の慰謝料の額は、このようになっています。
後遺障害等級 |
自賠責基準 |
任意基準 |
弁護士基準(裁判基準) |
第一級 |
1100万 |
1600万 |
2800万 |
第二級 |
958万 |
1300万 |
2370万 |
第三級 |
829万 |
1100万 |
1990万 |
第四級 |
712万 |
900万 |
1670万 |
第五級 |
599万 |
750万 |
1400万 |
第六級 |
498万 |
600万 |
1180万 |
第七級 |
409万 |
500万 |
1000万 |
第八級 |
324万 |
400万 |
830万 |
第九級 |
245万 |
300万 |
690万 |
第十級 |
187万 |
200万 |
550万 |
第十一級 |
135万 |
140万 |
420万 |
第十二級 |
93万 |
100万 |
290万 |
第十三級 |
57万 |
60万 |
180万 |
第十四級 |
32万 |
40万 |
110万 |
まとめ
後遺障害が残ってしまった場合は、辛い症状と一生付き合っていかねばなりません。
怪我の通院で肉体的・精神的にもしんどい思いをしていることから、煩雑なことはやりたくないという気持ちが先に立つと思います。
しかし、被害者申請をした方が有利な等級になる可能性が高いですし、弁護士にお願いすれば、手間がかかる手続きもすべてしてもらえ、かつ一番高額な弁護士基準に照らした慰謝料をもらえる確率が高くなります。
できれば任意保険会社に丸投げすることなく、どうするかを自分自身で考え、後悔しないように申請方法を選ぶようにしましょう。