投資信託の基準価格と分配金、総資産との関係などを解説します!
投資信託の総資産は増えているのに、基準価額は下がっている、といった現象を目にしたことはありませんか?
純資産が増えることと、基準価額が下がることが同時に起こるのは何故か、瞬時に理解できる人は少ないのではないかと思います。
投資信託は、投資初心者に適していると考えられていますが、実は奥が深く、わかりにくい要素も多分に含まれています。
これらのことを理解しておかないと、「こんなはずじゃなかった!」と後悔してしまうことになるのです。
ここでは、投資信託の基準価額に関する基礎知識や、基準価額と分配金や総資産との関係を見ていきましょう。
目次
投資信託の基準価格(基準価額)とは?
投資信託の基準価額とは、その投資信託が運用しているすべての金融資産を時価で評価して合計し、それに株式の配当や債券の利息を足し、そのすべての合計額を投資口数で割ったものです。
たいていの投資信託は、一万口10,000円の設定です。設定日前日の基準価額を10,000円と設定しており、毎日値動きがあります。
投資信託の基準価額は時間の経過とともに上下する
投資信託の運用がスタートすると、基準価額は上がったり下がったりします。
それは、運用するために組み入れている株式や債券が毎日値動きするからです。
その投資信託が日本の株をメインに投資していた場合は、日本の株式市場の動向に左右されやすいですし、米国の株式に投資している場合は、米国の株式市場の動きに連動しやすい特徴があります。外国市場に投資している場合は、為替にも左右されますね。
自分が持っている投資信託は、主にどの国の何に投資しているのか、ということをしっかりと理解しておきましょう。
インドやブラジルなど、新興国に投資している投資信託もあり、この場合はニュースを見ているだけでは情報が入りにくいですね。
新興国へ投資している投資信託を保有している場合は、自発的に情報を調べないと、その国の市場動向などの情報が入ってこないので値動きの予想ができません。
運用会社や販売会社が発行する「月次レポート」等をチェックすることはもちろんですが、自分自身でもある程度情報を集め、市場の動きを把握しておきたいものです。
また、基準価額は運用パフォーマンスで上下しますが、それ以外に分配金を出したときにも下落するということを覚えておきましょう。
投資信託の基準価額と分配金との関係は?
分配金が出る投資信託が人気の昨今ですが、「分配金が出ると基準価額が下がる」という方程式をどれだけの人が理解しているでしょうか。
分配金は利息とは違うものです。
利息は、支払われても元本が保証されていますが、投資信託の場合、分配金が支払われると、基準価額が下落し、個別元本を割り込んでしまうことがあるのです。
毎月分配型の投資信託の場合、「毎月分配金を出さなければならない」という義務があります。
分配金の主な原資は、「運用している株式や債券などの売買益・株式の配当・債券の利息」なのですが、運用がうまくいっておらず、運用で得た利益が支払わなければならない分配金の額に達していない場合があります。
もちろん、利益どころか損失を出している場合もありえます。
その場合でも分配金は払わなければなりませんから、分配金を出すのに足りない分は個別元本から払い戻して、所定の分配金の額にしているのです。
個別元本からの分配金を「特別分配金」といいます。自分の預けているお金が戻ってきただけ、というのが特別分配金ですから、税金はかかりません。
毎月分配金が出ていたから安心していたけれど、解約してみたら個別元本の半分しか戻ってこなかった、というのはここにカラクリがあります。
毎月もらっていた分配金が「特別分配金」であったなら、自分の個別元本から戻されていただけのお金だったということになります。
自分の分配金が、利益から出る「普通分配金」なのか、個別元本から払い戻されている「特別分配金」なのかは、分配金が出るごとに送付される「収益分配金のご案内(兼、支払通知書)」を見れば記載されているのでわかります。
受け取った分配金の一部が「普通分配金」で、残りが「特別分配金」ということもあります。
それらも皆「収益分配金のご案内」に記載されてありますので、しっかりと目を通しておきましょう。
投資信託の基準価額の推移を見てみよう。下がる原因は?
投資信託の基準価額が下がっていると不安になりますね。投資信託は、だいたい1万円からスタートしていますので、基準価額が1万円を割り込んでいる場合は、何らかの原因で下落してしまったと判断できます。
基準価額が下がっている原因はいくつか考えられ、「様子を見ていい場合」と「投資信託として問題があり、売ることを考えた方が良い場合」があります。
下がる原因のひとつは、投資のために保有している株式や債券の時価が下がったこと、が挙げられます。
株式市場は様々な要因でうごきますね。
経済成長の指標が発表され、それが予想外に良かったり悪かったりで上下しますし、世界情勢であったり、また為替が円高か円安かでも動きます。
このような原因で下落した場合、様子を見ても大丈夫なことが多いです。株や債券というものは常に上下の値動きがあるものですし、一時的に下落しても、少し時間がたつと上昇してきたりもするのです。
下がってもすぐに売るかどうかの判断をする必要はありません。
もともと、投資信託の値動きの幅は少なく、ゆっくりしたスピードで動きますので、その間に自分自身で様々な情報を調べましょう。
そして自分なりの予想を立て、これからも下がると判断したなら売ればよいのです。
問題なのは、「過剰な分配金を出しているので、基準価額が下落している」場合です。
本来、分配金とは運用益から出すものですが、運用益で賄えなかった場合は元本の払い戻しである特別分配金で対応しています。
分配金を出すために基準価額が大幅に下落している場合、運用成績が良くないことが考えられますし、毎月分配型なら、分配金を出す→基準価額が大幅に下落する、というパターンが毎月続くことになりますので、基準価額はどんどんと下がっていってしまいます。
つまり、時間が経過すればするほど基準価額が下がることが予想され、構造的に問題がある投資信託ということになります。
この場合は、できるだけ早く売ったほうが得策といえるでしょう。
投資信託の基準価額は下落しているのに総資産は増えている、なぜ?
最近、基準価額は下がっているのに、投資信託の総資産は増えているパターンがあり、投資家の皆さんからするとわかりにくいようです。
なぜこのようなことが起こるのでしょうか?
投資信託の基準価額は、私たちが簡単に単位口数あたりの資産の値動きをチェックしやすくするために算出されています。
一般的には、投資信託は一万口1万円でスタートしますので、基準価額の値動きのグラフも、1万円からの値動きを表している場合がほとんどです。
基準価額の算出の仕方は、総資産÷投資口数で表されます。
基準価額は一万口単位で表されることがほとんどですので、総資産÷投資口数×10,000ということです。
投資信託の基準価額は、分配金を出したり、保有している株式や債券の時価が下がったりすることで下落します。
しかし、投資信託の販売が好調であった場合、投資口数が増加するので、総資産額は増えていくのです。
投資口数が増加すること=投資信託が売れていることの原因は、分配金が増額されたりして、投資家の注目を集め、一気に販売が伸びた場合が多いようです。
しかし、総資産が増えているけれど、その分投資口数も増えているわけですから、総資産÷投資口数で表される「基準価額」が上がるわけではありません。
基準価額は総資産とは連動せず、「分配金」や「保有株式・債券の時価」「株式の配当や債券の利息などの収入」などの要素で上下しますので、「総資産が増えているからこの投資信託は優良ファンドである」という判断はできないのです。
販売ランキング上位の投資信託が優良ファンドであるとは限らないように、総資産額が大きいものが運用パフォーマンスが良いとは限らない、ということをよく覚えておきましょう
まとめ
このように、投資信託を理解しようとすると、意外と難しく、奥が深いことがわかっていただけたかと思います。
投資信託を買うときは、証券会社や銀行の担当者からのアドバイスを受けて買う人も多いようですが、それでも「分配金が出ると基準価額が下がる」といったことや、「毎月分配型は基準価額がどんどん下がる可能性が高いので他の投資信託に比べてリスクがある」といったようなことをしっかりと理解している人は少ないように感じます。
また、「人気がある投資信託が良い投資信託とは限らない」ということも必ず覚えておかねばならないことです。
投資信託は数百種類もあり、ついつい「人気ランキング」で検索してしまいがちですが、人気があっても運用成績が悪い投資信託は多くありますので、そのことに注意しながら、自分に考えに合った投資信託を選ぶようにしましょう。