投資信託のバランスファンド、そのメリットとデメリットとは?
バランスファンドは投資信託の一つであり、主に様々な金融資産に分散投資する構成になっているファンドです。投資において、「分散投資」をした方がリスクを下げることができる、というのは常識ですね。
投資信託というのは分散投資の最たるもので、株式に投資する投資信託では、一度に数百の株式を組み入れています。自分でそれほど多くの株式を購入することなどできませんね。
投資信託を買うということは、自分ができない分散投資をしてもらうため、と考えても良いくらいです。
ここのところ、バランスファンドが注目されているようです。バランスファンドは、普通の投資信託よりも、様々な種類の商品を組み入れて分散投資を行っています。
ここでは、このバランスファンドについて、長所や短所を見ていきましょう。
目次
バランスファンドとは?
バランスファンドとは、株式や債券に分散投資する投資信託のことです。約款で、株式比率が70%未満と定められているので、どのような場合でも70%を超えないようになっています。
そして、株式比率が最高の70%のときは、残りの30%で債券やREIT(不動産投資信託)など、低リスクの商品で運用することとなっています。
もちろん、株式比率と債券比率が50%ずつといったこともありえます。要は、市場の状況によって臨機応変に資産比率を変えることができるのがバランファンド、ということなのです。
バランスファンドの中でも運用内容は様々であり、国内の株式や債券だけに投資するものもあれば、米国の債券や株式に投資するもの、米国だけではなく世界中の株式や債券に投資するものなど、多くの種類のバランスファンドが存在します。
またその投資比率も様々で、株式と債券が半分ずつのもの、株式が上限いっぱいの70%で、残りの30%が債券のもの、また海外にも投資しているバランスファンドであれば、「国内株式」「外国株式」「国内債券」「外国債券」が25%ずつ組み入れられているものなど、それぞれの特徴をもっています。
投資信託の運用の範囲内で、自動的に分散投資をしてくれるという点では、バランスファンドはとても優れています。
上記にあるような、様々な商品を「自分で選んで」組み合わせ、それを運用するとなると、かなりの知識と経験が必要です。それを運用担当者がしてくれるわけですから、こちらは手間がかからずお任せできるというメリットがありますね。
このような理由で注目されているバランスファンドですが、何事にもメリットとデメリットが存在します。
それはどのようなものなのでしょうか。順に見ていきましょう。
バランスファンドのメリットは?
バランスファンドのメリットは、何と言ってもこまかな分散投資を「投資信託の中で」してくれるということです。
バランスファンドには、その商品によって様々なものが組み入れられています。
例を挙げると、日本株式、日本債券、先進国株式、先進国債券、新興国株式、新興国債券、J-REIT、先進国のREITなど。
自分でこのような多くの商品をそれぞれ購入し、組み合わせて運用することは金額的にも大きな額になりますし、何よりも相当な知識が必要です。
特に、外国の市場に関する情報はなかなか入りにくく、情報があったとしても自分で分析し、今後を予想することはかなり難しいことなので、一般投資家には敷居が高くなっています。
外国の株式や債券を組み入れたい場合は、個別で買うよりも投資信託で買う人が圧倒的に多いのはそのためです。
外国株式のみの投資しているファンドや、外国債券を主に組み入れて運用しているファンドなど、様々な投資信託が存在しますので、多くの人がそれを購入し、間接的に外国市場に投資しているのです。
さて、自分で商品を組み合わせて運用の利益をあげていくためには、その時の状況を見極めながら、商品の比率も変えなければなりません。
今後は米国の利上げがありそうだから、外国債券を売って外国株式と国内株式の比率をあげよう、などと色々考えて売り買いをして、その時の市場の状況に一番適したポートフォリオ(資産比率)を作り出さなければなりません。
投資が本職ではない人がほとんどですから、そのような知識も手間もかけられない、というのが実際のところです。
また、資産比率を変えるため、商品を売買するごとに手数料がかかったり、利益が出ていたら税金が引かれてしまうことになります。
バランスファンドならば、ファンド内で資産の組み換えをしてくれるので、このような無駄な費用がかかりません。
このような理由から、分散投資を行いたい投資家にバランスファンドが支持されているのです。
バランスファンドのデメリットは?
バランスファンドの一番のデメリットは、自分で資産配分を決めることができないという点です。リスクの許容度というのは、年月と共に変わっていきます。
働き盛りの40代、老後を意識し出した50代、実際年金生活になった60代、それぞれの年代によって、「とれるリスク」の度合いが変わってくるのです。
40代からバランスファンドに投資をしていて、50代に差し掛かり、「リスクを減らしたいから債券の比率を上げたいな」と思っても、自分ではどうすることもできません。
運用担当者の方針で、逆に株式の比率を多くされる場合もあります。資産比率を変えられるのは運用担当者であって、自分の意思はまったく反映できないのです。
これが最大のデメリットと言えるでしょう。
債券の比率を上げたいが、バランスファンド内ではできないため、自分で債券型投資信託を購入し、自分の金融資産における債券比率を上げる、という方法もあります。
しかし、この場合、新たに資金が必要ですし、本来はバランスファンド内での債券比率を上げたいわけですから、苦肉の策といえるでしょう。
自分で資産比率を自由に変えられる柔軟性が欲しいのであれば、知識が必要で手間もかかりますが、自分で商品を買い付け、組み合わせる「自作のバランスファンド」が一番適しているということになります。
バランスファンドのコストは?
バランスファンドのもう一つのデメリットはコストの高さです。
独自に銘柄を選定して組み入れるタイプのバランスファンドでは、信託報酬が1%~2%のものが多く、インデックス型投資信託よりも高めに設定されています。
しかし、アクティブ型投資信託よりは安く設定されていることが多く、費用面で、バランスファンドはインデックス型とアクティブ型の間のファンド、といえるでしょう。
投資信託では、「できるだけ販売手数料と信託報酬が安いものを選ぶ」ということが鉄則ですので、バランスファンドの中でも手数料が安いものを選ぶ方が良いでしょう。
バランスファンドのリターンは?
リターンが良いバランスファンドはどれだろう?それを買いたい!と思う人が多いでしょう。できるだけ多くの利益を得たい、という気持ちはすべての人に共通することだと思います。
しかし、バランスファンドに関して言えば、一概に比べることはできないのです。
なぜならば、そのバランスファンドによって資産比率が違います。例で考えてみましょう。
バランスファンドAがバランスファンドBよりも利益を出しているとします。それではバランスファンドAが買いなのか?優良なバランスファンドはAなのか?
というと、実のところそこまではわかりません。
バランスファンドBが、リスクを下げるために債券比率をあげて、株式比率を下げていたかもしれないからです。
AとBが同じ資産配分であるとは限らないのです。
また、今まではバランスファンドAが利益を出していても、今後も継続してAが利益を上げ続けるとは限りません。
相場が下がり、状況が悪くなると、株が下がり、債券が上がりますから、逆にBのパフォーマンスが良くなる可能性は十分あります。
日本市場のみに投資している株式型のアクティブファンドであれば、条件が同じなので、運用成績を並べて比較することもできますが、バランスファンドに関しては、そもそも運用している資産比率がまちまちなため、単純に比較できないということを覚えておきましょう。
NISAでの非課税枠では組み換え困難。バランスファンドを買おう
近年注目を集めているNISAですが、このNISAの非課税枠で、自分で銘柄を組んで、自作のバランスファンドを作ることは無理があります。
自分の好みのバランスで資産運用したい場合は、NISAではなく一般口座か特定口座で行わなければなりません。
なぜかといいますと、NISAの非課税枠の特徴として、「やり直しがきかない」ということがあります。最初に、非課税枠限度の120万円を使い、株式型投資信託と債券型投資信託を60万円ずつ買ったとします。
市場の状況が変わり、資産配分を変えたいので、株式型を30万円売って、債券型を30万円分増やしたいとします。
しかし、最初に60万円ずつを買った時点で120万円の枠を使いきったこととなり、買い替えをしたくてもできないのです。
バランスファンドの良い点は、状況に合わせて資産配分を(運用担当者の意向次第ですが)臨機応変に変更でき、分散投資ができるのが利点です。
組み換えがしにくいことから、これと同じようなことをNISAの口座でやることは無理があります。
近年、NISAの口座でのバランスファンドの購入が増えているようです。
自分で組み合わせるよりも運用担当者に資産配分を任せることができるので手間がかからず、また非課税の恩恵を受けられるということが主な理由となっています。
バランスファンドは、世界中様々な国の、様々な商品に分散投資ができるという利点があります。
コストが安いものもありますので、費用が安いものを念頭におき、自分に合ったバランスファンドを上手に見つけ、賢く運用しましょう。