ケーブルテレビ会社の運営するインターネット接続サービスの評判は、「すごくいい」という人と「全然ダメ」という人の両極端に分かれる傾向があります。
どうしてそのようになってしまうのでしょうか。
J:COMを例に取り、詳しく解説していきましょう。
ケーブルテレビ会社の運営するインターネット接続サービスの評判は、「すごくいい」という人と「全然ダメ」という人の両極端に分かれる傾向があります。
どうしてそのようになってしまうのでしょうか。
J:COMを例に取り、詳しく解説していきましょう。
ケーブルテレビは、もともと難視聴地域向けにテレビ放送を有線で配信するサービスとしてスタートしました。
かつてテレビ放送はアナログで、アンテナの周囲に電波を妨害するものや反射するものがあると、映像にゴーストが混じるなどの障害が発生したのです。
これは、山の陰などになって電波が届きにくい地方部や、山の代わりに高層建築物が乱立する都市部で顕著であり、ケーブルテレビのサービスエリアも、こうした地域を中心にしていたのです。
しかし、デジタル放送の時代になり、原理的にゴーストは発生しなくなりました。
このため、山間部であっても、電波が受信できればクリアな映像を楽しむことができるようになったのです。
山間部はそれで済んだのですが、都市部ではそうはいきませんでした。
デジタルアンテナはアナログと違い指向性が高く、放送局や電波塔との間に障害物が入ると受信が全くできなくなることがあります。
都市の特に集合住宅においては、各戸にデジタル放送用のアンテナを設置することが難しく、屋上に共用アンテナを立てたりケーブルテレビを利用するしかない、という状況が今も続いています。
つまり、都市部においてはアナログ時代よりもケーブルテレビに対するニーズが高まってきているのです。
J:COMは住友商事と外資が共同で設立したケーブルテレビ企業です。
他の多くのケーブルテレビ局は、地方の自治体などを軸にした第三セクター方式で運営されているものが多かったのです、その点では異色といえます。
衛星放送など、デジタル化が進むと先に述べた通り地方部におけるケーブルテレビへのニーズは減少します。
それをチャンスと捉え、J:COMは各地域に散財していたケーブルテレビ局を次々と買収し、日本で最大のケーブルテレビ業者になりました。
ケーブルテレビはもともと難視聴地域対策を主眼としていたサービスでしたが、現在では都市部の集合住宅に対し、総合的な通信インフラ(テレビ・電話・ネット)を提供するサービスに変質しつつあります。
J:COMはそうした動きの先頭にいると言ってもいいでしょう。
なお、ケーブルテレビは、かつてはその名の通り同軸ケーブルを用いてテレビ放送の配信を行っていました。
初期のインターネットサービスも、同軸ケーブル経由で行っていたのですが、徐々に光ファイバーケーブルに置き換えられつつあります。
使っているメディアと、提供されているサービスの内容は、NTTなどの通信会社が提供する光回線サービスとあまり差がなくなってきています。
最大の違いは、ケーブルテレビはあくまでもテレビ放送中心なので、テレビ受信を除いたサービスは受けられない、というあたりにあります。
現在、J:COMではテレビ・ネット・モバイル・電話・電力・ガスといったサービスを提供しています。
これらのうち、同軸ケーブルまたは光ファイバーケーブルを利用し、セットで提供されているのがテレビ・ネット・電話の3つとなります。
モバイルは関連しているようですが、いわゆる格安SIM・格安ケータイ系のサービスとなります。
ここでは、光回線インターネットと共通する、テレビ・ネット・電話のサービスについて説明します。
J:COM独自の回線を使った「最速」のサービスですが、最大速度は320Mbpsと、一般的な光回線サービスの1/3ほどでしかありません。
ただ、WiMAXなどの無線系と比較するとおおむね同等の速度が出ており、環境さえよければそれなりに快適な接続が行えます。
「環境さえよければ」というのは、回線のスペック以外にもさまざまな原因があり、速度低下が発生する可能性があるためです。
基本的に、ケーブルテレビ局のインターネット接続サービスは「片手間」で行われてきたという過去があり、通信会社のインターネット接続サービスと比べると、機材にお金をかけないという傾向があります。
つまり、機材の能力不足によって、速度低下が発生するのです。
J:COMの場合、各地にあったケーブルテレビ局を買収する形で成長してきた企業なので、インターネット接続のインフラ整備状況は、買収前の各局によって異なります。
合併後統一される方向には向かっていますが、それでも「地域ごとの差」は存在するのです。
最初に、「ケーブルテレビのネットサービスは評価が分かれることが多い」と述べましたが、J:COMの場合このことがその原因の一つとなっています。
評価が分かれてしまうもう一つの原因は、サービスのセットと価格にあります。
J:COMの320Mサービスは、ネット単体で契約すると月額6,000円になってしまいます。
しかし、32チャンネルのテレビと組み合わせると、月間利用料金が5,505円になるという不思議な状態になります。
サービスを追加したにも関わらず、料金が安くなるのです。
これはネットだけを目的としている人にとっては、あまり「安い」と思える料金ではありません。
速度が320Mbpsまでと考えると、なおさらでしょう。
ただし、テレビの視聴がメインで、ネット接続はあくまでおまけと考えている人にとっては、テレビにタダ同然でネットサービスがついてくる、と受け取られることになります。
おまけだと考えれば320Mbpsの速度は十分以上に速く、満足度も高くなる、というわけです。
インターネット接続サービスには、有線・無線を問わずによく「速度上限は低く抑えてありますが、その分価格も割安です」というコースが用意されています。
言ってみれば、新幹線における「こだま号」のようなプランだと言えるでしょう。
しかし、これがコストパフォーマンス的に「お得」になることはほぼありません。
インターネット接続サービスでは常に上限速度がインフレ状態にあり、どの業者も最高速度を上げるために技術革新に血道をあげています。
より新しく、より速いプランを作り、こちらの料金をお得にして、より多くの顧客を集めようとしているのです。
このため、「こだま号」型プランはサービス品質的には放置状態で、有利なキャンペーンも実施されず、総合的なコストパフォーマンスでは最速プランに大きく劣ります。J:COMの120Mサービスもこの「こだま号」型プランに属します。
コース名から分かる通り、最高速度がただでさえあまり速いとは言い難い320Mbpsから120Mbpsに引き下げられてしまう割に、月額料金は320Mプランと比べて500円引きの5,500円にしかなりません。
ただ、こちらでもテレビをセットにすると5,505円となり、わずか5円で月32チャンネルが視聴できるようになる勘定となります。
メリットとしては、320MサービスとともにWi-Fi接続が可能なルーターが無償提供される、という点がありますが、同様のサービスを行っている光回線業者も数多くありますから、決定的ではありません。
なお、120Mの下に、12M・1Mといったさらに低速で価格を抑えたサービスが存在しますが、これはADSL時代にその対抗として作られたサービスで、現在ではほぼその存在意義はなくなっていますから、契約を検討する必要はないでしょう。
J:COMは現在、KDDIのグループ企業となっています。
J:COMの電話サービスに加入すると、auスマートバリューの適用を受けられるのはこのためです。
このコースの正体は、J:COMがプロバイダとなる「auひかり」そのものであり、一戸建て限定となっているのも、J:COMの本来の業務である集合住宅へのケーブルテレビ配信サービスと競合しないようにするためでしょう。
光回線インターネットサービスを提供している企業の、各種光電話に相当するサービスです。
とはいうものの一般電話回線と比較した場合の利用料金の差は370円程度でしかありません。
他業者の「光電話」の場合月額基本料金が500円前後のところが圧倒的に多く、その意味ではかなり不利です。
なお、多くの光回線の場合、光電話への加入がauスマートバリューの適用条件となっていますが、J:COMの場合テレビ加入が条件となっているので、スマホ・携帯の利用料割引を狙って申し込む必要も薄めです。
また、同じJ:COMの電話サービスに加入している相手への通話料金や、auスマホ・携帯、auひかりの光電話に加入している相手への通話料金の割引・無料化サービスがありますが、これらは現時点ではあまり加入者が多いとはいえない状況なので、効果が出るかどうかは人によって異なるでしょう。
J:COMの本来のサービスです。
セットトップボックスと呼ばれる装置を使って家庭内のテレビで視聴するサービスの他、J:COMが提供するタブレット端末をセカンドスクリーンとして利用するオプションが存在します。
92チャンネル以上の番組を視聴可能なプランで、月額料金はテレビのみで6,280円になります。
80チャンネルの番組を視聴可能なプランで、月額料金はテレビのみで5,280円になります。
テレビだけでなく、ネット・電話サービスを「セレクト」して契約できるサービスです。
テレビについてはCS6チャンネル分を、番組ジャンルに合わせて3種類から選べます。
チャンネル数は月額利用料金はセレクトした内容によって変わります。
ネット320Mを組み合わせた場合は6,648円、120Mの場合は6,171円になります。
先に述べたように、J:COMのネットサービス単体の料金は、他の光回線業者と比べると「遅くて高い」状態になってしまいます。
しかし、テレビに代表される他のサービスを組み合わせると、ぐっとお得に感じられることがあります。
ただし、本当にお得に感じられるかどうかは、組み合わされたサービスそのものがユーザーにとってどれだけ意味のあるものかどうかによって変わります。
テレビをほとんど見ない人にとって、テレビサービスとの組み合わせで料金を引き下げられてもあまり恩恵は感じられませんが、ほとんどテレビ中毒といっていい人の場合は、高いお得感を感じることができるでしょう。
なお、組み合わせ価格と単体価格との間には、かなりちぐはぐ感があります。
セットで追加したサービスの価格がほとんど無料であったり、組み合わせると単体よりも安くなってしまうケースなどがあるためです。
ネットサービスと電話とを組み合わせ、料金を割り引くプランです。
地域によって提供価格は異なりますが、関東・札幌・仙台圏では320Mのネットと電話を組み合わせると、月額5,200円で、auスマートバリューの対象にもなります。
120Mだと月額4,500円で、320Mとの差額は単体の場合よりも大きくなります。
なお、パックの組み合わせ対象は、電話以外にも約8,000本の動画が見放題になるVODメガパックをセットにしたものがあります。
ただ、ネット動画はインターネット上に専門の有料配信サイトもあるので、わざわざここで選ぶ必要性は薄いかも知れません。
テレビ・ネット・電話またはVODメガパックをセットにしたプランです。
80チャンネル以上が視聴できるスタンダードコースに320Mのネット、電話を組み合わせて月額9,048円になります。
スマートお得プランは他にも用意されていますが、ネットの速度は320Mまたは120Mの2種類となっていて、それよりも低速なサービスは選べません。
J:COMに限らず、ケーブルテレビ局の提供するインターネットサービスは、ネット単体ではなく「組み合わせて使う」のが基本です。
J:COMの場合、提供エリアが全国に散在しています。
しかもそれらは元は別々のケーブルテレビ会社だったので、サービス内容・料金が統一されていません。
ここでは、わかりやすくするために関東・関西それぞれのエリアで、
でどれぐらいになるのかを紹介します。
関東・関西とも、ネットで選べる速度は320Mと120Mの2種、テレビは80チャンネルか92チャンネルのどちらかになっています。
320Mのネットに80チャンネルのテレビ、電話を組み合わせた(つまり、ネットを最速、他は最小限)パックだと、9,048円です。
テレビを92チャンネルにすると、10,048円です。
関東の一戸建ての場合これに加え、1Gbpsのネットとテレビ・電話を組み合わせたプランが利用できます。
こちらはテレビ80チャンネルで9,548円、92チャンネルで10,548円です。
関東
ネット | テレビ | 電話orVOD | セット料金 |
1G | 80チャンネル | ◯ | 9,548円 |
320M | 80チャンネル | ◯ | 9.048円 |
120M | 80チャンネル | ◯ | 7,524円 |
1G | 92チャンネル | ◯ | 10,548円 |
320M | 92チャンネル | ◯ | 10,048円 |
120M | 92チャンネル | ◯ | 8,524円 |
関西
ネット | テレビ | 電話orVOD | セット料金 |
320M | 80チャンネル | ◯ | 9.048円 |
120M | 80チャンネル | ◯ | 8,381円 |
320M | 92チャンネル | ◯ | 10,048円 |
120M | 92チャンネル | ◯ | 9,381円 |
一戸建てでも関西はネット1Gのプランが利用できませんでした。
集合住宅では関東でもネットの速度は320Mと12Mだけになり、1Gが使えません。
他は一戸建ての場合と同様です。
基本的にケーブルテレビのケーブルは、少々古めの集合住宅でも建築時に内部配線が行われているので、光回線のように途中でVDSLなどに切り替える必要がなく、利用者宅まで同軸ケーブルまたは光ファイバーでの配線が可能です。
このため、一戸建てと集合住宅での価格差がほぼ存在しないのです。
先に述べたように、カタログスペック上は320Mbpsまたは120Mbpsですが、局側の設備の整備状況により実際の速度はかなり変わります。
J:COM自体が複数のケーブルテレビ会社の複合体なので、J:COM全体での速度がこれこれ、と論じる事自体がほぼ不可能だと言えるでしょう。
WEBからの新規申し込みやサービス追加の申し込みを行った場合に、3,000円相当の商品券をプレゼントする、というキャンペーンです。
追加のサービスはどれでも構いませんが、あるサービスを追加した後また別のサービスを追加して、商品券を二回取りする、というのはできません。
他業者のインターネットサービス利用者が、J:COMに乗り換えたりJ:COM側のサービス追加を行った場合、月額料金が12ヶ月間割引になるというキャンペーンです。
割引額は最大で10,000円超、一ヶ月分950円あまりになります。
新規申し込みを行い、翌月末までに工事を完了した場合、基本工事費が無料になるというキャンペーンです。
こちらも特定プランのみ対象で、内容はスタート割とほぼ同じです。
他社のネットサービスまたは高速モバイルサービスからJ:COMに乗り換え、特定プラン(内容はスタート割・工事費0円とほぼ同じ)に申し込んだ場合、最大30,000円のキャッシュバックがあるというキャンペーンです。
ただし、一戸建ての1Gを除き、光回線から乗り換えると速度はカタログ値でも1/3以下になってしまうので、キャッシュバックだけを目当てに乗り換えようとするのは少々危険です。
auのスマホ・携帯の割引を受けられるキャンペーンで、テレビと電話などの組み合わせで割引資格を得ることができます。
割引の申し込みは、auショップなどで行なえます。
ネットまたは付近の営業所を通じて申し込みを行います。
集合住宅に転居した場合、その地域を管轄するJ:COMから資料が届いていることが多く、ほとんどの場合はこちらからの申し込みになるでしょう。
工事日の日程などを確認します。
一戸建ての場合ケーブルから導入することになりますが、実際にケーブルテレビを利用するのはほぼ集合住宅の住民に限られます。
集合住宅の場合配線工事はすでに終了しているので、工事はセットトップボックスやルーターの設置と導通試験のみとなります。
開通後、パソコン等を接続してインターネットを利用することができます。
再三述べたように、J:COMは個別のケーブルテレビ会社を買収して現在の規模になった企業です。
サービスの内容は拠点ごとに異なっており、均質化は進めているのでしょうが、まだ完全ではないようです。
電波を使うものは気象、特に雪の影響を受けやすいと言われています。
冬に雪がよく降る地域では、WiMAXなどの無線通信よりは、有線である光回線やケーブルテレビの方が有利であるのは事実です。
最高速度は光回線などに比べて低めですが、実はこれは局と加入者宅を繋いでいる「回線」のせいではなく、局側の各種設備が原因であることが多いのです。
そこまで含めて「回線」なのだと言われると確かにその通りなのですが。
現在のケーブルテレビ局は、都市部の集合住宅の通信インフラ全部をサポートする企業に生まれ変わりつつありますが、それでもやらなければならないことが多岐にわたり、特にネットインフラで専門企業に追いつかない部分が多々残ってしまっています。
インターネット接続を第一に考えた場合、J:COMだけでなく、ケーブルテレビ全般はあまり適しているとは言えません。
特に回線の自由度の高い一戸建てでは、ケーブルテレビを選ぶ意味はないと言っていいでしょう。
ケーブルテレビの導入を真剣に考えなければいけないのは、都市部の集合住宅のように、テレビ視聴がケーブルテレビにほぼ限定されるケースぐらいだと言えます。
つまりケーブルテレビそのものが必須になっている環境で、「ネットもセットだと安いみたいだから使ってみるか」というノリで契約するのが最もお得になるのです。