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「MVNO」と「MVNE」の違いは?似ているけどちょっと違う!?

 

目次

「MVNE」を知るために、まずは「MNO」と「MVNO」を確認

格安SIMについてネットで調べていると、「MVNE」という単語を見つけることがあるかと思います。

専門的に取り扱っているのならまだしも、多くのサイトでは単語を使うだけで意味まで解説していないのではないかと思います。

そうなると「MVNEって何?」と、頭に?マークを浮かべながら調べ物をしなければならなくなり、理解しづらい部分も多くなるのではないかと思います。

また、似たような単語として「MNO」「MVNO」といった単語も、格安SIM関連の記事では登場します。MVNEについて知る前に、まずはMNOとMVNOについて理解していきましょう。

MNO

「MNO」とは、自社で通信回線を保有し、通信サービスを提供している企業のことです。

日本では「docomo」「au」「SoftBank」「ワイモバイル」などがこれに該当します。要するに「大手キャリア」と呼ばれる部類の通信会社であると言えます。

MVNO

「MVNO」とは、自社では通信回線を保有せず、他社から借り受けて通信事業を行っている企業のことを言います。

MVNOとしては「OCNモバイルONE」や「楽天モバイル」、「DMM mobile」などが該当します。基本的に「格安SIMを提供している業者」として認識しても良いでしょう。

MNOとMVNOの関係

要するに、MVNOはMNOから回線を借りて、それを基にして通信事業を行っているということになります。

しかし、全てのMVNOがMNOから直接回線を借り受けているわけではありません。MVNOによっては「MVNE」が間に入って通信事業を展開しているというケースもあります。

では「MVNE」とは?

「MVNE」とは、日本語で言えば「仮想移動体サービス提供者」という意味になります。わかりやすく言えば、「MVNOを支援している事業者」のことを指します。

もう少し具体的に説明すると、MVNOの中には「MNOから回線を提供されているMVNE」から、「回線」と「通信事業としてのノウハウ」の提供を受けている場合があります。

MVNOの中には、格安SIM事業に参入したくても今まで通信事業を展開したことのない企業も多いです。

そういった企業が、通信事業に関するノウハウを持つMVNEの助けを借りることによって、MVNOとして事業を展開することができるのです。

MVNEの仕事・役割

それでは、MVNEの持つ仕事や役割に関して、もう少し掘り下げて解説していきましょう。

仕事

MVNEの大まかな仕事内容としては「MVNOとしてのノウハウを持たない事業がMVNOとして事業を展開できるようにする」ということです。

MVNOとして事業を展開するためには、大手キャリアの通信網を借り受ける必要があるのですが、これは手続きをすれば誰にでも利用できるのではなく、「GGSN」や「PGW」といった「交換機」の運用が必要です。

既に通信事業を展開したことがある、展開中である企業はこれを運用することが比較的容易なのですが、今までの通信事業を展開したことがない企業にとってこれは高いハードルとなりました。

そこで、「既にMVNOとして参入した業者」が「今までに通信事業を展開したことがない業者」に対してMVNOとしてのノウハウと設備の利用を提供することによって、MVNO後発企業がMVNOとして事業展開できるようなサポートを行うようになりました。

この企業のことを「MVNE」と呼ぶのです。MVNEのノウハウと、本来設備投資にかかるはずのコストを削減できるため、MVNEの利用は大きなメリットがあるのです。

支援内容

では、具体的にMVNEはMVNOに対してどのような支援を行っているのでしょうか。

まず「MVNOの課金システムの構築と運用」です。ノウハウの提供の部分が大きく、本来は長い時間をかけて蓄積していくはずのシステムを即座に利用し、MVNOとしての運営をスムーズにスタートさせることができます。

次に「事業用電気通信設備の設置」と「卸電気通信役務の提供」です。設備投資の部分であり、MVNOは少ないコストでMVNOとして必要な設備を利用することができます。

次は「MNOとの交渉の代理」です。MVNOはMNO(大手キャリア)の通信網と設備を利用することになりますが、その交渉を代理で行ってもらうことができます。

その他にも「格安SIMで利用する端末(スマホ・タブレット端末)の調達」や「事業コンサルティング」なども行います。

MVNOとしての業務全般において、交渉の代理や調達業務を行ってもらうことができるため、新たに通信事業者として参入するためのハードルを大きく下げてもらうことができるのです。

先行MVNOがMVNE事業を行う理由

さて、MVNEの役割によって通信事業が畑違いの企業でもMVNOとして参入することが出来たということは理解できたかと思います。

ですが、ちょっと考えてみるとMVNEの立場としては「ライバルを増やす」ということになるのではないかということに気が付きます。

一般的に、後発の企業が先発の企業を模倣して事業を展開するということはあっても、系列企業でもない後発企業に自社のノウハウを提供するようなことは考えられません。

「先発企業」「通信事業としてのノウハウを持つ」という強みを持ちながら、それを捨ててまでMVNEとして活動することの意味は何なのでしょうか?

MVNO、つまり「格安SIM事業」というものは、文字通り「料金の安さ」を売りに大手キャリアとの競争材料としてきました。

実際、多くのユーザーが料金の安さによって大手キャリアから格安SIMへと乗り換えています。

しかし、それでも未だに大手キャリアのシェアを上回るということはなく、事業規模から見てもMVNOは大手キャリアに対して大きく遅れをとる形になっています。

携帯電話の契約において、大手キャリアは「強い営業力」を持っています。有り体に言えば「ブランド」としての力が、そのままMVNOとの格差を保っているのです。

対してMVNOは企業名自体はある程度知名度のあるものもありますが、携帯電話の通信事業としてのイメージは弱く、ユーザーにとって「安心感のあるキャリア」としての立ち位置を獲得できません。

加えて、docomoやau、SoftBankは全国各地にショップを展開していますが、MVNOは実店舗を持たない事業形態でMVNOとして成り立っていることから、営業力、サポート力、知名度のすべてにおいて遅れをとることになるのです。

もちろん、昨日今日で格安SIMの魅力を理解してもらい、ユーザーを獲得するなんてことは出来ません。

大手キャリアとて、今でこそ携帯電話事業の最大手ですが、今まで血の滲むような努力を積み重ねてその地位を勝ち得ています。

そこで必要になったことが、MVNEとしての行動です。

なぜなら、MVNOの一部がMVNEとして後発の企業にMVNOとしてのノウハウを提供することは、「MVNO・格安SIM事業全体の知名度を高める」という点で役に立つのです。

MVNEを利用するMVNOの中には、通信事業としては初心者でも、本業で高い知名度を持つ企業が多いです。

そういった企業は、先発のMVNOでは浸透させることが難しいユーザー層に対してアプローチを掛けることができ、より多くの人に格安SIMについて知ってもらうチャンスが生まれるのです。

つまり、MVNEとしては仮にライバルが増えたとしても、元から自社ではユーザーを獲得することが難しい部分に対してアプローチを掛けてもらうことで、自社が手を出せるユーザー層の顧客数を増やすことにつながるのです。

大手キャリアと同じ市場でやりあっていくためには、自社にはない力を持った業者をパートナーとしてMVNO事業に引き入れて、格安SIMのちメイドを高めてMVNO全体を活性化することが必要だったのです。

MVNEはどこなのか?

全てがそうだとは言い切れませんが、MVNOとして事業参入するのが他と比べて遅いMVNO、つまり後発のMVNOは、その多くがMVNEを利用して格安SIMの提供を始めています。

そうなると、見方を変えてみると「新しくMVNOとして名乗りを挙げた〇〇というMVNOは、どこをMVNEとしているのか?」という疑問が生まれることになります。

さて、MVNOがどこからサポートを受けているのかということについて熱心に調べようとしているユーザーは少なくありません。

その理由としては「単なる好奇心」ということもありますが、「ユーザーの目線としてMVNEの正体を知りたい」という人も少なくないのです。その理由としては「MVNOの品質を知る手立てになるから」です。

提携するMVNEの種類は、実は「MVNOの通信品質」に大きく関わるのです。MVNOについて紹介しているサイトでは「このMVNOは〇〇をMVNEとして利用しているので通信品質が良い」といった評価をしていることがあります。

これは概ね正しくて、MVNEがどこなのかを知ることで、本格的にサービスを提供する前の段階からそのMVNOのサービスの品質を知る切っ掛けとなるのです。

場合によっては、その業者の本業との連携サービスを予測し(楽天モバイルの楽天スーパーポイントとの連携のような)、通信品質も良いと考えればそのMVNOへの乗り換えを早くから考えておくということもできます。

ただし、これはあくまでも目安に過ぎないのです。仮にMVNEの種類を知ったからと言っても、それが想定通りのカタログスペックになるとは限りません。

例えば、同じMVNEを持つ2~3社のMVNOがあったとして、全てのMVNOが同じ通信品質を提供できるとは限りません。

MVNEには独自のサービスが提供されており、基本的な部分以外の「オプションサービス」についてはMVNOが選んで利用します。

つまり、同じMVNEでもMVNOごとに細かい部分で差が生じるので、MVNEだけでMVNOの品質を全て知ることができるとは限らないのです。

ちょっとした参考程度にはなりますが、それを鵜呑みにしていると後で後悔することになりかねません。

MVNE事業者を紹介

それでは、実際にMVNEとして活動し、MVNOに対してサポートを行っている業者について解説していきます。

ただし、前述の通りMVNEがMVNOのサービスの品質全てを決めるのではなく、あくまでも目安として参考程度に考えておくようにしましょう。

ここで紹介する3種類のMVNE以外にも、いくつかの業者がMVNEとして事業展開しています。

その中でも以下の3社は「サービス全体が安定している」と評価できるため、代表として紹介していきます。

OCN系(NTTコミュニケーションズ)

まずは「OCN系」です。

自社で「OCNモバイルONE」を提供する他、MVNEとして「NifMo」「ぷららモバイルLTE」「ASAHIネットLTE」「@モバイルくん。LTE」に対してサポートを行っています。

回線速度が安定していることで有名なMVNEです。

IIJ系(インターネットイニシアティブ)

次は「IIJ系」です。

自社で「IIJmio」を展開し、MVNEとして「DMM mobile」「BB.exiteモバイルLTE」「wonderlink LTE」「hi-ho LTE typeD」「Tikimo LTE」に対してサポートを行っています。

MVNEとしての特徴は回線品質の高さと「バースト機能」「通信速度切り替え機能」があるなど、ユーザーにとって使い勝手の良い機能が備わっています。

InfoSphere(NTTPCコミュニケーションズ)

最後に「InfoSphere」です。

自社で「InfoSphereモバイルライトプランforフレッツ」を提供し、MVNEとして「楽天モバイル」「SkyLinkMobile」「SANNET LTE」といったMVNOのサポートを行っています。

通信速度の評価が高く、個人向け事業も急速に伸ばしています。

海外のMVNEについて

最後に、「海外のMVNE」について解説します。

MVNEという業態は日本固有のものではなく、世界各地で同じような業務を展開している業者が多く存在します。

ですが、海外のMVNEの傾向として「自社ではMVNOを展開していない」「自社で通信設備を保有していない」といった業者が多く見られます。

つまり、海外のMVNEの多くは「MVNOにかかる法規制」「市場開拓に関するコンサルティング」「MVNOに必要なシステムの開発」「キャリアとの交渉窓口」などの、外枠の部分でのサポートをメインで行っているというイメージです。

この傾向は、海外におけるMVNEの立ち位置が日本と異なり、MVNEに対して求められるニーズが多様であることを意味しています。

逆に、日本のように「MVNOとして参入するハードルが高い」ということがなく、どちらかと言えば海外のMVNOの参入における問題点は「市場開拓・分析」「顧客管理システムの運用」などと言った部分に重点が置かれています。

他にも、国や地域によってはMVNOとMNOの交渉が日本よりも洗練された形で浸透し、MVNOの規模によってはMNOから大幅なディスカウントを獲得できることが当然のような形で成り立っていることもあります。

そうした場合、日本とは違って直接の形でエンドユーザーにサービスするMVNOの契約をひとまとめにして規模を大きくし、MNOからのディスカウントを得るという流れの「NVNA」と呼ばれる業者が存在しています。

要するに、日本と海外ではMVNOがMVNEに求めるニーズが大きく異なるのです。

当然ながら、MVNEとしてはMVNOのニーズに応える形で事業を展開することになりますので、日本のMVNEとは違った業者として日本人の目に映ることになります。

現在、日本国内にMVNAと呼ばれるような業者は見られていませんが、今後MVNOという事業形態の変遷とともにMVNEのあり方も変化していくことは否定することが出来ません。