未熟児養育医療制度の対象と自己負担額は?申請に必要なものは?
最近では「小さく生んで大きく育てる」のがよいといわれますが、あまりに小さいと体の機能が未熟な状態で生まれてしまい、新生児集中治療室(NICU)での治療が必要となるケースがあります。
しかし、赤ちゃんが生まれたばかりで、ママは体力的にも精神的にもツライ状態が続いてしまいますよね。
さらに、高額な治療費がかかるとなると、家計の負担も大きくなります。こういった場合に赤ちゃんの治療費や入院費を助けてくれる「未熟児養育医療制度」があることはご存知ですか?
条件を満たしていれば医療費を助成してくれるため、家計の負担を少しでも減らすことができますよ。
目次
未熟児養育医療制度とは?
未熟児養育医療制度とは、未熟児に適切な処理を行うための治療費や入院費を国が一部、または全額負担してくれる制度のこと。
助成される範囲は、治療内容や入院、保護者の所得などによって異なります。自己負担が必要となる場合もありますが、自己負担分は乳幼児医療費助成の対象となるので、別途補助を受けられます。
乳幼児医療費助成は自治体によって対象となる年齢、自己負担額などが異なりますので、お住いの地域で尋ねてみてくださいね。
また、受診できるのは指定医療機関のみ。最寄りの病院で治療を受けても助成対象となりませんので、注意してください。
自治体のホームページを見ると、一覧表が載せられていることもあるので、未熟児だとわかったときにはこれを参考にするとよいでしょう。
未熟児の定義は?
未熟児とは、かつて出生時の体重が2500グラム以下の赤ちゃん(低出生体重児)のことを指していました。
しかし、2500グラムに満たないからと言って、必ずしも体の機能に問題があるというわけではありません。
反対に、2500グラムを超えている場合でも、何らかの原因で体の機能に問題が生じたといったケースもありますよね。
そのため、現在では体重だけでなく、ママのおなかの中にいた期間(在胎週数)や、赤ちゃん自身の発育状況などから判断されるようになりました。
つまり、未熟児とは低出生体重児のことだけを指すのではなく、呼吸機能や哺乳機能、循環機能などの生命機能が「未熟」で、胎外での生活に適応できない状態のことを指すのです。
また、出生時の体重が1500グラム未満の赤ちゃんを極低出生体重児、1000グラム未満を超低出生体重児といいます。
近年では、不妊治療による多胎妊娠で双子や三つ子が生まれるケースもあり、超低出生体重児が生まれるケースが増えています。
そして、早産の場合も未熟児が多い傾向です。
これは、ママのおなかの中にいる期間が短いため、胎外に出る準備が整っていないことが要因として考えられます。いずれも医療技術の進歩によって死亡率は低くなっていますが、それと同時に低出生体重児や早産も増加傾向にあります。
適応される対象は?
未熟児養育医療制度の対象は出生時の体重が2000グラム以下で、生活力が特に薄弱で医師が特に入院養育を必要と認めた者に限られます。
症状としては、けいれんがある、運動量が少ない。体温が34度以下であるといったものが挙げられます。
【対象者】
- 出生時の体重が2000グラム以下
- 以下の条件に当てはまり、医師が特に入院養育を必要と認めた者
【条件】※自治体によって一部対象外となるケースもあります。
1、一般状態 |
①運動不安・けいれん
②運動異常 |
2、体温 |
①34度以下 |
3、呼吸器、循環器 |
①強度のチアノーゼが持続している
②チアノーゼ発作を繰り返す
③呼吸数が毎分50以上で増加傾向にある
④呼吸数が毎分30以下である
⑤出血傾向が強い |
4、消化器系 |
①生後24時間以上排便がない
②生後48時間以上嘔吐が持続している
③血性吐物、血性便がある |
5、黄疸 |
生後数時間以内に現れる、あるいは異状に強い黄疸があるもの(症状が黄疸のみの場合は、中程度異状の黄疸とする) |
6、その他 |
1~5に準じる症状を有しており、特に入院養育が必要なもの。 |
自己負担額はあるの?
未熟児養育医療制度は、保険診療対象分に関して市区町村が医療費を負担してくれる制度です。
そのため、お住まいの地域によって多少の違いがありますが、基本的には所得に応じて自己負担額が自治体ごとに定められています。
自治体によっては、所得税額が規定を超えた場合、全額負担となるケースもあるので気をつけてください。
ただし、自己負担額に関しては、乳幼児医療費助成の対象となりますので、併用すると負担額を減らすことが可能です。
注意が必要なのは、おむつ代やベッド代といった保険適用外のものに関しては助成の対象にならないということ。治療方法も保険適用か否か、しっかり確認しておきましょう。
山形県中山町の例
たとえば、山形県中山町の場合、指定養育医療機関における入院医療費のうち、保険適用後の自己負担額及び入院時の食事療養費の自己負担額が助成の対象となります。
自己負担額は、生活保護世帯や支援給付受給世帯は0円、市町村民税非課税世帯は2,600円となっています。
そのほかは、所得税額が増えるにつれて自己負担額も上がっています。
申請の流れは?
未熟児養育医療制度の申請時期は自治体によって異なります。しかし、申請が遅れると補助が受けられないケースがあるので、出生後未熟児とわかったらすぐに役所に行って手続きを行いましょう。
手続きには、養育医療給付申請書や世帯調査書などさまざまな書類が必要となりますので、時間がかかることもあります。また、指定の病院に受診しなければ助成を受けられないので、この点にも注意してください。
申請に必要なものは?
未熟児養育医療制度の申請に必要なものは、以下のとおりです。
- 養育医療給付申請書…申請者が記入します。
- 養育医療意見書…医師が記入してくれます。
- 世帯調査書…受療者本人(赤ちゃん)を含む、住民票上同一世帯の方全員と、世帯街扶養義務者を記入したもの。
- 世帯構成員全員の所得税額を証明する書類…源泉徴収票、市民税証明書など。
このほか、自治体によって以下のようなものが必要となることがあります。
- 委任状や同意書、誓約書…委任状は必要な方のみ。同意書は、養育医療を受ける赤ちゃんと同一世帯の人全員の記入・押印が必要です。
- 健康保険証のコピー…お子さんの氏名が入ったもの
- 母子健康手帳
- 乳幼児医療費受給資格証…自己負担額の助成を受ける場合に必要となります。
- マイナンバー確認書…マイナンバーカードや通知カード、マイナンバーが記載された住民票の写しなど。
- 本人確認書類…運転免許証・パスポート・身体障害者手帳など※マイナンバーカードをお持ちの場合は不要です。
まとめ
不妊治療の進歩によって赤ちゃんを授かれる機会が増えていますが、それと同時に未熟児が生まれるケースも増加しています。
また、不妊治療以外にも、子宮頸がんの治療によって早産のリスクを抱える人もいます。
早産になる可能性が高いと医師から言われている方は、早めに指定医療機関をチェックして、万が一に備えておくとよいでしょう。
もしわが子が未熟児として生まれても、現在の医療技術では助かるケースが増えているので、あまり不安を抱えすぎないように。
未熟児養育医療制度や乳幼児医療費助成を受ければ家計の負担も減らすことができるので、赤ちゃんが元気に退院できるよう見守ってあげてくださいね。