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賃貸マンション・アパートでも電力会社を変更できるの?メリットは?

 

2016年4月から、一般家庭向けの電力供給に関しても自由化がスタートし、数多くの新しい電力会社がサービスの提供を開始しました。利用者は、今まで地方の電力会社一択だった電力会社との契約を、好きな電力会社と契約できるようになっています。

しかし、一般的な戸建て住居であればそれでも問題ないでしょうが、お住いの住居が「マンション」「アパート」のようなタイプの住居の場合、電力の自由化の影響はそのまま受けられるというわけでもないということをご存知でしょうか。

今回は、マンションやアパートにお住まいの方と電力自由化との関わりについて解説していきます。

 

目次

賃貸マンション・アパートでも電力会社を変更することはできるの?

まず、そもそもの問題として「マンションやアパートに住んでいる場合、電力会社を既存のものから変更することはできるのか?」ということについて解説します。

基本的には変更できる

まず、基本的にはマンションやアパートに住んでいても、戸建て住居に住んでいる人と同様に電力自由化後に電力会社を変更することはできます。もちろん、お住いの地域によって選べる電力会社が限られるという点も、戸建て住居にお住まいの場合と同様です。

電力会社を乗り換えられないケースはあるの?

ですが、これは「基本的に」という話なので、場合によってはマンションやアパートにお住まいの人は電力会社を変更できないケースもあります。

高圧一括受電マンション・アパート(管理会社・大家さんに電気料金を支払っている方)

マンションやアパートにお住まいの方で、電力会社を自由に変えられないケースとは、「高圧一括受電」のマンションやアパートの場合です。わかりやすく言えば、「電気代を大家さんに支払っている人」のことです。

高圧一括受電とは、簡単に言えば大家さんが高圧電力の契約を電力会社と結び、大家さんが変圧器を利用して一般家庭向けの低圧電力に切り替えて小売りするというシステムです。

この場合、そのマンション全てが同じ電力会社から電気を購入することを決定されているようなものであり、自分の世帯だけ異なる電力会社から電気を購入したいと思っても無理なのです。

加えて、仮にこのような状況を同じマンション・アパートに住む多くの人が反対している、つまり一括受電方式を解消し、個別契約の形式に戻したいと思っても問題が生じます。

まずは「高額な違約金」です。高圧一括受電の契約は、一般的に10年以上の契約期間が設定されており、その期間が経過する前に解約する場合は相当な金額の違約金を支払うことになる可能性が高いです。

もう一つの問題もお金に関することで、「変圧器」や「配電設備」など、個別契約において不要となる設備の交換費用や費用の回収などの問題です。下手をすれば、1000万円を超える費用が発生することも考えられます。

誰が、このような莫大の費用を払うことができるのか、ということになるのです。

上記の(お金の)問題があるため、電力供給の仕組みを変更するための「居住者全員の同意」を得ることが極めて難しいのです。そのため、現実的な方法としては「戸建て、もしくは一括受電ではないタイプのマンション・アパート」に引っ越すということになるのです。

マンション・アパートで電力会社を変更するメリット・デメリット

次に、マンションやアパートにお住まいの方が、電力会社を変更することのメリット・デメリットについて解説します。

メリット

メリットに関しては、単純に「電気代が節約できる」という点です。ただし、電力会社と各家庭の電気使用状況との相性の問題もありますので一概には言えません。

基本的に、電気使用量が多い家庭ほど、新電力に切り替えることによる影響は強く現れることが多いです。

また、新電力への切り替えを「クリーンなエネルギーの積極的な使用による、地球環境への配慮」という観点から見ることもできます。新電力の中には「太陽光」「バイオマス」といった、環境への負担が少ない発電方法を多く取り入れたものもあります。

そうした電力会社の選び方ができることも、新電力への変更によるメリットであると言えます。

デメリット

デメリットに関しては、まず前述の「一括受電の場合は莫大なコストが必要」ということです。

お住いのマンションやアパートが高圧一括受電方式での電気供給の場合、新電力への切り替えは「莫大なコストを支払わなければならない」「それを踏まえた上で居住者全員の同意を得られなければならない」といった障害を乗り越える必要があります。往々にして「引っ越す」という選択肢のほうが現実的なのです。

次に「ライフスタイルによってはメリットがない」ということです。新電力は、その殆どが「電気を多く使う世帯向け」の料金プランを展開しています。

つまり、一人暮らしや、日中はほとんど誰もいない世帯の場合、新電力に切り替えることによるメリットを得られないという点がそのままデメリットになります。

賃貸マンション・アパートでもメーター交換工事は必要?

新電力への切り替えの際によく目にするのが「スマートメーター」という単語です。これは、新電力への切り替えに際してかならず必要になる電気メーターの交換であり、新電力への切り替えに際しては基本的に電力会社が無料で工事を行ってくれます。

マンションやアパートにおいても、これは同様です。従来の「機械式のメーター」では、新電力を利用することはできません。電気メーターは電力会社の所有物であり、これを交換する際に大家さんへの同意は基本的に不要です。

ただし、交換するにあたって大規模な工事を必要とする場合は例外です。一般的なスマートメーターへの交換工事は、大それた工事を必要としません。しかし、お住いの住居によっては電気メーターの交換に際して壁を崩したり、それなりの規模の工事を必要とすることがあります。この場合、大家さんの同意が必要になりますので注意しましょう。

それと、既にスマートメーターへの交換が済んでいる場合もありますが、この場合は新規に工事を行う必要がありません。そのまま、設置済みのスマートメーターを利用することができます。

乗り換えを強要されたらどうしたらいいの?回避方法は?

マンションやアパートにお住まいの場合や引っ越す場合において、その住居が既に高圧一括受電となっている場合や、いずれかの電力会社への契約が決まっている場合であれば、これに抗うことは現実的ではありません。

ですが、現時点では電力会社を自由に選べるタイプのマンションやアパートにお住まいの方で、「いずれかの電力会社への乗り換えを強要される」というケースが見られています。

特定の電力会社への乗り換えを強要される場合

まずは、書面や口頭で、特定の電力会社への乗り換えを通知されるというケースです。書面の内容から、それが義務的なものであると錯覚するといったケースもいくつか見られています。

法律上、元からそういった契約内容で賃貸契約等を結んでいるような状況ではない限り、特定の電力会社への乗り換えを通知されてもそれに応じる必要性はありません。あくまでも「任意」での取扱となるので、何らかの通知やお願いを受けたとしても、それに応じるかどうかは入居している人の自由です。

ただ、実際にトラブルに発展しているケースも少なくありません。問題となっているのは、通知文書等が「電力会社の変更が『必須』であるかのように錯覚してしまう」という部分に多く見られます。

あくまでも任意での切り替えであるということをきちんと確認し、送付された書面等があればその内容についてもきちんと確認しておきましょう。

高圧一括受電方式に切り替える場合

もう一つのパターンは「高圧一括受電への切り替え」です。こちらは、住んでいるマンションやアパートごと、電力会社を切り替えるという形に近いです。前述の通り、これは入居者全員の同意を必要とします。

なので、例えば入居者100世帯以上が賛成している中で、数世帯(1世帯でも)の反対がある場合、いくら圧倒的な賛成多数でもそのマンション・アパートでは高圧一括受電への切り替えはできません。

既に一括受電方式に切り替わった後のマンション・アパートに入居する場合だとこれに抗う方法はありませんが、これから変更となればこれを拒否することができます。

ただし、賛成多数となっている場合、今後も大家さんや管理団体、同じマンションやアパートの入居者との話し合いが続く可能性も捨てきれません。場合によっては、居心地の悪い生活を強いられる可能性も捨てきれません。

まとめ

マンションやアパートにお住まいの場合、新電力への切り替えが何かと問題となるケースも少なくありません。電力会社の切り替えは、どんな人にでも等しくメリットになるというわけではなく、場合によっては手間をかけて電気代が増加する結果に終わる人もいます。

それを踏まえた上で、電力会社の切り替えに直面している場合は、自分の家では対象となる新電力への切り替えがメリットになるのかどうか、きちんと検討することです。

もし、メリットの大きな電力会社への切り替えを要請された場合であれば、応じたとしても問題はありません。多少の手間はかかるかもしれませんが、電気代は安くなりますし、大家さんや管理組合との軋轢も生まれませんし、良いこと尽くしです。

ですが、デメリットのほうが大きい場合であれば、自身にとって不利益でしかありませんから、いくら大家さんや管理団体に強制されそうになっても応じる必要は全くありません。

基本的に、よほど特殊な契約を結んでいない限り、電力会社の選択権は各世帯の方にあります。

今後は、経済産業省等が主体となって、集合住宅等と新電力との関係性が一新される可能性もあります。電力会社の選択において、その選択権が自分にあるという場合や不安を抱えているという場合、そうしたトピックにも目を光らせておく必要があります。