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2017年4月にガスの小売全面自由化が開始!どんな影響があるのか?

 

2016年4月から、一般家庭向けの電力自由化がスタートしています。それから1年、今度は2017年4月から「ガスの自由化」がスタートする運びとなっています。

「自由化」と聞くと、やはり多くの人にとって何らかの利益があるというイメージがあります。しかしその一方で、よく知らないと不安な部分も多いのではないかと思います。また、同じ自由化を果たした電気とガス、一体どのように関わってくるのかという部分も気になるのではないかと思います。

そこで、ガスが自由化すると私たちにどのような影響をもたらすのかということについてまとめてみました。

 

目次

これまでのガス自由化の歴史!実は自由化はすでに始まっていたのです。

実は、2017年4月からスタートと言われているガスの販売は、向上などの大口契約においては日本でも1995年からスタートしていたのです。既に都市ガスの3分の2に相当する部分が自由化されており、30以上の会社が新たに都市ガスビジネスに参入しているのです。

さらに視野を広げてみれば、電力自由化と同様に欧米諸国では古くからガスの自由かもスタートしています。古いものではアメリカのニューヨーク州で1996年、イギリスやドイツでは1998年からガスの全面自由化がスターとしているのです。

比較的新しいものではイタリアで2003年から、フランスでは2007年からのスタートです。実に日本より20年以上前からガスの自由化がスタートしているという計算になります。

ガスの小売全面自由化の目的は?

ガスの小売りが自由化する目的は、「日本の成長を牽引することができる産業への変革」と「消費者利益の向上」です。その実現のために必要なことは、主に3つのポイントに分けることができます。

創る部分での競争を促す

第一に「創る部分での競争を促す」ことです。上流での連携や競争を促すことで、燃料調達のコスト削減や、地域ごとに特色をもたせたサービスの提供を促すことを目的としています。

ガス導管の整備

第二に「ガス導管の整備」です。ガス導管を整備することにより、参入する事業者が誰でも公平にガス導管を利用することができるようになり、公平な競争を促すことができます。

消費者の選択肢の増加

第三に「消費者の選択肢の増加」です。住んでいる地域によってガス会社が限定されるのではなく、さまざまな会社から選択して世帯ごとにお得な条件でガスを使用することができるようになります。

2017年4月から開始されるガスの小売全面自由化のしくみ

ガスの自由化の仕組みは、既存のガス管を使用しての都市ガス会社以外の事業者のガス事業への参入です。新たにガス事業に参入する会社でも既に敷設されているガス管を利用できるようにして、価格やサービス内容を競うことでさまざまな会社をガス事業参入に促すという仕組みです。

この仕組は、前述の通り工場などの大口契約においては実用化されているものです。公平にガス管を利用することができるように、利用料金は国が認可を行います。また、安全面を考慮して、ガス管の点検やトラブル発生時の対応は、従来と同様にベテランの都市ガス会社がこれを担当します。

さらに、ガスの販売会社が倒産する等の技術面以外でのトラブルが発生した場合でも、都市ガス会社からきちんとガスが供給されるというセーフティーネットも構築しています。

登録ガス小売事業者はどれくらいいるの?(2017年3月15日時点)

2017年3月15日時点では、28の会社が新たにガス会社として登録されています。電力会社と比較すると全国でもそこまで数が多くありませんが、登録のハードルはそれなりに高いので仕方がないのかもしれません。

ですが、スタートまでまだ若干ですが時間が残されていますし、3月8日時点では26社であり新たに2社が追加されているので、今後も増える可能性は残っています。

代表的な参入会社としては「関西電力」「東京電力エナジーパートナー」の2事業者が挙げられます。やはりと言うか、大手電力会社の参入が予想されていました。この他にも「中部電力」「九州電力」などの従来の電力会社、それ以外にも数多くの会社が名を連ねています。

ただし、その全てが一般家庭へのガスの販売を担うということではありません。そもそもの問題として「既に敷設されているガス管を利用する」という都合上、一般家庭へのガスの供給が可能なのは都市圏など一部の地域に限定されるのです。

ガス全面自由化でどんな影響があるの?

では、ガスが自由化することで一般家庭にはどのような影響があると予想されるのでしょうか。まず第一に「電気とのセット割」が提供されるという部分です。

これは既に逆のパターン(新電力のガスとのセット割)が実現しており、大手電力会社が何社も参入していることからも予想することができます。

次に「携帯電話料金とのセット割」です。これも電力の自由化でいくつか見られているパターンです(ソフトバンクでんき等)。携帯電話会社と提携することでサービスの提供が実現できると予想されます。

次に「ポイントサービスの展開」です。これも既存のポイントサービスの提携も視野に入れえば、有名所のポイントサービスや、それらと互換性のあるポイントサービスを利用できる可能性があります。特に、ガス使用量に応じてポイントが付与される場合、ガスの使用量の多い家庭では恩恵が大きくなりやすいです。

この他にも、自社サービスや提携サービスと関連した新しいサービスの提供も期待することができます。今後も都市圏を中心に参入企業が増加すれば競争が激化し、顧客の獲得のための真っ当な競争が起これば消費者への利益に繋がる可能性が高まります。

ガス全面自由化の今後の課題は?

しかし、ガスの全面自由化に対しては、まだまだ課題が残されていることも事実なのです。

二重導管規制について

その最たるものは「二重導管規制」です。先ほど「既存のガス管を新規参入会社が使うことができる」という点について説明しましたが、逆に言えば「あらたにガス管を敷設することができない」ということになるのです。これが、二重導管規制です。

これは既存のガス会社が特に要望している部分でもあります。理由として、あらたにガス管を敷設してこれを利用するガス会社に顧客を奪われた場合、既存のガス会社はガス管敷設や管理に関するコストの回収が難しくなるのです。そうなれば、残った顧客に対するガス料金の値上げに踏み切らなければならなくなる可能性も捨てきれないのです。

大手ガス会社が保有する、導管部門を別会社にするという法的分離を、2022年をめどに進められています。これを受け入れている以上、大手ガス会社としても導管に関する利益の確保は留めおきたいところです。

さらに言えば、新規参入企業がこぞってガス管を敷設するとなると、その設備投資および今後の管理に必要なコストもかかるわけで、ではその部分をどのようにして埋め合わせるのかと言えば前述の通り「ガス料金にフィードバックする」ということになります。これは、ガスの自由化の目的の一つである「消費者への利益の向上」とは真逆の事柄です。

この点については「規制緩和による電力会社のシェア獲得」「託送料金の増加抑制」など、他にもさまざまな点が問題として浮上しています。既存の企業の利益と新規企業の利益、それに消費者の利益も考慮した上で、今後も話し合いが続けられるものと予想されます。

大都市圏と地方の格差

次に、ガスの自由化に伴って浮き彫りになる「大都市圏と地方の格差」です。電気と違い、都市ガスの導管は全国に張り巡らされているわけでは無いのです。既存のガス管を使用してのコスト削減も、その大元となる「ガス管」が無い場合は意味を持ちません。

先ほど、28社のガス会社登録について触れましたが、一般家庭へのガス供給を予定しているのは都市圏のガス会社だけなのです。ガス管が敷設されていない地方では、そもそもガス会社として参入する企業自体が少ないのです。

ガスの自由化が始まり、ガス管が敷設されている都市圏のガス料金だけが下落すれば、ここに「大都市圏-地方間のガス料金の格差」が生じることにほかならないのです。この問題を解消するためには、地方のガス導管の整備を急ぐ必要があります。

全面自由化で本当に競争が起きるのか

次に、本当にガスの全面自由化によって競争が起こるのか、という部分です。電力自由化の話になりますが、海外では日本よりも古くから電力の自由化が進んでいるのですが、数年が経過しても既存の電力会社の独占状態が解消されていないケースもあるのです(その国では、ガスのシェアは分散しましたが)。

基本的に、競争が促されるような下地は完成しつつあると言えます。しかし、実際に競争が発生して、ガス料金の下落や各種関連サービスの充実など、消費者の利益に繋がるようなアクションが本当に発生するかどうかは、実際にガスの小売りがスタートしてみないとわからないという部分も少なくありません。

保安対策

また、「ガス」という、電気以上にその安全性が重要になるサービスですが、自由化によってその安全面は本当に確保されるのかという部分も少なからず危惧されます。

数多くのガス会社が参入するとなれば、共通した保安対策ガイドラインを策定するなど、一定以上の安全対策を実施しなければ一般消費者としても安心してガスを使用することができなくなってしまいます。

さらに、現時点ではガス導管が敷設されていな地方におけるガス導管の整備についても同じようなことが言えます。特に、その地方のガス会社が主導となる場合、都市部のガス会社といかに連携してそのノウハウを活かした保安対策が実施できるかという部分が重要です。

今までガス管を利用していなかった消費者としても、新しいサービスを利用するにあたって本当に安全なものであるのかどうか、もし最初期に事故を多発しようものならその安全面への信頼はガタ落ちし、信頼関係の復旧には相当な時間を要することになります。

まとめ

ガスの自由化は、既にスタートしている電力の自由化よりもデリケートな問題を多数抱えていると言えます。消費者の利益をどこまで確保することができるのか、地方との格差を埋めるには何年かかるのか、未だに先が見えてこない部分も少なくありません。

電力自由化と全く同じ問題として捉えることはできず、単純に比較することもできないのが現状です。ですが、本格的にガスの自由化がスタートし、消費者に浸透していけば、同種のサービスとして必ずどこかで関連性が生じてくることになります。最たるものとしては、電気とガスのセットプランの提供です。

実現すれば、今まで以上にお得な料金で電気とガスを利用することができるでしょう。