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赤ちゃんにはちみつは絶対にNG!!命の危険もある「乳児ボツリヌス症」とは?

 

栄養満点で自然な甘さが人気の「はちみつ」。最近は、はちみつ専門店が出店してきているほど注目をされています。

そのまま食べるのはもちろん、お菓子づくりで砂糖の代わりに入れたり、料理の隠し味として入れたりと様々な用途で使いますよね。

一見、良いところばかりのはちみつですが、「ボツリヌス症」という食中毒の危険性があることをご存知でしょうか。

特に1歳未満の赤ちゃんにはちみつを与えると「乳児ボツリヌス症」を発生してしまう可能性があると注意喚起をされています。

今回は、そんな「乳児ボツリヌス症」について、なぜ赤ちゃんにはちみつを食べさせてはいけないのか、いったいどんな症状が起こるのかなど詳しくみていきましょう。

目次

乳児ボツリヌス症とは?

乳児ボツリヌス症とは、1歳未満の乳児にみられるボツリヌス症で、特に生後3週間~生後6か月の間に発症しやすいと言われています。

ボツリヌス症は、自然界のあらゆるところに生息している「ボツリヌス菌」によって引き起こされます。

ボツリヌス菌は「芽胞(がほう)」という耐久性の強い細胞をつくります。

この芽胞を乳児が摂取してしまうと、まだ消化器官が未熟な乳児の大腸の中で菌が増殖して毒素を作り出し、吸収することで、「乳児ボツリヌス症」を引き起こしてしまいます。

乳児ボツリヌス症の主な感染経路は「はちみつ」から

赤ちゃんが乳児ボツリヌス症に感染する経路としては、主に「はちみつ」の摂取が挙げられます。

はちみつは土の中で育った花の蜜から作られているため、その中にボツリヌス菌の芽胞が含まれている可能性があります。

すべてのはちみつに含まれているわけではなく、約5%~10%のはちみつに含まれていると言われていますが、実際のところは詳しく検査をしてみないとわからないようです。

そのため、乳児ボツリヌス症を発生する、「1歳未満の乳児にははちみつを与えない」ように、厚生労働省から注意喚起をされています。

黒糖やコーンシロップにも注意が必要

乳児ボツリヌス症の発症の原因としては、はちみつばかりが注目されていますが、国内の発症例をみると、黒糖やコーンシロップ、非加熱の野菜ジュースなども原因となっているため、1歳未満はこれらも与えないように注意しましょう。

母乳からは感染するの?

赤ちゃんにはちみつを与えてはいけないのなら、「母乳からボツリヌス菌の影響が赤ちゃんにも及ぶのではないか」と心配する人もいると思います。

しかし、ボツリヌス菌が母乳に混じることはなく、乳児ボツリヌス症は赤ちゃん自身がボツリヌス菌の芽胞を摂取しなければ感染しません。

よって、授乳中にお母さんがはちみつを食べることは問題ありません。

乳児ボツリヌス症の症状は?

乳児ボツリヌス菌の症状としては、3日以上の便秘が続き、麻痺や全身の筋力の低下がみられます。

また、吸乳力の低下や呼吸困難、泣き声が弱いといった症状もみられるようです。

ボツリヌス菌の潜伏期間はおよそ3日~30日間といわれています。

乳児ボツリヌス症が発症する確率は?

1歳未満の赤ちゃんが乳児ボツリヌス症に発症する確率として、正確な数字は出されていませんが、国内での記録が残る1986年以降の約30年間で30件ほどとなっています。

これは米国での発症が年間100件ほどという結果に比べて、とても少ない数となっています。

実際に赤ちゃんにはちみつなどの食品を与えていた割合が分からないので、一概に確率が高いか低いかとは言えませんが、今までで30数件ということは、単純に年数で割っても1年に1件ほどとなりますので、とても稀な症例とはいえるでしょう。

しかし、近年の諸外国では乳幼児突然死症候群と乳児ボツリヌス症は関連しているといわれています。

このことから、国内で報告されている年間150件ほどの乳幼児突然死症候群の原因のひとつに「ボツリヌス菌の感染によるもの」が含まれているのではないかと推測されます。

いずれにしても、ボツリヌス菌の感染に気をつけなければならないのには変わりありません。

全国初の「乳児ボツリヌス症」による死亡例について

一般的に乳児ボツリヌス症が認識され、病院や保健所などでも「1歳未満の乳児にはちみつは与えないでください」と周知はされているものの、残念なことに2017年3月、国内初の乳児ボツリヌス症による死亡例が確認されました。

今回の症例の患者は生後6か月の男の子で、離乳食に混ぜた「はちみつ」が原因で死亡に至りました。

どういった経緯で死亡に至ったのか、問題点は何なのか、詳しくみていきましょう。

経緯は?

男児は、発症の約1か月前の1月中旬ごろから市販のジュースにはちみつを混ぜたものを1日2回ほど離乳食として飲んでいました。

その後、2/16から、せきや鼻水といった風邪のような症状が現れ、2/20にはけいれんや呼吸不全などの症状で病院へ緊急搬送されています。

そして、病院の検査による結果、男の子の便と自宅に保管されていた開封済のはちみつのいずれからも「ボツリヌス菌」が検出されました。

その後、男の子は治療の甲斐もなく、3/30に死亡が確認。

これらの経緯から、「死亡原因はボツリヌス菌によるもの」と断定され、1986年以降、初めての乳児ボツリヌス症による死亡例となりました。

問題点は?

今回の乳児ボツリヌス症による死亡例の問題点としては、

・保護者の知識不足

・関連機関の周知不足

が挙げられるのではないでしょうか。それぞれ、詳しくみていきましょう。

保護者の知識不足

まず、一番の問題は赤ちゃんの死亡に至った原因である、「1歳未満の乳児に与えてはいけない、はちみつを与えてしまったこと」です。

これは、やはり保護者の知識不足、無知さが問題だと思われます。さらには、乳児に対する責任感の欠如も考えられます。

ボツリヌス菌の危険性については、母子手帳に記載があるのに加えて、病院や保健所などで「赤ちゃんにはちみつを食べさせてはいけない」と何度も言われることが多いそうです。

また、子育てや離乳食についての本にも1歳未満に与えてはいけない食品として、「はちみつ」が書かれています。

いくら「知らなかった」とはいえ、こういった中で知識不足だったということは、母親学級や乳児検診に行ってなかったのか、離乳食について勉強しなかったのか、といった疑問が浮かんできます。

さらに、市販のはちみつにも「1歳未満の乳児には与えないでください」と注意書きがされている商品がほとんどなので、こういった注意点の確認不足も問題といえます。

しかしその背景には、核家族の子育ての孤立化や地域交流の希薄化などといった、社会問題も隠れているのではないでしょうか。

もしかすると、子育てに対して誰にも頼れない、誰にも聞けないといった状態だったのかもしれません。

やはり子育てをする上で、周りの人の協力は必須だと思いますので、このような問題にもクローズアップしていく必要があると思います。

関連機関の周知不足

次に、関連機関の周知不足といった問題点です。

これは、病院や保健所などの関連機関などの周知が徹底されていないという問題です。

ほとんどの病院や保健所では、母親学級や乳児検診、離乳食教室などを通して、ボツリヌス菌の危険性やはちみつを与えてはいけないということを周知されています。

しかしながら、一部の病院や保健所ではこういった指導がされていないところも存在するようで、「子どもがいるけど、はちみつをあげてはいけないことを知らなかった」という人や、「母親学級や検診では教えてもらわなかった」という人もいるようです。

これを機に、今後同じようなことが起こらないためにも、病院や保健所などでの注意喚起の徹底が重要だと思われます。

また、母子手帳の内容やはちみつを販売するときの注意書きも、わかりやすくすることが必要ではないでしょうか。

対策は?

今回の事例を受け、厚生労働省から赤ちゃんのお母さんとお父さん、お世話をする人および食品事業者向けに、「1歳未満にはちみつを与えない」といった注意喚起が行われました。

厚生労働省 ハチミツを与えるのは1歳を過ぎてから

さらに日本養蜂協会からは、1歳未満にはちみつを与えないということに加えて、「蜂蜜商品を販売するときは商品にしっかりと注意書きの表示をしましょう」といった注意喚起も行われておりました。

日本養蜂協会 1歳未満の乳児には蜂蜜を与えない(蜂蜜製品を販売する方はしっかり表示をしてください。)

この他、全国の自治体や福祉保健局のホームページなどでも注意喚起がされているようです。

さらに、火種は「クックパッド」にまで及ぶ!?

そして、今回の乳児ボツリヌス症による死亡といったニュースは、レシピサイト「クックパッド」にも影響が及びました。

それは、インターネットで「離乳食 はちみつ」と検索をすると、上位に「クックパッド」の「離乳食 はちみつ」レシピが140品もヒットすることが問題視されているというものです。

これに対して、Twitterや掲示板上では、「クックパッドの管理体制はどうなっているのか」や「生命の危険があるレシピは削除するべき」などと批判的な意見が述べられていました。

その一方で、「はちみつがいけないことを知ってたら作らない」、「すべては親の責任問題」とクックパッドに責任はないという意見もあり、物議を醸しているようです。

実際にクックパッドのレシピをみてみると

クックパッド上で、「離乳食 はちみつ」が140品ほどあるといっても、実際はほとんどが1歳以上の離乳食完了期のレシピであったり、「1歳未満のはちみつは不可」と書いてあったりするレシピでした。

しかし、一部は離乳食初期のレシピではちみつを使用している上、注意書きのないものもありました。

クックパッドの対応

今回の炎上を受けたクックパッドとしては、はちみつ摂取による乳児ボツリヌス症に対しての声明を発表しています。

内容としては、

「生後6か月の男児が乳児ボツリヌス症で亡くなるという大変悲しい出来事が報じられた」

と今回の死亡例について述べたうえで、

「乳児ボツリヌス症の主な原因食品ははちみつのため、1歳未満の乳児にはちみつを与えるのは避けましょう」

といったように注意喚起を行っていました。

そのあと、「はちみつの危険性」について記載してあるページや「赤ちゃんに食べさせてはいけない食材」、「食材・調理器具の注意点」のページへのリンクが張られています。

そして今回の死亡例を受け、

「サイト内に投稿された料理レシピを再度確認した上で注意喚起をし、食の安全に関する発信をさらに強化する」

と今後の対策についても発表していました。

クックパッドでは、妊娠から子育て向けの「クックパッドベビー」も展開されているので、今後の安全対策に期待したいところです。

赤ちゃんへはちみつの影響についての疑問

もし赤ちゃんが誤って「はちみつ」を食べてしまったら?

はちみつがいけないとわかっていても、気づかずに蜂蜜入りのお菓子やパンを食べさせてしまったり、赤ちゃんが誤ってはちみつを舐めたりすることもあります。

そんなとき、赤ちゃんがボツリヌス症になってしまうのではないかと不安でいっぱいになると思いますが、先述した通り、すべてのはちみつにボツリヌス菌が存在しているわけではないので、様子を見て異常がなければ問題ありません。

しかし、ボツリヌス菌は3~30日の潜伏期間がありますので、誤って食べてしまってから、1か月ほどは赤ちゃんの様子に注意してください。

もし便秘が続いたり、麻痺症状がでたりと様子がおかしければ、すぐに病院へ連れていきましょう。

加熱をすれば、ボツリヌス菌は殺菌される?

加熱をすればボツリヌス菌は殺菌されると勘違いされやすいのですが、ボツリヌス菌はとても耐久性の強い菌のため、100℃程度の加熱処理をしても殺菌することはできません。

菌を殺すためには、120℃で4分以上の加熱が必要と言われていますので、自宅で加熱処理をしたとしても、はちみつを食べさせるのは避けましょう。

いつからはちみつを与えられる?

赤ちゃんは1歳を過ぎると免疫機能が整うため、腸内でボツリヌス菌が増殖することはありません。

よって、1歳以上になると離乳食にはちみつを使っても問題ありません。

ちなみに乳児ボツリヌス症を発症した赤ちゃんの内、約94%は生後6ヶ月以内の乳児で、発症した最高月齢は産後11カ月といわれています。

赤ちゃんが乳児ボツリヌス症にならないための予防法

ボツリヌス菌に汚染された食品を与えない

赤ちゃんが乳児ボツリヌス症にならないためには、はちみつや黒糖などボツリヌス菌に汚染されている恐れのあるものを1歳未満の乳児には決して与えないようにしましょう。

お菓子やパンにもはちみつが含まれている場合もありますので、原材料にはちみつが入っているものを与えてしまわないように注意しましょう。

赤ちゃんの手の届くところにはちみつを置かない

赤ちゃんが気づかないうちにはちみつを食べてしまったということにならないために、赤ちゃんの手の届く位置にはちみつを置かないようにしましょう。

赤ちゃんがハイハイやつたい歩きをするようになると行動範囲も広まりますので、はちみつを置く位置に気をつけ、容器も赤ちゃんの力では開かないよう頑丈なものにすると安心です。

はちみつだけじゃない!赤ちゃんに食べさせてはいけないもの

赤ちゃんに食べさせてはいけない食材は、今回注目された「はちみつ」だけではありません。

赤ちゃんに食べさせてはいけない食べ物についてまとめてみましたので、ぜひ参考にしてください。

食中毒の恐れがあるもの

お刺身など魚介類や生肉、生卵といった生ものは食中毒にかかる可能性が高いです。1歳未満の乳児はもちろん、念のために2歳くらいまでは食中毒の恐れがあるものは与えないようにしましょう。

アレルギーとなるもの

卵、小麦、牛乳など乳製品は食物アレルギーとして現れやすい食材です。小麦は6ヶ月から与えられますが、少しずつ与え、湿疹や嘔吐などのアレルギー反応が出ないかを確認しましょう。

卵は加熱をしたものは8~9ヶ月、乳製品は1歳以降に少しずつ与えて、同じくアレルギー反応を確かめてください。

また、蕎麦、いか、たこ、えび、かに、ピーナッツなどは強いアレルギー反応がでやすい食材のため、離乳食期には食べさせないようにしましょう。

喉に詰まりやすいもの

もち、こんにゃく、寒天、プチトマト、ブドウ、ナッツ、豆、飴など噛み切りにくいものや形の小さいものは喉に詰まりやすいため、離乳食期にそのまま与えるのは避けるようにしましょう。

塩分や脂肪分が多いもの

ベーコンやソーセージ、ソース、コンソメ、マーガリンなどは塩分や脂肪分が多いため、1歳未満の乳児には与えないようにしましょう。その他、カレーや香辛料といった刺激物も避けましょう。

さいごに

今回、赤ちゃんの乳児ボツリヌス症による死亡例が初めて確認され、赤ちゃんへのはちみつの悪影響が世間で再認識されるきっかけとなりました。

何度も繰り返しますが、乳児ボツリヌス症は、「赤ちゃんにはちみつを与えない」という、たったこれだけで防ぐことができるのです。

それだけに、今回の死亡例は悔やんでも悔やみきれませんし、ご家族の悲しみも計り知れません。

このような赤ちゃんへのリスクをなくすためには、母親だけでなく、父親や家族全員が正しい知識を持って赤ちゃんのお世話をすることが大切です。

さらには、保育士やベビーシッターといった子どもの命に関わる職業の方も、もちろん正しい知識が求められます。

そのためには、世の中全体として必要な場面において正しい知識を身に付けること、その知識を親から子へ受け継ぐことが必要なのではないでしょうか。

これからの大切な命をひとつでも失わないように、赤ちゃんに関する正しい知識だけが手に入る世の中になればいいなと、願うばかりです。

参考文献東京都福祉保健局 食中毒の発生について~1歳未満の乳児にはちみつを与えないでください。~

参考文献東京都福祉保健局 食品衛生の窓 ボツリヌス菌

参考文献岐阜市 乳児ボツリヌス症

参考文献日本小児科学会 日本小児科学会雑誌 第119巻 第1号