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楽しめる子育てから、子どもに笑顔を。FJK理事長の篠田さんが考える「父親としての生き方」

「笑ろてるパパがええやん!」を合言葉に、男性の子育て支援を行っている、ファザーリング・ジャパン関西。
そこで理事長を務める篠田さんは、12年間働いた公務員という安定した職を捨て、30代でNPOの道へ。
自身は3人の子どもの父親として子育てをしながら、他のNPOの活動やPTA会長なども務め、お父さんと子どものより良い環境づくりのための活動を行っておられます。
今回は篠田理事長が子育てや様々な活動をされる中で感じていることや自分自身の生き方について思っていることをじっくりとお伺いしてきました。
 

目次

篠田さんが公務員からNPOに転職をした経緯

篠田さんは前職が公務員だったということですが、どうしてNPOに転職をしようと思ったのか、その経緯を教えてください。
公務員として働いていたときは、もともと20代のときに子どもが2人くらいは欲しいなと思っていて、計画通りに25歳で結婚して、26歳の時に1人目、29歳の時に2人目が生まれました。特に将来、転職するとか考えていたわけではなく、公務員をしながら子育てをして、毎日を楽しく過ごしていました。
そんなあるとき、29歳のときに健康診断で引っかかって、肺に大きな影があると言われたんです。結果的に何もなかったのですが、もしも自分の身に何かあったときのことを考えると、何もないまま60歳の定年を迎え、セカンドライフを送り、孫が当たり前のようにでき、というように人生はいかないんだということに気づかされて。
そのとき、自分自身でもっと子どもやまわりの人たちに、より良い生活につながることを提供していきたいと考えるようになったんです。それから、NPOとかダイレクトに人々にサービスを届けている団体について勉強をし始めて、自分自身も直接、人々に何か提供できることをしたいなと思い、NPOに転職をしました。
結婚や子どもを20代のうちにといったライフプランは、どのように描かれたのですか?
子どもと一緒に色んな事が出来る体力がある期間が長い方がいいなと考えていたので、20代のうちに結婚して子どもが欲しいと思っていました。
20代のころのイメージというのは、漠然と「こんな父親になりたい」と思うのではなくて、「若くてカッコいい父親になりたい」というように、将来の自分の姿を絵で表すように思い描いていました。
そんな風に具体的に将来のイメージを持てたから、思い描いていたライフプランの通りに実現したのだと思っています。

子育てをする中で苦労したことや大変だったこと

子育てについて語る篠田さん

篠田さんが思い描いたライフプランの通りに、3人の子どもを育てて感じたことはありますか?
いま、長男が10歳で、長女が8歳で、次男が2歳なんですけど、長男と長女のときは、まだ20代で血気も多くて、怒りながら子育てしていたのを覚えています。でも次男のときは、上の子2人を経験して気持ちに余裕が持てたのもあって、とにかく何してもすごく可愛いんですよ!
でも2人目からあまり間がなく、すぐに3人目ということになったら、そんな風には思えなかったと思います。これも計画してのことだったのですが、長女が年長のときに次男が生まれたので、長女と次男は6つ年の差があるんですね。
だから、長女の世話にそこまで手がかからなかったタイミングだったので、3人目の次男は上の子2人のときとは違った感覚で、落ち着いて子育てをすることが出来ています。
3人目の子育ては違った感覚だったということですが、初めて子育てをしたときは、どんな苦労がありましたか?
子育てをする上で苦労をしたことは、子育てに関する情報を持っていないことが大きかったですね。情報がないから、何につけてもそれが正しいかどうかわからない、それがどういった結果につながるかがわからない、ということに対しての不安が大きかったですね。
だから、みんな子育てのハウツー本とかを購入するんですけど、極端な話、ハウツー本に書いてあることなんてアテにならないですよ!
そうなんですか!?(笑)
アテにならないって言ったら言い過ぎですけど。ハウツー本は書いた人の子育てがそうなっただけであって、必ずしも自分の子どももそうなるとは限らないんですよ。どうしてハウツー本を買ってしまうのかというと、子育てに対してずっと不安だから安心したいんですよね。
ただその不安は、避けることのできない不安なんだということを3人目のときにやっと分かりました。
それは長男、長女を育てた結果、すごくいいものを食べさせてなかったとしても、ときどき目の届かないうちに砂を食べちゃったりしても、それなりに大きく育ったわけなんですよ。特に空気清浄機やら除菌やら・・と色々と気にしなくても、何とかなると思えるようになりました。
でも長男や長女のときは、そういったことがわからなかったので、いろんなことに気を遣ったことを覚えています。
特に長男のときは、9ヶ月のときに腸重積という病気になったんですけど、そのまま放って置くと腸が壊死してしまうこともあって。そのときは全身麻酔で腸を元通りにする手術を行って無事だったんですけど、一週間何を食べさせたのか、直前に行った旅行が良くなかったんじゃないか、と自分たちの中に原因を作っちゃうんです。
こんな風に答えがわからないと不安だから、自分たちの中に原因を作ってしまう、といったことが多かったですね。その不安との戦いが子育ての中で一番大変でした。
子育てにおいて不安は付き物ですもんね。今なんか特にインターネットでも簡単に調べられることで、かえって不安を感じている親は多いでしょうね。
そうですね。基本的にインターネットなどに載っていることってネガティブワードばかりなんですよ。1000人に1人の症状なんかが検索の1位になってたりして。
子育てをしていて不安なことを覚えているんですけど、毎日が不安ばかりだったわけではないんですよね。でもネガティブなことの方がインパクトが大きいので、子育てって不安だと強く感じてしまいがちですが、普段はそんなに不安に思うことはなかったです。

男性の育児休業の取得の必要性について

まだまだ男性で育児休業を取得する人は少ないですが、篠田さんは育休を取られましたか?
ファザーリング・ジャパン関西で事務局長を務めていたときに、3ヶ月間、育休を取得させていただきました。
もともと人事をやっていたので、育休とかの制度について人よりも詳しくて、育児休業の制度ができたときから、男女ともに取ることが出来ることを知っていたんですね。男性でも育休を取れることを知っていたから、長男が生まれたときにすごく育休を取りたかったんですよ。
ただ、長男、長女が生まれたときは、法律上で男女ともに育児休業の取得が認められていたものの、「母親か父親どちらかが育児休業を取得している場合は、もう一人の育児休業を認めない」と定められていて、どちらか一人しか育休を取ることが出来なかったんです。
そこで妻に、「俺、ちょっと育休取りたいんやけど!」と話したら、「私がフルで取ります!!」と言われてしまって・・・。
半分は残念だなと思って諦めたんですけど、もう半分は男性が育休を取るという前例のないことを上司に言う不安もあったので、妻が育休を取ると言ってくれて、少しほっとしました。
こんな理由で長男、長女のときは育休を取れなかったんですけど、次男のときに今の法律に変わって、男性も女性も同時に育休を取れるようになったので、3人目でやっと育休を取ることが出来ました。

3人目で育休を取られたときの子育ての様子

やっぱり、男性は育休を取りにくい意識があるもんなんですね。
それは、もちろんありますよね。だって、男性で育休を取りたい!なんていう人いませんでしたから。長男が生まれた2006年は、東京でファザーリング・ジャパンが生まれた年と一緒なんですけど、その当時はまだ男性育児が注目されていなくて、今のように「イクメン」という言葉が広まったのも、その後の2010年なんですよ。
だから、男性が育休を取るなんて言ったら、「何を言ってるの?」と呆れられるような時代だったわけです。もちろん「子どもに積極的に」という意識は持っていたんですけど、「男性が積極的に子育てをする」という意識は一般的には認知されていなかったですね。
女性は出産をして産休をした流れで育休を取ると思うんですけど、男性はいつ育休を取ればいいんでしょうか。
男性の育休は子どもが生まれた日から取得できるんですけど、必要に迫られることがないというか、プラスαという概念が大きいので、正直いつ取ってもいいんですよね。僕の場合も妻と一緒に育休を取っていたので、次男の世話をほとんど妻がやって、基本は家事や上の子たちの面倒を見ることをやっていましたから。
だから別に育休を取っても取らなくても、最近よく言われているワンオペ育児がどれだけ大変なのかを知ったり、子育てはずっと連続してあるものだということが分かったりすればいいと思うんですよ。
そういう風に育児に対して理解があって、仕事が終わってから家事や育児のサポートや奥さんのケアが出来てれば、わざわざ育休を取る必要もないと思いますね。仕事と育児を夫婦で分担して、お互いに納得したやり方であれば、どういった形でも良くて。男性の育休はそのなかの一つの形にしかすぎず、それに捉われる必要はないかなと思います。
なるほど。篠田さん自身はどうやって育児への理解を深めていったのですか?
それは常に話し合いをしていましたね。育児に対してわからないことだらけなので、「こういう場合ってどうするん?」「これであってる?」とか、面倒がられるくらいなんでも聞いてました。
そうやって会話をすることで理解を深めていけば、夫婦間の不協和音というか疑心暗鬼から生まれるイライラは無くなっていくのではないかと思っています。
だから、篠田さんのブログの「夫婦のせめぎ合い」がテーマの話も、夫婦での会話の積み重ねがあるからこそできるものだったんですね。
そうですね。ブログでは大体、ゲームを買いたい!という話ばかりなんですけど(笑)「このゲームを1万いくらで買ってもいいでしょうか、どうでしょうか!」みたいな感じで。まあ、勝手に買うんですけどね(笑)
そういう風に妻は嫌だと思っているけど、夫はしたいと思っているようなことをどうすれば認めてくれるのか、というのは話し合わなければならないですよね。だから、些細な話でも会話を積み重ねていくようにしています。

篠田さんの夫婦のせめぎ合いブログのドラクエ編

ブログでは、夫婦の会話や子育てについてや転職をされたときの話もされていますので、気になる方はこちらを覗いてみてください。
≪篠田厚志の理事長ブログ≫

女性の社会進出と男性育児が進む中で見えてくる課題

近年は少子化問題の対策として、女性の社会進出と同時に男性育児が推進されているように感じるのですが、篠田さんはどのようにお考えですか?
全くその通りで、少子化と女性の社会進出、男性育児はそれぞれ両輪の関係になっています。海外のデータでは働いている女性の割合が高いほど、出生率が高いと言われているように、子どもを自分たちで産み育てるだけの経済力があるということが大切なんです。その海外のデータがそのまま日本に当てはまるわけではないですが、少子化対策としても女性が社会に出て働くことは重要なんですね。
でも女性が働くとなると、今まで専業主婦だった女性に偏っていた育児や家事は誰がするのかという問題が生まれてきます。保育所に預けたら全て大丈夫なのかといえばそうではなくて、女性もフルタイムで働いているのに、帰ってきたら育児がすぐ始まるとなると、女性一人ではやっていけないですよね。
子育ての負担が女性に10割かかっているとしたら、3割、4割、理想としては5割でも、育児の負担を減らしてあげることが大切になります。そこで、男性の育児への参加が必要になってくるわけです。
こういった女性の活躍を阻害している課題を解決するために、いま積極的に行われている「働き方改革」というものが関わってくるんです。女性の社会進出のために女性の働き方を変えることはもちろん必要ですが、女性に偏っている育児や家事を男性もするためには、男性の働き方も変えていかなければならないんですよね。
そのために、働いている環境や残業が当たり前と思われている社会のあり方を変えていかなければなりません。結局、少子化も女性の社会進出も男性の育児参加も、どれか一つを解決すればいいという問題ではないんですよね。

様々な活動をされる篠田さんの父親としての生き方

チャンバラをされている篠田さん

篠田さんはNPOの掛け持ちをされていて、ファザーリング・ジャパン関西以外にも、NPO法人ゼロワンでチャンバラの活動も行われています。子どもも大人も楽しめるイベントをされていますので、気になる方はこちらから確認をしてみてください。
≪チャンバラ合戦~戦IKUSA~≫
男性育児の支援からチャンバラまで幅広く活動をされている、篠田さんの“生き方”についてもお話を聞かせていただきました。
篠田さんがNPOの掛け持ちやPTA会長など、様々な活動をされている理由を教えてください。
子どもにとって良い環境は一つじゃなくて沢山あるんです。だけど、もっともっと必要だと思うんですね。今はファザーリングとチャンバラのNPOだけですけど、以前はPTA会長も1年間やっていて、子どもの環境をよくするといった点では、様々な人々と関わりが大切だと思っています。
だから、これ以外にも他のNPOでサポートとして関わったり、多様な年齢の方との関りとして高校生の支援をしたりすることもあります。
自分のライフプランやライフスタイルというのは、仕事や結婚、子ども、趣味、とか様々なことがあって成り立っていると思うのですが、そのコンテンツが沢山あればいいなと思っています。
そういう生き方を目指しているということもあるので、NPOの掛け持ちや色んな会社やNPOに関わっているスタイルになっているのではないかなと思います。
また「子どものためにやりたいから」という気持ちだけで活動しているわけでもありません。どの企業や団体とのつながりも自分自身の人との繋がりから生まれてきているものだと思っています。
子どもを持つ親としては、自分が親としていかに楽しく仕事をしているのか、生きているのかということを子どもに見せることが、子育てとしても大事なことだと感じています。
活動をする中で意識をしている、「子どもを楽しく」とか「子どもを幸せに」とか、子どもを満足させるためには、自分自身の楽しさがないと成立しないと考えています。みんな自分自身の満足とか幸せをすべて捨てて、子どもの幸せだけを考える生き方は実現できないと思っているんです。
こういった思いを大事にしながら活動をしてきた結果が、今の自分の生き方に繋がっているのだと思います。

これから子育てに参加をする男性に向けてのメッセージ

篠田さんから子育てをする男性へのメッセージをいただきました

子どもの相手をするのが面倒だと感じる男性もいると思うのですが、そんな方への子どもとの付き合い方のコツはありますか?
お父さんが子どもの相手をするのが面倒くさいってよく言われますけど、子どもの相手は面倒くさくて当たり前ですよ。だって、子どもの遊びって全然面白くないですからね(笑)
でも、そんな人も子どもと関わることは好きだと思うので、子どもの遊びに付き合うのではなくて、自分の好きなことに子どもを巻き込めばいいんですよ!
例えば、釣りとかドライブとかサーフィンとか、カメラを持って写真を撮りに行ったりとか。自分の趣味や好きなことを子どもと一緒にして、お父さんが楽しそうにしていたら、子どもも楽しいし、それが子育てにも繋がると思うんですね。
だから、子どものためになることだけを考えて、自分がつまらないと思うことをするよりも、自分自身が楽しめることを考えるのも大事だと思います。
最後に、これからイクメンを目指す人に対して、経験者としてのアドバイスを教えてください。
まず、「イクメンになる」ということは子育てをすると少しニュアンスが違っていて、「子育てをしたい」という事であれば、子育てをすればいいだけなんです。でも、イクメンを目指すためには、先ほどの育児への理解の話にも繋がりますが、やっぱり夫婦の話し合いでしかないんですよね。
例えば、母乳をあげること以外の家事や育児は平等にできるということがイクメンだと思う人もいれば、子どもをお風呂に入れてくれるだけでいいと思う人もいるわけです。そんな風にお母さんたちの中でもイクメンの基準が違う中で、男性が自分で思っている基準で「俺、イクメン!」といっても、奥さんは白い目で見るだけです。
本当にイクメンになりたいと思っているのであれば、妻が何をどれだけやってほしいかということに答えることが必要なんです。だから、夫がイクメンかどうかの判断は妻にしかできないことなので、妻が夫に求めていることを話し合いで知ることが大切です。
やっぱり夫婦同士で会話をすることは大切なんですね。
そうですね。いろんなところでどんな人に話をしても、「夫婦の会話不足」という問題点にたどり着きますよね。
最初、会話をするのが難しければ、ホワイトボードにメッセージを書いておく方法でもいいんですよ。よく子どもとの会話でも使ったりするんですけど、「こうしたいと思ってます」とか「お父さんからのお願い」とか書いたりして。こんな風に書いておくと絶対に読んでくれるし、会話のきっかけにもなるじゃないですか。
だから、会話に困ったりとか時間がないときでも、ホワイトボードだったり、LINEだったり、何かしらの方法で会話を積み重ねていくことが大事じゃないかなと思います。
ようするに、夫婦で一緒に生活する中でお互いの満足度がどこにあるのかを、変わりゆくライフスタイルの中で日々、摺合せできることが、子育てをする上での肝となるんじゃないかと思っています。

さいごに

今回は、ファザーリング・ジャパン関西の篠田理事長に子どもや奥さんとの関わり方や父親としての生き方についてお伺いしましたが、NPOとしての活動だけではなく、自分自身の生き方として子どもと関わることや人と関わることを大事にされていることがわかりました。
特に自分自身が楽しめる子育てをすれば、子どもも楽しいし、笑顔になってくれるということを大切にされています。これから子育てをする男性はぜひ参考にしてください。
また少子化や女性の社会進出など社会全体の課題においても、男性育児は重要な要素になっていることがわかりました。これからの日本を考える上でも男性の子育ての必要性は必然と高くなってくるのではないでしょうか。
nanairoとしても、男性育児を含めた子育てがより豊かになるようなコンテンツをさらに増やしていきたいと思っておりますので、篠田理事長のファザーリング・ジャパン関西としての今後の活動に注目していきたいと思います。
≪ファザーリング・ジャパン関西の公式サイトはこちら≫
男性育児の子育て支援についての活動についてもインタビューをしていますので、こちらもぜひ一読してみてください。

[blogcard url=”https://nanairo.jp/childcare/ikuji/childcare_13681/” title=”ファザーリング・ジャパン関西×nanairo|篠田理事長に“男性育児における子育て支援”について伺いました!” content=”世間に定着しつつある、子育てをする男性、いわゆる「イクメン」。2006年に設立された、NPO法人ファザーリング・ジャパンは、イクメンという言葉が広まる前から、「Fathering=父親であることを楽しもう」という意識を増やすための活動をされている団体です。また、ファザーリング・ジャパンが執筆された「新しいパパの教科書」はパパ向けの育児本として、高い人気を誇っています。”]