MENU

男性の子育て支援とは?「ファザーリング・ジャパン関西」が考える“育児の楽しみ方”

世間に定着しつつある、子育てをする男性、いわゆる「イクメン」。
2006年に設立された、NPO法人ファザーリング・ジャパンは、イクメンという言葉が広まる前から、「Fathering=父親であることを楽しもう」という意識を増やすための活動をされている団体です。
また、ファザーリング・ジャパンが執筆された「新しいパパの教科書」はパパ向けの育児本として、高い人気を誇っています。
今回、インタビューをさせていただく、NPO法人ファザーリング・ジャパン関西は、もともとファザーリング・ジャパンの関西支部として結成されましたが、2013年に独自の団体として独立し、関西一円でセミナーやイベント活動をされています。
そんなファザーリング・ジャパン関西の理事長であり、自身も3児の父親である篠田さんに、男性の子育て支援として行われていることやこれからの取り組みについてお伺いをしてきました!
 

目次

ファザーリング・ジャパンが設立された経緯と目的は?

ファザーリング・ジャパンの設立についてお伺いしました

まず、ファザーリング・ジャパンが設立された経緯について教えてください。
2006年に、今も代表を務めている安藤が立ち上げました。彼自身、子どもが好きで、一人目の子どもが産まれるときに、絵本を100冊準備したり、すごく子育てに関わろうとしていたんです。自分自身はそうやって準備をしていたけど、同じ保育所に通う他のお父さんたちが、子育てに全く関りがない、興味がないといった人が多いことに、疑問を感じていたようです。
あるとき、保育所のイベントで子どもたちが集まって絵本を読んでいるときに、みんな大笑いしているのに、何人かうつむき加減で全然笑ってなくて、「なんでこんな面白くて、みんな笑ってるのに・・」という疑問をもったときに、その子どもの後ろで肩を持っているお母さんがつまらなさそうに表情無く、子どもに触れていたことに気づいて。その瞬間、親の笑顔が子どもの笑顔に直結すると感じたんですね。
笑っていないお母さんのそばには、笑っていないお父さんがいる。夫婦ともに笑ってなくて、そんな夫婦の子どもはやっぱり笑っていない。
そんな光景を目の当たりにして、夫婦、特にお父さんの笑顔を増やしていくことが、子どもたちの笑顔につながっていくんじゃないか、ということが団体設立の始まりでした。
ファザーリング・ジャパン関西としては、いつ設立されたのですか?
東京でファザーリング・ジャパンが設立された当初は、「男性育児」なんてまだ注目されていなかった時代だったので、地道に取り組みを重ねていました。そんな中、2010年に流行語大賞で「イクメン」というワードがノミネートされてからは、「子育てをする男性」というイメージが一気に広がったんですね。
当時の子育てのイベントというのは、子育て支援センターや保育園でも、お母さんや保母さんといった女性だけがほとんどだったのですが、次第にお父さんや男性向けのイベントが欲しいというニーズが出てきた結果、全国各地で講演やイベントを展開していけるようになりました。
そうやって全国で活動をしている中で、徐々に関西からの依頼も増えていき、2013年に独自のNPO法人としてファザーリング・ジャパン関西を設立することになりました。

ファザーリング・ジャパン関西の活動内容は?

ファザーリング・ジャパン関西の活動について教えてください。
現在の活動については、コンテンツを挙げるといくつも出てくるのですが、大きく分けると、
  • <啓発活動としての講演会やセミナーの運営>
  • <お父さん同士のネットワークを広げる活動>
  • <次世代育成のプログラム>
といった3つのことを柱として行っています。

ファザーリング・ジャパン関西のパンフレット

その中でも今、一番大きな活動としては、行政が少子化対策のひとつとして、「男性の子育て支援」に力を入れてきているので、そのコンテンツやノウハウの提供をするといったことを主に行っています。
その他は、子育てをしたいと思っているお父さんに対して、子育てのメリットを感じてもらえるようなスクール事業も行っています。その中では、講演会やセミナーといったものだけではなく、実際の遊び方を教えるといった活動をしています。
また、お父さんたちのネットワークを広げていくためのプログラムとしては、「パパクエスト」という、謎解きとか宝探しとかをお父さんが考えて作って、子どもと一緒に遊ぶイベントの運営もやっています。
さらに3年前からは、「パパティーチャー」といって、お父さんと子どもが一緒に学校へ行って、生徒や学生の前でライフプランや子育ての話をするといったプログラムも行っています。そこでは、生徒に将来のことを自分で考えてもらう機会にしたり、実際に子どもと遊んでもらって、子どもと関わる機会にしたりと、学校の授業の一環としてさせてもらっています。
お父さんと子どもを巻き込んで、学生の授業も行っておられるんですね!実際に私たちが学生のときにこんな授業があればいいなと思いました。
これは本当に、みんなが言いますよね。啓発活動とかは昔からあったんですけど、イベントとか次世代育成のプログラムは無くて。僕らファザーリング・ジャパン関西のメンバーって、やっぱり当事者が多いんですよ。だから、自分たちが「こんなんあったらよかった!」と思うことを、実際に事業化させて展開するんです。
そうすることで、自分自身も当事者になってあればよかったと思ったことを実現できていることが嬉しいし、こういった観点で行った取り組みが、次の世代に繋がっていくんじゃないかなと思っています。

ファザーリング・ジャパン関西では、この他も様々な取り組みをされていますので、ぜひ一度ホームページも覗いてみてください!
ファザーリング・ジャパン関西の公式サイト

実際のイベント内容や参加されたお父さんの声は?

最近の活動としては、具体的にどういったことをされたのですか?
最近は、段ボールを使ったイベントを行うことが多いですね。例えば、カプラという小さい積み木のおもちゃをモチーフにして、段ボールを積み重ねていく遊びなんかをしています。

段ボールを使ったワークショップの様子

やっぱりお父さんたちが喜ぶことを考えると、普通のことをしたがらないんですよね。絵本みたいなお母さんと同じようなことをやりたがらないし、やったとしても“面白くない”と思うんですよ。「男がそんな絵本なんて読むん?お母さんが読んだらええやん!」みたいな感じで。
最初はそういった男性にどういった切り口で攻めるのかということを考えていました。その中で、遊びをするときは、すごく小さくするか、すごく大きくするか、両極端の振れ幅を作るとお父さんが喜んでくれることに気づいたんです。
例えば、家で普通に積み木で遊んでいても面白くないと思うんですよ。でも、段ボールを使ってこんなに大きいものができると、やっぱりちょっと面白くなるんですよね。逆に、ナノブロックのようなのも同じです。マニアックな小さいがゆえに難易度があがってハマっちゃうんです。
こういったように、遊び方一つでもお父さんが喜ぶことを考えながら、イベントを展開しています。
実際にイベントに参加されたお父さんからは、どういった声を聞くことが多いですか?
子育てをどんな風にしたらいいかわからなかったけど、こういう方法があるのか、という意見が多いですね。僕らは当たり前にやっているから気づかないけど、初めて子育てをする人は子育てについて学ぶ機会もないので、本当にわからないんですよね。そういう情報はイベントやセミナーを通して共有していくことで、できる人たちは増えていくと思っています。
あとは、段ボールや新聞を使った遊びなんかは、本当に子どもが喜ぶんですよ!「こんな子どもって笑うんや!」とか「こんなに汗をかいてはしゃぎ回るのか!」みたいに、そんな子どもの姿もあまり普段は見られないんですね。子どもを連れて行っても、近所の迷惑になるから暴れさせないとか、公園行っても怪我をするから走らせないとか、といったこともよくあるので。
だから、子どもに対してお父さんたちが、普段見せられないようなものを見せてあげると、子どもが持っている限界というものは、自分が思っている以上にあるということを知れるので、すごく刺激になると思っています。

新聞紙を使った「親子でワイルド遊び」の様子

でも本当に今の子どもたちは昔に比べて遊ぶ場所が少ないですよね。
そうですね。これはよく言うんですけど、昔は家の目の前が野球場だったわけなんですよ!別に人の家にボールが当たろうが気にしないし、ベランダの中にボールが入ればホームラン!とか言って、気兼ねなく遊んでいたんですね。でも今は、何をやっても怒られてしまうでしょう。
近所やまわりの人との関係性がないと、やっぱり野球をしてても危ないと言われたり、バスケットボールをドリブルさせてるだけでうるさいと言われたり・・・。
子どもが何気なくやっていることなのに、大人がそういう風に言ってしまうと、世知辛い世の中になったと感じてしまいます。
その通りですよね。だから、普段できないようなイベントをやると、やっぱり子どもたちはストレス発散にもなりますし、楽しいんでしょうね。
実際、子どもって何か用意してあげたら、本当に自由に遊べるんですよね。特にルールがなくても、自分たちでルールを作って遊んだりできるんですけど、今はどんなことも答えが用意されすぎてて、出来上がる既定路線みたいなのが作られているように感じます。
でも本当は、もっと自由にさせたいけどできない、というジレンマを抱えながら子育てをやっている人が多いんですよね。だから、イベントを企画するときは、ある程度決まりを作りながらも自由に遊べるような、上手なバランスを意識をしています。

現在、企画されているイベントはありますか?

父子ツアーinシアトルのイメージ

普段、お父さんたちのネットワークを広げていくために、父子ツアーといって、お父さんと子どもだけで旅行とかキャンプに行くプログラムも行っているんです。それの一環として、今度は3組だけ、アメリカのシアトルにお父さんと子どもたちを招待するといった企画をしています。
今は、エピソードを書いてもらって応募されたものを審査しているところで、選ばれた3組をシアトルにお連れして、英語だけの世界で親子だけで1週間暮らしてもらい、父子だけの特別な感動体験を提供しようという内容です。
目的としては、お父さんと子どもだけなんですけど、自分と同じ世代で同じ境遇の人との横のつながりを作ってもらおうと思っていて。
アメリカとかに行くと、みんなが一緒じゃないと暮らしていけないんですよね。仲良くしないと一人ぼっちになってしまうので、自然と横のつながりが生まれるようなプログラムを仕掛けています。
これは絶対にお父さん同士で喋りますし、仲良くなりますよね。よく子どもは仲良くなってるけど、お父さんひとり取り残されるといった心配はないですね。
本当に、もう仲良くなるしかないですよね。やっぱりある種、非日常的なとこに行くだけで、テンションが上がるし、口も軽くなるので、お父さんの横のつながりや親子の関係づくりをじっくりと広げていけたらと考えています。

ファザーリング・ジャパン関西のこれからについて

ファザーリング・ジャパン関西として、今後どういった取り組みをしようと考えていますか?
これからやりたいと考えていることの一つは、PTAを支援できる仕組みを作りたいと思っていて、これから、様々な調査やモニタリングの実施を考えています。
PTAは僕が去年やっていたこともあるのですが、PTAをやった人は、はじめは嫌々やりながらも、やってみたら楽しかったという意見が多いんですよ。僕も実際に楽しかったんですけど、それってPTAをやった人しかわからないんですよね。
やっていない周りの人は、PTA会長とかは絶対にやりたくない、と思っている人が多くて。だから、PTAを知らない人に、いかにしてPTAの楽しさを伝えられるような仕掛けができるのかといったことを展開していきたいと思っています。

これからの取り組みについて語る篠田さん

もう一つは、子育てをするうえで、子どもたちにどういった人になって欲しいかと考えたときに、「沢山の人を巻き込めるような人」になって欲しいと思っていて。他人を巻き込むっていうことは、ようするに人に助けてもらうってことじゃないですか。
それは、普段から周りの人に色んなサポートを受けることが、“弱み”じゃなくて“強み”なんだという価値観のパラダイムシフトが重要だと感じています。
日本人は特に、人に頼らない生き方を求められるような育て方を受けてきた人が多くて、人の手を借りることに抵抗がある人が多いと思うんですよ。例えば、電車乗ってて席を変わるときなんかも、妊婦さんやおばあちゃんに声かけても、いいです、と断られてしまうことが多いですよね。
最近は、そういったように人に頼ることをしない風習に違和感を覚えていて。それはアメリカに行ったときに感じたことなんですけど、アメリカって何も言わなくてもみんな手伝ってくれるし、みんなそれを受け入れるんですね。そういった人に頼った生き方って、自分に力がないのではなくて、周りの人が手伝ってあげようと思える人だからこそ、手伝ってもらえると思うんです。
だから、なんでも自分だけでやるのではなくて、人からのサポートをもっと肯定的に受け止められることが大事だと思っています。必ず周りには助けてくれる人たちがいるので、どんなことでも「周りを巻き込んだ生き方」というか「一緒に色んな支援をしてもらえる生き方」をきちんと受け止められる価値観を持った子どもたちが増えればいいなと思っています。
ありがとうございました!これからの活動に期待をしています。

さいごに

今回は、子育てを楽しむ父親を増やす活動として、様々な取り組みについて、詳しく教えていただきました!
特にイベント企画においては、非日常を味わうことで、さらに親子の関係を深めたり、お父さん同士のつながりを構築するような内容になっていることがよくわかりました。
篠田理事長をはじめ、ファザーリング・ジャパン関西のメンバーは、自分自身が父親だからこそ出来ることを考え、活動をされていることを強く感じるインタビューとなりました。
これからは、PTA活動の支援や子どもたちの新しい価値観を作るための取り組みも行っていかれるので、今後の活躍に注目していきたいと思います!

また、篠田さん自身の子育てや育休について、父親としての生き方のインタビューもさせていただきましたので、ぜひこちらも一読ください!
[blogcard url=”https://nanairo.jp/childcare/ikuji/childcare_14017/” title=”楽しめる子育てから、子どもに笑顔を。FJK理事長の篠田さんが考える「父親としての生き方」” content=”「笑ろてるパパがええやん!」を合言葉に、男性の子育て支援を行っている、ファザーリング・ジャパン関西。そこで理事長を務める篠田さんは、12年間働いた公務員という安定した職を捨て、30代でNPOの道へ。自身は3人の子どもの父親として子育てをしながら、他のNPOの活動やPTA会長なども務め、お父さんと子どものより良い環境づくりのための活動を行っておられます。”]