「子どもが生まれたあと重い病気が見つかり、医療費負担が大きくなった…。」
特に、小児がんのような疾患は長期の治療が必要となり、医療費が高くなります。このような小児慢性特定疾患の場合、医療費助成を受けられることをご存知ですか?
対象の病気は限られますが、子どもに万が一病気が見つかったときには、こういった助成を受けて医療費の負担を軽減することが可能です。
小児慢性特定疾患の医療費助成とは?
小児慢性特定疾患の医療費助成とは、治療期間が長く治療費が高額になりがちな特定の疾患に対して、医療費の自己負担分の一部を補助してくれるもののことを指します。
目的は、子どもの健全な育成だけでなく、疾患の治療法の確立と普及、そして家庭における医療費負担軽減など。小児がんや慢性的な呼吸器疾患といった病気の子どもは、この助成を受けることができます。
小児慢性特定疾患の対象者は?
対象者は18歳未満の子どものうち対象の小児慢性特定疾患にかかっている者ですが、18歳以降も引き続き治療が必要と認められる場合、20歳までが対象となります。
また、小児慢性特定疾患には、
- 慢性に経過する疾病である
- 生命を長期に脅かす疾病である
- 症状や治療が長期にわたり生活の質を低下させる疾病である
- 長期にわたって高額な医療費の負担が続く疾病である
といった定義があります。
対象の病気は?
小児慢性特定疾患は全部で14種類(704疾病)に分類されます。それぞれ、対象となる疾患が細分化されているので、参考にしてみてください。
(1)悪性新生物
- 白血病(リンパ性・骨髄性など)
- リンパ腫、固形腫瘍、中枢神経系腫瘍
など
(2)慢性腎疾患
- ネフローゼ症候群
- 慢性糸球体腎炎
- 慢性尿細管間質性腎炎
- アミロイド腎
- 尿細管アシドーシス
- ギッテルマン症候群
- バーター症候群
- 慢性腎不全
など
(3)慢性呼吸器疾患
- 気道狭窄
- 気管支喘息
- 間質性肺疾患
- 先天性中枢性低喚起症候群
- 突発性肺ヘモジデローシス
- リンパ管腫、リンパ菅腫症
- 先天性横隔膜ヘルニア
- 先天性嚢胞性肺疾患
など
(4)慢性心疾患
- 洞不全症候群
- 脚ブロック
- 多源性心室期外収縮
- 心房細動、心室細動
- 川崎病性間動脈瘤
- 虚血性心疾患
- 三尖弁閉鎖症
- 大動脈狭窄症
など
(5)内分泌疾患
- 下垂体機能低下症
- 成長ホルモン不全性低身長症
- 成長ホルモン不応性症候群
- 高プロラクチン血症
- 抗利尿ホルモン(ADH)不適合分泌症候群
- 甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症
- 高インスリン血症低血糖症
- ビタミンD依存性くる病
など
(6)膠原病
- 膠原病疾患
- 血管炎症候群
- 再発性多発軟骨炎
- スティーヴンス・ジョンソン症候群
など
(7)糖尿病
- 1型、2型、その他の糖尿病
(8)先天性代謝異常
- アミノ酸代謝異常症
- 有機酸代謝異常症
- 脂肪酸代謝異常症
- ミトコンドリア病
- 糖代謝異常症
- ライソゾーム病
- ビタミン代謝異常症
など
(9)血液疾患
- 巨赤芽球性貧血
- 無トランスフェリン血症
- 自己免疫性溶血性貧血
- 遺伝性溶血性貧血
- メイ・ヘグリン異常症
- 血小板機能異常症
など
(10)免疫疾患
- 複合免疫不全
- 免疫不全を伴う特徴的な症候群(ウィスコット・オルドリッチ症候群、ブルーム症候群など)
- 液性免疫不全を主とする疾患
- 原発性食細胞機能不全症および欠損症
- 自己免疫異常
- 後天性免疫不全症(HIV感染)
など
(11)神経・筋疾患
- 脊髄髄膜瘤
- 脳形成障害(滑脳症、先天性水頭症など)
- ジュベール症候群関連疾患
- 神経皮膚症候群
- 早老症
- 遺伝子異常による白質脳症
- 頭蓋骨縫合早期癒合症
- もやもや病
- 筋ジストロフィー
- 難治てんかん脳症
- 先天性感染症(ヘルペスウイルス、トキソプラズマなど)
- 重症筋無力症
(12)慢性消化器疾患
- 先天性吸収不全症
- 微絨毛封入体病
- 炎症性腸疾患
- 新生児ヘモクロマトーシス
など
(13)染色体または遺伝子に変化を伴う症候群
- コフィン・ローリー症候群
- ソトス症候群
- 歌舞伎症候群
- 色素失調症
など
(14)皮膚疾患群
- 眼皮膚白皮症
- 先天性魚鱗(ぎょりんせん)
- 表皮水疱症
- レックリングハウゼン病
など
医療費助成の自己負担額は?
小児慢性特定疾患の医療費助成を受ける場合、医療費の一部を自己負担し、それ以外部分を助成してもらえます。
自己負担額は医療費の2割となっていますが、自己負担額には上限が設けられているため、それを上回る分は助成されます。
また、自己負担額は世帯の所得に応じて負担額が異なります。
※重症とは、高額な医療が長期的に継続する者、現行の重症患者基準に適合する者いずれかに該当する人を指します。
たとえば、眼や聴覚機能に著しい障害がある人や立ち上がることができない程度の障害がある人、悪性新生物の転移または再発があり、治療が濃厚な人、血液透析または腹膜透析などを行っている人などが該当します。
医療費助成の申請方法は?
小児慢性特定疾患の医療費助成を受けるには、まず指定医による診断書が必要になります。
指定医とは、小児慢性特定疾患の診断や治療を行うお医者さんのことで、都道府県知事や指定都市・中核市の市長によって指定されています。ほかの病院で診断書を出してもらっても、申請できないため注意しましょう。
指定医が所属する医療機関は、都道府県の窓口で確認できます。
診断書を受け取ったら、必要書類と合わせて都道府県の窓口に申請を行います。
必要書類には、
- 小児慢性特定疾病医療費支給認定申請書
- 小児慢性特定疾病医療意見書
- 住民票
- 課税状況を確認できる書類(市町村税(非)課税証明書など)
- 健康保険証のコピー
- 医療意見書の研究利用についての同意書
などがあります。
申請後は、都道府県や指定都市・中核市で審査が行われ、認定されると「医療受給者証」が交付されます。
交付されたら、それを持って指定医療機関を受診し、治療を受けることが可能です。
また、医療受給者証の有効期間は、原則として申請日から1年。1年ごと更新申請が必要ですので、気をつけてください。
まとめ
生まれてくる子どもが健康であることが何よりですが、万が一難病と呼ばれるような病気にかかっていた場合、こういった助成制度を利用すると医療費負担を軽減することができます。
特に、がんのような大人でも治療に時間とお金がかかる病気の場合、健康保険ではまかないきれません。
もし、上記したような疾患に該当する場合、都道府県で指定医療期間を尋ね、受診してみてください。
また、特定疾患だとわかったとしても、現在は医療技術も進歩していますし、早めに専門の医療期間を受診することで早期回復が見込める場合もあります。
原因不明の病気でも死亡率は低いことがありますので、早めに指定医と相談し、治療法を相談してみましょう。