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亡くなった人の「準確定申告」をするにはどうしたらいい?

 

何らかの形で収入を得ている人は、それが一定の金額以上であり、非課税の条件を満たす人以外なら必ず所得税がかかります。これは亡くなった方についても例外ではありません。

では、もう本人が確定申告できない状況になっている中で誰が、どのように処理するのでしょうか?

このページでは、亡くなった方の「準確定申告」の方法について紹介しています。

目次

亡くなった方の所得分は「準確定申告」を行う

準確定申告」ってなに?

亡くなった方に何らかの所得があった場合、死亡年の分の所得については何もしなければ未申告の状態になってしまいますので、代理人が確定申告しなければなりません。

前年分の所得について申告しないまま1月1日から3月15日までの間に亡くなった場合は、前年分についても併せて確定申告が必要です。

ただし、サラリーマンは原則として勤務先で年末調整を受けており、死亡の場合も勤務先で処理されますので不要です。

ただし、医療費控除などを受けたい場合や、年間収入金額が2000万円超えの会社員については申告しなければならないことに注意しましょう。

誰がやらなきゃいけないの?

亡くなった人の代理人で準確定申告をする義務があるのは法定相続人(民法で定められた相続人)や包括受遺者(「遺産の〇分の〇を遺贈する」など、具体的な目的物を指定せずに定められた遺産承継者)です。

多くのケースでは複数の相続人がいるはずですので、2人以上の場合は全員が確定申告の書類に連署し、それぞれ具体的に相続分も記載することになります。申告の用紙は通常の確定申告書を使いますが、そこに手書きで「準」と記入します。

もし、全員が1枚の書類に連署できないような事情がある場合は各人が個別にすることもできます。

その場合は、申告した相続人は他の相続人に対して申告内容を通知しなければなりません。

相続人の中に「相続放棄」をした人がいる場合は最初から相続人にならなかったものとみなされるため準確定申告の義務はありません。

ただ、中には「他の相続人に対して遺産がいらないという意思表示をした」ということを相続放棄したと勘違いしている人がいます。

相続放棄というのは家庭裁判所に所定の書類を提出し、プラスの財産、負債をセットで放棄するという手続になります。

遺産がいらないという意思表示はあくまでも「遺産分割協議に合意した」ことにすぎないので相続放棄にはなりませんからきちんと区別しましょう。

いつまでにやらなきゃいけないの?

準確定申告の期限は、「相続開始を知った日の翌日から4カ月以内」です。通常であれば死亡日ということになるでしょうが、長期間音信普通だったなど各種の事情で死亡より期間が経過してから相続人が死亡を知ったのであればそこから起算することになります。

前年の所得についてまだ申告せずに3月15日までに亡くなった場合にも、死亡を知ってから4カ月以内に準確定申告すればよいのであって、3月14日に亡くなったら翌日までにしなくてはならないということはありません。

ただし、3月15日の申告期限を過ぎてしまっている状態で前年の所得についての確定申告を本人がせずに死亡した場合はすみやかに申告しなければならないことに気をつけて下さい。

準確定申告に必要な書類と、その書き方

準確定申告で必要な書類について

まず、必ず必要になるのは確定申告書です。この様式は全国どこでも同じですので、準確定申告をする先の税務署でなくてももらうことができます。国税庁ホームページからオンラインで取得することもできます。

給与所得者や年金受給者は申告書A様式、不動産事業や個人事業者は申告書B様式となります。なお、相続人が2人以上いる場合は相続分をわかりやすく示さなくてはならないため、申告書と併せて付表の提出も必要になります。

その他の書類はほぼ通常の確定申告と同様になります。社会保険料、生命保険料、小規模共済掛金などの控除証明書、医療費控除を受けられる場合はレシートか医療費の明細がわかる書面など、受けられる控除を漏らさず受けるために必要なものを準備しましょう。

医療費については、あくまで死亡日までに支払ったものが対象になるのであり、死亡後に相続人が支払った治療費や入院費は被相続人(死亡者)のためのものであっても対象にはなりません。

準確定申告をする書類の書き方

では、具体的に書類を記入する際のポイントをまとめてみましょう。

上記のように「確定申告書」というタイトルのところに「準」と書き加えます。なお、申告書には申告者の氏名を記入する欄がありますが、ここには「被相続人 〇〇〇〇」という形で亡くなった人の氏名を記入しますが、氏名欄の押印はいりません。

なお、付表については、まず「平成〇年分の~」というタイトル部分に申告対象となる年を記入します。

そして、「死亡した者の納める税金または還付される税金」の欄には、還付の場合には数字の頭に▲をつけます。

そして、相続人、包括受遺者全員の住所、氏名、相続分を記載します。「相続分」の欄には法定・指定に〇をつけるようになっていますが、民法上決められた割合通りにするのであれば「法定」、遺言の指示に従う場合は「指定」となり、具体的な割合を記入します。

なお、納税しなければならない場合は相続分に従った割合で各人に納付義務がありますのでその金額を記入します。

還付の場合、受取割合を協議で決めていればそれでもかまいませんが、決めていなければ上記の相続分に応じた割合を記入します。

準確定申告をする際に注意したいポイント

亡くなった人の住所の管轄の税務署へ提出する

準確定申告は亡くなった人の住所地の管轄税務署に出向いて行わなければなりません。

時々、間違えて相続人の住所地の税務署に申告してしまう人がいるようですので注意しましょう。

亡くなった後に支給があった給与の扱い

亡くなった後に支給された給与については支給期がいつまでに来ていたかによって扱いが異なります。

もし、死亡時までに支給期が到来していたものは所得税が源泉徴収されて、会社によって死亡退職の際に年末調整が行われます。準確定申告の際にはこれは給与所得の扱いになります。

死亡時までに支給期が到来していないものについては「所得」としての扱いではなく、他の不動産や預貯金などと同じような承継財産の扱いとなり、「相続税」の課税対象となります。

準確定申告はあくまで所得に関するものですので、承継財産については準確定申告の対象に含める必要はありません。 

死亡後3年経過後に支給が確定したものは、その支給を受けた相続人等の「一時所得」として扱われるため、受け取った人の所得税の課税対象になります。

納税の期限は申告の期限と同じ

亡くなった人の所得税の納付期限は準確定申告の期限と同じであり、故人の死亡を知った日から4カ月となります。

遅れた場合は延滞税がかかるので必ず忘れないように納付しましょう。

相続財産の確定申告は必要?

「所得」ではなく「継承」という扱いになる分は不要

上記に述べたように、準確定申告の対象になるのは「所得」として扱われるお金です。

被相続人が持っていたものを相続人が引き継ぐ場合は「承継財産(=相続財産)」ですから、「相続税」として、所得とは別の体系で課税されることになり、準確定申告の対象とはなりません。

相続税については、相続開始を知ってから10カ月以内に申告、納税をしなければならないことになっています。

ただ、これは全員がしなければならないのではなく、基礎控除(3000万円プラス相続人の数×600万円)を超えない財産であれば申告義務そのものがありません。つまり、比較的富裕な家庭にかけられる税金といえるでしょう。

自分のケースが基礎控除を超えないかどうか判断するには相続財産のトータル金額を正しく計算しなくてはなりません。

相続財産にあたるのは、死亡時に被相続人の名義になっていた不動産、預貯金、株式、車両など、金銭的価値を持つあらゆる財産です。

なお、被相続人が亡くなった瞬間に相続人の固有財産となる「死亡保険金」「死亡退職金」といったものは、民法上の相続財産にはならないため遺産分割の対象ではないのですが、税法上(相続税を考慮する上)では相続財産に含めて計算することになっています(みなし相続財産)。

また、相続人1人あたりの控除が死亡保険金500万円まで設定されているなど、考慮しなくてはならない点もあります。

所得税の準確定申告までは税務署でアドバイスを受ければ自分でできないこともないでしょうが、相続税の計算は非常に複雑で、自分でやるのはかなりハードルの高いものです。

ここで申告の金額を間違えると100万円から1000万円単位での損失を被ることもありますので、相続税申告が必要な家庭は極力、税理士に任せるべきといえます。