皆さん産業保健師といった仕事をご存じでしょうか。産業保健師という職種自体を知らない方や名前は聞いた事があるが実際の業務内容や役割など中身までは知らない方がほとんどではないでしょうか。
ここでは各種保健師の役割から男性産業保健師における現状、病院勤務との違いについてお話させていただきます。
皆さん産業保健師といった仕事をご存じでしょうか。産業保健師という職種自体を知らない方や名前は聞いた事があるが実際の業務内容や役割など中身までは知らない方がほとんどではないでしょうか。
ここでは各種保健師の役割から男性産業保健師における現状、病院勤務との違いについてお話させていただきます。
平成26年度看護協会の調べでは、現在、全国には約59000人の保健師がいるといわれています。
その中で、保健師の半数以上が市区町村の自治体勤務であり、企業で働く産業保健師の数は保健師全体の約0.8%程度と言われています。
企業で働く男性産業保健師は更に限局され0.25%程度であり比率でみてみますと400人の女性産業保健師の中に男性産業保健師が1人程度と非常に少ない現状であることがわかります。
保健師は女性の職種といった強いイメージが現在も抜けきれていませんが平成5年の法改正以降、男性保健師の数は現在まで右肩あがりで上昇を遂げています。厚生労働省のデータによりますと平成8年の男性保健師は44人であるのに対し平成24年時点では730人まで上昇。
現在、新たな行政報告書、統計は算出されておりませんが男性保健師の数自体は間違いなく上昇しています。それに比べ、一般企業で働く男性産業保健師の数は浸透していないのが現状で全国的にみても男性産業保健師は数えられる程度の人数しかいないと言われています。
前述にもあるように現在の状況だけみれば、まだまだ女性産業保健師の需要と供給のほうがはるかに高いです。企業によっては男性の多い企業の場合、男性保健師を優遇し採用する会社もあるようですがこのようなケースは稀で採用のほとんどが女性保健師といった現状にあるようです。
産業保健師自体の企業募集も少なく、その中で男性産業保健師の就職は更に倍率も高くなりかなりの難関といっても過言ではありません。
一般的に男性産業保健師も今後、需要が増えてくると言われていますが男性産業保健師における問題も懸念されており浸透するにはまだ時間がかかりそうです。
私の知人(男性)も、産業保健師を目指して様々な会社の面接を受けていましたが大手企業の男性保健師採用は厳しかったようで現在は行政保健師として働いています。
上記のような現状からも男性産業保健師の需要と供給は現段階ではかなり低いと考えられます。
ここでは行政保健師と産業保健師の業務内容、役割の違いについてお話しさせていただきます。
行政保健師とはいわゆる行政で働く保健師の事を指します。都道府県や市町村が設置する保健所や公的な施設での勤務となり公務員扱いとなります。産業保健師と違い入職するにあたり公務員試験に合格しなければならないことが大きな違いといえるでしょう。
公務員という職の安定から保健師の約70%が行政保健師として活動しており人気も高いようです。
ここで一つ注意書きになりますが公務員採用試験では年齢制限が設けられている地域も多い為、勤務を希望する市区町村や勤務先の受験要網や自治体の試験案内で事前に確認しておく必要があります。
地域住民の健康管理と衛生管理、病気の予防等が主な役割となります。
その他の事業として人工動態統計や地域保健に関わる統計の作成、食品衛生、伝染病の予防等があります。さらに児童福祉法においては障害のある子どもの療育にかかわるとされています。
保健センターと近い関係にありますが大まかに分けますと保健センターは地域の健康づくりを中心とした事業であるのに対し保健所では公衆衛生を中心とした事業といった違いがあります。
介護予防サービスの計画作成や、高齢者やその家族からの相談窓口を基本業務とし高齢者の総合窓口のような役割を担っています。
又、高齢者の支援だけでなく地域のケアマネージャーと円滑に業務を遂行できるよう情報提供や各種機関との連携が重要視されます。現場での医療行為はほとんどありませんが医療の知識だけでなく保険制度や介護全般の知識を必要とされます。
老人保健施設とは主に、医療ケアやリハビリを必要とする要介護状態の高齢者を介護する施設です。その為、上記のような事業と違い患者に直接関わる業務(療養の世話)が主となります。
保健師の役割としてはバイタルサインのチェックや服薬管理、診療の補助といった患者管理が大きな役割となっています。又、在宅に向けての退院指導や在宅退院に向けてケアマネージャーとの連携も必要となってきます。
医療行為は比較的少なく健康管理が主な業務となります。
産業保健師とは民間の企業で働く保健師の事を指します。基本的には、企業の医務室や勤務管理室などに常駐し、産業医とともに社員に対する応急処置や健康指導をおこないます。
産業保健師の主な役割としては従業員の健康維持・増進、健康で安全な職場づくり等の保健活動が中心となります。時期によっては予防接種や健康診断を行っています。現在、重要視されている活動としては生活習慣病の予防や禁煙指導など企業によっては予防教室を定期的に開催しているところもあるようです。
又、産業保健師は就労者の健康管理だけでなく精神的サポートや子育て支援等、仕事内容としては多様化しており従業員のトータルコーディネーターとしての役割を担っています。
産業保健師の平均月収は25~30万円前後、年収にして400万後半~500万円前半と言われています。ブランクを除いては男女間における給料の有意差はみられないようです。
しかし、ここで押さえておきたいポイントは、産業保健師は市区町村に勤務する行政保健師や学校保健師とは異なり一般企業での勤務となる為、就職先によって待遇や処遇が大幅に違うことです。
就業した企業の従業員と同じ福利厚生を受けることができ給料も他の保健師と比較し高い水準にあることから人気が高いようですが経営状況や経済動向、景気の影響によっても給料や年収は左右されます。企業の経済状況によっては減給やリストラといったリスクもあるようです。
一概には言えませんが基本的に給料面では病院勤務より下回るといったケースが多いようです。ある転職サイトに産業保健師の給料事情を尋ねたところ前職が病院勤務をされていた方のほとんどが給料は下がっているとの事。夜勤がない事や職種手当がつかない事(企業によってはつくところもある)、前職でのキャリアが給料に反映されないことが要因のようです。
それは企業にできるだけ長く務める事です。これも企業によって様々ですが基本的に毎年の昇給額は病院勤務の看護師に比べ産業保健師のほうが高い傾向にあります。その為、長く働けば働くほど病院勤務の看護師より稼げる結果となることがわかります。
又、産業看護師といった名称があるように企業では看護師免許のみで働くことができます。現在、産業看護師として働かれている方や産業看護師として働く予定の方は保健師の免許取得が給料アップにつながる為、ここも大きなポイントとなります。
保健師を置いている企業の多くは、基本的に日勤業務となります。場所によっては夜勤業務があるところもあるようですがほとんどの企業の保健師枠は日勤での勤務であると考えていいでしょう。その為、一般の病院で働く看護師と比較し生活リズム(ワークライフバランス)が安定しやすいと言われています。
又、一般企業の多くは土日が休みであり必然的に土日の休みも確保されます。比較的残業もなく、カレンダー通りの業務の為、プライベートの充実や予定をたてやすいといったメリットがあがります。
病院で働く男性看護師は女性関係の悩みが尽きません。女性社会のトラブルに巻きこまれたり、女性社会における精神的ダメージを受け離職する方は私の周りにも数多くいます。産業保健師はそういったトラブルや問題から回避される為、精神的負担や病院で感じていた人間関係でのストレスが少ないようです。
産業保健師は医務室に一人で勤務するといったケースが多く病院勤務の看護師とは違い自分のペースで仕事が行えます。
社員のメンタルヘルスケアや生活指導など一定のコミュニケーション能力は必要となりますが比較的デスクワークが多い仕事とされていますので自身で業務スケジュールの配分を調整するのが好きな方やデスクワークを得意とするかたにはおすすめかもしれません。
看護師の長所としてあげられる平日の休みといった利点が産業保健師にはなくなります。今まで病院で勤務されていた方にとってはそれが不憫に感じる方も多く、カレンダー通りの仕事に慣れるまで時間がかかるようです。
又、平日の休みがとれなくなることから病院勤務している看護師の友人などとは予定があわせづらくなるようです。
前述したように一般企業での勤務となる為、社会情勢や景気によって給料の変動があります。企業が倒産しない限りリストラという問題は考えられにくいですが不景気であればボーナスカットや減給も余技なくされます。
行政保健師や学校保健師と違い企業での保健師採用枠は多くても二名程度。ほとんどの企業が各企業に1名といった現状にあります(中小企業であれば尚更)。
その為、悩みや不安を同職である保健師に相談できず業務や人間関係等の悩みを自分一人で抱え込む人が多い傾向にあります。
又、企業全員の健康管理やメンタルヘルスケア等の業務を一人で遂行しなければならない為、重荷や負担に感じ離職する方も少なくないようです。
女性特有の悩み、例えば生理や更年期障害の悩み、育児相談等、男性には経験がないことからどうしても女性産業保健師より劣ってしまいます。
又、健康診断等の女性が羞恥心を伴う業務もできませんのでそういった面では不憫と感じる場面が多いと思われます。男性に相談しづらいと話す女性社員の方も多く、そのような現状から女性の多い企業では男性産業保健師の雇用はほとんどないようです。
産業保健師も一長一短ではありますが皆さんがどこに視点を置くかでデメリットもメリットになるはずです(デメリット④は除く)。現在、転職で悩まれている方や産業看護師・産業保健師に憧れをもっている方は心機一転、方向性を変え転職してみると新しい自分がみつかるかもしれません。
前述したように産業保健師の就職率はかなり低く、離職率も低いことから求人があまり出ません。産業保健師就職の近道は身近に企業で働いている方のコネをつかって企業に滑り込むことが一番手っ取り早いと言えるでしょう。
私も、看護師求人サイトにいくつか問い合わせてみましたが現在、産業保健師の求人を取り扱っているところは7件中1件のみ。その一件も多数の募集があることから面接での選抜といったかなり倍率が高い現状にあることがわかりました。
まずは複数のサイト(求人サイト)に登録し、各求人からの募集がくるのを待ってみましょう(一つの求人登録では紹介率が非常に低いです)。
その時々の募集状況によってすぐに面接を行ってくれることがあるかもしれません。
こればかりはタイミングと運が重要かと思われます。
好条件の企業を選ぶといった選択肢は厳しいかもしれませんが自分の希望を伝える事でそれに近い求人を探してもらうことが大切です。ただ、あまり高望みをしすぎると身近にある求人を逃してしまう恐れがあるため注意しましょう。
皆さん参考になったでしょうか。
男性産業保健師の就職がまだまだ難しい現代ですので早めの求人登録や、こまめにホームページの求人情報をチェックしていく事をおすすめします。需要は低いですが諦めずに追い続けるときっとチャンスがあるはずです。皆さんが理想の就職先に巡り合いますように。
参考文献:「産業保健師の活動基盤に関する実態 及び 日本看護協会が取り組む事業に 日本看護協会が取り組む事業について」