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退職前の有給休暇って消化できるの?取り方やトラブル回避の方法は?

 

「退職したいけど、まだ有給休暇が残っている…」
そんな方は、できれば有給休暇を消化してから退職したいと考えるはずです。しかし、「会社を辞めるのに有給を消化するなんて、印象が悪いのでは?」、「断られたり、トラブルになったりするのでは?」と心配な方もいるでしょう。

そこで今回は、退職前に有給休暇を消化する方法、トラブルを未然に防ぐための方法をご紹介したいと思います。

目次

退職前に有給休暇を消化してもいいの?

有給休暇の取得は、労働基準法によって労働者に与えられている権利です。前年度の出勤日数が8割以上の場合、最大20日までの有給休暇が勤続年数に応じて与えられます。1年間は繰り越しが認められているので、前年度有給休暇を消化していなければ1年で最大40日間の有給休暇を得ることができます。

参考:厚生労働省 有給休暇ハンドブック

この説明からもわかる通り、有給休暇は「前年度の出勤日数8割以上」という条件によって付与されます。つまり、過去の働きぶりに応じて与えられるものなのです。

これから会社を代謝するからといって、あなたの過去の働きぶりが変わることはないはずです。よって、法律的にも道義的にも、退職前の有給取得は全く問題のない行為なのです。

退職時の有給休暇の取り方

退職時、どのように有給休暇を取ればいいのか、基本的な取り方の流れをご紹介しましょう。

有給日数を計算する

まずは、自分に有給休暇が何日残っているのか、日数を計算するところから始めます。退職日までの期間で消化できそうか、見積もりを立てるためです。

就業規則を熟読する

説明したように、有給休暇の取得は労働者の権利なので、会社側がそれを阻むことは原則としてできません。しかし、仕事の引き継ぎといった最低限の義務も果たさずに有給休暇を消化する退職者がいることも事実です。

そうした事態に対応するため、「引き継ぎを行わずに退職した場合、退職金を減額する」といったルールを就業規則で定めている会社もあります。

もしあなたが真面目に業務の引き継ぎを行っていたとしても、会社側がこうした規則を盾にして退職金を「人質」にし、有給休暇取得を阻んでくる可能性もあります。どういった事態が起こりうるか予測するためにも、就業規則にはよく目を通しておいてください。

引き継ぎのスケジュールを引く

退職者にとって、業務の引き継ぎは最低限の義務です。先に説明した就労規則と退職金の問題もありますし、有給休暇を取得するにしても引き継ぎは滞りなく完了する必要があります。退職日までの日数、有給休暇の残存期間、引き継ぎに必要と考えられる日数を加味してスケジュールを立てましょう。

会社に相談する

退職日までのスケジュールができたら、その計画で問題ないかどうか会社側に相談します。あなたの方では問題なく引き継ぎができると思っていても、会社側から見るとそうでない可能性もあります。そのような場合は相談の上、スケジュールを再調整する必要があるでしょう。

会社が拒否してくるケース

「業務に支障が出る」との理由による拒否

引き継ぎに関係ない部分で「業務に支障が出る」と有給休暇の消化を拒否されることが考えられます。

企業には、業務に支障が出る場合に有給休暇の取得日を変更できる「時季変更権」と呼ばれる権利が認められています。ですから、この時季変更権を行使して有給休暇の取得を拒否する可能性があるのです。

しかし、実はこの時季変更権、「退職に伴う有給休暇」に対しては行使できません。ですから、その旨を伝え、きっぱりと拒否すれば問題なく有給休暇を取得することができます。

代わりに休日出勤を求められる

有給休暇は、本来仕事がある日にしか取得することはできません。そのため、有給休暇を取得する代わりに休日出勤を命じられ、実質的に普段と変わらない時間働かされる可能性もあります。

休日出勤の命令は拒否することも可能ですが、正当な理由なく拒否を繰り返せば最悪懲戒解雇に至ることも考えられます。会社と相談して勤務日数を調整するか、通常勤務より賃金が割増される分お得と考え、大人しく従うのもいいでしょう。

「有給休暇の買取」を提案

実は、有給休暇は退職時の取得に限って、企業側が労働者から買い取ることができます。「有給は取得したいものの、会社側からどうしても働いてほしいと言われ困っている場合は、この有給休暇の買取を検討してみてはいかがでしょうか?

会社側から買取を提案される場合もあるでしょうし、逆にこちらから提案するのもいいでしょう。

会社に拒否されたときの解決策

正式に申請を出す

有給休暇取得を口頭で上司に伝えるだけでなく、正式な申請書を出しましょう。労働基準法では、会社側は有給休暇の取得を「時季変更権」以外で拒否することは認められていません。正式に申請するだけで拒否するのはかなり難しくなります。

労働組合に相談する

勤務先の企業規模が一定以上で、労働組合が存在する場合はまず労働組合に相談してみましょう。ただし、あまり過度な期待はしないでください。労働組合からの働きかけで会社が態度を変える可能性は高くないからです。「第三者に相談した」という事実を作り、会社側に無言の圧力を加えるのが目的です。

労働基準監督署に相談する

労働組合の次は、近隣の労働基準監督署に相談します。こちらも、実際に対応してくれるケースは少ないのですが、「相談した」という事実を積み重ねることが大事です。

監督署からは「勤務先に再度申請をするように」とったアドバイスをされると思うので、会社に戻り、「労働基準監督署に相談したら、再度申請するように言われた」と説明した上で有給休暇の申請を行いましょう。

権利を行使して有給休暇を消化してしまう

再度の申請も拒否されるようなら、「申請が通らなくても取得する」と伝え、予定していた日に休んでしまうのも手です。有給休暇取得は「権利」なので、本来は許可する、しないの問題ではないからです。

この場合、おそらく会社は休んだ日を「有給休暇」とは認めず、給料も払わないことでしょう。そうなると、問題は「有給休暇の拒否」ではなく「給料の未払い」になります。今度は、「給料の未払い問題」として労働基準監督署に相談しましょう。そうなれば、労働基準監督署が動いてくれる可能性も高くなります。

内容証明を送り、少額訴訟を起こす

以上のような対応を取った上で、会社に対して内容証明を送ります。内容証明とは、「誰が、誰に、どんな内容のものを送ったか?」を日本郵便株式会社が証明してくれる郵便物です。

「有給休暇の消化に伴う、未払いの給与があること」、「支払われなければ法的措置を取ること」などを告げ、対応がなければ最終手段として民事調停、少額訴訟を起こしましょう。

「裁判まで起こすなんて面倒くさそう」と思う方もいると思います。実際には、拒否されたすべてのケースでこうした解決の流れを辿るわけではありません。話し合いで解決することも多いでしょうしし、労働基準監督署に相談した時点で会社側が有給休暇消化を認めてくれることもあるでしょう。

必要な手間と得られる利益を天秤にかけながら、「自分にできる範囲の解決策」を実施するのが大事です。

退職前の有給休暇取得でトラブルを回避するための方法

トラブルが生じてから解決法を模索するよりも、トラブルを回避するほうがより懸命です。ここからは、退職前の有給休暇取得にまつわるトラブルを回避する方法をご紹介します。

引き継ぎはしっかりすること

会社側としては、退職日までに必要な引き継ぎを終えていれば、あえて有給休暇取得を認めない理由はないはずです。トラブルの原因となりうる引き継ぎは滞りなく完了できる計画を立ててください。

円満退職したいなら、会社への配慮も必要

自分の都合ばかりを優先して会社への配慮を怠っては、円満退社は実現できません。どうしても自分がいなければ支障をきたす業務があるなど、有給休暇取得が難しい場合は取得にこだわり続けるのではなく、休日出勤や有給休暇買取で対応するなど会社の立場にも配慮する姿勢を見せましょう。

お世話になった同僚や上司へのお礼も忘れずに

会社は、そこに集うすべての人々から成り立っています。一緒に仕事で汗を流した同僚や、指導してくれた先輩、上司への感謝の気持ちをお礼の言葉として伝えるのを忘れないようにしてください。会社との間でトラブルがなくとも、お世話になった人々から笑顔で見送ってもらえなければ「円満退社」とは言えないからです。

退職時の疑問

退職時によくある疑問と、それに対する回答をいくつかピックアップしてみました。

有給休暇取得の理由は何にしたらいい?

有給休暇取得は労働者の権利なので、本来はいちいち理由を説明する必要はありません。理由を記述する欄がある場合は、「残存している有給休暇消化のため」、「休養のため」などと書いておけばいいでしょう。

有給休暇は会社に買い取ってもらえるの?

有給休暇の買取は、特定の条件に当てはまる場合にのみ認められています。すでにご紹介したとおり、「退職までの未消化分の買取」が認められているほか、「有給休暇の有効期限である2年を超えて残存した分の買取」と「法律で付与される日数を越えて与えられる有給休暇の買取」が認められています。

買取金額は企業ごとに異なっており、日数ごとに一律の額が決まっているケースや、月給を一ヶ月辺りの平均労働日数で割った金額を設定しているケースなどがあります。

退職前の有給休暇取得中に転職先の仕事やアルバイトするのはあり?

まだ退職前なので、現在の勤め先の就労規則が適用されます。副業を禁じている場合、アルバイトはできません。転職先の仕事をするためには、現在の勤め先と転職先、双方に申請して許可を貰う必要があります。

退職前の有給休暇取得中でもボーナスは貰えるの?

ボーナスの支給日が退職日前であれば、ボーナスを取得することはできます。ただし、ボーナス取得日に有給休暇を取得していてもボーナスを受け取れるかどうかは、各企業の就労規則によるので事前に確認が必要です。

有給休暇取得で会社と揉めた実体験を紹介

私は実際に転職する際に有給休暇で会社と揉めました。

権利である有給休暇の取得を会社に伝えた結果、すぐに辞めるように言われました。誰もが知る大手に勤めていたので、有給休暇もちゃんと取れるものだと思っていましたが、辞めた後の後任を手配できないからと有給休暇はかなり渋られました。

会社側も会社の立場ではなく、あくまで個人の発言として、「君のためにもよくない、辞めるなら残されたメンバーのためにも早く辞めた方がいい」と伝えてきました。会社の発言となると、立場的にまずいからです。

簡単に引き下がるわけにもいかず、必死に権利と主張しました。結果は、お互いの妥協点の残っている有給休暇の1/3程度を取得することで話がつきました。

私もチームの残されたメンバーに迷惑はあまりかけたくない、これ以上揉めて気まずくなって会社をさりたくないといった思いとボーナスがちゃんと貰えるということがわかったので、当初考えていたより早く会社を辞めることになりました。

このように、権利としては有給休暇は全て取得することは可能ですが、会社側のプレッシャーやお世話になった人との関係などを考慮すると全てフルで取得するというのは結構難しいですし、気が引けるという方もおられると思います。

まとめ

退職前の有給休暇取得にまつわる注意点について、最後にもう一度振り返っておきましょう。

有給休暇取得は、それまでの働きぶりに応じて労働者に与えられる権利です。従って、道義的にも法的にも退職前に消化することは何の問題もありません。ただし、有給休暇をトラブルなく取得するには、退職者に与えられる最低限の義務である「引き継ぎ」を問題なくこなす必要があります。

もし、引き継ぎに問題がないにもかかわらず会社が有給休暇取得を拒否する場合は、休日出勤や有給休暇買取で対応できないか話し合ってみましょう。もし、正当な理由なく拒否しているようなら、労働基準監督署への相談や法的措置を検討するべきです。

トラブルを避け、円満退社を目指すのであれば、退職前にしっかり準備しておきましょう。会社の事情も考慮して消化のスケジュールを立て、引き継ぎを済ませればトラブルが生じるリスクは少なくなります。

有給休暇を消化することばかりに気を取られて、お世話になった人々へ感謝の気持ちを伝えるのを忘れないでください。一緒に働いた人々から気持ちよく送り出されてこそ、円満退社が実現できるのです。