人材派遣会社に所属し、求めに応じて労働力を必要とする企業に出向く「派遣社員」。主要な働き方のひとつではありますが、現在派遣社員として働いている方の中には「正社員になって、もっと安定した環境で働きたい!」と思っている方も多いと思います。派遣社員から正社員に転職するには、どんなことに気をつけるべきなのでしょうか?
人材派遣会社に所属し、求めに応じて労働力を必要とする企業に出向く「派遣社員」。主要な働き方のひとつではありますが、現在派遣社員として働いている方の中には「正社員になって、もっと安定した環境で働きたい!」と思っている方も多いと思います。派遣社員から正社員に転職するには、どんなことに気をつけるべきなのでしょうか?
まずは、派遣社員から正社員になるとどんな変化が起きるのか、派遣社員と正社員にはどのような違いがあるのか確認していきましょう。
派遣社員の給料は、派遣され実際に仕事をしている会社からではなく、所属している派遣会社から支給されます。交通費などの手当は原則的に支給されません。しかし、その分時給換算すると正社員より高い給与が設定されているケースもあります。
一方、正社員の給料は勤務先の企業から支給されます。交通費や住宅手当、賞与といった基本給以外の手当も支給されます。派遣社員との最大の違いは「昇給」の有無でしょう。
正社員は基本的に長く努め続けるほど給料が高くなっていきます。そのため、若いころは同じ業務を行う派遣社員よりも給料が低いこともありますが、昇給を繰り返すうちに追い抜く場合がほとんどです。また、仕事をやめれば退職金を受け取ることができます。
派遣社員は、所属している派遣会社から福利厚生を受けることができます。かつては、「派遣社員の福利厚生の充実度は、正社員に劣る」と言われていましたが、現在では福利厚生に力を入れる派遣会社も増えてきたので、徐々に正社員との充実度の差はなくなりつつあります。
とはいえ、実際の福利厚生の充実度合いは、「所属している派遣会社次第」と言っていいでしょう。
正社員は、原則として自らの勤め先の福利厚生をすべて受けることができます。
派遣社員は一般的に、正社員よりも社会的地位が低いとみなされる場合が多いです。正社員が定年以外雇用期間の定めがない「無期雇用契約」なのに対して、派遣社員は派遣期間が定まった「有期雇用契約」なので、「職業の安定度が低い」とみなされるからです。
ただし、2013年に行われた労働契約法の改正により、派遣社員も「有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたとき」は、申出を行うことで無期雇用契約に変更できると定められました。よって、今後長期的には派遣社員と正社員の社会的地位の差は縮小していくことになるかもしれません。
しかし、未だローンやクレジットカードなどの審査が通りにくいなど、正社員より派遣社員の方が「下」とみなされる傾向があることも事実です。
すでにお伝えしたとおり、派遣社員は基本的に時給換算で給料が決まります。従って、勤務時間=収入と捉えることができるので、休暇などをとって働く時間が短くなると、そのまま収入減に直結してしまいます。
正社員は、福利厚生の一部として有給休暇などの制度が定められています。これらの制度を利用すれば、給料を低下させずに休みを取ることができるので、その分派遣社員に対して有利だといえるでしょう。
派遣社員の勤務先は、派遣先企業を移るたびに変化します。同じ会社に派遣され続ける場合、勤務先は変わりませんが、数年ごとに派遣先が変わるようであれば、勤務先を転々としなければならなくなるでしょう。
正社員の場合、転勤や部署異動などが起きない限り、基本的に同じ職場で働き続けることになります。
今までの説明を見ると、さまざまな部分で「正社員のほうが派遣社員より待遇がいい」という印象を持たれたかもしれません。
しかし、よくよく検討してみると派遣社員から正社員になることにはメリットもあればデメリットもあります。具体的にどんな変化が起こりうるのかご紹介していきましょう。
すでにお伝えしたとおり、派遣社員である限り定期的な職場移動を避けて通ることはできません。単に「電車で降りる駅が少し変わる程度」であればいいのですが、通勤時間が大幅に変わるような場合は生活スタイルすら変化させなくてはいけないこともあるでしょう。
正社員になれば、こうした不安定な生活とはオサラバです。毎日同じ時間に起床し、同じ電車に乗って同じオフィスへ通勤するという、安定した生活を営むことができます。
派遣社員は「雇用」という面から見ても安定しているとはいえませんでした。契約期間が終わるたびに新しい派遣先を探さなくてはならず、それが必ず見つかるとは限らないからです。
正社員になれば、定年が訪れるまで同じ会社で働き続けられるので、「食いっぱぐれる」心配はありません。
派遣社員と正社員の大きな違いとして「昇給の有無」をご紹介してきましたが、これは、派遣社員から正社員になれば生涯で受け取れる給料の合計が大きく変わるということを意味しています。当然、生活の安定度や将来の人生設計にも大きな影響があるでしょう。
派遣社員は給料が時給制なので、残業を行う場合は派遣会社と派遣社員の間で「時間外・休日労働に関する協定(通称、36協定)」と呼ばれる取り決めを結んでいる必要があります。
36協定を結んでいる場合、派遣先企業の指示により残業をしなければいけませんが、派遣会社の目があるため、サービス残業など不当な残業はさせにくい環境にあるといえます。
一方、正社員は「社内の人」であり、他所からの監視の目もないので残業や休日出勤を指示しやすい傾向にあるといえるでしょう。ですから、正社員になることで残業や休日出勤が増えてしまう可能性はあります。
派遣社員の場合、通常正社員としては就職できないような大手企業にも派遣先として勤務できる場合があります。そのため、正社員になって「普通の企業」に勤めると、それ以前との落差にがっかりしてしまうかもしれません。
派遣先企業からみれば、派遣社員はあくまでも「他所の人」。しかし、正社員になれば逆に「身内」という感覚になります。当然、仕事に対してもより一層の責任感を求められることになるでしょう。
そのため、派遣社員という立場に慣れ続けていると、「正社員」という立場に降り掛かってくるプレッシャーに耐えられないことも考えられます。
「派遣社員から正社員になる」といっても、そもそもそんなことは本当に可能なのでしょうか?
正社員を目指すにあたって、まず多くの人が気にする障害が「年齢」でしょう。「自分もそろそろいい年だし、今更正社員になりたいと思っても雇ってくれるところがないんじゃないか?」と不安になる方もいると思います。
率直にいえば、派遣社員から正社員を目指すにあたって年齢は大きな障害にはなりません。派遣社員の場合、単に勤務形態が違うだけで「ある分野で何年も仕事をした確かな実績」があるわけですから、「素人を一から教育し直す」転職とは異なり、「教育のための期間」をそれほど長く見積もらなくてもいいからです。
では、派遣社員から正社員になるには、具体的にどのような手段があるのかご紹介しましょう。
まず、「現在の派遣先企業で、そのまま正社員になれる可能性」について考えみましょう。この場合、派遣先企業に「正社員登用制度」が存在するか否かが鍵を握ります。
正社員登用制度とは、派遣社員で一定の勤務実績を上げた人を正社員として雇う制度です。もし、派遣先にこの制度があればそれを利用して正社員を目指すことは可能ですが、なければ別の方法を探したほうがいいでしょう。
「紹介予定派遣」とは、最長6ヶ月間の間、派遣社員として働き、その後派遣先と本人が合意すれば正社員になれる、という働き方のことです。人材と職場のミスマッチを予防できることから、企業と労働者双方にとってメリットのある方法だといえます。
「正社員」の求人情報を探し、転職活動を行って正社員を目指す、という方法もあります。この方法のメリットは、広い業種・業態から就職先を探せるため、今までとは全く違う仕事に就ける可能性もあることでしょう。
「派遣社員としての自分」の実績にこだわり、その延長線上に正社員を見ているとどうしても視野が狭くなりがちです。一旦すべてを忘れたまっさらな気持ちになって、ゼロから転職活動を始めることで新しい人生が開けるかもしれませんよ。
派遣社員から正社員への転職を目指している方のために、具体的な注意点と転職の方法をご紹介していきました。
正社員は、派遣社員に比べてさまざまな待遇面でいい扱いを受けています。ただし、正社員になれば待遇が良くなるかわりに責任も増すので、重圧に押しつぶされないよう注意が必要です。
派遣社員から正社員を目指すにあたって、年齢はあまり問題になりません。正社員になる方法は、大きく分けて、「派遣先の正社員登用制度を利用する」、「紹介予定派遣で働く」、「ゼロから転職活動を行う」の3つ。自分の置かれた状況と、望む働き方を踏まえて適切な方法を選ぶのがいいでしょう。
派遣社員と正社員の違いは、単なる雇用形態の違いといい切ってしまうこともできます。ですが、働き方の違いは生き方の違いです。働き方を変えることで今までの自分の生き方を大きく変えられるチャンスが生まれるかもしれません。
もし、今のご自身の生き方に疑問を感じているのなら、ぜひ働き方の変革にチャレンジしてみてください!