様々な目的で利用されることが多いフェニルアラニン。
興味をお持ちの方が多いかもしれませんね。
期待されている効果や効能と、フェニルアラニンを含む食品などを紹介します。
気になる方は参考にしてください。
フェニルアラニンとは何か?
最初にフェニルアラニンの概要を解説します。
フェニルアラニンはどのような成分なのでしょうか。
フェニルアラニンとは
フェニルアラニンは健康を維持するために欠かせないにもかかわらず、体内で十分な量を作り出すことが出来ない必須アミノ酸のひとつです。
つまり、食事などから摂取しなければいけないアミノ酸のひとつと考えられています。
フェニルアラニンは肉類や魚介類など身近な食品に含まれていて、身体に取り込まれると脳内で神経伝達物質に変換されます。
脳と神経細胞間の信号のやりとりに関わるので、重要なアミノ酸と考えられているのです。
フェニルアラニンとチロシンの関係
フェニルアラニンと深い関係にあるアミノ酸がチロシンです。
チロシンは生体内で合成できる非必須アミノ酸に分類されます。
ただし、食事からもとったほうが良いとされています。
チロシンは、食事などから摂りこまれたフェニルアラニンと酸素をもとに、肝臓細胞にあるフェニルアラニン4-モノオキシゲナーゼという酵素の働きで合成されます。
つまり、この酵素が機能している方は、フェニルアラニンを摂取すれば生体内でチロシンを作り出すことが出来ます。
先天的にこの酵素が欠損している方は、体内でフェニルアラニンが増えてフェニルケトン尿症になります。
アスパルテームの原料
フェニルアラニンは人工甘味料の1つであるアスパルテームの原料でもあります。
アスパルテームは清涼飲料水やお菓子などに添加される身近な人工甘味料です。
一般的に人工甘味料はカロリーゼロで血糖値をあげないとされていますが、最新の研究によるとアスパルテームは肥満者において耐糖能を低下させる恐れがあるとされています。
太り気味の方は注意したほうが良いかもしれません。
フェニルアラニンの効果や効能は?
フェニルアラニンには様々な効果と効能が期待できます。
神経伝達物質としての働き
フェニルアラニンから合成されるチロシンはドーパミンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質の材料になります。
つまり、フェニルアラニンもこれらの材料といえます。
体内に取り入れられたフェニルアラニンの一定量はチロシンに変換されたのち、神経伝達物質として働きます。
不安感を緩和
過去の考察や観察によると、フェニルアラニンあるいは人工的に合成されたDL-フェニルアラニンの経口摂取は、うつ病の改善に有効とされています。
このことからフェニルアラニンは不安感を緩和させるといわれることがあります。
一方で、この効果についてはさらなる検証と科学的根拠の蓄積が必要という意見もあります。
現在ではうつ病の改善に有効とは言い切れなくなっています。
鎮痛作用
DL-フェニルアラニンには、慢性的な疼痛を緩和する働きが期待されています。
この効果や効能は、エンドルフィンの活性を高めることで得られると考えられています。
現在のところ科学的に十分な裏付けはありません。
皮膚の健康をサポート
上記以外にも白斑の治療に役立つ可能性が示唆されています。
フェニルアラニンの経口摂取、あるいは外用と紫外線A波照射との組み合わせが有効と考えられています。
フェニルアラニンはいろいろなホルモンに関係する!
フェニルアラニンは、様々なホルモンとかかわりを持っています。
具体的にどのような関わりがあるのでしょうか。詳しく解説します。
アドレナリンとドーパミン
フェニルアラニンは、酵素の働きでチロシンに変換されたのちドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンへと変換されます。
つまり、ドーパミンやアドレナリンの材料になります。
ドーパミンは別名「やる気ホルモン」と呼ばれる神経伝達物質です。
「楽しい」「うれしい」「頑張ろう」などプラスの感情を引き起こしやる気の源になり、達成感や充実感を得たときに分泌されます。
アドレナリンは交感神経を活性化するホルモンです。別名を「攻撃のホルモン」といいます。
興奮を身体に伝えて血糖値をあげる、脈拍を増やす、血圧を上昇させる、動向を拡大させるなどの働きをします。
すなわち、身体の活動性をアップさせます。
フェニルアラニンは、これらの働きに関わっていると考えられます。
セロトニンとの関係
同じくフェニルアラニンとかかわりのあるホルモンが「幸せホルモン」ことセロトニンです。
セロトニンには、ドーパミンやノルアドレナリンの働きを調節して精神を安定させる働きがあります。
つまり、セロトニンが上手く働くことで、感情を適切にコントロールすることや気分の落ち込みから立ち直ること、キレずに我慢することなどが出来ます。
セロトニンはストレスにより消費されるので、ストレスがたまると不足しがちになります。
フェニルアラニンは、セロトニンの材料になるトリプトファンと同じ血液脳関門を通過します。
そのため、フェニルアラニンが大量に存在するとセロトニンの生成を阻害してしまいます。
DL-フェニルアラニンからエンドルフィンを産生
人工的に合成されたDL-フェニルアラニンには、エンドルフィンを分解する酵素を邪魔する働きがあります。
この働きから、エンドルフィンの活性を高めるといわれています。
エンドルフィンは脳内でモルヒネとよく似た働きをする神経伝達物質で、痛みを緩和する働きがあります。
フェニルアラニンの摂り方
フェニルアラニンが気になる方はどのように摂ればよいのでしょうか。
フェニルアラニンの摂り方を解説します。
1日の推奨量と摂取量
厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準(2015年版)」にフェニルアラニン単体の摂取量は記載されていません。
代わりに、芳香族アミノ酸の摂取量が記載されているので紹介します。
芳香族アミノ酸(AAA) | |||
組織アミノ酸パタン | 73 | ||
維持アミノ酸パタン | 38 | ||
タンパク質必要量(g/kg体重/日)に対するアミノ酸必要量(mg/kg体重/日) | |||
年齢 | 維持量 | 成長量 | 芳香族アミノ酸 |
0.5 | 0.66 | 0.46 | 59 |
1~2 | 0.66 | 0.20 | 40 |
3~10 | 0.66 | 0.07 | 30 |
11~14 | 0.66 | 0.07 | 30 |
15~17 | 0.66 | 0.04 | 28 |
18以上 | 0.66 | 0.00 | 25 |
評点パタン(mg/g/タンパク質) | |||
年齢 | ヒスチジン | ||
0.5 | 52 | ||
1~2 | 46 | ||
3~10 | 41 | ||
11~14 | 41 | ||
15~17 | 40 | ||
18以上 | 38 |
摂取のタイミングは?
摂取のタイミングに特別な決まりはありません。
食事から摂りたい方は食事のタイミングで、サプリメントから摂りたい方は好きなタイミングで摂ればよいと考えられます。
一般的に、アミノ酸は空腹時の摂取が勧められています。
気になる方は参考にしてみてはいかがでしょうか。
妊婦さんには付加量が必要?
妊娠中や授乳中にフェニルアラニンの付加が必要などの記載は見当たりません。
一方で、タンパク質は妊娠前より多く摂ったほうが良いと考えられています。
具体的には妊娠中期は10g、妊娠末期は25g、授乳中は20gの付加が勧められています。
この量を参考に摂取すると良いかもしれません。
妊娠中や授乳中のフェニルアラニン大量摂取はおすすめできません。
血中濃度が高くなりすぎると先天的欠損症の恐れがあるからです。
人工合成されたD-フェニルアラニンの安全性については十分なデータがありません。
フェニルアラニンを摂取する方は、これらの点に注意してください。
フェニルアラニンの注意点や副作用
フェニルアラニンを利用したい方は、注意点も確認しておきましょう。
過剰摂取の影響や欠乏の影響を解説します。
過剰摂取すると?
通常の食事から摂る量のフェニルアラニンであれば安全性は高いと考えられています。
人工合成したD-フェニルアラニンの安全性についてはわかっていません。
ただし、遺伝的な素因をお持ちの方で血圧を上昇させる恐れ、統合失調の方で運動障害を悪化させる恐れはあります。
これらの点には注意が必要です。
また、体内のフェニルアラニンが増えすぎるとセロトニンの合成を阻害してしまいます。
安全性は高いとはいえ、摂りすぎには注意しましょう。
欠乏すると?
身近な食品に含まれているので、通常の食事をとっていれば欠乏することはないと考えられます。
脳内で神経伝達物質に変換される重要なアミノ酸で、体内で合成できないので、欠乏すると精神面をはじめ様々な悪影響が現れます。
欠乏には特に注意したいアミノ酸です。
フェニルアラニンと相性の良い成分とあまり相性が良くないもの
フェニルアラニンを利用したい方は、相性の良い成分と相性のあまり良くないものも抑えておきましょう。
効率よく利用できるはずです。
相性が良い成分
必須アミノ酸
必須アミノ酸は、単体で摂るより全体をバランスよく摂ることが重要と考えられています。
フェニルアラニンを摂りたい方は、その他の必須アミノ酸もバランスよく摂りましょう。
アミノ酸スコアなどを活用するとバランスよく摂れるはずです。
相性があまり良くないもの
医薬品
一部の医薬品に影響を与える可能性が示唆されています。
何かしらの医薬品を服用している方は、大量のフェニルアラニンを摂る前、サプリメントなどからフェニルアラニンを摂る前に医師に相談しましょう。
フェニルアラニンを多く含んでいる食品
フェニルアラニンは身近な食品から摂ることが出来ます。
次の食品などがフェニルアラニンを豊富に含みます。
たたみいわし
フェニルアラニンを特に多く含む食品がたたみいわしです。
100gあたり3000㎎ものフェニルアラニンを含みます。
軽くあぶるだけでご飯のおかずやおやつになるので、フェニルアラニンを摂りやすい食品といえるでしょう。
パルメザンチーズ
パルメザンチーズも豊富なフェニルアラニンを含みます。
100g当たりの含有量は2400㎎です。
料理に振りかければ手軽にフェニルアラニンをとれます。
豚ヒレ肉(焼き)
肉類では、豚ヒレ肉がフェニルアラニンを豊富に含みます。
100gあたりの含有量は1600㎎です。
主菜になるので量を摂りやすい点が魅力です。
鶏むね肉(皮なし 焼き)
鶏むね肉もフェニルアラニンを含みます。
100gの含有量は1500㎎です。
豚ヒレ肉と同じく脂身が少ないのでヘルシーです。
毎日の食事に利用しやすい食品といえます。
ごまさば(焼き)
魚介類ではごまさばがオススメです。
100g当たり1200㎎のフェニルアラニンを含みます。
焼く、煮るなど様々な調理法に適しているので、こちらも利用しやすい食品です。
まとめ
フェニルアラニンは必須アミノ酸のひとつです。
酵素の働きでチロシンに変換されたのち神経伝達物質に変換されます。
体内では合成できないので、気になる方は食事から摂りましょう。
食生活が乱れがちな方はサプリメントから摂取することもできます。
健康維持に欠かせないアミノ酸なので、いずれかの方法でしっかり摂取してください。