アラキドン酸は、サプリメントなどに配合されていることが多い成分です。
重要な成分といわれていますが、具体的にどのような効果・効能が期待できるのでしょうか。
また、どのような食品に多く含まれているのでしょうか。
ここでは、アラキドン酸について詳しく解説しています。
アラキドン酸とは何か?
アラキドン酸と聞いても、どのような成分か全くイメージできない方が多いはずです。
最初に、アラキドン酸の概要についてみていきましょう。
アラキドン酸とは
アラキドン酸は、脂肪酸のひとつです。
脂肪酸は必須脂肪酸と非必須脂肪酸に分かれます。
アラキドン酸は必須脂肪酸に分類されます。
脂肪酸の分類
必須脂肪酸には、アラキドン酸・リノール酸・ドコサヘキサエン酸・リノレン酸・エイコサペンタエン酸の5種類があります。
必須脂肪酸はn-3系脂肪酸とn-6系脂肪酸に分かれます。
n-3系脂肪酸に分類されるのがドコサヘキサエン酸・リノレン酸・エイコサペンタエン酸、
n-6系脂肪酸に分類されるのがアラキドン酸・リノール酸です。
n-6系脂肪酸とは、最初の炭素の二重結合が6番目と7番目の間にある不飽和脂肪酸のことです。
アラキドン酸はビタミンF?
アラキドン酸を含む、5種類の必須脂肪酸のことをビタミンFと呼ぶことがあります。
ビタミンFと書かれている場合、必須脂肪酸のことと理解すればよいでしょう。
必須脂肪酸とは
必須脂肪酸は、不可欠脂肪酸と呼ばれることがある脂肪酸です。
必須、あるいは不可欠と付くことからわかる通り、私たちの健康維持に欠かせない脂肪酸です。
欠かせない理由は、生体内で合成できないからです。
つまり、アラキドン酸を含む必須脂肪酸は、食事などから摂取しなければいけない脂肪酸なのです。
体内で合成もできる
ただし、アラキドン酸はリノール酸からある程度は体内で合成できます。
そのため、正確には必須脂肪酸とは言えないとされることがあります。
とはいえ、合成できる量に限りがあるので、一般的には広義の意味での必須脂肪酸と捉えられています。
アラキドン酸の効果・効能は?
健康維持に欠かせない成分なので、アラキドン酸に興味を持った方が多いはずです。
アラキドン酸には、どのような効果・効能を期待できるのでしょうか。
詳しく見ていきましょう。
脳の活性化
脳の神経細胞は胎児の間に形成されますが、海馬をはじめとした脳の一部の神経細胞は大人になってからも作られます。
アラキドン酸はこの働きに関わっていると考えられています。
また、アラキドン酸は、細胞膜をしなやかにすることで神経細胞間での情報伝達をスムーズに行えるようにサポートするとも考えられています。
これらの働きにより、脳を活性化する働きが期待されているのです。
血圧を安定させる
アラキドン酸は、生理活性物質のひとつであるプロスタグランジンの材料になります。
プロスタグランジンには、平滑筋を収縮させる働きや腎臓の排泄を促進する働きなどのほか、血管を拡張させる働き、血圧を下げる働きなど生体機能を調節する働きがあります。
そのため、アラキドン酸には血圧を安定させる働きを期待できるといわれることがあります。
ただし、アラキドン酸は、動脈硬化の促進因子でもあるので、摂りすぎには注意が必要です。
免疫機能を調節
生理活性物質のひとつプロスタグランジンには、免疫機能を調節する働きもあります。
そのため、アラキドン酸には、免疫機能を調節する効果も期待できるとされています。
コレステロール減少
アラキドン酸には、コレステロールを調整する働きも期待できるとされています。
アラキドン酸を摂ることで、生理活性物質のアラキドン酸が正常に働くと考えられるからです。
アラキドン酸はオメガ脂肪酸?
アラキドン酸を含む脂肪酸は、脂質を構成する成分です。
脂質と聞くと身体に悪いと考える方が多いようですが、脂質も健康維持に欠かすことはできません。
ただし、やみくもに摂ると健康に良くない影響が現れるので、どの脂質をどのように摂るかが重要といわれています。
オメガ脂肪酸とは?
炭素の二重結合を二つ以上持つ多価不飽和脂肪酸には5種類の必須脂肪酸が含まれます。
5種類の必須脂肪酸は、炭素の二重結合の位置により、オメガ3系脂肪酸とオメガ6系脂肪酸に分かれます。
アラキドン酸はオメガ脂肪酸のひとつに分類されるのです。
オメガ脂肪酸は身体のいたるところに存在し、身体を構成する成分として働いています。
アラキドン酸とドコサヘキサエン酸は、脳の海馬に多く存在し、その働きをサポートしていると考えられています。
つまり、アラキドン酸やドコサヘキサエン酸は、学習や記憶をサポートする可能性があると考えられているのです。
生合成できる?
5種類の必須脂肪酸は、基本的に生体内で合成できない脂肪酸です。
ただし、全く合成できないわけではありません。
リノール酸とリノレン酸以外は体内でも合成できます。
例えば、アラキドン酸は、リノール酸からγリノレン酸などを経て合成することができます。
とはいえ、合成できる量はわずかです。
加齢とともに、脳のアラキドン酸・ドコサヘキサエン酸は減少するので、食事などから補う必要があります。
赤ちゃんと高齢者にアラキドン酸が必要不可欠
アラキドン酸には脳の機能をサポートする働きが期待できます。
そのため、赤ちゃんと高齢者で特に重要な成分と考えられています。
過去に行われた研究で、以下のことなどが分かっています。
アラキドン酸配合のベビーミルク
アメリカなどで行われた研究により、赤ちゃんがアラキドン酸を摂取することで学習・記憶能力はもちろん、精神面の成長も期待できることが分かっています。
アメリカの厚生労働省にあたるFDAが安全性を認めたことにより、アメリカではアラキドン酸配合のベビーミルクが一般的に用いられるようになっています。
現在では、60カ国以上でアラキドン酸配合のベビーミルクが利用されています。
認知症の予防に?
アラキドン酸やドコサヘキサエン酸は細胞膜をしなやかにするといわれています。
これにより、情報伝達をスムーズにし、記憶力や学習力を高めるとされているのです。
脳のアラキドン酸やドコサヘキサエン酸の量は加齢とともに減少することが分かっています。
アラキドン酸やドコサヘキサエン酸が減少して細胞膜が硬くなると、物覚えが悪くなる、情報処理が遅くなるなどの影響が現れると考えられています。
過去に行われたいくつかの研究で、高齢者がアラキドン酸やドコサヘキサエン酸などを摂取することにより、記憶力や情報処理速度などが改善する可能性が示されています。
また、オメガ3系脂肪酸には、認知量の発症リスクを引き下げる働きも期待されています。
アラキドン酸の摂り方
健康維持などにアラキドン酸を活用したい方は、どのように摂取すればよいのでしょうか。
1日の推奨量や摂取量
厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準(2015年版)」に、アラキドン酸の推奨量、摂取量に関する記述はありません。
代わりに、アラキドン酸を含むn-6系脂肪酸の目安量が示されているので紹介します。
n-6系脂肪酸の目安量 | ||
男性の目安量(g/日) | 女性の目安量(g/日) | |
0~1歳 | 4 | 4 |
1~2歳 | 5 | 5 |
3~5歳 | 7 | 6 |
6~7歳 | 7 | 7 |
8~9歳 | 9 | 7 |
10~11歳 | 9 | 8 |
12~14歳 | 12 | 10 |
15~17歳 | 13 | 10 |
18~29歳 | 11 | 8 |
30~69歳 | 10 | 8 |
70歳~ | 8 | 7 |
推奨量を設定するために必要なデータがなく、リノール酸以外のn-6系脂肪酸も必要な可能性があるので目安量として示されています。
健康的な食事を心がけている方であれば不足しないといわれていますが、最近では偏食やダイエットの影響などで不足している方が増えているともいわれています。
普段の食生活を考えながら目安量を参考に摂ると良いでしょう。
摂取のタイミングは?
食事から摂る場合は、特にタイミングを意識する必要はありません。
1日3回の食事を規則正しく摂ることを心がけると良いでしょう。
サプリメントから摂る場合も、食事のタイミングで摂ると良いとされています。
食事と一緒に摂ることで吸収率が上がるとされているからです。食前や食中、食後などに摂ると良いでしょう。
妊婦さんには付加量が必要
日本人の食事摂取基準(2015年版)では、妊婦さんと授乳婦さんは普段より多くのn-6系脂肪酸を摂った方が良いとされています。
具体的には、1日の目安量が9gとされています。
成人女性の1日の目安量は8gなので、普段より1g多くn-6系脂肪酸を摂ることが勧められていることになります。
この量は、胎児の発育に問題ないと想定される値、n-6系脂肪酸を十分含む母乳を分泌できる値です。
妊婦さん・授乳婦さんは、参考にすると良いでしょう。
アラキドン酸の注意点や副作用
過剰摂取した場合、欠乏した場合、次のリスクなどが考えられます。
過剰摂取すると?
健康維持に必要なアラキドン酸ですが、摂りすぎると動脈硬化を促進してしまうことが分かっています。
動脈硬化は、動脈が硬く・脆くなる病気です。脳梗塞や心筋梗塞、高血圧などの危険因子と考えられています。
心配な方は、青魚などに多く含まれるエイコサペンタエン酸を積極的に摂ると良いといわれています。
欠乏すると?
アラキドン酸は細胞膜の重要な成分です。
不足すると様々な影響が出る恐れがあります。
特に懸念されるのが、脳の機能に関する影響と皮膚への影響です。
不足することは少ないとされていますが、脳に含まれるアラキドン酸は加齢とともに減少します。
体内で十分量を合成することはできないので、気になる方は摂りすぎに気をつけながら何かしらの方法で補ったほうが良いかもしれません。
アラキドン酸と相性の良い成分とは
アラキドン酸を積極的に活用したい方は、相性の良い成分も抑えておくと良いでしょう。
アラキドン酸を効率よく活用できるようになるからです。
相性が良い成分
抗酸化成分
アラキドン酸は酸化しやすい成分と考えられています。
そのため、抗酸化成分と一緒に摂ると良いとされています。
抗酸化成分とは、酸素が関係する好ましくない反応を抑える成分です。
ビタミンCやビタミンEなどがその代表として挙げられます。
ビタミンCはレモンやイチゴなどに、ビタミンEはアボカドやアーモンドなどに多く含まれています。
βカロテン
人参やカボチャなどに多く含まれるβカロテン(ビタミンA)は脂溶性です。
油と一緒に摂ると吸収率がアップします。
また、βカロテンは抗酸化成分でもあります。
アラキドン酸とβカロテンは双方にとって相性の良い成分ということができます。
アラキドン酸を多く含んでいる食品
アラキドン酸は身近な食品に含まれています。
毎日の食事から摂りたい方は、次の食品などを利用すると良いでしょう。
マサバ
アラキドン酸を多く含む身近な食品がマサバです。
マサバ(焼き)100gには230㎎、マサバ(水煮)100gには220㎎、マサバ(フライ)100gには200㎎のアラキドン酸が含まれています。
馴染みの食材なので利用しやすいはずです。
豚レバー
豚レバーにも多くのアラキドン酸が含まれています。
具体的には、豚レバー(生)100gには300㎎のアラキドン酸が含まれています。
マサバに比べると利用しづらい点が難点です。
豚かたロース
豚レバーを利用しづらい方は、豚かたロースを利用すると良いでしょう。
豚かたロース100gには130mgのアラキドン酸が含まれています。
アラキドン酸の含有量はやや下がりますが、豚レバーよりも毎日の料理に利用しやすいはずです。
鶏卵(生)
アラキドン酸を手軽に補いたいときに最適な食材が鶏卵(生)です。
鶏卵(生)100gには150㎎のアラキドン酸が含まれています。
卵かけごはんなどに利用することができます。
カットわかめ
以上のほかでは、カットワカメにも豊富なアラキドン酸が含まれています。
量はとりにくい食材ですが、100gあたり240㎎のアラキドン酸を含むので一品追加したいときなどによいかもしれません。
まとめ
アラキドン酸は、十分な量を体内で合成できない必須脂肪酸です。
脳に存在するアラキドン酸は、加齢により減少することが分かっています。
この点が気になる方は、アラキドン酸を多く含むマサバや豚レバー、鶏卵などの食品を食生活に取り入れるとよいかもしれません。
食生活が乱れがちな方やカロリーオーバーが気になる方は、サプリメントからアラキドン酸を摂取することもできます。
欠乏すると様々な影響が現れるとされているので、心配な方はサプリメントなどから補いましょう。
アラキドン酸が摂れるサプリメント
忙しくて食生活を見直すことができない、手軽にアラキドン酸を利用したいなどの方は、サプリメントを利用すると良いでしょう。
アラキドン酸は、次のサプリメントなどに含まれています。
サントリー オメガエイド
サントリー オメガエイドは、知力や気力をサポートする3つの必須脂肪酸(アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸)と
酸化しやすい3つの必須脂肪酸をサポートする抗酸化成分、アスタキサンチンを含むサプリメントです。
1日分の目安である6粒に、120㎎のアラキドン酸と300㎎のドコサヘキサエン酸、100㎎のエイコサペンタエン酸、1㎎のアスタキサンチンが含まれています。
AWAKE